【都市ガス】国民の錯覚を招く 予備率のまやかし


【業界スクランブル/都市ガス】

5月に入って、急に今年の夏の電力予備率が厳しいというトーンに切り替わった。多くの報道は、あたかも昨冬に発生した電力不足と市場高騰の再来があり得るような言い回しだ。これを受け、今夏の電力先物・先渡市場価格は高騰を続けている。

しかし、昨冬の電力不足と今夏に起こり得る電力不足は全くの別物だ。昨冬は、発電能力は十分確保されていたが、LNG火力をフル稼働させるための燃料が足りず、電力不足が発生した。2年続いた暖冬に加えコロナ禍による需要減で秋口まではLNG在庫が急増し、LNGタンクの貯蔵能力に限りがある各電力会社はLNGの受け入れを制限しすぎたのだ。その後、例年より多少寒い冬が到来して、いつもなら十分対応できる需要増に対して対処できない状況が発生してしまった。その結果、電力不足による市場高騰が約1カ月継続した。

一方、今夏に発生する可能性があるといわれている電力不足は、燃料不足で発生するのではなく、最大ピーク時の瞬間風速的な需要量に対して対処できる発電能力の余力が4%弱と推測されるということだ。昨冬のLNG不足で、今年度の貯蔵タンクの在庫レベルは低い状態からスタートしているから、電力会社は今の時点でLNGの受け入れ制限をする必要はない。今夏において、一瞬の最大需要に対処しきれず、例年通りに市場でスパイクを発生させることはあり得るが、昨冬のように長期間にわたって電力不足が続くことはあり得ない。

実は、3月末に公表された今夏の予備率想定値は7〜8%台だった。それが、4月になって急に3%台に下がった。なぜ、発電能力自体は3月末から減少していないのに予備率が下がったのか。その理由は、予備率算出式の分母である今夏の最大需要量推定値が増加したからだ。確かに、最新気温予測を基に、最大需要量を見直すことは必要だ。しかし、政府やマスコミを含めて、昨冬の電力不足が再来するような錯覚や不安を国民に抱かせることだけはしてはいけない。(C)

競争環境におけるビジョン経営 目指すは地域の課題解決企業


【私の経営論】川村憲一/トラストバンク代表取締役

2012年4月、現会長兼ファウンダーの須永珠代がトラストバンクを創業、同年9月に日本初のふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」のサービスを開始した。須永は、各自治体のホームページに掲載されていた全国各地のふるさと納税に関するお礼の品などの情報を一つのサイトに集約し、クレジットカード決済で寄付ができる仕組みを提供した。地域の魅力であるお礼の品を通じて「まち」のPRをすることでふるさと納税制度への注目を集め、各地に多くの寄付を募ることを実現。ふるさとチョイスは現在、累計寄付金額1兆円を超える、意思あるお金を地域に還流させている。

寄付者に返礼の品を 法改正施行の背景

一般的にあまり知られていないが、ふるさと納税制度の仕組みには元々お礼の品がなかった。ある自治体が寄付者に感謝を伝えるため、手紙を届け、さらにせっかくなら地元の産品を知ってもらいたいという想いと感謝の気持ちからお礼の品を寄付者に贈るようになったといわれている。

その地域の魅力を知ってもらいたい、感謝を伝えたいという想いから贈られていたお礼の品が、ふるさと納税の普及に伴い、一部の自治体で過度に豪華なお礼の品を提供するようになり、お得な品で寄付を募る競争が激化し、「ふるさとを応援する」という制度の趣旨から遠ざかっていった。それが、19年6月に返礼品に係る法改正が施行された背景だ。

トラストバンクは、「自立した持続可能な地域をつくる」ことをビジョンに掲げ、ふるさとチョイスも、このビジョンに沿ってサイトを運営している。ふるさとチョイスは、1788全ての自治体の情報を掲載し、21年6月時点で、全国の9割に上る1600を超える自治体のお礼の品を選べるサイトに成長した。現在、ふるさと納税には、30を超えるポータルサイトを運営する事業者が参入しているが、私はポータルサイト間の競争が激化し始めた16年にトラストバンクに参画した。

競争が激化するふるさと納税の事業において、他社よりも優位性を高め、事業を拡大するには、地域に関係のないお得なお礼の品で興味を引いたり、寄付に対してポイント発行するインセンティブなどを用意することが最も簡単だ。だが、それでは自社のビジョンの実現には近づかないと考えている。

要は、寄付金を募るだけでなく、自治体や地域の事業者・生産者の取り組みを通じて地域に残るノウハウや資産を生み出すことが重要である。ふるさと納税をきっかけにその地域とつながった寄付者が住民と交流したり、さらには移住・定住のような動きが生まれることで、ビジョンである「自立した持続可能な地域」の実現に近づく。だからこそ寄付者と何でつながるかがとても大事になってくる。

そのため、独自の掲載基準を設け、地域にお金がより残り、また地域の魅力をより知る機会となるように、主に地場産品がサイト上に掲載されるための取り組みを15年から実施している。また、手数料においても、多くの寄付金が地域に残るように業界最低水準でサービスを提供している。

経営には、自社の売り上げ・利益よりも、ビジョンにつながるか、地域のためになるのかが判断の軸になる。そして、その判断が自治体の方々からの信頼につながると信じている。信頼は、「信頼を貯める」というトラストバンクの社名の由来でもあるほど、当社にとって大事なことだ。

ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」

また、自治体のふるさと納税担当者の業務を支援する専任メンバーがいる。私もその部署を統括していた時期があったのだが、信頼を貯めるために積極的に全国各地に足を運び、自治体とその地域の事業者・生産者の方々とコミュニケーションをとってきた。信頼に加えて、ふるさと納税制度を通じて地域の活力を生み出すために大切にしていることがある。それは、「つながりをつくる」ことだ。私たちは、お礼の品でその地域の魅力を寄付者に知ってもらい、寄付を地域に届けるだけでなく、「自治体同士」「自治体と地域の事業者」「事業者同士」をつなぐことを積極的に行っている。それは自治体とともに、ふるさと納税の先の未来を一緒に考え、創ることが地域に残る資産となり、地域の活力につながると考えているからだ。

ふるさと納税に続く事業 自治体にサービス提供

ビジョンの実現のために、地域の課題解決に必要な事業を立ち上げ、自治体が求めているサービスを提供できるよう組織の強化に注力している。現在、ふるさとチョイスに続く、新たな事業として、地域の経済循環を促すために、自治体が通貨を発行することで域内にお金を循環させる「地域通貨事業」、自治体が付加価値の高い新しい行政サービスを提供できるようにデジタル行政の推進を支援する「パブリテック事業」、そして、地産地消の電力で地域からお金の漏れを防ぐ「エネルギー事業」を展開している。既に、パブリテック事業では、ふるさとチョイスで培った全国の自治体との信頼関係と自治体に寄り添ったサービス運営により、順調に拡大フェーズに入っている。また、今後はエネルギー事業においても、自治体とともに地域の脱炭素社会の実現などエネルギー分野における地域の課題解決を目指していく。

ふるさと納税の事業では、さまざまな企業が参入し、競争が激化しているが、トラストバンクは、規模の拡大ではなく、地域の経済発展につながる取り組みをしている。ふるさと納税は地域の経済循環を促し、「自立した持続可能な地域」を目指すための手段の一つとして捉えている。トラストバンクが目指すのは、ふるさとチョイスに加えて、エネルギー事業などの新事業による自治体向けソリューションと合わせて全国地域の課題解決をリードする企業である。

かわむら・けんいち 食品専門商社を経て、コンサル会社で中小企業の新規ビジネスの立ち上げなどに従事後、コンサル会社設立。2016年3月トラストバンク参画。ふるさとチョイス事業統括やアライアンス事業統括を経て、20年1月から現職。

【マーケット情報/7月16日】原油続落、コロナ変異株感染拡大で売り加速


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み続落。新型ウイルス変異株の感染拡大で、需要後退への懸念が一段と強まり、売りが加速した。

新型コロナウイルスのデルタ変異株が、アジア太平洋地域とアフリカを中心に感染拡大。経済の停滞と、燃料需要後退の見通しが強まっている。韓国は首都ソウルで、集会やレストラン営業などの規制を強化。欧州共同体は、タイとルワンダへの渡航制限を再導入した。

欧米では、ワクチン普及にともない、移動規制の緩和が続く。しかし、英国で、変異株の感染者数が増加。一部の国が、英国からの渡航を規制し、ジェット燃料需要の回復は限定的との見方が広がった。

一方、中国の製油所では、6月の原油処理量が過去最高を記録。また、OPEC+が、2022年には、世界の石油需要がパンデミック前水準に戻ると予測。価格の下落を幾分か抑制した。

OPEC+は18日、8月以降の生産計画で合意した。来月から毎月、日量40万バレルを追加増産することに加え、協調減産を2022年末まで続けることが決定。アラブ首長国連邦、およびサウジアラビア、ロシア、イラク、クウェイトが、2022年5月から、基準生産量を引き上げることで妥協した。

【7月16日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=71.81ドル(前週比2.75安)、ブレント先物(ICE)=73.59(前週比1.96ドル安)、オマーン先物(DME)=72.29ドル(前週比0.80ドル安)、ドバイ現物(Argus)=72.11ドル(前週比0.58ドル安)

【コラム/7月19日】 再エネ「apple to apple(リンゴとリンゴの比較)」


渡邊開也/リニューアブル・ジャパン株式会社 執行役員 管理本部副本部長兼社長室長

 ビジネスの現場で「apple to apple」というフレーズをよく耳にしたりしないだろうか? 何かを比較する際にその比較が同一条件で比較されているかどうかということである。

 では、昨今の再生可能エネルギーの発電コストに関して「apple to apple」で議論ができているのかどうか? 今回はそのことについて触れてみたい。

 例えば、「欧米と比較して日本の再生可能エネルギーのコストは高い」という記事や資料を目にする。これは「apple to apple」での比較になっているのだろうか?

 太陽や風は地球上の至る所にあり、日本のように資源の乏しい国のエネルギー政策として、脱炭素社会の実現ということも踏まえて活用するのは誰しも異論のないことかもしれない。しかし、太陽の日射や適度な風況がどれだけ吹くのか、風向きは一定なのかなど、つまり発電事業の採算性という観点では当たり前の話だが、その条件は異なる。

 具体的に言うと、太陽光の場合、日本ではパネル容量1MWの年間発電量は110万kW時前後だというのがザックリした感覚である。一方、欧州のある国では、私の聞いた限りの数字感覚ではあるが、凡そ200万kW時超である。米国の西海岸当たりでは130-140万kW時である。言うまでもないが、日射量が違うのである。(余談だが、展示会でたまたま出会った欧州の方との会話で「スペインのカナリア諸島で実証実験やっているが、365日中360日が晴天なんだよ、ハハハ」と言っていた。)

 また、発電所を建設する土地は広大で平坦なので、日本よりも条件が良い。それは建設費用や期間に影響する。時間が延びれば、人件費等は増額する(その発電所建設に事業者として貼り付けている人員の人件費も長期の固定費となる)。特に時間というコスト(time is money)に対する認識というか報道が少ないと思う。

 風力の事例で申し上げると(これはキヤノングローバル戦略研究所の「エネルギー環境セミナー(動画)「再生可能エネルギーのコストと課題」」を是非ご覧いただきたいのであるが)、その動画の中に「日本の風況は欧州と異なり夏に大幅低下。日本の洋上風力発電の年平均設備利用率は約35%、欧州北海地域は約55%、日本の洋上風力事業の収益性は欧州を大きく下回り、国民や産業は欧州に比して7-9円/kWh買取価格を負担せざるを得ない」と解説しているスライドがある。まさにこれこそがapple to appleな視点だと思う。

 別の事例になるが、7月13日の日本経済新聞の記事に2030年の太陽光(事業用)は8円台前半~11円台後半という表が掲載されていた。

7月13日の日本経済新聞朝刊より

 

文中に「2030年時点の太陽光の発電コストが原子力を下回り最安になるとの試算により、太陽光「主力電源」化が本格化する。ただ用地捻出や送電網への接続費、バックアップ電源確保などの課題は残る。」というくだりがある。

 ここで「おい、ちょっと待ってよ」と思うのは、このコストの比較はこれから新しく建設する太陽光発電所の用地買収費用や系統連系費用はどうなっているのか? この表の火力や原子力は新設火力発電所ではなく、既設発電所のことを指し、一方、風力や太陽光のほとんどはこれから新設する発電所のことではないか?

 もしそうだとすれば、これは「apple to apple」の比較といえるのだろうか? ということである。

 2030年46%削減、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、官民一体となり、更には需要家の意識改革も含めて、その実現をどうやってするのか? を考えるのは勿論重要なことであるが、大事なことは、表面的なコスト比較ではなく、実現に向けた本質的な因数分解とそのコストが自然条件による制約の類のもの、事業者の努力で改善すべきもの、税制や法制度等の改善により実現できるものときちんと分けて議論していくということではないだろうか?

出典:「エネルギー環境セミナー(動画)「再生可能エネルギーのコストと課題」

リンクhttps://cigs.canon/videos/20210226_5640.html

【プロフィール】1996年一橋大学経済学部卒、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2017年リニューアブル・ジャパン入社。2019年一般社団法人 再生可能エネルギー長期安定電源推進協会設立、同事務局長を務めた。

オークションで公正に電気調達 再エネ電源に対応し自治体から反響


【エネルギービジネスのリーダー達】村中健一/エナーバンク取締役社長

環境省のガイドに掲載されるなど電力調達プラットフォーム「エネオク」が注目を集めている。

自治体からの連携協定締結が相次ぎ、エネルギー業界に新たな風を吹かせている。

むらなか・けんいち 慶応大学大学院理工学研究科卒。ソフトバンクで経済産業省HEMSプロジェクト主任。電力事業の立ち上げ、電力見える化プロダクト開発のリーダーを務める。18年エナーバンク創業。

エナーバンクが手掛ける法人向け電力調達プラットフォーム「エネオク」が全国の自治体から大きな注目を集めている。昨年10月の菅義偉首相の「カーボンニュートラル(CN)宣言」以降、自治体では脱炭素化に向けてあらゆる施策を検討。その中で、エネオクがRE100を達成するのに、①ヒトが介在せず、ウェブシステムで完結するため透明性を担保できる、②他者の応札額を見ながら再入札可能なリバースオークション(競り下げ方式の入札)により公正な競争環境が確保可能、③比較しづらいRE100やCO2フリーなどをうたう環境メニューも条件を合わせて見積りの取得ができる―などの特長によって採用が進んでいる。

学生時代の起業がきっかけ 通信事業者でインフラを学ぶ

そんな好調なエナーバンクを設立した村中氏が、起業を志したのは学生時代だ。学生ビジネスコンテストを総なめにした成功体験から、起業を意識するようになったという。ただ、いつかはエネルギーの領域で勝負をするという意識を持っていた。

そこで、入社したのがインフラ領域とIT領域の環境があるソフトバンクだ。当時、ソフトバンクは米アップルの「iPhone」を国内でいち早く手掛け、イー・アクセスや米スプリントを買収するなど、通信分野で急成長している時期。そんな中、技術統括のネットワーク本部でエンジニアを担当。国内外のさまざまなプロジェクトに携わった。中でも、国内ではトラフィックが増えるのに対し、どう増強していくかなど、電力インフラに携わる上でも貴重な経験ができた。

ソフトバンク時代に最も大きな仕事は経済産業省が主導する大規模HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)実証で、入社1年目にもかかわらず、主任に選ばれたという。そうした機会を得て、「国が考えるエネルギーの方向性、電力自由化に向けた各事業者の動向を知り、キーマンと対等に会話できる環境を得られたことは起業する上で非常に役立った」。

その後、HEMS実証で得た経験を生かし、ソフトバンクが電力小売りに参入するに当たり、通信と電力のセット商材を開発するプロジェクトのリーダーなどを経験しエナーバンクを起業した。

創業に当たっては、共同創業者の佐藤丞吾COOと互いが持っていたビジネスプランを持ち寄った。法人需要家向けオークションのモデルで、佐藤COOがベースロジックを、村中社長がUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザー体験)を開発し、どう仕掛けるかを考えた。

オークションで競り下げるということは、電力小売り事業者に厳しいサービスを提示していることになる。逆に需要家は、コスト削減を常に考えており、同方式はモチベーションになっているようだ。競争に基づきオークションを行うため、常に公平な立場での運用がこの仕組みでは重要になる。このため、出資を受ける際にも、偏りがないよう相手先を選んでいるという。

再エネ調達ガイドに掲載 脱炭素とともに大きな転機に

これまではコスト削減をきっかけに使われてきたエネオクだが、環境省が20年6月に公表した「公的機関のための再エネ調達実践ガイド」に掲載され、さらに菅首相のCN宣言があった。これで潮目が変わり、ゼロカーボンシティを宣言する自治体からの問い合わせが増えた。

「再エネだからコスト増につながるわけではない。適切な競争にかけて、現在と同じ水準、もしくはそれより安くなる可能性があるなら引き出していきましょうと声掛けしています。いきなり再エネ100%は大変です。10%、30%と段階を踏んで実施していくのに柔軟に対応できる点が喜ばれています」

連携協定を結ぶさいたま市はゼロカーボンシティを宣言しており、事業者向けの再エネ導入を推進しようとしている。そのサポートを同社が行っている。保育園に再エネ100%電気を導入した際は、未来の街づくりと地域住民のエネルギーへの関心を高めるための発信をサポートしている。

ゼロカーボンシティを宣言したものの、どう取り組んだらいいか分からないという自治体も多いという。「公共施設や地域事業者への導入には貢献できます。今後も普及させるには脱炭素に対する意識が醸成され、『うちもやらなきゃ』という環境になってくると、さらに利用してもらえるようになると考えています」

需要家はエネルギー業界の規制や仕様のトレンドを察知して、対応する必要があるが、正しい選択ができていないのが現状だ。エネオクはその間をつなぐツールとして、最新の仕様に常にアレンジしており、今後もアンテナを高くもち、察知して需要家に情報提供していく構えだ。

【新電力】需給懸念で浮き彫り 自由化政策の矛盾


【業界スクランブル/新電力】

2021年夏・冬の電力需給の見通しが非常に厳しく、相対卸取引の価格が上昇している。背景には電力自由化による広域メリットオーダーで火力発電所の稼働率が低下し、また競争激化により電源固定費が回収できなくなった点があるのは明白である。

今回の事態は以前から指摘されていた。電力広域的運営推進機関(OCCTO)が発表した「平成30年度供給計画の取りまとめ」によると、中長期の予備率見通しにおいて21年は予備率8%となる見通しが示されており、経済産業省の制度検討作業部会の場においても、対応策として①容量市場の早期開設、②電源入札の実施など、③対応策を取らない―の三つの選択肢が議論された。

新電力や経済学者の猛反対により容量市場の早期開設は見送られ、DR確保や電源入札などによる供給力確保に落ち着いた。つまり、事前に予想され回避する手段について議論されていたにもかかわらず、抜本的な対策を取らずに、問題解決を需給ひっ迫の直前まで先送りにしたといえよう。なぜ今回の事態を招いたか、このような手段は正しかったのか。検証が必要だ。

そもそも、審議会にオブザーバーは必要なのだろうか。事業者、特にアセットを持たない新電力は短期の利益についてコメントできても、中長期の供給力確保については利害が対立することから反対の発言しかできない構造にある。電力システム全体を議論する際に、オブザーバーの意見によって議論が左右され、結果としてツケが自身に跳ね返ってくる。オブザーバー参加していない新電力から見ると、とても新電力全体の意見を反映したとは思えない発言によって、国家の政策が左右される状況は看過できない。

また、今回の事態は電源固定費回収の手当てを行うことなく、限界費用を市場が反映する仕組みの構築を目指し、かつ広域メリットオーダーによる経済効果を狙った電力システム改革における制度設計の課題を突き付けるものである。小売り電気事業者各社は電力自由化政策の矛盾に直面している。(M)

台湾の熱い夏、第四原子力稼働の是非を問う


【ワールドワイド/コラム】水上裕康 ヒロ・ミズカミ代表

台湾では8月28日、凍結されている第四原子力発電所の建設の再開を問う国民投票が行われる。

2016年に誕生した蔡英文政権は25年までの「非核家園」(核なき故郷)の達成をうたい、石炭と原子力中心の電源をLNGと再生可能エネルギーに移行する「エネルギー転換」政策を掲げる。ところが、トラブルなどもあり原子力発電量が減少した17年には、相次ぐ大規模停電や石炭消費増加による大気汚染が社会問題となり、18年の国民投票では「電業法の脱原子力条項削除」が可決された。

条文は削除されたが、蔡英文は政策を変えない。香港問題で再び支持率を上げて昨年再選も果たした。そこで推進派が出してきたのが今回の議案である。可決には、賛成が反対を上回るとともに全有権者の25%を超える必要がある。統一地方選と同日だった18年と違い投票率の低迷が懸念される。

ところが、5月に入り追い風が吹き始めた。2回の大規模停電が発生し、単独と思われた国民投票の議案が三つ追加。さらにコロナ感染者急増による蔡政権の支持率急落である。追加議案には政権が推進する大潭LNG基地について「サンゴ礁保護のため地点の変更」というのもある。今後、気温の上昇とともにエネルギー議論も熱気を増すに違いない。

ところで、今回の議案を推進する「核能流言終結者」というNPO法人の名前が目についた。誤解や感情論が先走りがちな原子力の議論を科学と理性の世界に戻そうということか。なるほど、わが国においても特に3.11以降、推進派と慎重派の主張はほとんどかみ合っていない。エネルギー資源に恵まれず、海外と電力系統の連系がないのは台湾と同じだ。他人事ではない。科学と理性を忘れぬ、しかし熱い議論をするときが来ている。

【電力】省エネ法の議論 延命策に疑問


【業界スクランブル/電力】

2050年カーボンニュートラルが政府の目標として掲げられる中、省エネ法の在り方が議論になっている。もともと石油危機を契機に化石燃料の消費抑制を目的に作られた法律だが、今後は太陽光や風力など非化石エネルギーを含む全エネルギーを省エネの対象とする事務局案が5月の省エネ小委員会で示された。この案、時代遅れとなった枠組みの無理筋な延命策に映る。

省エネ法の本質は化石燃料使用削減法なので、もともと非化石エネルギーは同法の定義上エネルギーではない。だから、自家発による、あるいは自営線や自己託送を通じて購入した再エネ電気は同法の対象外だった。電気事業者から買う電気はこれらと異なり、化石燃料を起源としない電気「のみ」であることが特定できないとして、一律火力発電起源として扱われ、ガス業界による「マージナル電源=火力」という主張がこれを後押ししてきた。この粗雑な割り切りが需要家の熱源選択をミスリーディングしてきた弊害は大きい。

自己託送と同様に系統を通じて受電するコーポレートPPA(電力購入契約)や小売り電気事業者の非化石特化メニューの電気が火力換算されるのは、もはや説明不能だろう。今後はこれらも省エネ法の対象外にすればよい。これらを選択する需要家が増えれば、省エネ法の役割は徐々に縮小していく。省エネ法=化石燃料使用削減法なのだから当然。最後は安楽死でよいのではないか。

「再エネ電気を買えば省エネになる制度にはしないでいただきたい」という意見が出たようだが、正直「省エネムラ」を守ろうとしているだけに映る。再エネ電気を買う負担をした需要家に、さらに省エネ投資の負担を強いるのはフェアなのか。最終目的はあくまで脱炭素化だ。いたずらに制度を複雑化せず、カーボンプライスにインセンティブを一本化して、再エネか省エネか、需要家に手段の選択を委ねて何がいけないのか。もっとも、FIT非化石証書を買っただけで再エネコストを負担したといえるかという疑問は筆者も持つ。「追加性」をしっかり問うことが必要だろう。(T)

IEAがゼロエミへの工程発表 理想と現実のギャップ大きく


【ワールドワイド/環境】

国際エネルギー機関(IEA)は5月中旬に「Net Zero Emissions 2050」と題する報告書を発表した。これはG7議長国であり、COP26議長国でもある英国からの任意拠出に基づいて、2050年全球カーボンニュートラルを実現するためには、世界のエネルギーシステムはどうあるべきかを示したものである。

 報告書には、50年全球カーボンニュートラル実現への工程表が盛り込まれている。21年には石炭火力関連の新規投資を停止する、30年には新車販売の6割を電気自動車・プラグインハイブリッドにする、先進国の石炭火力を全廃する、35年にガソリン車の新車販売を停止する、40年に世界の石炭火力、石油火力を全廃する、50年にはエネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を7割にする―などが主な内容だ。

 IEAはまた、50年に全世界でネットゼロエミッションを達成するためには、先進国は50年よりも早く45年にネットゼロエミッションを達成し、ネガティブエミッションに移行することで、途上国にカーボンスペースを提供することが必要だとしている。

 これを実現するためには先進国で25年75ドル、30年130ドル、50年250ドル、主要新興国(中国、ブラジル、ロシア、南ア)では25年45ドル、30年90ドル、50年200ドル、その他途上国で25年3ドル、30年15ドル、50年55ドルの炭素価格が想定されている。

 ここで提示される絵姿とエネルギーを巡る現実との乖離はあまりにも大きい。世界では低下傾向にあるとはいえ石炭火力の新設が続いている。中国は20年に19年比45%増の石炭火力新規建設許可を出した。IEA報告書の25年時点の炭素価格を米国に適用すれば一人当たりの年間負担額は1200ドルになる。

 一方、シカゴ大学の調査は、米国人が地球温暖化防止のために追加的に負担する用意がある金額は年間12ドルとした。

 IEAの世界エネルギー見通し、とりわけレファレンスシナリオは世界のエネルギー関係者の議論のベースとなってきた。各国がカーボンニュートラル祭りに乗っかり、50年カーボンニュートラルや30年目標の大幅な引き上げを表明する中で、それがIEAのシナリオに反映されれば、現実的なエネルギー議論のベースには成り得ないだろう。

(有馬 純/東京大学公共政策大学院教授)

ドイツがさらなる再エネ導入へ 今秋の総選挙で最大の争点に


【ワールドワイド/経営】

ドイツでは再生可能エネルギー導入拡大に向けて、2000年に再エネ法(EEG)が施行された。EEGにより再エネの優先接続や固定価格買い取り制度(FIT)などの補助制度が導入され、再エネの総発電設備容量は2000年の約1200万kWから20年間で10倍以上の1億3200万kWへと大きく増加した。この間、EEGは再エネ需要増大や気候変動問題の深刻化に伴い、数次にわたり改正された。

 脱原子力(22年)と脱石炭(38年)が控える現下、21年1月1日に新たな改正(EEG2021)が施行された。EEG2021は「30年の総電力消費量に占める再エネの割合を65‌%」にするとし、改正前の「35年までに55~60%」という目標から大きく引き上げられた。

 さらに電力部門で50年以前のカーボンニュートラル達成が明記された。改正法は再エネの中でもとりわけ陸上風力と太陽光に重きを置いているのがポイントだ。ドイツでは一定規模以上の再エネ発電設備への市場連動価格買い取り制度(FIP)適用を競争入札によって決定しており、詳細な募集容量や入札要件などはEEGで定められている。EEG2021は陸上風力、太陽光の入札募集容量を大幅に拡大した。

 また、陸上風力発電事業者が自主的に地方自治体に対して、供給電力量について最大kW時当たり0・2ユーロ・セントを支払うことにより、発電所の利益を地域に還元する仕組みが導入された。

 このように再エネ拡大の趨向は続く。昨年12月にEUは、30年の温室効果ガス排出削減目標を40%(1990年比)から55%に引き上げることで合意した。ドイツ国内では、EEG2021の目標設定は不十分であるとの意見や新しい補助制度導入を求める声も高まっている。

 連立与党は4月22日、EEG2021を早くも再改正し、22年の再エネ競争入札の募集容量をさらに拡大することで合意した。この合意には、EUの目標引き上げに対応する29~30年の入札量が含まれておらず、与党は総選挙後の新政権に委ねるとした。電力業界はこの合意を一応は歓迎しているが、総選挙後の政権参加を目論む緑の党や環境団体は不満を表明している。 

 ドイツでは今秋9月に総選挙が実施される。30年の温室効果ガス排出削減目標70%を公約に掲げる緑の党の支持率は、政権与党に拮抗しており、再エネに関する政策が選挙の争点になる。

(藤原茉里加/海外電力調査会調査第二部)

米国上流開発企業の課題 再エネ・脱炭素へ加速


【ワールドワイド/資源】

欧州系に比べ脱炭素や再生可能エネルギーに対する取り組みの遅れが指摘されてきた、米国上流開発企業のエネルギートランジションが加速している。5月26日に開催された米エクソンモービルの株主総会では環境活動家が提案した取締役候補の一部が選出され、シェブロンの総会では販売した石油製品から排出される温室効果ガス削減目標(スコープ3)を定める議案が可決された。

 新型コロナウイルスの感染拡大がこの動きに寄与したという指摘もある。化石燃料の中でも輸送用に使用される割合が大きい石油は、都市封鎖や移動制限の影響を大きく受けた。事実、昨年第2四半期にはシェールオイルの大幅な減産が余儀なくされた。現在では、米国内においてエネルギートランジションは「いずれ対応しなければならない問題」から「具体策を要する喫緊の課題」と位置付けられるようになった。

 最近の環境活動家は単に気候変動問題に対する企業の社会的責任や贖罪を求めているわけではない。彼らは「化石燃料に投下された資本が利益を生むことなく座礁資産化するリスクが高まっており、対応を怠れば企業価値を毀損する」と主張するのだ。そして、年金基金などの機関投資家はこれを広く支持する。

 エネルギートランジションによって再エネが事業ポートフォリオの現実的な選択肢となり、石油・天然ガスに対する需要が構造的に変化している。国際エネルギー機関(IEA)が発表したネットゼロ排出目標へのロードマップに対して、米系メジャーは技術的前提が非現実的で自社保有資産から生産するのに十分な需要があると主張してきた。一方で、環境活動家もリアルタイムでデータソースにアクセスが可能で、分析ツールも容易に入手できる。上流開発計画の見直しに慎重だったエクソンモービルが昨年第4四半期決算で減損処理を実施した背景には、環境活動家の影響を受けた機関投資家や当局による情報開示や説明責任を求める働き掛けがあった。

 今年に入り、エクソンモービルやオクシデンタルはカーボンプライスや税制優遇措置を活用した二酸化炭素回収貯留や水素関連の事業構想を発表した。エネルギートランジションにおいて欧州系メジャーに後れを取ってきた米国上流開発業界だが、シェール革命で発揮されたデジタル化や資金調達技術を発展させることができれば、気候変動問題で存在感を高めたいバイデン政権と共にリーダーシップを発揮する可能性がある。

(古藤太平/石油天然ガス・金属鉱物資源機構調査部)

ワクチン「虚偽予約」報道 毎日・朝日の希薄な責任感


【おやおやマスコミ】井川陽次郎/工房YOIKA代表

何度見ても衝撃的な写真だと思う。「ハゲワシと少女」と題された一枚だ。アフリカ・スーダンで1993年に撮影された。

肋骨が浮き上がるほど痩せこけた少女が乾いた土の上に突っ伏している。生きているか。死んでしまったか。すぐ後ろで、死肉を喰らうハゲワシが様子をうかがう。

スーダンは当時、飢饉に陥っていた。内戦も事態を悪化させた。南アフリカの写真家ケヴィン・カーター氏は現地で日々、生き地獄を目にしていた。

その日も村での取材を終え、通りに出ると、この少女がいた。国際支援の給食センターに通じる道だった。シャッターを押す。そこにハゲワシが飛来した。衝撃の瞬間が捉えられた。

追い払うと、ハゲワシは飛び去った。少女も再び、自力で給食センターへと向かって行った。

写真は米ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された。惨状は世界に伝えられ支援が拡大した。カーター氏には、優れた報道を称えるピューリッツァー賞が贈られた。

だが、刺激的な写真に批判が広がった。なぜ少女を助けなかったのか。人命より取材が大切なのか、と。カーター氏が94年、多くを語らぬまま自ら命を絶ったこともあり、写真は「悪しき報道」の例に挙げられることがある。

現実には、少女は生き延びた。写真が撮影されてから14年後にマラリアで亡くなるまで。米タイム誌のサイト「世界を変えた100枚の写真」は、そう解説する。感染症のリスクを考慮し、取材者と住民の直接の接触は止められていた、との記述もある。

日本で最近、この写真が改めて道徳の授業に用いられているらしい。報道の責任は重い。それを考えさせる素材だという。

この報道はどうか。ワクチン接種を巡る毎日5月18日「大規模接種予約、架空番号で可」だ。記者が実際に「防衛省のサイトから、架空の市町村コードや接種券番号の数字を入力したところ、予約作業を進めることができた」と手順を紹介する。防衛省側は「善意に頼ったシンプルなシステム。迷惑な行為はやめてほしい」とコメントしたという。

朝日関連のAERA dot.5月17日「【独自】『誰でも何度でも予約可能』ワクチン大規模接種東京センターの予約システムに重大欠陥」はさらに詳しい。「編集部で東京の予約サイトで試してみると」などと架空コードの例を挙げて入力方法を解説し、「予約が取れてしまった」と書く。

ただし「接種券などの確認があり、(架空)予約しても接種できない」(毎日)。だとすると、予約システムを厳格にして利用者に不便を強いる意味は薄い。

最優先されるべきは、接種の速度を上げることだろう。

米国は明確に速度重視だ。薬局などですぐに接種できる。接種券は不要。海外の観光客にも接種してくれるので、「ワクチン接種目的で米国旅行、外国人が殺到」(ウォール・ストリート・ジャーナル5月11日)中という。

日本も真似していい。景気の回復に大きく貢献しよう。

読売5月19日「防衛省、『虚偽予約』の朝日新聞出版と毎日新聞に抗議文送付。『ワクチン無駄にしかねない』」は、ピント外れの報道へ当然の対応である。

コロナ禍で自死が増えた。倒産が相次ぎ、社会不安も広がる。「虚偽予約」を誇らしげに報じる記者は、現実をどう見ているのか。「責任感」が希薄すぎる。

いかわ・ようじろう  デジタルハリウッド大学大学院修了。元読売新聞論説委員。

前提と位置づけられる環境適合性 変化する3Eの考え方


【オピニオン】下郡けい/日本エネルギー経済研究所 戦略研究ユニット主任研究員

近年、気候変動を第一の優先課題に掲げる国が多くみられるが、3Eを構成するエネルギーの安定供給や経済効率性の考え方に変化はあるのだろうか。

世界の120を超える国が2050年までにCO2排出ネットゼロを目指すと宣言している。COP26に向けて各国の気候変動対策や目標が注目を集める中、日本でもエネルギー基本計画改訂の議論が進んでいる。

エネルギー基本計画の基本的な考え方は、「3E+S」である。安定供給、経済効率性、環境適合性、そして安全性という四つの視点は、日本にとってどれも欠けてはならないものだ。

しかしながら、世界的な気候変動対策の機運の高まりの中で、安定供給や経済効率性の議論に先んじて、日本では野心的な目標(50年ネットゼロ、30年に13年度比GHG排出量46%削減)が決定された。安全性と並んで環境適合性が疑う余地のない前提と位置付けられるとするならば、その中で安定供給と経済効率性をどのように考えるべきだろうか。

エネルギーの安定供給という点では、海外から資源(原料)を輸入する限り、その安定的で安価な調達の確保といった元来の要素はネットゼロを目指す世界でも不可欠である。しかし同時に、需要の電化が一層進むことで、新たな要素が加わることも考えられる。例えば、地域単位の電力系統のセキュリティやレジリエンスの確保、希少資源のリユースやリサイクルなどが挙げられるだろう。

また、経済効率性という点は、ネットゼロを目指す世界では、エネルギーコストの上昇が起こり得ることを認識すべきである。ネットゼロを達成するには、大気中CO2直接回収貯蔵(DACCS)やCCSとバイオマスエネルギーを組み合わせたBECCSなどが不可欠だ。また水素直接還元製鉄の実用化なども必要とされる。今はまだ実装されていない技術の実現を前提とする以上、経済効率性にネガティブな影響の及ぶ可能性も否定できない。ネットゼロを目指す他国も同様の状況に置かれるだろう。そのような中で、競争力のある産業をどのように維持あるいは創出できるかが、注目されよう。

新たな産業として、クリーンエネルギー分野への期待は著しい。国際エネルギー機関(IEA)が公表した50年のネットゼロに向けたロードマップでは、クリーンエネルギー分野への雇用の移行に言及している。クリーンエネルギー分野での雇用創出(1400万人)が石油やガス、石炭分野での雇用減少(500万人)を補い、雇用が純増すると指摘する。しかし、同分野での雇用に継続性があるのか、また雇用の転換がスムーズに進むのかは、まだ明らかでなく留意が必要である。

ネットゼロを目指す世界においても、エネルギーの安定供給と経済効率性の重要性は変わりない。しかし、その意味するところは、世界的な潮流を受けて変化しつつある。新たな3Eの考え方を踏まえ、今後のエネルギー政策を評価していくことが求められるだろう。

しもごおり・けい 2010年早大法学部卒。12年東大公共政策大学院修了後、日本エネルギー経済研究所入所。
専門はエネルギー・原子力政策など

振込用紙のない新たな決済サービス 東電EPが支払い業務をデジタル化


【東京電力エナジーパートナー/GMOペイメントゲートウェイ/NEC】

東電EPは昨年、GMO―PGとNECのサービスを活用し、「SMS選択払い」を開始した。

現金払いや電子決済、カード支払いなど、多くの決済方法に対応する。導入背景や特長を3社が語り合った。

――東京電力エナジーパートナー(東電EP)は、昨年10月からスマートフォンでさまざまな電気料金などの支払い方法に対応した「SMS(ショートメッセージサービス)選択払い」を開始しました。料金支払い業務における課題、同サービスを開始した背景をお聞かせいただけますか。

梅澤 これまで、主にご家庭における電気料金などの支払い方法では、銀行からの引き落としやクレジットカード支払い以外は、振込用紙での支払いが大半でした。SDGs(持続可能な開発目標)など、企業の事業活動における環境への配慮が社会的にも強く求められる中、当社も振込用紙作成に使用する紙をどう減らすかが大きな課題でした。お客さまにご協力をいただきながらペーパーレス化を進め、紙の生産に必要な森林伐採を減らすなど、環境配慮の姿勢を強めていきたいという思いが以前からありました。毎月の電気料金のご請求など、お客さまが振込用紙の発行を都度ご希望される場合、封筒に使用する紙も含め、年間を通じて多くの紙資源が必要となります。これがSMS選択払いで全て電子化されると、紙だけでなく、インクの使用量も大幅に削減されます。振込用紙をデジタル化する効果は非常に大きいです。

もう一つの課題は、支払いの利便性向上です。スマホの普及によって、電子マネーやコード決済など支払い方法が多様化する中、当社はこれらの決済手段に対応してほしいというお客さまニーズに十分応えられていませんでした。昨年春先から続く、新型コロナウイルスの感染拡大によって、支払いのためにコンビニに行くことをリスクに感じるお客さまもいらっしゃいます。そこで、自宅に居ながら支払える利便性は欠かせないと考えました。また、振込用紙の紛失によるお支払い忘れや遅延、当社に再発行の手続きを依頼する手間の軽減なども改善すべき点として検討を進めてきました。

東京電力エナジーパートナー
オペレーション本部 業務革新推進室
請求基盤構築グループマネージャー
梅澤功一

検討から早期立ち上げ実現 支払い状況の確認が可能に

――SMS選択払いを提供するに当たって、システム変更の面ではご苦労された点はありましたか。

柿原 これまで当社は支払い業務用システムを自社で構築してきました。このため、システムを改修するにはそれなりのハードルがあり、改修費用がかかるため、新しい機能を組み込むには大きな決断が必要でした。今回は、GMOペイメントゲートウェイ(GMO―PG)とNEC両社のサービスを利用することで、自社システムの構造を大きく変更せずに、当社の業務スキームに沿った仕組みづくりに柔軟にお応えいただきました。さらに、きめ細かい点もサポートいただき、ご利用いただくお客さま目線に立った分かりやすいサービスを導入することができました。

――業務面で導入して得たメリットはありますか。

梅澤 これまで得られなかった支払いに関する情報を取得できるようになりました。SMSがお客さまの元に送信できたか、請求情報を確認していただけたか、さらに、お支払い日時の傾向も分かります。SMSを送信する際も、お客さまの迷惑にならない時間帯か、支払い忘れがないよう告知するのに最適な時間帯か、送信するタイミングを分析できるようになりました。新サービスの検討にもこのデータを活用できると考えています。

―検討開始から稼働までどの程度の期間を要しましたか。

梅澤 2018年2月に当社内で請求基盤構築グループを発足し検討開始してから2年半でサービスを開始しました。当初は、システム担当の私と業務担当の柿原に、数人加えた小規模なメンバーで検討を開始しました。Eメールを利用することや、ほかにより良い手段はないかなど検討し、お客さまの利便性向上に向けて試行錯誤しました。決済の電子化を推し進め、さまざまな支払い方法に対応するためスピード感を持って進めることができたと思います。

東京電力エナジーパートナー
オペレーション本部 サービスソリューション事業部
オペレーション企画グループ
柿原雄司

継続的な課金処理に最適 SMSは決済に特長を発揮

――GMO―PGとNECの両社が提供したサービスの特長を、それぞれ紹介していただけますか。

吉井 SMS選択払いは当社が提供する「GMOデジタル請求サービス」を活用いただいています。同サービスは、電力会社やガス会社、通信事業者、水道局、生命保険会社など、継続的に課金処理が発生する企業に適したものです。当社調査によると、こうしたサブスクリプションモデルの支払い件数は、1世帯当たり12〜15件程度あり、それだけ請求書や振込用紙が発行されているのです。電子化して紙を減らすことで、企業のSDGsの目標を解決する手段の一つになるのではと考えています。

同サービスはクラウドサービスです。従来はシステム改修に手間と時間がかかりましたが、汎用的なインターフェースで既存支払い業務システムに接続できるので、大きな影響を与えず、迅速に手間なく立ち上げられるのが強みです。利用いただくお客さまにおいては、外出せずに料金支払いができます。もちろん、近所のコンビニでも支払い可能です。さらに、「今月はクレジットカード」「来月はコード決済」など支払い方法を柔軟に変更できます。お客さまの支払い方法に幅広い選択肢を提供できるのも大きな特長です。

なお、お客さまへのお知らせ方法は企業にて選択でき、SMSの場合は、NECのサービスと連携しています。

このほか、従来の振込用紙での支払い処理では、コンビニ店舗において処理後の控え用紙を束ねて本部に送って集約しているそうで、非常に手間になっていると聞きます。これらの業務負荷軽減も期待できます。お客さま、導入企業、コンビニそれぞれにメリットがあるソリューションです。

【マーケット情報/7月9日】原油下落、需要後退への懸念強まる


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み下落。新型コロナウイルスの感染再拡大で、売りが優勢となった。一方、OPEC+が生産計画で合意に至らなかったことで、価格に対する不透明感が強まっている。

新型コロナウイルスのデルタ変異株の感染が、アジア太平洋地域を中心に拡大している。インドネシアは、ロックダウンの対象地域を拡大。また、オーストラリアは、シドニーのロックダウンを延長した。日本では、東京が緊急事態宣言を再導入。さらに、サウジアラビアは、ベトナム、UAE、エチオピアへの渡航規制を導入し、燃料需要が後退するとの懸念が強まった。

他方、OPEC+の会合は、8月以降の生産計画で合意に至らず解散。原油価格の先行き不透明感が台頭した。今回の会合では、8月から、月毎に日量40万バレルの追加増産と、2022年末までの協調減産の延長が検討されていた。しかし、UAEが延長に反対し、交渉が決裂。これにより、8月も、7月並みの減産幅になるとの予測から、供給逼迫感が強まった。また、短期的には価格上昇が見込まれる一方で、それが続けば、米産の増加を招くとの見方もある。

【7月9日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=74.56ドル(前週比0.60安)、ブレント先物(ICE)=75.55(前週比0.62ドル安)、オマーン先物(DME)=73.09ドル(前週比1.03ドル安)、ドバイ現物(Argus)=72.69ドル(前週比1.04ドル安)