〈エネルギー人編〉大手A紙・大手B紙・大手C紙
発足から半年経つ石破政権。後半国会に突入する中、トランプ関税というさらなる難題が襲う。
―2025年度予算が辛くも成立したが、各紙社説では「熟議が足りない」などの論調が目立つ。石破政権のこれまでをどう評価する?
A紙 石破茂首相が意欲を見せてきた防災庁構想や防衛問題などについて、今国会では全く述べていない。石破番の多くが彼の人柄に魅力を感じるようだが、万博のミャクミャクと戯れる姿など見せられても、国民は違和感を持つだけ。長い党内野党時代、実際首相になったらどう動くのか、全く考えていなかった。
B紙 「原発ゼロ」発言や選択的夫婦別姓もトーンダウン。ただ、高額医療費引き上げを凍結し、引くべきところで引けた点は良かった。前半は予算で精いっぱいだったが、後半の行方に注目したい。「トランプ関税国会」にはなってほしくないな。
C紙 政権の姿勢が見えない中で、役所が好きに動いている印象だ。洋上風力のFIP(市場連動買い取り)転を決定した審議会で、大事ではないかのように資料を作っていた。逮捕された秋本真利前議員と似たようなことをしているのに……。
一方、萩生田光一氏は「暫定予算とし、年度内に成立しなくても良かった」などと語っている。越年は国民が選択した過半数割れの結果であり、下手に維新などと妥協すれば支持者が離れるというのだ。
A紙 萩生田氏は某ネット番組で「(前衆院選では)九死に一生を得た。これからは自分が前に出ていく」とも語っていた。
B紙 そんなことを言っている場合か。6月下旬の都議会選でも自民は厳しいのに、萩生田氏の求心力が高まるとは思えない。
都議選では、国民民主に一番注目している。玉木雄一郎代表が今の勢いをどこまで維持できるのか。一定の成果を残せば、参院選でも議席をかなり伸ばす可能性が出てくる。また、中身のなさが売りである石丸伸二氏率いる「再生の道」の実力はいかほどか。自民が落とした分の受け皿はこの2党となる。
―その他、ポスト石破の動きはどうだろう。
A紙 小泉進次郎氏は政治とカネの問題を一手に引き受けていると悦に入り、昨年より表情は引き締まっているものの、中身は変わらない。その他の面々も静観だが、林芳正氏を除き、自分が見えていない人ばかりだ。
また、野党が不信任案提出に向けて、自民と維新・国民間のシングルイシューごとの団結をほぐせるのか。ただ、立憲民主の野田佳彦代表は引き続き石破氏との戦いを望んでいる。
C紙 最後までだれも手を上げないダチョウ倶楽部状態だ。
米との交渉担当は適任か 「ウルトラC」はなし
―4月2日、首相の商品券問題を吹き飛ばす、衝撃のトランプ関税が発表された。
A紙 石破氏はかつて安倍晋三氏の外交スタンスに対して「友情と国益は違う」と語ったが、それがブーメランとなっている。今の日米首脳は全く関係性が構築できておらず、7日の電話会談もただしゃべっただけだ。
B紙 トランプ氏は1期目と明らかに違う。安倍氏が存命でも、影響は避けられなかっただろう。
―赤沢亮正経済再生担当相が交渉担当となった。
A紙 本来の担当は武藤容司経済産業相のはずで、赤沢氏がしゃしゃり出た感がある。一時期は隙間風が吹いていたが、赤沢氏は石破氏の側近だ。
C紙 あり得ない展開だが、世耕弘成氏、西村康稔氏らパージ組の他、TPP(環太平洋経済連携協定)を担当した甘利明前議員の知恵を借りても良い。赤沢氏ではオールジャパン体制とは程遠い。
―早速赤沢氏の手腕を疑問視する記事も出ている。
A紙 「タフネゴシエーター」の茂木敏充氏も適任だが、そうできないのは人間関係を構築できない石破氏の人見知り故だ。
B紙 信用できる人が少ないんだね。
A紙 だから1年生にも商品券を渡してしまう。
まだやめられない補助金 電力・ガスも復活?
―燃料油補助金は案の定春以降も継続。電力・ガス補助金の復活も検討されている。
A紙 政府が昨夏電力・ガス補助金を復活させた際は猛暑対策と説明し、野党がばらまきだと批判。今年はさらに早い段階で復活の話が浮上した。
B紙 選挙を控え、また繰り返すのだろうと懸念している。別の景気対策が望ましいが、既にスキームがあるからね。また、脱炭素に逆風が吹く中、補助金が脱炭素に反するという批判のトーンも下がっている。
C紙 どうせ金を使うなら有意義な電源確保などにしてほしい。また、アラスカ産LNGをパイプラインで南部に運び輸出するのではなく、北極海航路で砕氷船を使った方が良いといった声が出ている。当然後者のリスクも大きいが、砕氷船に国費を投じれば米国の貿易赤字も減り、一石二鳥の絵が描ける。
―3月号で取り上げたフジテレビ問題のその後だが、第三者委員会の報告書が公表され、予想以上のひどさにドン引きした。
C紙 流れ弾をくらった反町理氏は、関係者に切腹最中を配り歩いているらしい。
A紙 ただ、当該女性記者だけでなく、男性記者でも叱責されることはよくあると聞く。
C紙 中居正広氏とフジ社員の悪行ばかり報じられているが、代理店やスポンサーの問題に触れるメディアは皆無。やはりパンドラの箱は開けられない。
―「オールドメディア叩き」は収束しそうにない。