【特集2】発電とともに廃炉でもパイオニアに PWRでは初の廃止措置作業が進む

2022年8月3日

美浜発電所

日本初のPWR(加圧水型炉)として約50年前に運開した美浜発電所では、廃炉分野でも他地点に先駆けた対応が進む。関西電力は1号機と2号機で、国内PWR初となる廃止措置を2017年度に開始。約30年かけて全工程を終える計画だ。

除染では欧州の知見活用 国内初の工事も滞りなく

既に系統除染や残存放射能調査などの解体準備が完了し、現在は第二段階に差し掛かったところ。22~35年度にかけて原子炉周辺設備や二次系統設備の解体撤去、新燃料・使用済み燃料の搬出を進める。続く第三段階では原子炉領域の解体撤去を、最終の第四段階では建屋などの解体撤去を進める。廃止措置技術センター廃止措置計画グループの生駒英也マネジャーは、「美浜発電所は解体でもパイオニアであるという気概で、安全最優先で取り組んでいく」と強調する。

1号機の復水器細管撤去の様子

いずれの作業も国内PWRでは初となる。作業員の被ばく低減のために最初に着手した系統除染では、欧州で実績がある仏原発メーカーのフラマトムが技術協力し、三菱重工業などと共同で実施した。運転時に一次冷却材に触れ、機器内面の汚染が大きい系統を対象に、薬品で除染。放射線量は除染前の9割以上の低減を達成し、オペレーションフロアと同レベルにまで抑制できた。

現在進行中の管理区域内の解体作業では、PWRの管理区域がBWR(沸騰水型炉)に比べ狭い点を踏まえて工夫する。管理区域内の設備を解体したエリアに解体物を保管する際、収納・作業性が良いボックスパレットを使用。解体と搬出のスピードのバランスを考え、工程に支障が出ないようにする。保管物はその後、放射性廃棄物として処理・処分するか、放射性物質として扱う必要のないものはクリアランス処理する。

県と協力し廃炉産業育成へ 地元企業の参画促す活動も

廃止措置最大の課題が、低レベル放射性廃棄物の処分先だ。米国などは処分場が決定済みだが、日本では、解体廃棄物の処分場は未定だ。この課題は美浜も例外ではなく、まずは着実なクリアランス処理のため、クリアランスと放射能レベルが低いL3処理の環境整備に取り組んでいく方針。そして原子炉領域の解体が始まる第三段階までには、L1、L2の解体・処理・処分を検討していく。

その実施に当たってはいわずもがな地元との調整が重要だ。クリアランスでは福井県が掲げる「嶺南Eコースト計画」の実現に向け、日本原子力発電や日本原子力研究開発機構(JAEA)とともに廃炉ビジネスの確立を目指している。さらに地元からは作業の安全対策に加え、地元経済への貢献を求める声が挙がる。関電では美浜に加えて大飯発電所でも、地元企業との共同研究や人材育成などで関連工事への参入を促す考えだ。

ただ、欧州などでは鉄鋼の代替などで広くクリアランスを活用しているのに対し、日本では電力の自主活用に限られ、制度の周知も不十分。「国の力も借りてクリアランスの取り組みを進めることが重要。また、電力間での議論や規制当局との対話を続け、最適な廃止措置作業の追求が必要になる」(生駒氏)

出口戦略まで見据え、国と電力会社、そして地元関係者が連携する体制の構築が求められる。