【特集2】業界展望編再確認したいLPガスの魅力 優位性を発揮して令和生き抜く
多様なセグメントで成立しているLPガスサプライチェーンには、さまざまな点で優位性がある。各分野で明るい業界展望に向けて、優位性を生かした現実解を示す動きが始まっている。
「災害に強い」「対面営業を主体とした地域密着型の事業」「環境に優れたエネルギー」とあまたの特長があるLPガスが、いま国のカーボンニュートラル(CN)戦略に揺れている。
業界戦略が不透明な中、人口減少に伴う需要減少やエネルギー間競争のあおりを受け続けるこの分散型エネルギーは、そのまま存在感を失うことになるのか―。
調達面の地殻変動 脱炭素LPガスの現実解
LPガスの調達面で、大きな動きがあった。元売り大手のアストモスエネルギーでは、脱炭素時代におけるLPガスの存在感を示そうと、「カーボンニュートラルLPガス」の調達に乗り出した。「大型運搬船1隻分のLPガス全てをシェル社のクレジットでオフセットした。約17万tのCO2削減効果に相当する」(アストモス)。
同社ではこれまでLPガスの海外貿易に取り組んでおり、その取扱量は世界最大規模を誇る。そんな取り組みが、今回のシェルとのスキームを実現させた格好である。
CNの取り組みは、他社へも広がっている。INPEXは9月、同じくアストモスとCN供給の売買契約を結んだと発表した。INPEXが、自ら操業する豪州イクシスLNGプロジェクトで産出されるLPガス(プロパンガス)のCO2を相殺するもの。INPEXが試掘から液化、販売、輸送、国内ユーザーの燃焼に至る全ての工程で発生するCO2を相殺する。
LPガスでも脱炭素を実現できる―。そんな現実解を示すことで、LPガス業界の存在感を高めていく。
究極のレジリエンス 再エネ共存果たす
サプライチェーンの下流面では、LPガスならではの特長を生かした、ユニークな事例が生まれようとしている。場所は太平洋に面した外房の地、千葉県いすみ市。市ではレジリエンス力を高めようと、LPガス発電設備による「マイクログリッド」の構築に向けて動き出している。有事の際に市庁舎周辺の小規模な電力ネットワークをオフグリッド化する。その際、エリア内のエネルギー自給率を完全担保するシステムだ。
そして、今回のエネルギー設備の核となるのがLPガス発電機なのだ。分散型としてのLPガスが、エリア内の電力供給を支える新しいシステムへと昇華されることになる。
さらに特筆すべきは、このオフグリッド内には発電設備として太陽光発電や蓄電池も導入されることだ。再エネの出力変動分を、LPガス発電や蓄電池によって需給調整する。突然曇り出して太陽光発電の出力が低下したら、瞬時に蓄電池やLPガス発電機が動き出して停電を回避する。 システムを構築する関電工によると、「再エネの導入量の拡大とともに、需給調整力の重要性がますます高まっていきます」としており、まさに再エネとの共存を図っていく取り組みだ。レジリエンス機能を高めるだけでなく、新しい「LPガスの在り方」を模索する事例となるだろう。