A むしろひどくなっている。一部の事業者は、エネ庁が3月以降イラン戦争関連の対応に時間を取られ、LPガス問題に注力できない状況を理解した上で攻勢をかけている印象だ。相変わらず集合住宅オーナーに1世帯当たり5・5万~15万円を支払い、集合・戸建て両方で新築時のガス配管や給湯器などの貸与が横行。また、ナフサショックや物価高騰が起きる中、値上げありきの火事場泥棒的な切り替えが増え、そうして契約した後は連続で値上げするケースもある。
B 省令改正により劇的な変化を期待していたが、そうはなっていない。しかも地域差がある印象だ。県協会がリードできている地域は良いが、そうでない地域では域外から参入してきた事業者が荒らしても県協が動かず、地元事業者が廃業するような事態となっている。また、ビン倒しが激しくない地域では「省令改正はあくまで中央の話」といった受け止めで、今さら三部料金を導入しようという気概が見られない。実際、そうした地域に引っ越して地元の大手事業者と契約した知り合いに話を聞くと、料金水準は適切であるものの三部料金になっておらず、設備費用の外出しがなされていなかった。
C 液化石油ガス流通ワーキンググループ(WG)が最後に開催された昨年6月末以降の動向について、元売りには情報が全く入ってこないと聞く。最近は関係先との会話の中でも省令改正が話題にならないということだ。事業者は三部料金への対応をし始めているが、必ずしも料金の作り方や設備費用の記述などが正確に行われているわけではなく、中には「にわか三部料金」も見受けられる。また、ビン倒しではないが、今後も新築の増加が見込める首都圏などは集中的に狙われている。
LPガス販売現場の実態は改善しているとは言い難い
―未だにブローカーが暗躍しているということか。
B 実は最近はブローカーではなく、スキマバイトの活用が広がりつつある。闇バイトではないが、時給が良く2~3時間でそこそこ稼げるから人が集まりやすく、事業者にとっても有効らしい。女性が多く、泣き落としも珍しくないとか。こうした動きに対し、保安の知識がなければ勧誘できないように見直すべきだという意見も高まっている。
C 某大手販売事業者は業界全体で連携して合理化や効率化を目指す方針を掲げているが、順調に進んでいるとは言い難い。いずれにせよ、WGが1年もほったらかしであることを業界団体は問題視しなければならない。ガソリン補助金や有事対応で燃料流通政策室が多忙なことは承知しているが、役所の体制を理由にしてはならない。電力や都市ガスは将来課題に向けた政策議論を重ねているのに、LPガスだけ置き去りになっている。
B グリーンLPガスの取り組みも遅々として進まず、rDME(リニューアブル・ジメチルエーテル)混合LPガスのCI値(炭素強度)設定の議論も先送りされている。
C 国際大学の橘川武郎学長が「LPガスは最後のとりで」「ホルムズリスクなし」といった強みを随所で発信しているが、そうした点を踏まえた将来ビジョンの議論が手つかずだ。販売業者1社1社、県協、業界団体が行政にきちんとした対応を求めていかなければ、他のエネルギーとの差は広がる一方だ。
B あまり変わっていない。設備料金は一律で数百円などと決める場合が散見され、エネ庁の狙いとは違う方向に進んでいる。
A 一部の事業者が貸与という名のプレゼントを継続しているから、オーナーの意識も変わらない。新たにアパートを建てる予定の取引先のオーナーに、「他にただでやってくれるところがある。無償貸与がないと資金計画が数百万円ずれる」と言われてしまった。オーナーにとっては費用負担してくれる事業者が「話の分かるガス屋」で、国が求める望ましい営業行為を目指す事業者は「話の分からないガス屋」となってしまう。公取(公正取引員会)がアンフェアな競争にメスを入れず、正直者が馬鹿を見る状態となっている。
―オーナーは、入居者が不透明な料金を強いられることが後ろ暗くないのか?
B 数年で入居者は変わるから、そうした意識はあまりないのだろう。
C 対大家対策は、「フェア・トレード」と認められる社会的合理性のあるインセンティブ供与を目指すべきだ。LPガス事業者だけで実現できるわけではなく、オーナーや管理会社などの「フェア・トレードに向けたマインドセット」の醸成が必要だと思う。規制当局に頼ることなく、矜持を持つステークホルダーが自主的に進めることが現実的だろう。
A 透明性とは程遠い料金を堂々とホームページに載せる事業者はまだ多い。残念ながら、エネ庁の通報フォームは全く機能していない。私の周辺には通報するよう促しているが、取引適正化アドバイザリーグループの確認が止まっている。2月までは闊達に動き機運が高まっていたところに、戦争勃発で冷や水を浴びせられてしまった。
B 通報フォームは匿名が多い。通報する側も覚悟を決めて連絡先などをオープンにしなければ、その後の調査は進まない。
A やはりスーパーオーナーの発信力は強く、建設、不動産事業者もセットでペナルティを与えるなど、国土交通省が動く必要がある。不動産事業者に新しい料金表を持参しても入居希望者に渡さず、料金改定ごとに事業者が提出するということも浸透していない。国の方針が末端に伝わっておらず、エネ庁、国交省、消費者庁はもっと前のめりになるべきだ。
C 国交省はWGでも消極的態度だ。不動産やオーナーに関するデータを持っている国交省が本気にならなければ話は進まない。
C 1月末に初回会合を開いたものの、年度終わりの3月でいったんストップし、メンバーは変わらざるを得ないし、この仕組みのままで成果を挙げるのは難しいと思う。話が戻るが、やはり流通政策室が多忙でLPガス問題まで手が回っていない。地方との懇談会で「室長業務多忙のため代理で講演」などと業界紙に書かれていた。また、少し前までは業界のことを熟知した古参の人がいたが、今はそうではなく、理解も進んでいない。
A 初動にはすごく期待していた。これまで避けてきた定量的評価を行い、ターゲットを絞って立ち入りするような気配があり、法改正も視野に入れていた。しかしアドバイザリーやWGが機能不全とみた事業者に逆回転がかかり、悪い切り替えが息を吹き返している。
B 中東情勢に伴う補正予算が可決し、米国・イランの状況も一段落しそうだ。エネ庁もそろそろWGを再開し、停滞していた議論を進めアドバイザリーの成果として目安となる基準を公表しないといけない。
C 参加者にはまだ連絡が来ていないようで、8月に開けるかどうか。また、通報フォームの情報はオープンになるのか。概要を業界紙にリリースすれば広く伝わるが、そうしたまとめ方をするのだろうか。
A われわれも消費者も迷惑しており、公取だけでなく警察にも動いてもらいたいような案件まである。特にひどい事業者を見せしめにしなければ、残念ながら事態は改善しない。
C WGで戸建ての無償配管問題は今後の課題としたが、先に最高裁判決が出てしまった格好だ。LPガス事業者からすると、過去にもこうした契約書の名目と実態の「付合問題」はあり、数年前には最高裁が棄却したことも。しかし今回明確な判例が出たことで、今後賃貸にも波及する可能性がある。
B 消費者契約法にある「平均的な損害を超える違約金は無効」との規定を根拠に、設備の残存費用に関する条項自体を無効とした上、補足意見で三部料金であればその限りでないとした。逃げ道がふさがれたと言える。
C まさに商慣行を是正すべしということで、重い判決だ。コンメンタール(解説書)がまだ出ていないが、付合の解釈論などが求められ、その意味でもWGを早期に開催すべきだ。
A 消費者保護の視点が重要なことはよく分かるが、本件がコロナ禍で事業環境が悪化していた時の切り替えだったことへの考慮がない点には事業者として思うところもある。
―そして補正予算の成立により、LPガスの補助金も復活した。
B 消費者としては電気や都市ガス代に出るならLPもと思うのは必然で、それで政治も動いている。しかし本来は出口戦略がない補助金は止めるべきで、燃料油を含めて再考が必要だ。
A 足元の物価高騰対策が急務とはいえ、ここ数年間の補助金は本当に必要だったか検証すべきだ。例えばLPガスの輸入実態は、米国・カナダ・豪州97%強、中東2%だが、補助金の算定ではCP(サウジアラムコの価格指標)100%、あるいはCP70%・MB(米国の価格指標)30%の計算式が用いられる。これを実態に合わせて見直せば現在より安価になるのではないか。
C 中東比率が2%だとは言っても、実際の契約量はもっと多く、トレーディングもしている。そうした細かい点を、元売り担当者が販売店により丁寧に説明し、誤解を解く必要があるね。
A クリアな説明があれば納得できる。しかしネット上では無責任な事業者が自社に都合の良いようにMBやCPの話を持ち出し、エビデンス自体が違うということがなかなか消費者に伝わらず、歯がゆい思いをしている。他方、補助金で燃料油の価格を下げ平時のように給油されると、ゆくゆくはLPガスの配送が滞る可能性さえある。エッセンシャルワーカーへの優先給油も検討してもらいたい。