今年度中の竣工を目指す六ヶ所再処理工場の審査が大詰めを迎えている。
審査の遅れが青森・福井の計算を狂わせる中で両県知事は……。
杉本達治前知事の〝セクハラ辞任〟からはや半年。1月に就任した福井県の石田嵩人知事は4月28日、経済産業省で赤沢亮正大臣と向き合った。緊張した面持ちで用意していた原稿を読み上げ、使用済み燃料対策や地域振興などを要望した。
石田氏はノンキャリアの外交官出身の36歳。1月の県知事選では、一部保守系が支援に回ったとはいえ、自民党の支持候補を被った。出馬表明するまでは国民民主党員だったといい、国政選挙や党一地方選への出馬を模索していた節もある。
「知事選で負けた後に国政選挙を狙っていたのでは。本人もまさか当選するとは思っていなかっただろう」(ベテラン県議)
たとえ勝利を想定していなかったとしても、いま彼が背負うのは4原発が所在する福井県の知事という重責だ。原子力政策上、最重要自治体の一つと言っていい。
ぎこちなさが残る福井県の石田知事
意志感じぬ石田新知事 乾式貯蔵の建設容認は
赤沢氏との面談後のぶら下がりでは、珍しい出来事があった。
県の担当者が記者団に対して、「知事が(面会を)振り返る時間がほしいと言うので5分ほどお待ちください」と告げると、石田氏は記者から見えない位置へ。県職員と想定問答を繰り返したのだろうか。直後の質疑では暗記した文章をそのまま話しているようで、その言葉から「意志」は感じられなかった。
「原子力のレクを受けても、理解こそするが、自分のものになっていない。まだアイドリング状態だ」「みんなで育てていくしかない」(県政関係者)
関西電力が福井県に立地する3原発の使用済み燃料プールの容量はひっ迫している。使用済み燃料が行き場を失えば、原発は運転を停止せざるを得ない。命運を握るのは青森県の六ヶ所再処理工場だ。福井県は長らく使用済み燃料の県外搬出を求めており、関電は28年度に同工場への搬出を開始する方針だ。では、もし竣工に遅れが生じたら、原発は運転停止に追い込まれてしまうのか。
回避策はある。敷地内の乾式貯蔵施設の建設だ。同施設の利点は多岐にわたる。「一義的には中間貯蔵より、使用済み燃料の安全な保管という観点で重要だ」(滝波宏文参議院議員)、「国が運転延長・新増設の方針を示す中で、国全体で使用済み燃料の保管容量を確保する必要がある。その上で大きな意義を持つ」(津島淳衆議院議員)
ただ、県は前知事時代から、建設の認否を判断するのは「日本原燃が原子力規制委員会に対して、再処理工場の設計・工事計画の説明を終了した時」としている。竣工でも、操業開始でもなく、「設計・工事計画の説明終了時」というタイミング設定からは、少しでも早く使用済み燃料の〝逃げ場〟を確保したい思いが透けて見える。「6月議会の前に説明が終わっていてほしい」(冒頭のベテラン県議)
原子力とは共存共栄 宮下知事の姿勢は一貫
一方、原子力政策に揺るぎない「意志」をもって対峙するのが、青森県の宮下宗一郎知事だ。ぎこちなさが残る石田氏とは異なり、いつも会見では余裕しゃくしゃく。記者からの質問もクールにかわす。
宮下氏が市長を務めていたむつ市には、東京電力ホールディングスと日本原子力発電が出資する中間貯蔵施設がある。2024年に操業を開始した。ところが、宮下氏は3月31日、同施設への新規搬入について、「26年度は容認しない」と表明したのだ。再処理工場の26年度中の竣工が「確実に遅れる」とした上で、「なし崩し的に燃料だけが搬入される環境をつくるわけにはいかない」との考えを示した。
今年度には柏崎刈羽原発5、6号機から約60tの使用済み燃料の輸送計画がある。来年度以降も宮下氏の拒否姿勢が続けば、88%という6号機の使用済み燃料プールの貯蔵率は上がり続け、さらなる号機間輸送などの対応を取らざるを得ない。27年度を予定する東海第二、敦賀両原発からの輸送にも黄信号が灯る。
「待った」をかける宮下氏の下で核燃料サイクルは回るのか。不安をよそに、関係者は「原子力との共存共栄が知事のスタンス」と口をそろえる。
「知事は原子力や核燃料サイクルの重要性、エネルギー安全保障上の意義を十分に認識している。今回の判断は審査の終わりが見えず、竣工が延期され続けていることに対する県民の不安や懸念を代弁したものだと受け止めている」(神田潤一衆議院議員)
使用済み燃料の保管で得られる核燃料税は、青森県やむつ市にとって貴重な財源だ。宮下氏がこの重みを理解していないはずがない。一方で、50年という保管期限が守られるのか、竣工の遅れで県内経済はどうなるのか─。県民の思いに向き合うのは知事としての責務だ。
宮下氏に近い若手県議は「原子力規制委員会に対して『そろそろいい加減にしろ』という意味合いもあったのではないか」と推し測る。「知事は常に今後何が起こるのか、相当先まで読んだ上で行動する。今回も早く前に進めてもらわないと、地元から反発が出てくるという意思表示だろう」
下北地域は核燃料サイクルの循環による関連施設の操業が経済を支える。むつ市には施設満杯の使用済み燃料が運び込まれ、六ヶ所村では再処理が行われ、大間町ではウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)を燃料に原発が稼働する。東通村でも原発が動き出す─。再処理工場の竣工は、下北地域が描くグランドデザインの結節点だ。
足踏み状態が続く現状に、原子力推進派からは「左翼団体のようにデモを起こせば、国からカネを引っ張れるんじゃないの」と冗談めいた声すら聞こえてくる。立地地域の思いを蔑ろにしてはならない。