NEWS 01:西エリアで卸電力高値のワケ インバランスへの不安強まる
3月初旬の日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場では、西日本のエリアプライスが東日本よりも高い水準で推移する時間帯があった。関西では4、6、7日の計18コマで1kW時当たり40~45・01円を記録。中部でも計17コマで同様の水準となった。
JEPXの発電情報公開システムによると、この期間中、点検や補修で火力電源が徐々に減少していたものの、西日本で需給ひっ迫につながる大規模な電源の脱落は確認されていない。
インバランスリスクへの備えが反映された
ある電力業界関係者が原因を推測する。「冷え込みによる需要増を見込み、小売り事業者がインバランスリスクを恐れて、高値でも確実に電力を確保しようと買いに出たのではないか」
実際、気象庁によると、大阪府の平均気温は4日が6・4℃、6日が7・8℃、6日が5・8℃と寒さが続いた。ただ、東日本でも東京都で4日、同2・4℃と冷え込みは厳しかった。なぜ西エリアだけ市場価格は上昇したのか―。
「西日本は東日本に比べ再エネの導入量が多く、出力変動に対する不安がつきまとう。低気温による需要増に加え、天候不順による出力低下を見越した小売各社の調達行動が背景にあるのだろう」(先の電力業界関係者)
再エネ普及率が高まるほど、小売りにとってインバランスリスクへの備えは重要になる。今回の事象は、それが市場価格の変動として如実に表れた形だ。
NEWS 02:洋上風力ゼロプレ案件に活路 容量市場への応札が可能に
洋上風力公募にFIP基準価格を1kW時当たり3円で入札した「ゼロプレミアム案件」について、資源エネルギー庁は2月26日の総合資源エネルギー調査会の作業部会で、容量市場メインオークションへの応札を認める方針を示した。FIPのプレミアムが実質的に得られない同案件は、コーポレートPPAにより売電するしかなかったが、新たな収入機会が確保される見通し。資材高騰や円安の影響で実現性が危ぶまれる中、事業者の投資決定を後押しする狙いがある。
これまでの洋上風力公募では、ゼロプレ入札が常態化している。同3円を超える値付けでは急激に価格評価点が低下するため、実質的にゼロプレ水準での入札が前提条件となっていたからだ。結果として、長崎県沖を除く6海域中5海域でゼロプレ水準の入札者が落札している。
事業者からは価格点算定式などの入札制度の見直しに加え、別の収入源を確保する仕組みを求める声が高まっていた。中でも容量市場については、ゼロプレ案件であればFIPのプレミアムが付かないため、固定費の二重回収が発生しないとして参加を認めるべきとの要望が寄せられていた。
今年度に入札が行われる2029年度向けオークションから適用される予定だ。バランシングコスト相当分の交付金を放棄することが条件となる。 政府は洋上風力を再エネ主力化に向けた「切り札」と位置付けており、30年までに1000万kWの導入を目標とした。一方、現時点で落札側にFID(最終投資決定)の動きはなく、第一ラウンドで秋田県沖と千葉県沖の計3海域を落札した三菱商事は2月、事業性を再評価し今後の対応を検討すると表明した。冷え込みつつある洋上風力事業に、政府のテコ入れは続く。
NEWS 03:液石法改正省令が全面施行 M&A加速の呼び水なるか
LPガス業界の商慣行是正を目指し、液化石油ガス法の改正省令が公布されてから1年。昨年7月の「過大な営業行為の制限」に続き、4月2日には「三部料金制の徹底」が施行される。
同日以降は、既契約の場合は基本料金と従量料金の二部料金からガス消費機器の利用料金相当を外出し表示しなければならなくなる。また、賃貸集合住宅の新規入居者に対しては、たとえガス消費機器であっても設備利用量をガス料金に上乗せできなくなる。
同制度のポイントは、大小問わず全てのLPガス販売事業者が対応することが求められていることだ。全国1万6千の事業者は、一部の大手を除けば大半が中小・零細事業者であることは言うまでもない。三部料金への移行に伴う実務、そして施行までに終えなければならない料金システム改修にかかる費用の両面で、重い負担が小規模事業者にのしかかる。
このため、「施行が直前に迫っているにもかかわらず、準備状況にはかなりのバラツキがあり、施行日に対応が間に合わない事業者も多いのではないか」(業界関係者)との声も聞こえてくる。
さて、改正省令の全面施行後、LPガスの競争はどのような局面を迎えるのだろうか。
3月19日の液石WGでは事業者から、投資額が減少した結果、家庭用LPガスの利益率が向上したことが報告された。不動産オーナーへの利益供与による顧客獲得が難しくなれば、単純な価格競争の世界に入り、おのずと大手有利となるだろう。実際、「(三部料金制への対応もあり)経営が立ちいかなくなった中小・零細事業の廃業や、規模拡大を狙う大手による商権買収やM&Aの案件が水面下で動き出している」(同)という。
NEWS 04:EEZに洋上風力設置へ 問題多く画餅感否めず
排他的経済水域(EEZ)に浮体式洋上風力を設置し、2030年1000万kW、40年3000万~4500万kWの目標達成へ―。そんな青写真を描き、政府は3月7日、洋上風力開発地点を領海内からEEZまで拡充できるよう、再エネ海域利用法改正案を閣議決定した。昨年の通常国会でいったん審議されたものの、総選挙の実施などで成立せず、今通常国会に再提出する。
日本のEEZ内は国土の約12倍と広大だ
EEZに洋上風力の設置を長期間認める制度を創設する。経済産業相が自然条件や、漁業者などの利害関係者の意見を聞くための公告縦覧、関係行政機関との協議を踏まえ募集区域を指定。事業者が計画案を提出し、経産相・国土交通相が仮の地位を付与する。事業者や利害関係者を構成員とする協議会で協議が調ったといった基準を満たせば、両大臣が許可する。
政府は領海内では第3弾まで公募を実施し、合計約450万kWの計画を選定。着床式の適地は限られ、公募はあと1~2回程度との見方がある。先述の目標に向けては、浮体式の低コスト量産技術開発などを進め、本腰を入れるほかない。
ただ、着床式以上に難易度が高い浮体式の大規模導入は果たして可能なのか。ましてEEZともなれば、海底ケーブル敷設の難しさが容易に想像でき、設置できたとしても中国船などに損壊される可能性もある。画餅感はどうしても否めない。