NEWS 01:防衛省が陸上風力規制へ ゾーニングが一層重要に
政府は、陸上の風力発電設備が自衛隊のレーダーなどに障害を及ぼさないよう規制する「防衛・風力発電調整法案」を3月1日の閣議で決定した。指定区域に風車を設置する際に届け出が必要となる。自衛隊のレーダー運用などに影響がある場合、設置者と最大2年間協議し、期間中に勝手に工事を実施した場合などの罰則も規定する。木原稔防衛相は「自衛隊などの円滑かつ安全な活動を確保するために必要な法案」だとし、国会での早期成立を目指す方針だ。
レーダーと風車の「共生」が必要だ
風車が電波を反射し、目標の正確な探知が困難になると、警戒監視活動やスクランブル対応に支障をきたす恐れがある。これまでも各地の沿岸では、自衛隊と風力事業者との間で交渉することがままあり、風車の場所をずらすなどの対応を取ってきた。業界関係者は「風力の導入拡大に加え、防衛面では上空だけでなく低空の飛行物体をとらえる必要性が高まったという事情から、規制に動いたのではないか。ただ、これまで通り場所や大きさなどに関して事前に協議していけば、窮屈な法律というわけでもない」と受け止める。
他方、温対法に基づくポジティブゾーニングの対応も進む。都道府県や市町村が促進区域を示し、この過程で政府の意見も踏まえることになる。先述の関係者は「今回の規制を受け、よりポジティブゾーニングが重要になる」と強調する。
NEWS 02:賃上げで満額回答相次ぐ 大手電力にもようやく春が
大手電力各社は2024年の春季労使交渉(春闘)で、労働組合の賃上げ要求に相次いで満額回答した。東京電力ホールディングス(HD)は来年度から、年収水準を4%引き上げることで労組と妥結。11年に発生した東日本大震災前の水準に回復する。好業績や人材争奪戦の激化を背景に各社は、待遇の改善で社員の成長意欲を高めるほか、人材確保にもつなげる。
東電HDの賃上げは2年連続で、年収水準には基本給を底上げするベースアップ(ベア)も含まれる。福島第一原発事故後に巨額の費用負担が生じたとして、年収を一般社員で2割、管理職で3割削減していたが、事故前の水準に戻るという。
関西電力もベア要求に満額で回答。組合員平均で月額1万7000円とすることで組合側と妥結した。ベア実施は19年以来5年ぶり。ベアは2万3510円引き上げた1974年以来、50年ぶりの高水準になる。回答理由について同社は、「従業員の頑張りに報い、今後の奮起を期待したいという考えのもと、真摯に労使交渉を重ねた結果だ」と説明した。
中部電力は、ベアを月額1万2000円とすることで妥結。水準は前年の4倍で、記録のある1955年以来過去4番目の高水準という。収益拡大に貢献した社員の努力と意欲に応える。
政労使で物価高を上回る持続的な賃上げを目指す機運が高まる中、電力業界も足並みをそろえた。今春闘の妥結内容について電力総連の関係者は「組合員のモチベーションアップには十分な数字だ。(東日本大震災が発生した)3・11以降の春闘で連合方針を超えるのはこれが初めて。他業種では昨年から賃上げが続く中で、ようやく電力業界もその流れに乗ることができた」と評価した。
NEWS 03:GX移行債が初発行 償還財源の詳細なお未定
官民で150兆円のGX(グリーントランスフォーメーション)投資の呼び水とすべく、2月、政府が初めてGX経済移行債を発行した。「クライメート・トランジション利付国債」として10年債(表面利率0・7%)と5年債(同0・3%)を約8000億円ずつ、計1・6兆円を発行。2024年度は入札を4回に分け、10年債、5年債それぞれ7000億円程度、計1・4兆円発行する予定だ。ただ、関係者からは「今後10年で予定する20兆円分の移行債をすべて売り切れるのか」といった声も出ている。
初回分は22年度補正、23年度当初予算に計上した水素還元製鉄や蓄電池、高温ガス炉・高速炉、住宅断熱性能向上などの関連事業に充当する。他方、一部でグリーンウォッシュとも指摘されるアンモニア関連などは初回分から外した。また、日本政府はレピュテーションリスクを下げるため、海外への理解活動に力を入れてきたという。
ただ、それで海外投資家に多く買われたというわけでもなさそうだ。日本銀行が保有する国債銘柄別残高を見ると、3月8日時点で10年物の移行債を3366億円保有し、「タコが足を食っているような状況」(同)ともいえる。米国などでESG投資の伸びが鈍化しつつある上、GX基本方針を決めた22年末時点で想定できなかった、ロシア・ウクライナ戦争の長期化や中東での紛争、大幅な中国経済悪化など、周辺環境のマイナス要素もある。
さらに、「移行債の償還財源の詳細が未定な状況では、20兆円分をきちんと償還できるのか疑心暗鬼になり得る」(同)。まず28年度から徴収する化石燃料賦課金が、5年債の償還に充てられる予定だ。その水準が見えてくれば、移行債の買われ方に変化が生じるかもしれない。
NEWS 04:狙われる高齢者宅の給湯器 悪質訪問販売なぜ急増?
給湯器の修理や点検を装い、法外な請求を行う悪質な訪問販売業者による被害が相次いでいる。国民生活センターは2月21日、今年度に入り給湯器の点検トラブルに関する相談が急増したと発表した。相談件数は12月末時点で約1100件。前年度比で約3倍もの増加だ。
同センターは今回の騒動を受け、「屋根修理を装った点検商法の摘発が進んでいる。悪質訪販業者が屋根分野から、いまだ摘発の進んでいない給湯器分野に対象を移しているのではないか」と分析する。悪質業者は突如として点検訪問に現れ、「もうすぐ壊れる」などと消費者の不安をあおり契約させる手口であり、被害者の7割以上が70歳以上の高齢者だ。
悪質事例が相次ぐ給湯器の点検商法
被害にあった給湯器はガス瞬間湯沸器、電気温水器、ガス温水ボイラーの順に多い。家庭のシェア率に関係しているとみられるが、「これら3点が長期使用製品安全点検制度の対象外である点も要因の一つではないか」と同センター関係者は語る。対象製品の所有者はメーカーなどによる安全点検を受ける必要があるが、メーカー側から点検時期前の通知などがなかったことも、悪質業者が付け入る隙となった可能性がある。
今回の事例は、特定商取引法の規制対象となるためクーリングオフ制度も適用される。万が一、契約してしまっても冷静に対処することが必要だ。