【フォーカス】長期脱炭素電源で大間落札 想定外のレドックスフロー台頭

「もともと、Jパワー大間原発の救済を狙って創設されたと言っても過言ではない制度。その目的がようやく達成された」

5月13日に電力広域的運営推進機関が公表した、長期脱炭素電源オークションの3回目の約定結果について、電力業界関係者はこう受け止めを語る。同オークションでの新設原発の落札は中国電力島根3号に次ぐ2例目で、いよいよ運転開始へのカウントダウンが切られた。

運転開始へカウントダウンが始まった大間原発

今回の入札では、脱炭素電源として大間原発のほか「原子力の安全対策投資」「バイオマス専焼」「既設火力のアンモニア混焼への改修」「揚水の新設・リプレース」「蓄電池」に、初の「水素専焼」を加えた計426・1万kWが落札され、制度開始以来、初めて募集量(500万kW)を下回った。また、別枠のLNG専焼火力では計303・8万kWが落札した。

関係者を驚かせたのは、「リチウムイオン電池以外の蓄電池」として、70万kWものレドックスフロー電池が入ったことだ。すべからく外資系事業者によるもので、国内事業者よりも安い見積もりを取って応札した模様だが、果たして彼らに日本の電力安定供給に寄与しようという意思があるのか、疑問が残る。

その一方で、リチウムイオン電池と同じ枠で募集されたリプレース揚水36万kWが失注してしまった。慣性力を供出する揚水は、再エネ大量導入時代の系統安定化で蓄電池にはない役割を果たす。送配電関係者は「ただでさえ経済性が厳しい。これを機に廃止検討もあり得るのではないか」と不安の様相だ。

【論点】歴史的低金利下で決めた事業報酬率 金利変動への備えが必要

託送料金の事業報酬率〈下〉/村田千春(電力中央研究所常務理事)

送配電事業での投資計画の実現を求める中、現行の事業報酬率の決め方は適切だったのか。

第一規制期間の反省を踏まえ、見直しに向けた論点を提示する。

前回は託送料金の事業報酬率の資金創出・調達面の重要性を再確認し、適正な報酬率水準の設定が中長期的には一般送配電事業者の資金調達コスト、ひいては託送料金の低廉化に貢献し得ることを示した。今回は一送の投資実現を重視するレベニューキャップ制度の下で、報酬率に求められる要件を考察する。

図1  投資実施のための必要条件

投資実現求める規制下に 変動リスクへの目配り重要

レベニューキャップ制度の目的は、一送による必要な投資の確保とコスト効率化を両立させ、再生可能エネルギー主力電源化やレジリエンス強化などを図ることとされている。国は「一般送配電事業者による託送供給等に係る収入の見通しの適確な算定等に関する指針」(以下、指針)を定め、一送が拡充・保全等必要な投資を計画し、これを確実に実施するため事業計画の策定を求めている。一送はこの計画に基づき収入見通しを算定する。

投資の未実施があり、計画した投資量を実績が下回った場合、当該投資に係る費用の乖離額を翌期の収入上限より減額する(翌期調整)。さらに事業計画は、電力・ガス取引監視等委員会に設置されたワーキンググループなどで定期的に進捗状況が監視されている。このように投資実現を強く求める規制下においては、報酬率水準に対して、キャッシュフロー面でさらなる配慮が必要となる。

一般に企業が投資を実施する場合、投資に伴い将来発生するキャッシュフローの割引現在価値が投資額と同等か、上回ることが必要条件である。一送の投資から発生する将来のキャッシュフローは、当該資産から生じる事業報酬と減価償却費と考えると、割引前のキャッシュフローは資産ごとの耐用年数と報酬率によってあらかじめ決定されることが分かる。他方、割引率は投資時点に応じて変動し、5年ごとの事業計画策定時点では予見できないため、投資の必要条件が満たされるか否かは事前には判明しない(図1)。

このことから投資計画の実施を求める規制体系下では、報酬率の決定に当たり、規制期間における金利等の変動(特に上振れ)リスクに備えた設定が強く求められることが分かる。この配慮が不十分だと投資実現の条件が満たされず、制度として一貫性を欠くこととなりかねない。

現在の報酬率(1・5%)は2022年に算定され、他人資本報酬率の前提となる公社債利回り(10年物)には17~21年度の5年間平均値(0・10%)が採用された。周知の通り、22年度後半から公社債利回りは反転し、現在は2・3%台(10年物国債利回り、本稿執筆時点)に至っている(図2)。  

歴史的な低金利の時期に報酬率を設定し、第一規制期間が開始されて以降、マクロ経済環境の変化などにより金利が上昇を続けたことは、タイミングの悪さもあったと考えられる。しかし同時に5年に及ぶ長期の規制期間にわたり1・5%の報酬率水準で十分なのか、さらに慎重に検討すべきだったのではないか、との反省も残ると感じられる。

図2  国債(10年物)利回り推移
出所:財務省資料により筆者作成

現制度の本質に回帰 求められる要件再確認を

第二規制期間の報酬率設定に当たっては、この経験を踏まえ、一送の投資環境変化にも備えた報酬率水準の設定が必要になると考えている。

国際情勢の一層の緊迫化に伴うエネルギー・経済安全保障上の要請に加え、産業政策も背景としたデータセンターをはじめとする電力需要増見込みもあり、一送の投資の必要性はさらに高まっている。加えて先行きのインフレ懸念等を反映し、国債をはじめとする公社債利回りの変動に伴い、資金調達コストが高まるリスクも強まっている。

レベニューキャップの本質は、収入上限をあらかじめ設定し、その範囲内での効率的な事業運営を促す点にある。しかし、コスト削減が供給信頼度を損なうような投資不足を招くことを回避するため、事業計画と指針により投資実現を担保する制度としたと理解している。この制度体系の下、投資と安定供給を実現するために、報酬率に求められる要件を再認識した水準設定の必要性を改めて強調したい。

最後に事業報酬という表現について言及したい。この言葉には電力会社の「もうけ」を表すような語感が感じられるため、特に料金値上げ時に報酬率の水準を下げるべき、との批判を招くことがあった。報酬率は電力会社の資本コストであり、適正な水準を維持・継続することが事業の健全な発展に不可欠であることを記させていただく。

むらた・ちはる 1985年東京電力入社。企画部、電力契約部、営業部などを経て2013年同社執行役員。18年電力中央研究所へ入所。21年6月から現職。

【フォーラムアイ】森林クレジットで資源を活用する東海ガス 地産地消による地域循環モデルの構築へ

FE東海ガス

東海ガスは4月28日、静岡県藤枝市役所を訪問し、「瀬戸ノ谷森林保全プロジェクト」が森林クレジットとして認証されたことに伴うクレジット発行について北村正平市長に報告した。

森林クレジットはカーボンクレジットの一種。同プロジェクトは、藤枝市および静銀経営コンサルティングと協力し、中山間地域が約7割を占める市内の豊富な森林資源を活用して、J―クレジット制度の利用促進と森林資源の有効活用を図る「藤枝型森林カーボンクレジット」推進の一環として実施されたもので、同社初の森林クレジット活用例となる。今回認証されたのは、瀬戸ノ谷地区約200haにおける1002t分のCO2吸収量で、2023年4月1日から25年3月31日までの2年分が対象となる。

「藤枝型森林カーボンクレジット」の仕組み

東海ガスは同プロジェクトにより創出されたクレジットの一部を購入し、地域で生み出された価値を地域内で地産地消する地域循環モデルの構築に貢献していく考えだ。具体的には、この取り組みでオフセットされたガスを5%混合した「カーボン・オフセット都市ガス」を市庁舎に供給。ガス空調の燃料として使用する。このほか、認証対象の瀬戸ノ谷地区の瀬戸谷小・中学校、および同地区で運営する「びく石山静かな夜のキャンプ場」に、100%オフセットされたLPガスを供給する。

カーボン・オフセット都市ガスを空調に使用

環境価値向上と未来志向で 地域のCN推進を図る

同社は、藤枝型森林カーボンクレジットの活用を通じて、環境価値の向上だけでなく、森林が降水を貯留し、洪水緩和や水質浄化に寄与する水源涵養、生物多様性の維持、土砂災害の防止など、自然環境を未来へ引き継ぐことのさまざまな意義に共感している。山田潤一社長は「今後も藤枝市、地元事業者と連携を密に行い、地域におけるカーボンニュートラル(CN)を推進していく」と抱負を語った。

【フォーラムレポート】どうなる!? 六ヶ所再処理工場の竣工 計算狂う福井・青森の焦りと覚悟

今年度中の竣工を目指す六ヶ所再処理工場の審査が大詰めを迎えている。

審査の遅れが青森・福井の計算を狂わせる中で両県知事は……。

杉本達治前知事の〝セクハラ辞任〟からはや半年。1月に就任した福井県の石田嵩人知事は4月28日、経済産業省で赤沢亮正大臣と向き合った。緊張した面持ちで用意していた原稿を読み上げ、使用済み燃料対策や地域振興などを要望した。

石田氏はノンキャリアの外交官出身の36歳。1月の県知事選では、一部保守系が支援に回ったとはいえ、自民党の支持候補を被った。出馬表明するまでは国民民主党員だったといい、国政選挙や党一地方選への出馬を模索していた節もある。

「知事選で負けた後に国政選挙を狙っていたのでは。本人もまさか当選するとは思っていなかっただろう」(ベテラン県議)

たとえ勝利を想定していなかったとしても、いま彼が背負うのは4原発が所在する福井県の知事という重責だ。原子力政策上、最重要自治体の一つと言っていい。

ぎこちなさが残る福井県の石田知事

意志感じぬ石田新知事 乾式貯蔵の建設容認は

赤沢氏との面談後のぶら下がりでは、珍しい出来事があった。

県の担当者が記者団に対して、「知事が(面会を)振り返る時間がほしいと言うので5分ほどお待ちください」と告げると、石田氏は記者から見えない位置へ。県職員と想定問答を繰り返したのだろうか。直後の質疑では暗記した文章をそのまま話しているようで、その言葉から「意志」は感じられなかった。

「原子力のレクを受けても、理解こそするが、自分のものになっていない。まだアイドリング状態だ」「みんなで育てていくしかない」(県政関係者)

関西電力が福井県に立地する3原発の使用済み燃料プールの容量はひっ迫している。使用済み燃料が行き場を失えば、原発は運転を停止せざるを得ない。命運を握るのは青森県の六ヶ所再処理工場だ。福井県は長らく使用済み燃料の県外搬出を求めており、関電は28年度に同工場への搬出を開始する方針だ。では、もし竣工に遅れが生じたら、原発は運転停止に追い込まれてしまうのか。

回避策はある。敷地内の乾式貯蔵施設の建設だ。同施設の利点は多岐にわたる。「一義的には中間貯蔵より、使用済み燃料の安全な保管という観点で重要だ」(滝波宏文参議院議員)、「国が運転延長・新増設の方針を示す中で、国全体で使用済み燃料の保管容量を確保する必要がある。その上で大きな意義を持つ」(津島淳衆議院議員)

ただ、県は前知事時代から、建設の認否を判断するのは「日本原燃が原子力規制委員会に対して、再処理工場の設計・工事計画の説明を終了した時」としている。竣工でも、操業開始でもなく、「設計・工事計画の説明終了時」というタイミング設定からは、少しでも早く使用済み燃料の〝逃げ場〟を確保したい思いが透けて見える。「6月議会の前に説明が終わっていてほしい」(冒頭のベテラン県議)

原子力とは共存共栄 宮下知事の姿勢は一貫

一方、原子力政策に揺るぎない「意志」をもって対峙するのが、青森県の宮下宗一郎知事だ。ぎこちなさが残る石田氏とは異なり、いつも会見では余裕しゃくしゃく。記者からの質問もクールにかわす。

宮下氏が市長を務めていたむつ市には、東京電力ホールディングスと日本原子力発電が出資する中間貯蔵施設がある。2024年に操業を開始した。ところが、宮下氏は3月31日、同施設への新規搬入について、「26年度は容認しない」と表明したのだ。再処理工場の26年度中の竣工が「確実に遅れる」とした上で、「なし崩し的に燃料だけが搬入される環境をつくるわけにはいかない」との考えを示した。

今年度には柏崎刈羽原発5、6号機から約60tの使用済み燃料の輸送計画がある。来年度以降も宮下氏の拒否姿勢が続けば、88%という6号機の使用済み燃料プールの貯蔵率は上がり続け、さらなる号機間輸送などの対応を取らざるを得ない。27年度を予定する東海第二、敦賀両原発からの輸送にも黄信号が灯る。

「待った」をかける宮下氏の下で核燃料サイクルは回るのか。不安をよそに、関係者は「原子力との共存共栄が知事のスタンス」と口をそろえる。

「知事は原子力や核燃料サイクルの重要性、エネルギー安全保障上の意義を十分に認識している。今回の判断は審査の終わりが見えず、竣工が延期され続けていることに対する県民の不安や懸念を代弁したものだと受け止めている」(神田潤一衆議院議員)

使用済み燃料の保管で得られる核燃料税は、青森県やむつ市にとって貴重な財源だ。宮下氏がこの重みを理解していないはずがない。一方で、50年という保管期限が守られるのか、竣工の遅れで県内経済はどうなるのか─。県民の思いに向き合うのは知事としての責務だ。

宮下氏に近い若手県議は「原子力規制委員会に対して『そろそろいい加減にしろ』という意味合いもあったのではないか」と推し測る。「知事は常に今後何が起こるのか、相当先まで読んだ上で行動する。今回も早く前に進めてもらわないと、地元から反発が出てくるという意思表示だろう」

下北地域は核燃料サイクルの循環による関連施設の操業が経済を支える。むつ市には施設満杯の使用済み燃料が運び込まれ、六ヶ所村では再処理が行われ、大間町ではウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)を燃料に原発が稼働する。東通村でも原発が動き出す─。再処理工場の竣工は、下北地域が描くグランドデザインの結節点だ。

足踏み状態が続く現状に、原子力推進派からは「左翼団体のようにデモを起こせば、国からカネを引っ張れるんじゃないの」と冗談めいた声すら聞こえてくる。立地地域の思いを蔑ろにしてはならない。

【フォーカス】アライアンス相手選定の重大局面 東電会長に横尾敬介氏が就任

東京電力ホールディングスの次期会長に、産業革新投資機構の横尾敬介社長が内定した。6月に開かれる株主総会を経て就任する見込みだ。

退任する小林喜光会長は4月30日の記者会見で、「金融だけでなくエネルギー分野にも詳しく、大変さも理解されている。トップとして適任だ」とその手腕に太鼓判を押した上で、「アライアンス先を探すフェーズに入った中で、ちょうどいいタイミングなのかなというのが正直な思い。経済同友会で私が代表幹事、彼が専務理事という立場で、4年間にわたり2週間に一回の会見を共にこなしてきたコンビだ」とかつての盟友への信頼感をにじませた。

退任する東電HDの小林会長(中央)

当面の間、コンビを組むことになる小早川智明社長も「何度もお会いしているが、非常に信念の強い方だと感じている。中に入って実情や現場の難しさ、強みを理解していただいた上で、一緒に新しい東電の姿を作りたい」と期待感を寄せた。

金融業界を歩んできた横尾氏の登用は、アライアンス先を模索する東電再建計画の重大局面を象徴する人事だ。提携先は投資ファンドが有力視され、原発以外の「伸びしろ」がある分野を束ねる中間持株会社の設置が視野に入る。小売りや送配電分野では同業他社との協業も選択肢として浮上するが、年内は検討が続く見込みだ。

会長人事が一段落し、次なる関心は〝ポスト小早川〟に移りつつある。アライアンスを担当する酒井大輔副社長か、永澤昌副社長か、それともダークホースか─。その行方から目が離せない。

【フォーラムレポート】「サナエ独裁」が招く日本の石油危機騒動 節約必要なしで平時演出の落とし穴

ホルムズ海峡封鎖に伴う石油危機が続く中、高市首相は経済界などの声も聞かず平時の演出に躍起になっている。

「節約」の呼びかけが政権内でタブー視されていることで、かえって国民は政府の対応に不信感を募らせている。

高市早苗首相の発言は盛り過ぎている―。

イラン情勢の長期化は世界的な原油供給に深刻な影響を及ぼしており、専門家の中にはかつての中東戦争以上の石油危機になるとの見方も出ているほどだ。こうした情勢下でも原油の中東依存度が9割を超える日本政府に焦りの色は見えてこない。高市首相は5月11日の参院決算委員会で「原油も石油関連製品も日本全体として必要となる量は確保できている」と強調した。 だが石油・石化業界関係者は、高市首相の楽観論とは裏腹に一様に浮かない表情を浮かべる。

5月11日の参院決算委員会で答弁する高市首相 提供:時事フォト

ある元売り関係者は「政府がガソリン補助金を出し続けることで消費が促進され、結果として備蓄が枯渇する可能性がある。(中東以外の)代替調達でカバーできると言うが、原油の質にばらつきがあり中東のように縦横無尽に活用できる原油ではないこともある。そういう現実を飛び越えて供給は万全であるかのような印象を与えることには疑問を感じる」と話す。

その備蓄についても、公表されている量と実際に使える量には違いがあるという。「タンクの底部には水や沈殿物が溜まっていて、実質的に石油精製で使用可能な原油の量は、タンク容量全体の8~9割程度だろう」(元売り関係者)。経済産業省では、5月中旬現在で約208日分の備蓄があるとしているが、額面通り受け取れないのが実態というわけだ。


「目詰まり」の実情 需要側の認識と乖離

現場の最前線の感じ方は高市氏の認識とは異なり、焦燥感に駆られているとも受け取れる。 特にプラスチックや合成ゴム、塗料などの原料になるナフサの不足は目に見えて深刻化。カルビーは5月中旬、「ポテトチップス」などの主力製品の包装を白黒にすると発表した。カラー包装用塗料の原料不足に対応せざるを得なかったという。カルビー以外にも日清製粉ウェルナやカゴメもナフサ不足による対応を余儀なくされた。ほかにも特に医療分野で製品が不足し、万全な医療体制が組めなくなっている事態に陥っている。

ところが、高市氏は4月24日の衆院厚生労働委員会でナフサの供給問題に関し「調達のメドが立ちつつある」との認識を示した。実際の状況とはかなり異なる見解だ。この国会での発言に整合性を取りたかったのか、政府はカルビーに異例ともいえるヒアリングを実施した。ある政府関係者は「ヒアリングという名の圧力と言える。カルビーはかなり詰められたようだ。でもいくら政府が民間に圧をかけても、ないものはないのだから仕方ないだろう」と述懐する。

政府は、民間側が流通の過程で目詰まりを起こしているのが不足の原因と指摘する。大手化学メーカー関係者は「混乱状態で十分な供給がこの先も見通せない中で在庫を確保しよう、できるだけ使わないようにしようとするのは当然の商行為だ。それを目詰まりというのか」と、民間の対応を問題視する政府の姿勢に不信感を抱く。そうした現実を知ってか知らずか、高市氏は「まもなくそんなに心配していただかなくてもいい情報もお伝えできる」と楽観的な見解ばかりを披露している。

しかし報道各社の世論調査を見れば、国民は原油不足に不安を覚え「節約」や「省エネ」を啓発すべきだと要求している。

経団連や連合など有力団体も、同様のスタンスだ。要は、高市政権と需要側の認識に大きな乖離がみられるのだ。こうした状況が生じる理由を探ると、高市氏の政治姿勢に起因していることが分かる。

【フォーラムアイ】タツノが花王と連携 油汚染土壌の浄化技術を開発

【タツノ】

タツノは花王と連携し、サービスステーション跡地などの油汚染土壌を浄化する技術を開発した。

土壌汚染の解消により、土地流通と経済活性化を促すことで社会に貢献する考えだ。

ガソリン計量機で国内トップシェアを誇り、サービスステーション(SS)の設計・施工から保守・環境対策までを一貫して手掛けるタツノは、花王と連携し、油汚染土壌の洗浄技術「ソイルランドリー工法」を開発した。タツノが展開してきた土壌浄化サービスに花王の高度な界面制御技術を融合。従来の工法に比べ、低コスト・低CO2・短工期を実現する革新的な新技術だ。汚染などが原因で再開発が進まずに放置される土地「ブラウンフィールド」の増加が社会問題として懸念される中、迅速かつ簡便な土壌洗浄手法として、環境ソリューション領域に新たな選択肢をもたらした。

ソイルランドリー工法の工程


洗濯機で洗う原理を応用 低コストかつ低環境負荷

長年営業を続けてきたSSや油取扱施設では、地下タンクや配管からの微量な油漏れによる土壌・地下水汚染が懸念される。廃業や売却時に経営者が多額の浄化費用を負担せざるを得ない構造があり、土壌汚染対策は経営上の大きな課題となっている。

タツノは土壌分析施設「タツノラボ」を擁し、土壌の調査から分析、浄化対策までをワンストップで提供している。今回新たに開発した「ソイルランドリー工法」は、「ソイル(soil=土壌)」「ランドリー(laundry)=洗濯」という言葉を組み合わせ、衣類を洗濯機で洗う原理を応用している。

まず、汚染を含んだ土壌に水を張り、同社と花王が共同開発した特殊な洗浄剤を投入する。そして、重機で汚染土を攪拌しながら「洗う」。すると、洗剤に含まれる界面活性剤の働きにより、土の表面に付着していた油が引き剥がされ、水中に浮き上がる。浮き上がった上層の油を回収した後、水ですすぎを行う。このように、汚染していた土壌を清浄土化させ、使用した水は処理を行い再利用する仕組みだ。

土を入れ替える「土壌地入替方式(掘削除去)」や微生物の分解力を利用する「バイオレメディエーション(バイオ方式)」といった従来型と比較すると、ソイルランドリー工法には三つのメリットがある。

第一に、汚染土壌をトラックなどで場外に運搬したり、処分したりする費用が不要なため、低コストであること。

第二に、汚染土を運搬する車が不要なため、CO2排出量が少なく環境に優しいこと。

第三に、土質にもよるが、微生物による自然分解に数カ月を要するバイオ方式に対し、新工法は最短5日と極めて短工期である点だ。土壌条件や汚染状況などが適合すれば、1日目に準備、2、3日目に洗浄、4日目にすすぎ、5日目に油および洗浄水除去と土の戻し入れという明確なプロセスが確立できる。

重機で油汚染土壌を攪拌中

洗浄後、油の層、水、土壌に分離


地下水を含む砂地が適地 SSを負の遺産にしない

顧客へのアプローチを開始したところ、反応は上々だ。環境ソリューション部の木村武部長は「生物分解など目に見えないプロセスとは異なり、洗浄の過程と成果が視覚的に理解しやすい点が大きな強み」と手応えを語る。

販売ターゲットの一つは油槽所だ。製油所から油を一時的に貯蔵しタンクローリーや船舶に振り分ける中継拠点を狙う理由は、その立地にある。多くの油槽所は海沿いにあり、砂で浚渫された埋立地が多い。この、砂地で地下水を豊富に含むという土質こそ、ソイルランドリー工法が最も強みを発揮できる環境だ。「油槽所は人口減少や脱炭素化の流れにより、現在未使用の場所も少なくないため、需要は多いのではないか」と同部木村清史次長は期待を寄せる。

タツノは創業以来、SSの設計・施工事業を主軸とし、数多くの実績がある。計量機の製造・販売だけでなく、施設全体の環境保全対策まで幅広く手がけている同社にとって、SSを負の遺産にしないことは使命と言える。地方では特に、土壌汚染対策費用が土地価格を上回るケースが多く、今後の人口減少に伴いブラウンフィールドが増加する懸念がある。

木村氏は「汚染土壌の浄化・活用を通じて土地の流動化を促し、新たなビジネス創出などで経済を活性化させ、社会に貢献していきたい。一度ブラウンフィールド化すれば子孫の代まで負担がのしかかる。SSの経営者たちはタツノを長年支えてくれた大切な顧客であり、この画期的な新工法を活用して恩返しをしたい」と語る。

現在、ソイルランドリー工法に適する条件として土質や油種に制限があるが、今後はより広範な状況にも対応できるように、現在もタツノラボで研究開発が続いている。

脱炭素社会への移行が急務になる中、企業を選別・評価する基準はより環境価値へとシフトしている。今回の取り組みはこうした潮流を的確に捉えたものであり、今後の業界において新たなスタンダードになるだろう。

【フォーカス】不確実性増すエネ各社の業績 中東情勢の影響にバラツキ

大手エネルギー各社の2027年3月期の通期業績予想が出そろった。中東情勢の緊迫化による先行き不透明感から、電力4社が公表を見送ったほか、公表した各社間で、燃料価格や為替といった市況の前提条件にバラツキが出た。

早期の事態収束を予想するENEOSの宮田知秀社長(提供:朝日新聞社/時事通信フォト)

公表を見送ったのは、東北、東京、中部、沖縄の電力4社。事態が長期化するとの見通しの下、燃料価格や卸電力市場価格などの不確実性が高まり合理的な収支予想は困難との判断からだ。公表した他6社は、全社が減益を予想する。中でも関西電力は、前期比44・1%の大幅な経常減益を見込む。原油価格は1バレル80ドル、為替は1ドル160円と、前期よりも原油高、円安を想定し原子力の利用率低下を織り込んだためだ。

都市ガス大手3社は、東京が同10・7%、大阪が同7・1%、東邦が同34%と全社が減益を予想する。原油価格や為替水準の見通しは各社各様で、原油価格については、最も高い東邦が1バレル100ドル、最も低い大阪が65ドル。為替水準については、東京と大阪が155円、東邦ガスは160円を前提とする。LNG輸入の中東依存度は低く供給面での問題はないものの、長期契約の大宗を原油価格連動が占めるためコスト面での影響は免れない。各社とも、今後の収支への影響を慎重に見極める方針だ。


早期の収束見込む石油業界 予想外に厳しい予想も

中東情勢が収益にプラスの影響をもたらすことが見込まれる石油元売りはというと、ENEOSが同31・5%の増益を予想するのに対し、コスモが同22・9%の減益を見込む。原油生産は8月、原油調達は9月以降に正常化し、原油価格の下落でマイナスのタイムラグが生じるとの見通しからだ。

今期から国際会計基準に移行する出光興産も、前期との比較を公表していないものの、第2・四半期以降ホルムズ海峡が通航可能となり徐々に需給バランスが沈静化。中東の製油所などの設備が被害を受けていることで、年内は1バレル80ドルの水準を保つが、年明けには攻撃前の水準である65ドルまで下がり、逆に収益を押し下げることになると想定する。

資源開発では、JAPEXがイラクに権益を持つ「ガラフ油田」が同国政府の不可抗力宣言を受けて操業を停止し、再開の見込みが立たないことから大幅な減益を予想する。一方でINPEXは、原油価格と為替の前提条件の見直しを理由に、通期業績見通しを上方修正した。売り上げ、利益ともに幅のあるレンジ方式で開示するという、足元の不確実性を踏まえたものとなった。

今後、事態はどう動くのか。そしてその結果として市況がどう変化し、各社の経営にどのようなインパクトをもたらすのか。視界不明瞭のまま、予断を許さない状況が続く。

【コラム】「高レベル放射性廃棄物処分を考える~不安と疑問解消は努力以外に解なし」

飯倉 穣/エコノミスト

1、新規調査地点の登場

わが国で原子力発電が本格的に稼働して60年となる(原電東海発電所営業運転開始1966年7月25日)。当時は、「原子の灯」ともるという言葉があった。他方紙面は石炭再建に抜本策(朝日新聞同)と国内炭縮小政策に地域の苦渋が溢れていた。高レベル放射性廃棄物処分問題は、姿が見えなかった(62年検討開始)。それから半世紀を経て、原子力推進の人も反対の人もこの問題に本格的に対処する時期となった。現段階は、高レベル廃棄物ガラス固化・収納容器(キャニスター)・処分施設の技術的対応から、恒久的処分地の選定段階に至っている。処分に適切な立地を求める活動が継続している。

今般、東京都小笠原村渋谷正昭村長は、国申し入れの南鳥島「文献調査」で「国が実施するのであれば、その判断を受け入れる」と表明した(2026年4月13日記者会見)。北海道寿都町、同神恵内村、佐賀県玄海町に続いて東京都小笠原村が4番目の文献調査対象となった。南鳥島は、日本で唯一太平洋プレート上に位置する国土であり、安定した陸地のようである。

毎回新規候補が登場するたびに。交付金の使途、自治体の判断の在り方、地域住民の意向、選定プロセスの在り方、知事の対応、なぜ御地なのか等々、マスコミ・批判派の質問や意見が活発で、原子力政策に協力する当事者に多大な負担を強いているように見受ける。今後の調査展開は、予断を許さないが、地層処分の立地選定と事業遂行についてより合理的な対応はないであろうか。地層処分を考える。


2、地層処分の姿は明快

地層処分とは、原子力発電に伴い発生する高レベル放射性廃棄物を地下の安定した岩盤に閉じ込めることである。地下深くの岩盤が持っている「物質を閉じ込める性質」と「物質を隔離する性質」を利用し、放射性廃棄物の放射能が自然レベルに減衰するまで、人間の生活環境や地上の自然環境から隔離することを目的にしている。(NUMO定義を一部修正)

地層処分の対象は、高レベル放射性廃棄物(核分裂生成物:Cs/Sr/Tc、アクチニド核種:Am/Np、等々の放射性同位体)である。それをガラスと混合融合し、ガラス固化体として固化体容器(キャニスター)に充填する。その容器を、一時貯蔵施設に収納し、一定期間冷却を行う。50年程度冷却後、放射能のレベルと表面温度(当初200度以上)の低下を確認し、地下300m以下の岩盤にガラス固化体をオーバーパック(鉄製)に挿入し、その外側に緩衝材(ベントナイト)を置き、埋設する。

これにより地層処分が終了する。


3、何が心配か

(ガラスは水で溶けるか)

地層処分の留意点は、人工バリアの健全性と処分する地層(岩盤)の安定性といえる。人工バリアは、ステンレス製のキャニスタ(ガラス固化体を内包)、オーバーパック、緩衝材である。人工バリアの安全性は実証・実用化段階にある。関心は、人工バリアの経年劣化(千年経過後)による地下水との接触に伴う放射性物質の移動である。当方の古い知識では、ガラス固化体は、謂わば、厚いガラス灰皿である。それが水と接触したときどの程度溶け出すかという比喩が語られていた。素人感覚では、硬いガラスが溶け出すのかという疑問が浮かんだ。それは埋設環境(地温等)に依存するという。科学の世界は厳密に環境と時間が醸しだす溶解度を検証する。そして溶けた場合、地下水の移動スピードが大事になる。岩盤により異なるが、年数mmか数cm程度とわずかの移動という地点もある。


(地盤は安定的か)

地盤の安定性は、放射能が自然レベルに至る間の断層活動や火山活動の可能性、地震の影響(地下なので影響は少ないが)が話題となる。当方の見方では、火山活動の有無が重要である。日本の国土を見れば、火山が見られず、温泉(地温勾配由来は除く)もない地域がある。可能であれば日本全国の適性地域の調査を幅広く行うことが理想的である。そしてどの地域もこの調査に協力することが大事である。この意味で今回新たな調査地となった南鳥島の地点は興味深い。


(処分後の管理は必要か)

それでも地下でなく地上での管理が話題となる。地上の人工的な構造物で長期に存続しているものにピラミッドや日本の古墳がある。これらの構造物には盗掘があった。この経験から処分物に何かしら人為的介入の恐れを指摘できる。高レベル廃棄物が悪用されないことは大切である。故に地層処分は人為的行為をかなり遮断可能ということで推奨できる。それでも埋設地域の監視を求めたい考えも存する。謂わば墓場の管理である。ただ1万年以上監視できる体制が可能なのか疑問もある。そのような政府・制度は過去に存在しなかった。宗教組織も長期に存続しているものもあるが、万年はない。

【ビジネスリーダー】洋上風力を国産化へ 浮遊軸型で低コスト化を実現

長壁一寿/アルバトロス・テクノロジー取締役COO

コスト競争力に優位性を持つ独自技術の浮遊軸型洋上風力。

風力業界のゲームチェンジャーとしての期待がかかる。

おさかべ・かずとし 川崎汽船に入社後、IR、新規事業開発などに従事。その後A.T.カーニーにて新規事業計画立案などを支援。2023年にアルバトロス・テクノロジーに参画、取締役に就任。コーポレート関連業務全般を担当。IEビジネススクールMBA。

 国産新型風車で変革を起こせるか―。スタートアップ企業「アルバトロス・テクノロジー」は、欧州や中国勢が世界市場を席巻する従来の水平軸型風車ではなく、垂直軸型の浮体式洋上風力開発に勝負をかける。同社の長壁一寿COO(最高執行責任者)は、「水平軸型の半分くらいのコストを目指し、主力電源の切り札として国の期待に応えたい」と意気込む。

当初は無償で参加 理念に共感し入社を決断

長壁氏は、川崎汽船に入社後、外資系コンサルを経て2022年からプロボノとして同社に参加。創業者の秋元博路氏の理念や独自で開発する浮遊軸型の可能性に魅力を感じ、23年に入社を決断した。COOの立場ながら、研究開発以外の全ての仕事を手掛けている。

秋元氏は、東京大学で船舶工学の博士号を取得し、11年の東日本大震災で、再生可能エネルギーを国産化することの必要性を痛感。そこで当時海外で注目され始めた洋上風車に目を付けた。自身の船舶工学の知見を取り入れれば、急峻な地形の日本の海でも価値を出せると感じ、大阪大学などで教員として研究や教育に従事しつつ、独自の浮遊軸型風力発電の事業化に取り組んだ。10年間諦めずに一人で開発を続け、22年、ベンチャーキャピタルから1億円の出資を受け、本格的に始動した。

浮体式洋上風車は今後導入の拡大が見込まれるが、同社の浮遊軸型風車は低コスト化を追求し、さらに部品の海外依存をほぼなくし、国内でバリューチェーンが完結することを目指している。

再エネ分野を先導する太陽光発電では、パネルの製造のほとんどを中国に依存しており、供給リスクを抱え、国富も流出している。長壁氏は日本の風力発電が太陽光発電と同じ轍を踏むことを危惧する一方、「日本の洋上風力の発電ポテンシャルは全電力需要の2倍ある。技術さえあればエネルギーは理論上自給自足できる」と浮遊軸型の可能性を説明する。

浮遊軸型の強みの一つが船舶工学を生かした重心の低いデザインだ。重量のある発電機とその周辺機器を海上15m程度の低い位置に配置することで、低重心化を実現。浮体を小さくでき全体も軽量化される。

部品を国内調達しやすい設計でもある。風車を構成するアームやブレードの断面が同一であるため、パスタマシンの要領で自動成形し、長さの分割を柔軟に行える。部品を短く軽く製造でき、保管や輸送コストを低く抑えられる。ブレード主要部品の原材料となる炭素繊維は、日本企業が世界の市場でシェアが高く、国内の経済波及効果も期待できる。また、大型の発電機を1台置くのではなく、自動車モーターの知見を生かしてモジュール化し、国内サプライチェーンを構築する。長壁氏は、「国内での部品の調達率100%を目指し、資金を国内還流させる」と青写真を描く。

重心が低いことは保守面でも有利に働く。保守作業を揺れの小さい低所で行えることは、作業効率を上げ、保守コストの低減につながる。水平軸型のライフタイムコストの4割弱を占める保守費用の課題を解消できる。

施工は大型のクレーン船などを使わずに済む。ブレードを閉じた状態で陸上で組み、横置きのまま海面に降ろし、船で安全な海域まで引っ張る。海水を注入して立ち上げ、設置場所まで曳航。作業員がブレードの開閉などを行い完了となる。

4・2億円の資金調達 社会実装に向けて着々

浮遊軸型の技術の注目度の高さは資金獲得面からもうかがえる。23年にはJパワー、東京電力ホールディングス、中部電力、川崎汽船と共同研究契約を締結した。後に住友重機械工業も合流。さらに同年、日本政策投資銀行などから4億2000万円の資金を獲得した。今後は小型機から中型機と検証を進め、30年頃の実用化を目指す。

また、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が24~25年度に行った浮体式洋上風力の次世代技術の開発プロジェクトにも採択された。先の共同研究各社とともに1000~3000kWの実証機の設計に取り組んでいる。29年頃には海上での実験を見据える。

ただ、社会実装までの過程には材料やコスト、人材などあらゆるボトルネックが存在する。長壁氏は、「洋上風力発電事業の政府の公募は同時期に複数プロジェクトを採択するため、風車設備や施工での調達タイミングが重なる。それを避けるためにバリューチェーンをずらすことで、既存技術と同時期に設置数を増やせる」という。

海に囲まれた日本には風という資源が豊富にある。その潜在能力を最大限に引き出せる可能性を浮遊軸型は秘めている。

【多事総論】ホルムズショック受け石炭火力活用か、分散型追求か

話題:イラン有事踏まえたエネ政策

ホルムズショックで石炭火力にスポットが当たり、政府は期間限定で稼働抑制を見送る。

他方、今こそ分散型の確立が急務との声も。今後のエネ政策への二つの提言を紹介する。

〈危機下に「帰ってきた石炭」 長期でカーボンマイナス目指せ〉

視点A:奈須野太/元内閣府・経済産業省局長

石炭は、安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源だ。2024年の電源構成に占める石炭火力の割合は28・6%と、天然ガス(31・8%)に次ぐ。可採埋蔵量は百年を優に超え、地域的な偏在もない。

しかし、石炭火力はCO2の排出量が多い難点がある。高効率な設備でも、1kW時当たりで天然ガス火力(約0・42㎏)の2倍近くある。気候変動対策だけを考えれば、真っ先に廃止すべきとなる。特にパリ協定締結後は、1・5℃の努力目標を達成するためとして、石炭火力は常にやり玉に挙げられ、欧州と途上国の激しい対立の争点となってきた。

一方、中東危機によりホルムズ海峡が事実上封鎖され、原油価格が大幅に上昇している。わが国は原油の9割、LNGの1割を中東からの輸入に依存する。LNGは原油に比べて調達先の多様化が進んでいるものの、価格は原油価格にひも付いているため、原油価格が上昇すれば遅れて上昇する関係にある。

このような情勢変化を受け、わが国では石炭の役割が見直されている。例えば、容量市場において、設計効率42%未満の非効率な石炭火力の稼働率を50%以下に抑制する措置を、今年度は適用しないこととしている。

かくして石炭火力の再稼働が進むと、CO2排出量が増加してしまう。しかし、筆者も担当した経済産業省のグリーンイノベーション基金事業では、石炭とアンモニアを混焼させることで低炭素化し、最終的には石炭を使わないアンモニア専焼で脱炭素化する、わが国独自の技術の開発と実証が進められている。これを一段と加速すべきである。

欧州でも、日本に先んじて石炭の利用を前提とした施策が講じられている。例えば英独では、発電所の排出ガスからCO2を分離し、除去する設備の用地確保などの準備を済ませること(CCSレディ)を設置、運転の要件とする措置が導入されている。アンモニア専焼化しない石炭火力や水素専焼化しない天然ガス火力について、わが国にも参考になる。

もちろん、排出ガスからCO2を除去することで、発電のコストアップは避けられない。回収後のCO2の利用先や貯留地をどう確保するかも問題になる。

だが、原子力や再生可能エネルギーだけで需要を賄うことは現実的でない。中東もたとえ停戦が実現しても中長期的には混乱が避けられない。イデオロギーにとらわれず、さまざまな有望技術を見つけ育て、見極めていくことが自律性と柔軟性を確保し、国益に叶うのだ。

地球を浄化するイノベーション 気候変動対策の切り札に?

石炭火力は、大気中からのCO2の直接回収(DAC)設備としても役立つ可能性がある。これは筆者独自の仮説である。

DACとは、大気中からCO2を直接的に除去する、巨大な空気清浄機である。筆者も担当した内閣府のムーンショット型制度で研究開発に取り組んでおり、大阪・関西万博「RITE未来の森」で実証機を展示した。

その原理の一つは、アミン化合物を含む溶液や固体に大気を通していったんCO2を吸収させた上で、これを加熱して脱離させるもので、加熱過程で熱源を必要とする。

このため、自前の発電設備を持たないスタンドアローンのDAC設備だと、加熱に電気代がかさんでしまう。除去クレジット収入だけで採算を取るのは困難である。

しかし、火力発電所の電力と余剰熱源を有効活用してCO2を回収し、かつ発電所からの排気を大気からの吸気よりも極低濃度(400ppm未満)に浄化できれば、DACとしてカーボンマイナスの役割も期待できる。発電とCO2回収の「一石二鳥」だ。

火力発電所にDACレベルの高性能な分離回収設備を備えれば、将来のエネルギー政策のみならず、気候変動対策にも柔軟性が確保されるだろう。特に石炭は価格が安定していることから、DACのエネルギー源として有利と考えられる。

これまで石炭火力は地球を汚すものとして忌み嫌われてきたが、わが国発のイノベーションによって、世界の気候変動対策の切り札に変わるかも知れない。

なすの・ふとし  1990年通商産業省入省。原子力損害賠償支援機構執行役員、経済産業省環境政策課長、産業技術環境局長、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統括官、知的財産戦略推進事務局長等を経て2025年退官。

【LPガス大変革時代に挑む】経済性にとらわれず 長期的な視点に立って 安定供給基盤を築く

佐藤利宣 社長/アストモスエネルギー

さとう・としのぶ 1991年三菱商事入社。三菱商事石油原料部長、海外石油部長、三菱商事エネルギー副社長などを経て25年4月にアストモスエネルギー副社長。26年1月から現職。

世界各地のサプライヤーと強固な関係を持つアストモス。

設立20年の節目を迎えた同社の佐藤社長に話を聞いた。

 ―設立20年目を迎えた節目の今年、社長に就任しました。

佐藤 三菱商事時代、石油部門の経歴が長く、ほぼ全ての石油製品に関わりました。ただ、LPガスだけは未経験でしたので、アストモスでLPガスに関わることは何かの縁を感じます。

―どのような点がアストモスの強みだと考えていますか。

社長 世界各地のサプライヤーとの強固な関係を構築している点と、保有している26隻の外航船を使った調達能力です。これによる安定供給が、従来からの強みだと考えています。これは上流を手掛ける元売り企業としての特徴ですが、近年では下流部門にも注力しています。グループである小売りの会社「アストモスリテイリング」はその一つですが、こうした上流から下流までの垂直統合型のバリューチェーンを保持しているのが、強みだと考えています。輸入元売りという枠にとらわれないLPガスの一貫総合企業と言えると思います。

こうした強みを生かして、地域の特約店や販売店の方々とも一丸となり最終顧客である消費者向けに満足度の高いサービスを提供したいと考えています。

戦争危機で中東代替 地政学リスクに対応

―中東情勢による影響をどのように受け止めていますか。

佐藤 ここ10年近くにわたってLPガス調達の中東依存度を下げてきました。現在、日本全体で中東産のLPガスが占める割合は4%ほどで、多くがアメリカから、それ以外に豪州やカナダから調達しています。その観点から「LPガスの供給や価格はあまり変わらない」といった印象を持つ人は多いかもしれません。ですが、LPガスも石油連動商品であることは間違いなく、50ドルだったWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)が100ドルになれば、当然それに類する値動きが生まれます。

インドや中国などの消費大国が中東代替のLPガスを求めて、北米に向かい始めており、3月中旬時点では、アメリカに引き合いが殺到しています。これが最終的にどういった形で日本への輸入価格に影響するのか。少なくとも紛争前の価格帯が続いていくことは考えにくい。

―アメリカ調達のリスクは。

社長 トランプ政権の相互関税政策に見られるように政治的リスクには注意する必要があります。不確実性が高まる時代において、経済性の観点にだけ捉われることなく、あらゆる地政学リスクも含めて対応する必要があります。よって、紛争解決後も中東からの調達をゼロにすることは今のところ考えていません。バランス感を持って、長期的な視点に立った安定供給の基盤を構築したいと考えています。

多くの船団を使って安定供給を果たす

日本のエネルギー守る あるべき姿を率先垂範

―三菱商事時代で印象深かった仕事は何ですか。

社長 辛い思い出が多いです(笑)。印象に残っているのは東日本大震災での対応です。今回の中東戦争と重なることがあり、エネルギーチェーンが分断されました。当時、重油販売を担当していて「工場が止まってしまう。燃料の重油を手配してくれ」といった声に答えるべく奔走しました。また、三菱商事は福島県の小名浜に石油基地を構えており、原発による避難命令が出される中、緊急車両向けの出荷のために最後まで職員達が残って対応してくれたことを今でも思い出します。

エネルギーの仕事は、平時では電気やガスを使えることが当たり前で、めったに感謝されることはありません。有事の時ほど、エネルギーの重要性やエネルギー企業としての真価が問われます。その意味で東日本大震災とは異なりますが、今回の中東紛争はホルムズ海峡の事実上の閉鎖という過去にない危機的な状況です。日本のエネルギーを守る、国民生活を守る。これまでもそうして行動してきましたし、今後もそういう姿勢で取り組みたいと考えています。それがエネルギーパーソンとしての誇りであり信念であります。

―液化石油ガス法の対応は。

社長 消費者の方々から、料金体系の不透明性や過剰な営業に対する指摘については理解しています。当社も自らリテール事業を手掛けており無関係ではありません。法令順守、コンプライアンスの徹底は企業活動の大前提で、自らが率先垂範してあるべき姿を業界に浸透させたいと考えています。

アストモスエネルギー

三菱商事LPガス部門、出光ガスアンドライフ、三菱液化瓦斯が統合して2006年に発足した。社名の由来は「明日を灯す」。リテール事業も手掛け、昨今はカーボンオフセットLPガスの販売に注力する。

【山本裕三 自民党 衆議院議員】浜岡原発の地元に誠実な対応を

やまもと・ゆうぞう 1982年静岡県掛川市生まれ。立教大学経済学部卒業後、リクルートHRM(現リクルート)に入社。2013年掛川市議会議員に初当選。以後、3期連続当選し、歴代最年少で議長を務めた。今年2月の衆議院議員総選挙で初当選(静岡3区)。

掛川市議を経て浜岡原発が立地する静岡3区から国政に転じた。

ビジネスと地方議会で鍛えた実務能力を武器に地域と国の課題に挑む。

静岡県掛川市の酒屋の三男として生まれた。祖父は市議・県議を務めたが、政治的な挫折を経験し酒屋に身を転じた。父親が政治好きで、家ではテレビニュースを見ながら、二人の政治談議に花が咲いていた。そんな環境で育った山本少年は、中学生の頃には政治家を志す。父も「いいぞ、がんばれ」とおだてたが、内向的な性格で、生徒会長を務めるようなリーダー気質ではなかった。中学1年から高校2年までバスケ部に所属したが、高2で陸上部に転籍。高3では200mで県大会決勝に出場するなど運動神経は良かった。

大学時代には、バイトで稼いだお金で海外を回った。記憶に深く刻まれているのは、19歳で行った米ロサンゼルスでの出来事だ。滞在中に9・11同時多発テロが発生し、安宿のテレビで世界貿易ビルに航空機が激突する中継映像を見た。近くにいたアメリカ人がパニック状態に陥り、「次はロサンゼルスが狙われる。逃げろ!」と騒ぎ出した。「この瞬間を境にアメリカの空気は報復の戦争モードへと一変した。平穏な日常は一瞬で壊されてしまう。平和のもろさを痛感した」。この経験から、政治家としての目標の一つは「世界平和」だ。

サンフランシスコでは教会の隣のホスピスに迷い込んだことがあった。教会の人から「ここにいるのはお金がなくて病院に行けず、死を待っている人だ」と教えてもらった。末期がんのような重篤な病ではなく、治療さえ受けられれば簡単に治る患者もいた。「社会保障制度が充実した日本がどれほど幸せな国か」。医療や福祉が守られる豊かな国力の維持が、もう一つの目標になった。

掛川西中学校の先輩で、現在は国民民主党で幹事長を務める榛葉賀津也氏の下でインターンも経験した。事務所が細長い、建て替え前の議員会館を懐かしむ。卒業後は政治の世界に飛び込もうと考えたが、父から「社会を見てこい。人に頭を下げ、懐に飛び込む営業を経験しろ」と諭された。リクルートHRM(現リクルート)に入社し、アポなしで1軒ずつ回るどぶ板営業をこなした。浅草の商店街担当の同期と違い、オフィスビルで受付すら通れない日々だったが、コミュニケーション能力と「折れない心」を身に着けた。

退職後、1年間の英国留学から帰国すると父が急逝した。掛川へと戻り、兄が引き継いだ家業を手伝いながら、市議選への挑戦を決めた。飛び込み営業の精神で、自作のリーフレットを片手に戸別訪問と辻立ちを繰り返し、2013年に初当選した。3期目には史上最年少で議長となり、24年に自民党静岡3区の支部長に就任。同年10月の衆議院選挙こそ惨敗したが、今年2月の同選挙で初当選を果たした。

母の記憶に刻まれた原子力の夢 茶畑の記憶が支える農政への思い

静岡3区には浜岡原子力発電所が立地する。母は同原発で働いた経験があり、各界の要人が集まった竣工式を覚えていた。「あの頃、原子力は日本の夢だった」

基準地震動の策定を巡る不適切事案については、中部電力に対して第三者委員会の下での原因究明と再発防止策の徹底が大前提だとした上で、「地元住民の『がっかりした思い』と『再稼働への期待』の両面に誠実に向き合ってほしい」と語る。

エネルギー政策では、第7次エネルギー基本計画で示された電源構成の40年目標実現に全力を注ぐべきだと訴える。「強い経済をつくるためにも、エネルギー自給率を高めることが急務だ。次世代革新炉、洋上風力、ペロブスカイト太陽電池、バイオ燃料、地熱、水素などは開発段階にとどめるのではなく、期限を切って量産化・社会実装を実現しなければならない」

特別な思いを寄せるのが農業政策だ。「農業は単なる商売ではなく、国の礎。日本の美しい風景は、農業を営む人々がいるから維持され、地域が形成されている。農業の衰退は国土の崩壊に直結する」。目をつむり、ふるさとの茶畑を思い浮かべながら熱弁する。農業従事者の減少を克服すべく、国として応援したいと意気込む。

政治判断の基本に置くのは、二宮尊徳の「報徳思想」だ。特に「経済なき道徳はたわ言であり、道徳なき経済は犯罪である」という言葉を大切にしている。「豊かな経済の裏付けがあってこそ、医療、福祉、教育が成り立つ。そのためには、中小企業や地域経済が元気にならないといけない。やっぱり、根は酒屋の息子だ」

座右の銘は「得意淡然、失意泰然」。調子が良い時は決しておごらず、苦しい時には落ち込まず、常に淡々と前を向く─。当選後はあまり行けずにいるが、1人カラオケがリフレッシュだ。〝酒屋の三男坊〟が抱いた志は、国政という舞台で新たな一歩を踏み出した。

【原子力の世紀】ウクライナとの関係悪化が原因 ロシア核戦力の危うい現実

晴山 望/国際政治ジャーナリスト

高い軍事力を誇ったソ連の流れをくむロシアがミサイル開発に苦戦中だ。

クリミア半島の併合などでウクライナ企業との協力が途絶えたことが影響している。

核軍縮条約なき世界 

海上自衛隊の護衛艦「かが」や「いずも」に近く搭載が予定されているステルス戦闘機「F35B」は、短い滑走路でも離陸できる垂直発着(VTOL)機だ。後部エンジンを垂直に伸ばしながら下げ浮力を得る。その姿は、トンボが尾を垂らし産卵する姿に似る。

意外だが、その最新鋭機にソ連の技術が使われている。2002年2月、筆者がワシントン郊外のロッキード・マーチン社を取材した際、担当者から聞いた。「なぜ、ソ連製を?」と聞くと、ソ連はVTOLを開発したものの、予算不足で計画が打ち切られた。「その特許を買い取った。ソ連の技術は無骨だが、丈夫で長持ちなのが取りえなのだ」と説明した。

米軍が2023年に実施したICBM打ち上げ実験
出所:米国防総省


5回連続で実験失敗 もはや張り子の虎か

そのソ連の伝統を引くロシアがいま、次世代の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発に手間取っている。冷戦中、米国が「サターン(SS18)」と呼んだICBMの後継で、「サルマト」と名付けられている。

22年の初実験は成功したが、以後、少なくとも5回連続して実験に失敗した。「サターン」の退役時期が迫る中、ロシアは見切り発車することを決め、昨年11月、26年の実戦配備を宣言した。

サルマトは3段式で、地上サイロに配備する。射程は史上最高の1万8000㎞もあり、米国を攻撃する際、通常の北極経由ではなく、南極を経由して南側から攻撃できる。米国のミサイル防衛(MD)システムは、北極方面から飛来する攻撃に備える。裏をかき、南から攻撃すれば、MD網突破はたやすいとロシアは読む。

だが開発は難航続きだ。中でも24年9月の打ち上げ実験では、発射直後にミサイルがサイロ内で爆発した。サイロは破壊されて直径60mに達する巨大なクレーターが生じ、使えなくなった。打ち上げ場所を変更し、25年11月に6度目の実験を試みたが、またも失敗に終わる。打ち上げ直後にバランスを崩し、発射から約10秒後に空中爆発した。

実験失敗の原因は、エンジン不調にある。10~16発もの核弾頭を搭載する世界でも屈指の巨大ICBM。「サターン」と同様、エンジンには推進力に勝る液体エンジンを使う。エンジンの設計、開発、製造は、ソ連時代からウクライナ企業が手がけてきた。ソ連崩壊後も関係は続いたが、14年3月のロシアによるクリミア半島併合が転機となり、協力関係は断たれた。

ロシアの潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)には、液体燃料を使うものもある。ロシア政府は、SLBM「シネバ」のエンジン開発を担当するマキエフ・ロケット設計局を選び、サルマト用の液体エンジン開発を委ねた。だが、サイロ配備型の巨大ICBMと、潜水艦に納めるためコンパクトに設計されたSLBMは別物だった。サルマトの全長は35・3mだが、SLBM「シネバ」は全長14・8mに過ぎない。重量もサルマトが208t、シネバは40・3tと雲泥の差だ。必要な推進力には大きな違いがある。

ウクライナとの関係途絶の影響はサルマトだけにとどまらなかった。主力ICBMの「サターン」の信頼性も揺らぎ始めた。

ロシアと米国は、配備済みのミサイルであっても、年1度の発射実験を重ねることで、ミサイルが設計通りに飛ぶかどうかをチェックし、その信頼性を保ってきた。だが、14年以後、ウクライナ企業によるメンテナンス作業も止まった。後任はロシア企業だが、老朽化が進むSS18の取り扱いは細心の注意が必要になる。万が一、実験に失敗すれば信頼性は大いに揺らぐ。それだけは避けたい。

ロシアは発射実験の見送りを決めた。「サターン」の最後の実験は、クリミア併合の1年前の13年。つまり、もう12年もこのミサイルは飛んでいない。「途中で墜落する」との指摘や「起爆のタイミングがずれ、想定通りの威力が出ない可能性がある」などの見方がある。サルマトと同様、配備中のICBM「サターン」も、もはや「張り子の虎」なのかもしれない。

【業界スクランブル/需要家】環境教育は若者の意識を変えたか

業界スクランブル/需要家】

環境教育が学校教育の一部に位置付けられて20年以上が経ち、その成果は数字に見える形で表れつつある。

内閣府が昨年実施した「環境教育に関する世論調査」の結果によれば、資源循環や生物多様性、気候変動問題、自然エネルギーの活用といった項目に関してこれまで環境教育・学習を経験したことがあるという割合は20代や30代で特に高く、環境配慮行動を実践する理由として「幼少期からの生活習慣や価値観であるから」や「学校で環境に関する教育を受けたから」を挙げる割合も若い人ほど高い。環境教育により環境配慮を基本的な規範の一つに置く世代が増えているのだろう。

一方で、若年層の環境意識や気候変動対策への実施率は他の世代よりも低いという状況は変わっていないことに対して課題を感じている政策担当者も少なくない。単に教育を受けさせるだけではなく、地域や社会とのつながりや子育てなどを通じて環境問題への関心や意識を醸成する機会や、自身の学びを次の世代へ伝えていく経験をいかに創出するかを考える時期に差し掛かっているのかもしれない。

環境教育の中でもエネルギーに関する教育はCN宣言を行う自治体が増えるにつれて需要が高まっているが、適切な教材やノウハウ、授業時間を十分に確保できないことなど導入にはハードルが多い。

生活と密接に関わっているものの意識しづらいエネルギーについてどのように興味を持って、正しく理解してもらうのか。気候変動を取り巻く複雑な意思決定が求められる、未来の消費者世代に対してエネルギー事業者が果たすべき役割はこれまで以上に大きくなりそうだ。(K)