【特集2】カーボンニュートラルの達成 電源の脱炭素化と電化で実現へ
電気事業連合会は、今年5月、2050 年カーボンニュートラルに挑戦すると表明した。かつてない難題に挑む池辺和弘会長の「戦略」と「思い」を、松本真由美氏が聞いた。
池辺和弘/電気事業連合会会長
(聞き手)松本真由美 /東京大学教養学部付属教養教育高度化機構環境エネルギー科学特別部門客員准教授
松本 昨年、菅義偉首相が2050年カーボンニュートラルを宣言しました。以来、この話題がマスコミでも連日のように取り上げられています。電力業界も目標の実現に向けて取り組んでいます。どのような思いでカーボンニュートラルに臨んでいますか。
池辺 われわれは以前から「地球温暖化防止は人類が直面している非常に大事な問題」として、議論を重ねてきました。首相の宣言よりも前から、温室効果ガスの排出量削減を常に頭に入れて事業を進めてきたと思っています。
われわれは長らくCO2を排出してエネルギーをつくってきました。石炭、石油を燃焼させればCO2を排出します。天然ガスも比較的少ないとはいえ、同様です。原子力発電所の再稼働が一部にとどまっている現状においては、発電電力量の7~8割はCO2の排出を伴う火力発電でつくっています。ですから、カーボンニュートラルに挑むのは当然であり、われわれ電気事業者も積極的に取り組むべきだと考えています。
松本 50年目標の前になりますが、30年度の目標として温室効果ガスの排出量を13年度比で46%削減する目標が決まりました。以前の目標の「26%」から大きく引き上げられています。
池辺 30年と50年のタイムスパンを踏まえて、二つの目標は分けて考えるべきだと思っています。50年カーボンニュートラルを達成するには、革新的なイノベーションが必要になるとみています。
松本 具体的には、どういった技術ですか。
池辺 国は、これから再生可能エネルギーを最大限に導入して、主力電源化する方針です。私はこれに大賛成です。ただ、例えば太陽光発電は朝8時くらいから発電しますが、夕方6時ごろには止まってしまいます。雨天・曇天時も発電量は大きく下がりますから、設備利用率は十数%です。太陽光発電が発電できないときの電力需要を蓄電池で賄おうとするなら、蓄電池の価格がかなり安くならないと事業として成立しないでしょう。
ですから、再エネを主力電源化するのであれば、蓄電池のコストを下げ、さらに、蓄電容量や充放電回数などの能力の向上が必要です。そのための技術開発を行わなければなりません。
松本 今の技術では難しいということですね。
池辺 革新的イノベーションに期待したいと思っています。ただし、簡単にはいかないようです。リチウムイオン電池の普及に向けて重要なのは、どれぐらい安く、どれぐらい大量に電気をためられ、どれぐらい充放電回数を増やせるようになるかだと思いますが、コスト、蓄電容量、充放電回数という三つの要素を同時に解決するのは相当難しいようです。