【特集2】ガス事業からCNに取り組む 響灘エネルギー拠点の青写真
【西部ガス】
CNのトランジション期において目標達成に挑む西部ガス。LNG基地をはじめとするエネルギーの一大拠点はどうなるのか。
北九州市の響灘地区に、西部ガスのひびきLNG基地(18万kl×2基)や、グループ会社が運用するエネ・シードひびき太陽光発電所(2万2400kW)がある。基地の隣接地には九州電力との共同事業として、2020年代半ばの運転開始を目指すLNG火力発電所の建設が予定されている。響灘の約83万㎡に及ぶ一大エネルギー産業拠点だ。
西部ガスは50年のCN実現に向け、30年に次の目標を掲げる。①同社グループおよび需要家のCO2排出削減貢献量を150万tにする(現在の排出量は約300万t)、②再エネ電源の取り扱い量を20万kWにする(現在は約5万kW)、③供給するガス全体のCN化率を5%以上にする―。
LNG基地を中心とした響灘地区の取り組みは、この目標達成に大きく貢献している。
基地の特性を生かす事業展開 新技術を取り入れCN実現へ
国際海事機関(IMO)は50年までに船舶から排出されるGHG(温室効果ガス)排出量を08年比で半減させ、今世紀の早い段階でゼロにする目標を掲げており、今後LNGを燃料とする船舶の導入拡大が見込まれる。
ひびきLNG基地では、船舶燃料を重油からLNGに転換した船舶へのLNG供給事業に乗り出す。岸壁や洋上に停泊するLNG燃料船に横付けしてLNGを供給する、Ship to Ship方式のLNGバンカリングの拠点形成に参画する。LNG燃料供給船の建造や保有について、九州電力や日本郵船、伊藤忠エネクスと検討中だ。
基地では、さらにメタネーションにも取り組む。太陽光発電所などで発電した電気を使って水を電気分解。水素を発生させCO2と合成して、都市ガスの原料となるメタンを作る。CO2を再利用するため、燃焼時にCO2が発生しても相殺される“CNメタン”になる。既存のインフラを使い、都市ガスと同じように供給して社会コストを抑制する。
基地に隣接する太陽光発電所は敷地面積の合計が約27万6000㎡。約7500戸分の年間電力使用量に相当する発電量だ。
立地を生かし、メタネーションへの活用も検討している。
西部ガスグループ最大のインフラ基盤であるひびきLNG基地。経営企画部の齋藤章人マネジャーは、「ISOコンテナなどによる海外向けLNG再出荷事業を拡大しながら、CNの実現に向け、新たな基地利用の取り組みを検討していく。アジアに近い立地の優位性や拡張性がある同基地の特性を生かしたビジネスを展開したい」と話している。