A 確かに20年3月期度決算の数字は悪くなかった。しかし、今後については楽観できない。中でも東京ガス。本業のガス需要をかなり奪われている。離脱に歯止めを掛けて、どう攻勢に出る体制をつくるかが大きな課題になっている。
B 関西の場合、大手同士の一対一の激突になる。だけど、関東は市場規模が大きいだけに、東京電力だけでなく、エネオス、中部電力・大阪ガスグループなども顧客獲得に乗り出している。福島事故の賠償を抱えている東電は、なりふり構わない営業をやっている。そうなると、東ガスもどこかとアライアンスを組んで対抗しないとかなり厳しい。
C 本来ならば、JXTG(現エネオス)と組むべきだった。ところが逃げられてしまった。JXTG側は「東ガスとのキャッチボールがうまくいかなかったのが原因」と言っている。東北電力との連携は北関東の一部に限られるし、提携先の有力候補だった関西電力は金品授受問題で沈んでしまった。周辺の都市ガス会社との関係もいまは良好だが、もし入り込まれると思ったら、彼らも反旗を翻す。京葉ガスが良い例だ。
B 東ガスには、今まで恵まれすぎていたこともあって、「自分のエリアのガス・電力の供給は自分でやる」という考えが根強い。この方針を変えないと、どの会社とも良い関係を築けないかも。
C 東ガスは、4年ごとにトップ交代があり、過去を見ると中期経営計画をまとめた人が社長に就任しているケースが多いね。
B 現在の中期経営計画も評価は高いが、コロナ禍の影響で情勢が大きく変わっている。内田高史社長の次は大変かもしれない。
A 有力候補の一人は、日本ガス協会に出向している沢田聡・専務執行役員だと見ている。本流の企画畑で経験豊富。内田社長とは入社年次がちょうど4年離れていて、座りもいい。穴水孝・前副社長も有力候補だったが、今年、代表取締役から外れてしまった。
A 昨年社長交代があったら、おそらく藤原正隆副社長が昇格していただろう。しかしなかったので、藤原さんの就任はまずないだろう。すると、松井毅副社長か田坂隆之・常務執行役員。ただ、田坂さんを就かせるなら今年、副社長に就任させているはずだ。なかったので、やはり松井さんがトップの座に近づいていると見ている。
中部電が東邦ガスを配慮? ひびき天然ガス火力の行方は
―東邦ガス、西部ガスは、それぞれ中部電力、九州電力と経営規模がかなり上回る企業との争いになる。
B 売上高で、中部電力は東邦ガスの約6倍。まともに競争したら勝ち目はない。しかし、中部圏には、トヨタや中部電力などの中部経済を代表する企業が規模が小さい会社をいじめたら、「大人げない」と言われる風土がある。中部電力は当然、配慮しているだろうし、東邦ガスも、その中で着実にやるべきことをやっていると思う。
―富成義郎社長の後を継ぐ経営者は。
A いまも佐伯卓相談役が力を持っていて、佐伯さんが了解しないと決まらない。児玉光裕・専務執行役員、山碕聡志・常務執行役員の名を聞くが、佐伯さんが社長の時、同期の安井香一会長が後任になったこともある。まだ、よく見えてこない。
A 北九州市のひびきLNG基地をどうするかが、最大の経営課題と考えている。火力発電所の新設計画を継続すると言っているが、もう九州の電力需要は飽和状態。大阪ガスも出資を取りやめている。ロシアのノバテク社と連携して、LNG基地を活用していくプランがあるが、これも将来性を疑問視せざるを得ない。
C 九電が西部ガスのことを十分に配慮している。本来は自前のガスを供給できるのに、西部ガスから卸供給を受け、保守・保安業務も西部ガスに委託し、営業エリアも限定している。九電が本腰を入れて営業をしたら、西部ガスはひとたまりもないだろう。だけど、「この辺でやめておこう」としている。そういう事情を西部ガスも、よく分かっているはずなので、ひびきLNGのガスも、九電と一緒に需要を開拓していくのが一番の得策じゃないか。
B 西部ガスと九電は、かつてはトップ同士の仲がしっくりいっていなかったことがあった。ところが、道永さんと九電の池辺和弘社長は、お互い秘書を経験していることもあり、とてもいい関係にある。ライバル同士であり、競い合うところは競い合うべきだ。だけど、九州経済発展の視点に立って、二人三脚でやれるところはやっていけばいい。