【巻頭インタビュー】石原宏高/環境相
イラン有事で足元は脱炭素に逆行する策が取られる中、気候変動対策の機運をどう高めるのか。
また再エネ規制強化やパネルリサイクルなど注目政策の方向性について、石原環境相に聞いた。

―イラン戦争を受け、エネルギー資源の供給確保・価格高騰が世界的な課題です。
石原 政府としては、燃料油や石油製品について日本全体で必要量は確保できていると認識しており、代替調達も進めています。さらに、原油価格の高騰を踏まえた緊急的な激変緩和措置を講じたところです。
他方、非効率石炭火力の稼働抑制措置を1年間実施しないことについては、短期的にはやむを得ないと思っています。地球温暖化対策計画の進捗に影響するかもしれませんが、長期的に2050年ネットゼロを目指す姿勢は変わりません。
CO2削減が着実に進展 24年度は10億t切る
―昨年末に終了した燃料油補助金が復活し、もはや短期対策とは言えない状況かと思います。
石原 4月14日に公表した24年度のわが国の温室効果ガス排出量を見ると、23年度比1・9%減。当時、燃料油以外に電気・ガスへの補助も一時行っていたのに、13年度以降の最低値となり、初めて10億tを切りました。背景には製造業の生産量減少もありますが、再生可能エネルギーや省エネの着実な進展が数字に表れています。政府としては過度な消費抑制を呼び掛けるより、経済を悪化させないことが重要と考えます。
―イラン戦争前からグリーンシフトの難しさが露呈し、50年までの1・5℃目標達成は不可能と指摘する声が増えています。
石原 そうした状況は認識していますが、引き続き気候変動問題は人類共通の重要な課題です。わが国としては昨年2月に1・5℃目標と整合的で野心的なNDC(国が決定する貢献)を提出し、政府一丸となり脱炭素と経済成長、エネルギー安定供給の同時実現を目指すGXを推進しています。また、イラン有事は脱炭素にとって苦しい局面であると同時に、再エネや蓄電池、EVなどがもっと普及していれば影響を軽減できたという見方もあります。
そうした中、日本政府としてはASEAN諸国と共同で、脱炭素と経済成長の同時実現に向けたレポートを作成する予定です。足元では米国がパリ協定から脱退し、先進国と途上国の利害対立が続いていますが、多くの国から信頼を得ている日本の立場を生かし、橋渡し役を務めていきます。
―今年度からGX―ETS(排出量取引)が本格始動するなど、ネットゼロに向けて国民負担が増していくことへの理解をどう求めていきますか。
石原 それは難しい問題ですね。ただ、気候変動に伴う災害の拡大を食い止めるために、ある程度のコスト負担は必要になるという考え方はできます。また、EUはCBAM(炭素国境調整措置)を今年1月から本格実施し、英国も導入予定で、他にも自国版CBAMを検討中の国があります。日本企業の競争力を損なわないために、これらと平仄を合わせる意味でもETSは必要な政策です。
パネル再資源化法案を決定 規制強化は着々と実施
―4月3日、紆余曲折を経て、太陽光パネルのリサイクル推進法案を閣議決定しました。
石原 昨年3月の中央環境審議会の意見具申では、全てのパネルのリサイクルを義務付け、製造業者や輸入業者にその費用負担を求めるものでしたが、処理体制やコスト負担の公平性の面で課題がありました。今回の案では実効的な制度とすべく、大量廃棄する太陽光発電事業者に対して、国が求める判断基準に基づくリサイクルの実施に向けた取り組みを義務付けます。社会全体でリサイクル費用の抑制を図りつつ、処理体制を構築し、実態を踏まえながら段階的な規制強化を検討していきます。
民間でも前向きな動きがあり、九州電力や北海道電力、AGCなどはパネルのリサイクルに本腰を入れています。また、リサイクルをしなければ国内でアルミなどの資源調達に支障をきたすとの危機感を持つ経営者もいます。
―再エネ関連では昨年末、規制強化に向けた対策パッケージが示されました。
石原 再エネ導入に当たっては地域との共生や環境への配慮が大前提です。環境省としては、まず環境影響評価法に基づく環境アセスメントの対象見直しなどに向け1月に検討会を立ち上げ、今国会中に方向性を取りまとめる予定ですし、種の保存法に関しては今夏めどで取りまとめを行う方針です。動向が注目された北海道の釧路湿原については、国立公園の区域拡張に向けて関係者との調整を進め、今年度中の実現を目指しています。
また、3月には環境配慮契約法の基本方針を変更し、国などの再エネ電気調達において、地域と共生が図れない発電施設からの調達を避ける旨を織り込みました。私個人としても需要側や金融機関に対して同様の配慮を呼び掛けているところです。
―目標選定数に達した脱炭素先行地域の今後の方向性は?
石原 2月までに102提案を選定しました。24年度末までに実施された事業で、約7・58万kWの新規再エネが導入され、民生部門の電力由来のCO2排出量が約37・5万t削減されるなど、定量的な成果が出始めています。一方、住民との合意形成や専門人材の不足といった課題に直面している地域があることも事実です。提案いただいたさまざまな取り組みを実現していくため、引き続き丁寧な伴走支援を行っていきます。そして今後は先行地域の成果を整理・分析し、全国展開していくことが重要となります。






















