【特集2まとめ】家庭用市場の商機拡大 機器拡販と新サービスの最前線

電力の小売り全面自由化から10年近くの月日が経った。


この間、都市ガスも自由化され、電力やガスを販売する総合エネルギー企業を標榜するプレーヤーも登場した。


家庭用エネルギーの商機拡大を目指し、既存のサービスを進化させたり、再エネ、蓄電池、家庭用デマンドレスポンスなど、新しい発想で商材の拡販に乗り出す動きも活発化している。


事業者の独自戦略はどこまで浸透しているのか 

家庭用のエネルギー事情を追う。

【アウトライン】小売り全面自由化10年目に迎えた新サービス創成期

【インタビュー】東京都が蓄電池補助政策でDR実証に注力

【レポート】東急パワーサプライが蓄電池「1000台無償」で社会実装

【レポート】エネゲートが再エネ余剰活用でEV向け割安料金

【ディスカッション】エネルギー史に刻むハイブリッド給湯の潜在力を探る

【レポート】エネ事業者の営業最前線 サイサン

【レポート】エネ事業者の営業最前線 静岡ガス

【トピックス】岩谷産業がクラファン活用でカセットガス商材の市場開拓

【トピックス】パーパスが節水・省エネ志向対応の給湯器を拡販中

【特集2家庭用エネルギー】東京都が蓄電池補助政策でDR実証に注力

東京都が家庭用蓄電池を使ったDR実証を展開中だ。一般消費者の参加率向上と事業者の登録増加に注力する。

インタビュー/上原 麻衣子(東京都環境局気候変動対策部地域エネルギー課長)

―東京都では家庭用蓄電池購入に対し、1kW時当たり12万円の補助、DRに参加する場合は10万円の補助が加算されます。


上原 東京都は「ゼロエミッション東京」において、2050年CO2実質ゼロ、30年カーボンハーフの実現に向け、家庭部門での再生可能エネルギー導入を推進しています。住宅用太陽光の導入促進策によって電気を「つくる」ことをサポートすると同時に、変動する電源を利用する上で、系統の安定化、調整力の確保を同時に進める必要があります。そこで、蓄電池やエネファーム、エコキュートといった分散型エネルギーリソースの普及とDR(デマンドレスポンス)促進で「ためる」「使う」対策を後押しして、両輪で取り組んでいます。
 DR事業では、登録アグリゲーター(AG)を募り、システム構築などをサポートしています。実証では、都登録AGの公表を行い、蓄電池などの分散型エネルギーリソースを導入した一般消費者と連携してDR実証を進めて、アグリゲーションビジネスの実装を促進しています。DR実証実施後には都登録AGが一般消費者にアンケートを実施するほか、電力データ、稼働状況データ、アンケート結果の分析などを行い、報告してもらいます。

低い一般家庭の参加率 遠隔制御に不安感じる人も

―DR実証事業を進める上での課題はありますか。


上原 一般消費者にDRという言葉も内容もまだ浸透していません。認知度向上と理解促進が必要です。蓄電池を新規導入した世帯のうち、DRへの参加はわずか15%程度。遠隔制御に不安を感じる方もいるようです。一般消費者に対し、DRに参加することで「太陽光の電気を無駄なく利用できる」「電気代の節約になる」といったメリットを簡潔にアピールできたらと考えています。


―今後の展望についてお聞かせください。


上原 将来的に、低圧部門の分散型エネルギーリソースを束ねて調整することが社会的に当たり前となる姿を目指し、一般消費者のDR参加拡大を図っていくと同時に、都登録AGに参加する事業者を増やすことを通じて市場形成を促します。来年度は需給調整市場で低圧リソースの導入が開始となるなど、蓄電池やDRを巡る事業環境は1~2年で大きく変化することが考えられます。その変化に対応しながら、継続的に普及を後押ししていきたいです。

うえはら・まいこ 2002年3月上智大学法学部卒、同年入庁。広報担当課長、率先行動担当課長を経て25年から現職。

【特集2家庭用エネルギー】パーパスが節水・省エネ志向対応の給湯器を拡販中

パーパスが少湯量でも一定の温度が保てる給湯器を拡販中だ。同社独自の機能も充実しており、好調な売れ行きを見せている。

省エネ・節水志向を背景に、節水シャワーヘッドや節水カランなどの需要が高まっている。そうした中、パーパスは少ない湯量でも安定した出湯温度をキープできるガス給湯器の製造販売に注力している。


最新の「GX—HFLシリーズ」はエコジョーズのブランド「Flashシリーズ」のフルモデルチェンジ版。最小給湯能力0.3号、かつ毎分1.5ℓの最低作動流量は業界最小クラスだ。

省エネ・節水に貢献する最新製品GX-HFLシリーズ


一般的にガス給湯器は湯量が少ないと安全機能が作動して火が消えたり、他栓との同時使用で出湯温度が急激に変化する。しかし、GX—HFLシリーズではそのような温度変化が起こらない同社独自の給湯技術を採用。カランやシャワーヘッドなどの節水機能を十分に引き出し、少量のお湯でも安定した温度で快適に使うことができる。


また、出湯温度の調整が不安定になる夏場の高い水温でも、快適な温度のままお湯を使える点が画期的だ。

塩害対応の塗装を標準仕様化 狭小住宅向けのスリム化も実現

外装には耐重塩害試験基準をクリアした塗装を標準で施工。平面以外にも下塗りと上塗りが施され、沿岸地域に設置した場合にもさびが発生しにくい。膜厚も40μm以上と、一般的なものと比べて3倍厚く、傷が付きにくい仕様だ。また、狭小住宅など、限られたスペースに設置可能な同製品のスリムタイプは、従来製品から高さを14㎝短くし、重量もマイナス7kgのダウンサイジングを実現した。


さらに、従来製品同様、同社独自機能「カンタンヘルスチェック」により入浴の際に体脂肪率や消費カロリーが確認でき、健康面にも配慮した設計だ。


営業企画部の鈴木孝之統括部長は「エンドユーザーが興味を持っているのは、給湯器にどのような機能が付いているかだ」と語る。同製品と美容面に特化したシャワーヘッドなどとのセット販売も行っており、売れ行きは好調だ。


パーパスは、従来の給湯器の概念を飛び越えた付加価値のある商品開発を今後も進めていく構えだ。

【特集2家庭用エネルギー】エネ事業者の営業最前線 サイサン

エネルギー事業者が扱う商材は機器やサービスなど多岐にわたる。各社が顧客ニーズを汲み取った営業戦略を展開する。

全社コンテストでスキル向上 テレビCMを活用し営業推進

毎年新たな仲間をガスワングループに迎えながら全国37都道府県で展開し、総合エネルギー企業として成長拡大を続けるサイサン。家庭用LPガス事業は、同社が最も注力している領域だ。


事業拡大を支えているのは「人」。「人材育成にはかなり力を入れている。特に実践型のコンテストはスキルアップに直結している」と語るのは、LPガス直売部部長の服部秀司専務だ。


同社では年間を通じ、多くのコンテストが行われている。全社員がエントリーし、地方予選から勝ち上がるシステムだ。ガス機器をお客さまに提案するトークコンテストでは「30代の夫婦、子ども1人、共働き」などの条件が与えられ、参加者はそれに沿った提案内容を準備する。

その他、ガスの配管やコールセンターの電話応対のコンテストなども開催している。「はじめましてガスワンです」コンテストは入居開始時のガス開栓業務を想定し、丁寧で分かりやすい説明と確実な作業を競う。サイサンとのファーストコンタクトになるこの場面で、新たなお客さまに安心感・信頼感を与えられるかがポイントとなる。これまで何度も審査員長を務めてきた服部専務は「特に新入社員は、コンテストに参加することで『次回は自分が地区の代表になりたい』と考えるようになり、仕事に対するモチベーションを高める場になっている」と話す。

笑顔で臨むコンテスト

3商材のセット契約促進 9カ国に上る海外展開

営業現場では、生活インフラのクロスセル戦略を推進する。女優の泉ピン子さんを起用したテレビCMでは、エネワンでんきの「エ」、ガスワンの「ガ」、宅配水サービス・ウォーターワンの「ウォ」の頭文字を取った「エガウォ」を前面に打ち出し、電気、ガス、宅配水の3商材セット契約の促進を狙う。


持ち前の進取の精神で取り組んできた海外展開はすでに9カ国に上る。「世界を見渡せば、LPガス事業の未来は明るく輝いている」(服部専務)。業界のフロントランナーとして歩んできた同社の動きに、業界内外から熱い視線が注がれている。

【特集2家庭用エネルギー】エネゲートが再エネ余剰活用でEV向け割安料金

エネゲートが太陽光の余剰電力でEV充電を行う実証を行った。余剰発生時間の充電料金を割り引くことで、大きな成果を上げている。

関西電力グループのエネゲートはこのほど、太陽光の発電量が需要を上回った際に発生する余剰電力をEV充電に活用する実証を行った。期間は昨年10月11日~11月3日の土・日・祝日の全10日間。同社が運営するEV充電用認証・課金システム「エコQ電」に対応する約3000台の急速充電器を対象に、全国10エリアで実施した。


最大の特徴は、余剰電力が発生する時間帯にEV充電するようにユーザーを促す料金の仕組みにある。実証に参加するには、まずエコQ電アプリに登録。すると、休前日(金曜)の午後3時に、充電割引率がスマートフォンに通知される。割引率は、天気予報や電力各社が発表する「でんき予報」などを参考にエリアごとに設定され、各日午前8時~午後4時の時間帯に20~50%の割引が適用される。

エコQ電対応の急速充電器


実証を行ったところ、前年(24年)との比較で充電実績に変化があった。終日の充電回数は前年比で52%増加。割引時間帯では62%増となった。一方、充電電力量は終日で68%増、割引時間帯では84%増に伸びた。また、実証期間中に全エリアで割引のあった日の充電回数は、割引のなかった日に比べて95%増を記録。割引の有無が大きく影響していることが証明された。実際の充電金額にも効果が見られた。割引が適用された約2500件の全国平均は483円で、そのうち約1700件(69%)が500円以下の金額に収まった。

また、充電単価を見ると、約1400件(57%)のユーザーが1kW時当たり40円以下で充電を行っていた。貝原一弘理事によると、「30分の急速充電を行うと、概ね千数百円かかる。また、家庭の料金単価と比較すると、充電単価は同程度、もしくは下回る水準で充電できたことになる」という。EVユーザーにとっては、充電料金の負担軽減につながった。

一日当たりの充電電力量

地域特性を踏まえて予測 風力と原子力の稼働を考慮

同社は、昨年のゴールデンウィーク期間中に同様の実証を実施しており、今回が2回目となる。そのため、前回の結果から、地域特性を踏まえて余剰電力の予測を行った。例えば、天気予報から北海道・東北では「余剰が出ない」と予測した日に、余剰電力が発生した。その要因を探ったところ、同エリアでは風力発電の比率が高く、風力も余剰電力発生の有無に影響するとの仮説が立てられた。


原子力発電所の稼働状況にも左右される。原子力が稼働中の場合、ベース電力が確保できるために、余剰電力が発生しやすい。反対に、定期点検で稼働が停止すると、供給力が少なくなり、余剰電力が発生しにくくなる。そこで、前回、今回ともに全国の原子力の再稼働、定期点検のタイミングを確認し、予測精度の向上を図ってきた。


こうした全国規模での実証はこれまで例がないそうだ。実証で得られたデータからは、地域ごとの傾向なども詳細に分かる。そのため、国内外の自動車業界や新電力などから、各種データやエコQ電による決済システムに対する問い合わせが相次いだ。同社では、こうした企業へのデータ提供やシステムの貸与を行っており、「実証における割引額は当社が負担することとしていたが、結果的に今期は黒字になる見込みだ」(貝原理事)という。


今後、課題となるのがEVへの余剰電力の利用率をさらに上げていくことだ。今回の実証において、全エリアで割引を行った11月2日、太陽光出力制御量が276万kWだったのに対し、午前8時~午後4時の充電電力は約8000kW時にとどまった。また、約60万人とされているEV・PHVのユーザーに対して、今回の実証期間中に充電を行ったEVユーザーは約3800人。参加率はまだ低い状況だ。

60万のポテンシャル活用へ 余剰電力の吸収率に期待

だが、「60万」のポテンシャルは大きい。貝原理事は「参加率を上げていくことで、相当量の余剰電力を吸収できる」と期待を込める。実証後、充電を行ったユーザーへのアンケートでも、99%が「今後もキャンペーンがあれば参加したい」と回答。継続を望む声や「エコQ電対応の充電器を増やしてほしい」といった要望が寄せられた。


「現時点でやめてしまうのではなく、ユーザーに取り組みを広く周知し、参加率が増えるタイミングまで事業を継続していきたい」。貝原理事はこう意気込む。EV黎明期から充電ビジネスを担ってきた同社の今後の動きが注目される。

実証について説明する貝原理事 

インフォメーション

グリッド

経営課題をAIで解決する勉強会を実施

AIシステムベンダーのグリッドは2025年12月4日、メディア関係者向けOR(オペレーションズ・リサーチ)勉強会を開催した。ORとは意思決定、業務管理、コスト管理など企業が直面する課題解決を図る、AIや数理的手法などの総称。元日本OR学会副会長の出馬弘昭氏は「海外エネルギー競争最適化」と題し、海外のエネルギー大手事業者とテック大手企業の事例などを紹介した。資本計画やPPA計画の最適化といった経営意思決定から蓄電池のリアルタイム劣化診断や再エネ投入量の最大化といった個別の業務まで、多様な事業フェーズにおけるORソリューションの活用について語った。

アメリカ穀物バイオプロダクツ協会

バイオエタノールカンファレンスを東京で開催

アメリカ穀物バイオプロダクツ協会は12月3日、「2025年米国バイオエタノール低炭素化カンファレンス」を都内で開催した。イリノイ大学シカゴ校のシュテフェン・ミューラー博士が「トウモロコシ原料エタノールおよびEthanol to Jet(EtJ)経路における排出削減効果と持続可能性に関する考察」をテーマに、トウモロコシ由来のエタノールのライフサイクル分析と温室効果ガス削減の効果について説明した。このほか、米国のトウモロコシ生産者やエタノール生産者が登壇し、炭素強度の削減推進などをテーマに講演した。参加者からの活発な質疑がなされ、盛況のうちに閉会した。

日本熱供給事業協会

横浜市庁舎のエネルギーシステム見学会を開催

日本熱供給事業協会は11月13日、マスコミ向けに横浜市庁舎で運用するエネルギーシステムの施設見学会を実施した。東京都市サービス(TTS)が庁舎などに熱供給しているほか、横浜市自らが固体酸化物型燃料電池などの設備を導入・運用して庁舎内のエネルギーを賄っている。庁舎は全面的に改築された2020年に、現在のエネルギーシステムに更新された。TTSは熱供給用にガスエンジンやターボ冷凍機、蓄熱槽などの運用に加え、下水再生水を熱源とする未利用エネルギーの活用にも取り組んでいる。主要なプラントは浸水対策を考慮して地上4階に設置している。

アストモスエネルギー

販売店定例会でLPガスの防災力を訴求

LPガス元売り大手のアストモスエネルギーは11月26日、販売店会「全国アストモス会」の定例会を都内で開催した。「レジリエント強化に向けたLPガスの可能性」をテーマに、加藤孝明東京大学生産技術研究所教授が基調講演を行ったほか、関電工が「非常用発電機をベースとしたグリッド電源の確立」と題し、LPガスの有用性について講演した。

愛知時計電機

LPガス用警報器「AGシリーズ」を発売

愛知時計電機は12月8日、LPガス用警報器「AGシリーズ」を発売した。同シリーズは、ブザー式、音声式、単体型、連動型などを組み合わせた4種類をラインアップ。設備環境に応じて選択できる。また、他社も含めほぼ全てのLPガス警報器の取り付け金具に対応する。AGシリーズの発売に伴い、従来の「APHシリーズ」は在庫限りで販売終了となる。

関西電力ほか

再エネ事業で東京メトロに環境価値を提供

関西電力、ビーエイブル、那須建設の3社は12月11日、バイオマス・フューエルが設立した佐野バイオマス発電に出資し発電事業に参画すると発表した。佐野バイオマス発電は栃木県佐野市に出力7100kWの発電所を建設、東京メトロとバーチャルPPAを締結し再生可能エネルギー由来の環境価値を提供する。発電所は2028年9月に運開する予定だ。

【特集2】系統用と再エネ併設型で経験を蓄積 28年度の産業用事業参入を目指す

【サーラエナジー】

サーラエナジーは2025年10月20日、「サーラ東三河太陽光併設蓄電所」(愛知県豊橋市)の開所式を行った。電力系統との接続による蓄電に加え、既存建物の屋根上に設置した太陽光発電(約736kW)で発電した電気も蓄電する。リチウムイオン電池の容量は7520kW時で、出力は1999kW。一般家庭約600世帯分を賄える。また、この5日前には、浜松市内に系統用の「サーラ浜松蓄電所」も開所した。

東三河太陽光併設蓄電所の開所式


蓄電所の検討を開始したのは21年。先代社長からの意向を受けて始まった。その後、補助金を活用しながら、建設を進めてきた。


系統用、併設型ともにこれから本格稼働を控える同社だが、最終的に目指すのは、産業用蓄電池への参入だ。電力事業推進部の瀧本修部長は「今後、産業用を手掛ける際に、系統用と再エネ併設型で培った経験やノウハウが大きな強みになる」と話す。産業用参入の有望なタイミングとして、28年度に予定されている化石燃料賦課金の導入を挙げる。「税金を払うのではなく、自社でエネルギーを電池に貯めて、無駄なく使いたいと考える事業者さんは少なくないはずだ」(瀧本部長)という。

日本初のモデルに挑戦 電力市場取引のみを活用

サーラ東三河太陽光併設蓄電所が注目を集めている大きな理由は、FITやFIPの認定を受けず、市場取引のみで収益化を図るという点だ。同蓄電所は、19年に運開した東三河バイオマス発電所の敷地内にあり、同発電所がすでにFITを活用している。そのため、二重に認定を受けられないということから、電力3市場(卸電力・需給調整・容量)での取引を通じて収益を獲得する日本初のビジネスモデルとして取り組むことになった。

豊橋市にある太陽光パネルと蓄電施設


同社は、電力事業を中⾧期の成⾧分野と位置付け、再生可能エネルギーの導入を促進する蓄電池の普及・拡大が必要不可欠だと考えている。今回の蓄電所の稼働開始により、電力事業の成長を加速させる基盤が整った。今後は、自社の再エネ電源の開発や蓄電所の運用にとどまらず、地域に根を張るグループ各社との連携を通じて、顧客のニーズが高まる蓄電池の設置や蓄電所の建設を推進していく。

23年に開始したサーラグループの中期経営計画は25年に最終年を迎えた。3年間累計150億円を計画していた成長投資については、蓄電所など新分野への投資を中心に順調に進捗し、今後の展開が期待される。


瀧本部長は「今後、蓄電事業に注力するにあたり、顧客の伴走者となり、蓄電事業を通じてお客さまのお困りごとを一緒に解決する姿勢を示していきたい」と意気込みを語った。

【特集2】電圧の均等化技術で特許を取得 充放電時の性能を最大限に発揮

【NExT-e Solutions】

安定供給に資する大容量蓄電池を展開するNExT-e Solutions。
創業時から築いた技術が、系統用蓄電池の“電力会社品質”を実現した。

日本の電気事業には、安定供給や安全性において世界的にも厳しい基準が設けられ、高い水準が求められる。そうした中、エネルギー会社をはじめ、建設会社や商社といった国内大手のプロジェクトに次々と採用されているのが、NExT-e Solutionsの蓄電システムだ。

大規模な蓄電システムは、複数の蓄電池を直列接続して構成されるが、新品であっても個々の蓄電池には容量と残量にばらつきがある。そのため、充電時には放熱による均等化が図られて電力ロスが発生。一方、放電時には電力を使い切れず、電池性能を最大限に発揮できない状況があった。この課題を克服したのが、同社が特許を取得した「アクティブバランス」技術だ。同技術は、セル・電力パック間での電力移動によって、セルとモジュール両方の電圧を均等にする。これにより、無駄なく充放電できるようになり、従来の10倍以上の電流での動作が可能になった。蓄電池の長寿命化にもつながっている。

大手電力が認めた制御技術 中古電池でシステム構築

同社の設立は2008年。井上真壮社長は「設立当初から大容量蓄電池にはシステム制御が必要と考え、バッテリーマネジメントシステム(BMS)の開発に力を入れてきた」と振り返る。その後、東京電力パワーグリッド(PG)から技術面での評価を得てタッグを組み、18年ごろからエネルギー向け蓄電システムの共同開発をスタート。19年の資本業務提携締結を経て、23年には系統連系プロジェクトを実現した。同社が蓄電システムを構築する一方、東電PGの子会社である東京電設サービスが運用・安全管理やメンテナンスを担い、“電力会社品質”を担保している。

「システム制御にこだわった」と話す井上社長

将来、電気自動車の蓄電池のリユースが進むと同時に、系統用蓄電池を長期に稼働していく中、電池交換によって新品と中古の蓄電池が混在した運用が想定される。この点において、共同開発の開始当初、新品以上に容量などのばらつきがある中古電池を使用して制御技術を構築したことも大きな強みだ。「これからの資源問題を見据え、リユース電池のさらなる活用につながる開発を進めていきたい」と、井上社長は今後の抱負を語った。

【特集2】エンジニアリングの知見が強み EPCを軸に五つの部署で対応

【テス・エンジニアリング】

テス・エンジニアリングの蓄電システム関連事業が、同社の主力事業へと成長している。2025年9月末時点の受注残高に占める割合は85・4%。そのほとんどが、大型蓄電システムのEPC(設計、調達、建設)だ。同年11月現在、系統用蓄電所、太陽光発電所の併設型、工場・事業所向け蓄電池を合わせて、受注金額は約400億円を超える。


蓄電池事業は、五つの部署が担う。営業本部は顧客から高圧・特高の系統用蓄電所のEPCを受託し、系統接続の取りまとめから設備工事まで一貫して対応する。また、過去に太陽光発電所を納入した既存顧客を中心にFITからFIPへの転換と蓄電池併設も提案している。


一方、国内事業本部は、「開発型EPC」を展開する部隊。系統用蓄電池の系統接続や用地開発、EPCなどに主体的に関与し、開発に関する一連のソリューションを提供する。また、自社で所有する太陽光発電のFIP転と蓄電池併設も手掛ける。

蓄電池を併設した自社グループの太陽光発電所


営業本部と国内事業本部の案件を形にするのが設計と工事を担当するエンジニアリング本部だ。同社では蓄電池EPCの設計積算を集中的に対応する蓄電池チームを設置。品質の確保はもちろん、蓄電池購買力の強化や仕様標準化による効率化などを通じ、コストダウンにも取り組む。


運開後の案件を引き継ぎ、蓄電ビジネスを成り立たせるのが電力需給本部の役目。アグリゲーターとして、需給調整市場をはじめ、容量市場や卸電力市場において電力取引・販売を行い、収益性の確保を図る。


さらに、運開後の体制も万全だ。CS本部がメンテナンスなどのアフターフォローを担当。日々の稼働状況を確認しながら、安定した運用をサポートする。

事業予見性の低さに課題 各市場の変更点を常に把握

顧客向けの案件に加え、自社サイトの開発も進行中だ。その第一号案件として、鹿児島県内4カ所で、連結子会社の太陽光発電所のFIP転と蓄電池の設置工事を行った。こうした幅広い提案や開発ができるのは、主力とするエンジニアリングやメンテナンス事業で築いた経験と知見があるからだ。


電力小売り事業におけるノウハウも、各電力市場で取引する際の強みとなっている。だが、電力市場の活用は今後の課題でもある。「各市場の制度設計は変化にさらされており、事業の予見性が低い状況にある。変更点を常に把握しておくことが欠かせない」。国内事業本部本部長 (兼) 電力需給本部本部長の井元良平氏はこう話す。その対策の一つとして、業界全体で課題を出し合うなどの動きが出ているという。


こうした課題を抱えつつも、同社の引き合い案件は、系統用蓄電所で累積380件、太陽光発電所のFIP転と蓄電池併設で累積210件に上る。これらの実現に向け、今後も蓄電池事業の拡大を図っていく方針だ。

【特集2】自社ブランドの大型システムを販売 他社と共同で系統連系蓄電所を展開

【伊藤忠商事】

さまざまな企業が参入する蓄電池業界において、伊藤忠商事のビジネススタイルは異彩を放つ。「商社っぽくない動き方」「珍しいタイプのプレイヤー」。業界関係者はこう評す。


特徴の一つが、メーカーとしてのポジションによる事業展開だ。中国の電気自動車(EV)大手BYD、蓄電池ベンチャーのパワーエックス(岡山県玉野市)と提携し、OEMで自社ブランドの蓄電システム「Bluestorage(ブルーストレージ)」を販売している。工場などに設置する産業用をはじめ、系統用蓄電池や太陽光発電サイトなどに併設する蓄電池をラインアップした。


次世代エネルギービジネス部電池ビジネス課の道野僚太シニアマネージャーは、「一番の強みは、導入しやすい価格設定に加えて、安定した蓄電ビジネス環境を提供できる点にある」と説明する。製造にあたっては、自社工場を持たない「ファブレス型」を採用。日本市場に適した基本設計の下、中国で製造することでコストを抑える。その一方で、システムを導入した後は、同社が監視・制御といったエネルギーマネジメント、メーカー同様のレベルでの保証や保守・メンテナンスまで全面的にサポートする。ブルーストレージ採用の蓄電所は2025年9月現在、全国7カ所で稼働中のほか、14カ所で建設中、100カ所で検討が進んでいる。

第1号案件の蓄電所(兵庫県豊岡市)

協業でプロジェクトに参入 網羅的な事業経験を生かす

もう一つの特徴として、他社との協業が挙げられる。その関わり方は、実にバラエティに富んでいる。系統連系プロジェクトを例に挙げると、カネカグループと手掛けた兵庫県内の蓄電所では、EVで使ったリユース蓄電池で構成するシステムを納入し、周辺の太陽光発電を使ったPPA事業やマイクログリッドを実施。西日本鉄道(福岡市)の蓄電所に蓄電システムのリース提供で関わる一方、東急不動産グループと運用する蓄電所では、蓄電池の調整力を各電力市場での最適運用と収益化に活用するアグリゲーターとして参画する。パートナー企業の意向やプロジェクトの特徴を踏まえ、多様な役割を果たしてきた。


こうした動きの背景には、同社が原料トレードや電池のリサイクル、蓄電池の開発、システム販売、設備の保有・運用までを網羅する形で蓄電事業に携わってきた経験にある。また、累計6万台超を販売した家庭用蓄電池での知見も大きい。


自社の蓄電事業にとってもメリットがある。「電気事業は制度などで難しい面があるので、他社との協業で理解を深められる。また、他社とのコミュニケーションから気付きが生まれ、新たな事業に派生させるきっかけになる」(道野氏)という。

24年には、系統用蓄電池専業ファンド運営大手の英ゴア・ストリート・キャピタル(GSC)と共同で、国内初かつ国内唯一の「東京都蓄電所ファンド」を設立した。蓄電所の運用ノウハウを投資企業に還元し、蓄電所の普及を図っていく方針だ。

【特集2まとめ】蓄電池ビジネスの変革 制度・市場・技術がもたらす新潮流

蓄電池が系統安定化を補完する設備としての役割を超え、市場を通じて収益を生み出すものへと進化しようとしている。


背景にあるのが制度・市場・技術を取り巻く新たな動きだ。

需給調整市場や容量市場の本格運用により、蓄電池は複数の価値を重ね合わせて提供する存在となってきた。


アグリゲーションやマルチユースの制度設計が進み、卸市場との連動など新たな収益モデルも現実味を帯びる。


技術面での変化も著しい。蓄電池のコスト低下と高性能化、エネルギーマネジメントの高度化、デジタル制御により、蓄電所は制御可能な電源としての性格を強めている。


こうした進展は、商社やデベロッパー、金融機関など多様なプレイヤーの参入を促す。


変革する蓄電池ビジネスの新潮流に迫った。

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【トピックス】国内企業2社が協働して全国展開 導入から保守までをパッケージ化

【特集2】国内企業2社が協働して全国展開 導入から保守までをパッケージ化

【ニシム電子工業】

ニシム電子工業はパワーエックスと組み、パッケージ化システムを展開中。
受注エリアは全国各地に及び、順調に導入実績を伸ばしている。

九州電力グループのニシム電子工業は、大型蓄電池の製造・販売などを手掛けるパワーエックスと連携し、蓄電所への蓄電池やシステムの導入計画から20年間の保守までをパッケージ化し、日本全国に展開している。

この蓄電所パッケージでは、パワーエックスのコンテナ型蓄電池にニシム電子工業が自社開発したエネルギーマネジメントシステム(EMS)「TAMERBA EMS」を導入し、蓄電システムの運用、保守、最適制御を行っている。2025年11月末までの受注件数は60件超となり、受注エリアは全国30道府県に及ぶ。

国の求める安全要件に適合 セキュリティー品質に評価

同社とパワーエックスの蓄電所パッケージには四つの特長がある。一つ目は、安価な海外製蓄電池が広く普及する中、蓄電システムを構成する主要機器のメーカーが全て国産であることだ。そのため、約20年という長い事業期間にわたり手厚いサポートの提供が可能になり、安心して導入できる。二つ目にはEMSの運用性の高さが挙げられる。ニシム電子工業は通信機器の保守やネットワーク構築といった創業以来磨き上げてきた技術をフル活用し、システムを開発してきた。そのため、今後制度変更があったとしても柔軟に対応できる。三つ目は、各種法令への対応や補助金申請といった手続き面でのサポートが受けられる点だ。例えば、系統用蓄電所が電力系統連系する際の電力会社との協議も同社がフォローする。四つ目は、日本中に豊富な導入実績があること。多様な条件・制約下での納入に対応している。

25年9月には、TAMERBA EMSの電力管理システム(PMS)が、国のセキュリティー要件の評価制度に適合していると認められた。安全品質に関して国からお墨付きをもらった格好だ。

ESS事業部ESS営業グループの横尾貴志リーダーは「電力需要拡大や再エネ主力電源化という大きな流れの中で、蓄電所の果たす役割は大きい。変化に柔軟に対応し、お客さまに必要とされるシステムを提供していく」と語る。新たな市場で強みを武器に攻勢をかける同社の存在感は今後一層高まりそうだ。

第1号案件の丸紅の三峰川伊那蓄電所(長野県)

【特集2】系統用ビジネスに参入ラッシュ 事業者が魅力を感じる収益構造

2024年ごろから急激な盛り上がりを見せている蓄電池ビジネス。
この要因は何か、そしてブームは長続きするのか。現状と展望を探った。

【レポート】瀧口信一郎(日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト)

蓄電池ビジネスへの参入が相次いでいる。再生可能エネルギー併設型蓄電池事業に代わって系統用蓄電池事業が今回の主役である。関西電力(E―Flow)、ENEOS、大阪ガスなどのエネルギー大手、分散した電力設備を取りまとめるVPP事業を展開するエナリス、東芝エネルギーシステムズ(ESS)、デジタルグリッド、Shizen Connect、しろくま電力など、その顔ぶれは多彩だ。パワーエックス、GSユアサなど蓄電池供給企業の動きも活発である。10年近くかかっていた蓄電池の投資回収が2~3年に縮まる事例も出ている。


背景にあるのは需給調整市場の本格稼働である。2021、22年に開設された電力供給指令から数十分で電力供給が必要となる三次調整力市場に続き、24年に開設された、数秒から数分の短時間対応を求める一次、二次調整力市場では、電力供給の出力増減(ΔkW)に対し1時間当たり39・02円(30分当たり19・51円)という上限価格が設定された。短時間対応ができる事業者不足のため、上限価格での取引が頻発。結果として、早期の参入企業は容易に利益を上げられる状況が生まれた。


それを見て参入企業が続出している。メガソーラー(事業用大規模太陽光発電)事業で成功した企業群やファンドが蓄電池投資に乗り出したのである。これらの事業者は、再エネ併設型蓄電池事業、あるいは長期脱炭素電源オークションの入札を検討してきた経緯がある。23、24年度の長期脱炭素電源オークションでは採択枠が少な過ぎて多くの事業者は失注したものの、蓄電池への投資を準備する機会を持つことができた。需給調整市場は多くの事業者に投資機会を与えた格好だ。

メガソーラー事業者も投資先として注目

取引判断力と資金力が重要 連携に向けた動きが活発化

系統用蓄電池事業は、「トレーディング力」と「資金力」という異なる能力を必要とする。まず、需給調整市場を活用するため、蓄電池の稼働率と販売価格を最適化して収支を最大化しなければならない。参入者が増えれば、上限価格での落札は難しくなるため、市場取引の判断力の重要性が増す。一方、規模にかかわらずシステムコストや人件費といった固定費はほぼ一定で、投資規模が大きいほど収益性が向上するため、投資余力のある企業に有利に働く。


系統用蓄電池事業は、市場取引に長けた運用企業と安定した資金力を持つ所有企業が協力し、二つの相反する能力を組み合わせる連携が今後の市場拡大の鍵を握る。多くの系統用蓄電池事業で、蓄電所とトレーディングを行うアグリゲーター(市場取引者)の連携スキームが検討されている状況にある(下図参照)。まず蓄電所をアグリゲーターに貸与する形が考えられるが、蓄電所側で事業リスクを取り、アグリゲーターがシステムと運用基盤の提供を行うこともある。役割とリスクの分担を決められるかどうかが事業開始の分岐点となる。投資体力のある電力・ガス・石油の大手企業は二つの能力を備えているため、早期のスタートを切っている。だが、連携先のリース会社との共同事業も多いため、事業拡大のためには資産所有リスクを切り離す方針を持っていると見られる。

系統用蓄電池事業の所有と運用の連携スキーム

上限価格変更が収益に影響 制度の動向に注視

系統用蓄電池事業は、制度設計次第で収益が大きく左右される。直近では収益性が高すぎるとの声を受け、資源エネルギー庁は、次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会・制度検討作業部会で上限価格の再検討を始め、26年度から1時間当たり14・42円(30分当たり7・21円)に上限価格を下げる方向にある。この上限価格水準でも収益性は見込めるはずだが、制度変更リスクを嫌気して参入を躊躇する企業も出ている。


エネ庁には、市場の継続性に配慮した長期・複数年にわたる方針を提示し、民間事業者の予見可能性を高める運用の重要性を指摘したい。6カ月ごとに上限価格が変更され得る現状では、事業者は制度動向を注視する必要がある。


国産化の動向も忘れてはいけない。製造国の偏りによる供給リスクを懸念し、25年度の長期脱炭素電源オークションの募集要項では新たに「1国・地域当たりの蓄電池容量を30%未満にする」との要件が加えられた。今後、蓄電池の調達に影響が出るだろう。

また、系統用蓄電池事業者も需要併設型蓄電池をどう活用するかを考える必要がある。元来、蓄電池は電力系統外に設置するものと位置付けられてきた。蓄電池は、工場、通信基地局、データセンター、自治体の防災用のバックアップ(BCP)としても用いられる。製造業、情報通信産業、運輸事業者、交通事業者、自治体と蓄電池を共有することは不可欠となる。所有形態は今後も進化を求められる。


再エネの発電出力が拡大し続ける中で、昼の発電余剰、夜の発電不足、雪の日の電力不足、季節変動に対応するため、蓄電池に対するニーズは続く。30年の再エネ導入目標に向けて蓄電池ビジネスは進化、発展が続くだろう。

瀧口 信一郎(たきぐち・しんいちろう) 外資系コンサルティング会社、Jリート運用会社、エネルギーファンド等を経て、2009年日本総合研究所に入社。専門はエネルギー政策、脱炭素政策。著書に「カーボンニュートラル・プラットフォーマー」などがある。

【特集2】充放電で太陽光発電をバリューアップ 30年100万kWに事業規模を拡大へ

【大阪ガス】

太陽光発電の導入拡大に伴い、出力抑制が増える中、再生可能エネルギー由来の電気を最大限有効活用するために蓄電池を併設する事例が増えてきた。従来の再エネ併設型蓄電池は高圧(2000kW級)規模までであったが、大阪ガスは特別高圧の併設型蓄電池の建設を決定した。

九電管内の出力抑制に対応 追加投資で設備を効率化

同社は、世界的な再エネ発電のデベロッパーであるSonnedix Holdings(ソネディックス)と共同出資している発電所運営会社が保有・運営する大分市の太陽光発電所(発電容量3万9000kW)で、再エネ併設型蓄電池の導入を決めた。併設型としては国内最大規模となる定格出力3万kW、定格容量約12万5000kW時の蓄電池を設置するもので、これに伴い同発電所はFIT(固定価格買い取り)制度からFIP(市場連動価格買い取り)制度へと転換する予定だ。FIP転後は、発電・放電された電力の全量を大阪ガスが引き取る形となる。蓄電池は2026年11月に完成予定だ。

大規模太陽光に大規模蓄電池を併設する


3万kWの併設型蓄電池は特別高圧で系統に接続されることになる。特別高圧での蓄電池投資は、高圧に比べて系統接続の負担金や工事費などが増大する。それでも、大型蓄電池への投資を決めた。22年にソネディックスが保有する国内3カ所の太陽光発電所に出資したものの、大分発電所は再エネの出力抑制が他の地域に比べて多い九州電力管内にあり、設備の効率的な運用が制限されていた。太陽光発電所をこのまま放置するか、蓄電池に追加投資して効率化するかの選択に迫られ、今後出力抑制がさらに増えていく可能性も考慮した上で、投資による採算確保が可能と判断した。


大型の蓄電池を併設して昼間に太陽光発電の電気を充電し、需要が増える夕方以降に放電することで、九州電力管内のピークシフトに貢献でき、太陽光発電所のバリューアップが可能となる。設置する蓄電池には、昼間にフル充電した電気を4時間連続で供給できる規模がある。大阪ガスはこの電力をアグリゲーターとして引き取り、市場や需要家向けに販売していく。


ROIC(投下資本利益率)経営を重視する大阪ガスとして、太陽光発電のバリューアップの意義を高く評価した結果が大型併設蓄電所への投資というわけだ。投資決定の背後には、同社が積み上げてきた、系統用蓄電池の運用で得た安全性評価などの知見が生かされている。また、子会社KRIが行ってきた基礎研究や実証などの実績を使って蓄電池を選定するなど、グループ全体の力を結集する。


同社は今後、他事業者が保有する太陽光発電所も対象としてバリューアップの提案を進め、30年に系統用と併設型を合わせて100万kWにまで蓄電池事業を拡大していく考えだ。

インフォメーション

関電不動産開発

東京にスタートアップ向けオフィスビル新設

関電不動産開発は10月31日、「関電不動産茅場町ビル」(東京都中央区)の完工を発表した。地上9階建ての小規模オフィスビルで、スタートアップ企業などの入居を見込む。同物件は高い断熱性能に加え、さまざまな環境配慮技術を採用することで設計段階での年間一次エネルギー消費量を50%以上削減し「ZEB Ready」を取得。オール電化と関西電力の「再エネECOプラン」を導入することで物件全体のゼロカーボンを実現した。福本恵美社長は「今後10年間で1500億円投じて、規模を問わず首都圏への進出を進める計画。小規模ビルは毎年複数棟を企画・開発していく」と展望を語った。

ABB

アジア太平洋地域のエネ移行準備指数を発表

スイスABBは11月6日、自社で実施した調査「エネルギー移行準備指数」に関する説明会を開催した。同指数はアジア太平洋地域での再生可能エネルギーへの転換やIT導入について12の市場、10の産業、4085の企業を対象に調査したもの。日本は「自社のエネマネ導入や再エネへの移行計画は整っている」と認識する企業が70%と平均の65%を上回った一方、デジタル化や自動化への設備投資の進捗は平均を下回った。また、「AIが再エネへの移行や転換達成の重要な促進要因になる」という回答は61%で平均を10ポイント下回るなど、再エネ転換への意識は高い半面、ITへの関心は低い結果となった。

NTTドコモ

電気・光・FWAでナンバーワン・キャリアを狙う

NTTドコモは10月29日、「ドコモでんき」や「ドコモ光」など家庭向けインフラサービスを統合した「イエナカサービス部」の事業戦略を発表した。従来はモバイル回線契約を軸に電気・ガス・インターネットなどのサービスを展開してきた。今後は、同社がイエナカサービスと総称する家庭向けインフラサービスが軸になり、モバイル回線や「dカード」など他サービスの契約拡大を図っていく。小島慶太部長は「戦い方がモバイル中心から総合力へと変わる。電気・光回線・FWA(固定無線アクセス)の契約者数で2027年度までにナンバーワン・キャリアを目指す」と述べた。

東北電力/北洋硝子など

太陽光パネルを伝統工芸品にアップサイクル

東北電力は北洋硝子と提携し、廃棄された太陽光パネルのガラスを青森県の伝統工芸品「津軽びいどろ」にアップサイクルする取り組みを開始した。アップサイクルは、本来捨てるはずの物に新たな付加価値を加え、別の製品に変えて再利用すること。使用済みパネルの廃棄問題が注目される中、資源循環型社会の構築に向けた取り組みの一環として実施する。

ウィズガスCLUB

家庭用エネの脱炭素化について講演

住環境に関わる企業団体連合のウィズガスCLUBは10月31日、「暮らしの未来シンポジウム2025」を開催した。住環境計画研究所の中村美紀子主席研究員は、「暮らしとエネルギーの変遷」と題して家庭用エネルギーの歴史における電気の普及や暖房燃料の変遷を紹介。他、家族構成や地域差の違いを踏まえ、省エネと行動変容による脱炭素化の重要性を語った。

レモンガス

社員研修会を開催し社員や支店を表彰

LPガス販売のレモンガスは10月31日、横浜市内のホテルで社員研修会を開催した。8月までの過去1年間で、電気やLPガス、機器販売に加えて、業務効率化などに貢献した社員や組織を優秀賞や優良賞、団体賞などを設けて表彰した。赤津欣弥会長は「今年は最優秀賞の該当者がいなかった。来年は獲得を目指して頑張ってほしい」と社員の発奮を促した。