インフォメーション

グリッド

経営課題をAIで解決する勉強会を実施

AIシステムベンダーのグリッドは2025年12月4日、メディア関係者向けOR(オペレーションズ・リサーチ)勉強会を開催した。ORとは意思決定、業務管理、コスト管理など企業が直面する課題解決を図る、AIや数理的手法などの総称。元日本OR学会副会長の出馬弘昭氏は「海外エネルギー競争最適化」と題し、海外のエネルギー大手事業者とテック大手企業の事例などを紹介した。資本計画やPPA計画の最適化といった経営意思決定から蓄電池のリアルタイム劣化診断や再エネ投入量の最大化といった個別の業務まで、多様な事業フェーズにおけるORソリューションの活用について語った。

アメリカ穀物バイオプロダクツ協会

バイオエタノールカンファレンスを東京で開催

アメリカ穀物バイオプロダクツ協会は12月3日、「2025年米国バイオエタノール低炭素化カンファレンス」を都内で開催した。イリノイ大学シカゴ校のシュテフェン・ミューラー博士が「トウモロコシ原料エタノールおよびEthanol to Jet(EtJ)経路における排出削減効果と持続可能性に関する考察」をテーマに、トウモロコシ由来のエタノールのライフサイクル分析と温室効果ガス削減の効果について説明した。このほか、米国のトウモロコシ生産者やエタノール生産者が登壇し、炭素強度の削減推進などをテーマに講演した。参加者からの活発な質疑がなされ、盛況のうちに閉会した。

日本熱供給事業協会

横浜市庁舎のエネルギーシステム見学会を開催

日本熱供給事業協会は11月13日、マスコミ向けに横浜市庁舎で運用するエネルギーシステムの施設見学会を実施した。東京都市サービス(TTS)が庁舎などに熱供給しているほか、横浜市自らが固体酸化物型燃料電池などの設備を導入・運用して庁舎内のエネルギーを賄っている。庁舎は全面的に改築された2020年に、現在のエネルギーシステムに更新された。TTSは熱供給用にガスエンジンやターボ冷凍機、蓄熱槽などの運用に加え、下水再生水を熱源とする未利用エネルギーの活用にも取り組んでいる。主要なプラントは浸水対策を考慮して地上4階に設置している。

アストモスエネルギー

販売店定例会でLPガスの防災力を訴求

LPガス元売り大手のアストモスエネルギーは11月26日、販売店会「全国アストモス会」の定例会を都内で開催した。「レジリエント強化に向けたLPガスの可能性」をテーマに、加藤孝明東京大学生産技術研究所教授が基調講演を行ったほか、関電工が「非常用発電機をベースとしたグリッド電源の確立」と題し、LPガスの有用性について講演した。

愛知時計電機

LPガス用警報器「AGシリーズ」を発売

愛知時計電機は12月8日、LPガス用警報器「AGシリーズ」を発売した。同シリーズは、ブザー式、音声式、単体型、連動型などを組み合わせた4種類をラインアップ。設備環境に応じて選択できる。また、他社も含めほぼ全てのLPガス警報器の取り付け金具に対応する。AGシリーズの発売に伴い、従来の「APHシリーズ」は在庫限りで販売終了となる。

関西電力ほか

再エネ事業で東京メトロに環境価値を提供

関西電力、ビーエイブル、那須建設の3社は12月11日、バイオマス・フューエルが設立した佐野バイオマス発電に出資し発電事業に参画すると発表した。佐野バイオマス発電は栃木県佐野市に出力7100kWの発電所を建設、東京メトロとバーチャルPPAを締結し再生可能エネルギー由来の環境価値を提供する。発電所は2028年9月に運開する予定だ。

【特集2】系統用ビジネスに参入ラッシュ 事業者が魅力を感じる収益構造

2024年ごろから急激な盛り上がりを見せている蓄電池ビジネス。
この要因は何か、そしてブームは長続きするのか。現状と展望を探った。

【レポート】瀧口信一郎(日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト)

蓄電池ビジネスへの参入が相次いでいる。再生可能エネルギー併設型蓄電池事業に代わって系統用蓄電池事業が今回の主役である。関西電力(E―Flow)、ENEOS、大阪ガスなどのエネルギー大手、分散した電力設備を取りまとめるVPP事業を展開するエナリス、東芝エネルギーシステムズ(ESS)、デジタルグリッド、Shizen Connect、しろくま電力など、その顔ぶれは多彩だ。パワーエックス、GSユアサなど蓄電池供給企業の動きも活発である。10年近くかかっていた蓄電池の投資回収が2~3年に縮まる事例も出ている。


背景にあるのは需給調整市場の本格稼働である。2021、22年に開設された電力供給指令から数十分で電力供給が必要となる三次調整力市場に続き、24年に開設された、数秒から数分の短時間対応を求める一次、二次調整力市場では、電力供給の出力増減(ΔkW)に対し1時間当たり39・02円(30分当たり19・51円)という上限価格が設定された。短時間対応ができる事業者不足のため、上限価格での取引が頻発。結果として、早期の参入企業は容易に利益を上げられる状況が生まれた。


それを見て参入企業が続出している。メガソーラー(事業用大規模太陽光発電)事業で成功した企業群やファンドが蓄電池投資に乗り出したのである。これらの事業者は、再エネ併設型蓄電池事業、あるいは長期脱炭素電源オークションの入札を検討してきた経緯がある。23、24年度の長期脱炭素電源オークションでは採択枠が少な過ぎて多くの事業者は失注したものの、蓄電池への投資を準備する機会を持つことができた。需給調整市場は多くの事業者に投資機会を与えた格好だ。

メガソーラー事業者も投資先として注目

取引判断力と資金力が重要 連携に向けた動きが活発化

系統用蓄電池事業は、「トレーディング力」と「資金力」という異なる能力を必要とする。まず、需給調整市場を活用するため、蓄電池の稼働率と販売価格を最適化して収支を最大化しなければならない。参入者が増えれば、上限価格での落札は難しくなるため、市場取引の判断力の重要性が増す。一方、規模にかかわらずシステムコストや人件費といった固定費はほぼ一定で、投資規模が大きいほど収益性が向上するため、投資余力のある企業に有利に働く。


系統用蓄電池事業は、市場取引に長けた運用企業と安定した資金力を持つ所有企業が協力し、二つの相反する能力を組み合わせる連携が今後の市場拡大の鍵を握る。多くの系統用蓄電池事業で、蓄電所とトレーディングを行うアグリゲーター(市場取引者)の連携スキームが検討されている状況にある(下図参照)。まず蓄電所をアグリゲーターに貸与する形が考えられるが、蓄電所側で事業リスクを取り、アグリゲーターがシステムと運用基盤の提供を行うこともある。役割とリスクの分担を決められるかどうかが事業開始の分岐点となる。投資体力のある電力・ガス・石油の大手企業は二つの能力を備えているため、早期のスタートを切っている。だが、連携先のリース会社との共同事業も多いため、事業拡大のためには資産所有リスクを切り離す方針を持っていると見られる。

系統用蓄電池事業の所有と運用の連携スキーム

上限価格変更が収益に影響 制度の動向に注視

系統用蓄電池事業は、制度設計次第で収益が大きく左右される。直近では収益性が高すぎるとの声を受け、資源エネルギー庁は、次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会・制度検討作業部会で上限価格の再検討を始め、26年度から1時間当たり14・42円(30分当たり7・21円)に上限価格を下げる方向にある。この上限価格水準でも収益性は見込めるはずだが、制度変更リスクを嫌気して参入を躊躇する企業も出ている。


エネ庁には、市場の継続性に配慮した長期・複数年にわたる方針を提示し、民間事業者の予見可能性を高める運用の重要性を指摘したい。6カ月ごとに上限価格が変更され得る現状では、事業者は制度動向を注視する必要がある。


国産化の動向も忘れてはいけない。製造国の偏りによる供給リスクを懸念し、25年度の長期脱炭素電源オークションの募集要項では新たに「1国・地域当たりの蓄電池容量を30%未満にする」との要件が加えられた。今後、蓄電池の調達に影響が出るだろう。

また、系統用蓄電池事業者も需要併設型蓄電池をどう活用するかを考える必要がある。元来、蓄電池は電力系統外に設置するものと位置付けられてきた。蓄電池は、工場、通信基地局、データセンター、自治体の防災用のバックアップ(BCP)としても用いられる。製造業、情報通信産業、運輸事業者、交通事業者、自治体と蓄電池を共有することは不可欠となる。所有形態は今後も進化を求められる。


再エネの発電出力が拡大し続ける中で、昼の発電余剰、夜の発電不足、雪の日の電力不足、季節変動に対応するため、蓄電池に対するニーズは続く。30年の再エネ導入目標に向けて蓄電池ビジネスは進化、発展が続くだろう。

瀧口 信一郎(たきぐち・しんいちろう) 外資系コンサルティング会社、Jリート運用会社、エネルギーファンド等を経て、2009年日本総合研究所に入社。専門はエネルギー政策、脱炭素政策。著書に「カーボンニュートラル・プラットフォーマー」などがある。

【特集2】電圧の均等化技術で特許を取得 充放電時の性能を最大限に発揮

【NExT-e Solutions】

安定供給に資する大容量蓄電池を展開するNExT-e Solutions。
創業時から築いた技術が、系統用蓄電池の“電力会社品質”を実現した。

日本の電気事業には、安定供給や安全性において世界的にも厳しい基準が設けられ、高い水準が求められる。そうした中、エネルギー会社をはじめ、建設会社や商社といった国内大手のプロジェクトに次々と採用されているのが、NExT-e Solutionsの蓄電システムだ。

大規模な蓄電システムは、複数の蓄電池を直列接続して構成されるが、新品であっても個々の蓄電池には容量と残量にばらつきがある。そのため、充電時には放熱による均等化が図られて電力ロスが発生。一方、放電時には電力を使い切れず、電池性能を最大限に発揮できない状況があった。この課題を克服したのが、同社が特許を取得した「アクティブバランス」技術だ。同技術は、セル・電力パック間での電力移動によって、セルとモジュール両方の電圧を均等にする。これにより、無駄なく充放電できるようになり、従来の10倍以上の電流での動作が可能になった。蓄電池の長寿命化にもつながっている。

大手電力が認めた制御技術 中古電池でシステム構築

同社の設立は2008年。井上真壮社長は「設立当初から大容量蓄電池にはシステム制御が必要と考え、バッテリーマネジメントシステム(BMS)の開発に力を入れてきた」と振り返る。その後、東京電力パワーグリッド(PG)から技術面での評価を得てタッグを組み、18年ごろからエネルギー向け蓄電システムの共同開発をスタート。19年の資本業務提携締結を経て、23年には系統連系プロジェクトを実現した。同社が蓄電システムを構築する一方、東電PGの子会社である東京電設サービスが運用・安全管理やメンテナンスを担い、“電力会社品質”を担保している。

「システム制御にこだわった」と話す井上社長

将来、電気自動車の蓄電池のリユースが進むと同時に、系統用蓄電池を長期に稼働していく中、電池交換によって新品と中古の蓄電池が混在した運用が想定される。この点において、共同開発の開始当初、新品以上に容量などのばらつきがある中古電池を使用して制御技術を構築したことも大きな強みだ。「これからの資源問題を見据え、リユース電池のさらなる活用につながる開発を進めていきたい」と、井上社長は今後の抱負を語った。

【特集2まとめ】蓄電池ビジネスの変革 制度・市場・技術がもたらす新潮流

蓄電池が系統安定化を補完する設備としての役割を超え、市場を通じて収益を生み出すものへと進化しようとしている。


背景にあるのが制度・市場・技術を取り巻く新たな動きだ。

需給調整市場や容量市場の本格運用により、蓄電池は複数の価値を重ね合わせて提供する存在となってきた。


アグリゲーションやマルチユースの制度設計が進み、卸市場との連動など新たな収益モデルも現実味を帯びる。


技術面での変化も著しい。蓄電池のコスト低下と高性能化、エネルギーマネジメントの高度化、デジタル制御により、蓄電所は制御可能な電源としての性格を強めている。


こうした進展は、商社やデベロッパー、金融機関など多様なプレイヤーの参入を促す。


変革する蓄電池ビジネスの新潮流に迫った。

【レポート】系統用ビジネスに参入ラッシュ 事業者が魅力を感じる収益構造

【インタビュー】適切な導入規模の判断が重要 接続地点の情報公開に期待

【レポート】ソリューションをユーザー視点に転換 包括的にサポートする体制を整備

【レポート】充放電で太陽光発電をバリューアップ 30年100万kWに事業規模を拡大へ

【レポート】系統用と再エネ併設型で経験を蓄積 28年度の産業用事業参入を目指す

【レポート】自社ブランドの大型システムを販売 他社と共同で系統連系蓄電所を展開

【レポート】エンジニアリングの知見が強み EPCを軸に五つの部署で対応

【トピックス】電圧の均等化技術で特許を取得 充放電時の性能を最大限に発揮

【トピックス】国内企業2社が協働して全国展開 導入から保守までをパッケージ化

【特集2】エンジニアリングの知見が強み EPCを軸に五つの部署で対応

【テス・エンジニアリング】

テス・エンジニアリングの蓄電システム関連事業が、同社の主力事業へと成長している。2025年9月末時点の受注残高に占める割合は85・4%。そのほとんどが、大型蓄電システムのEPC(設計、調達、建設)だ。同年11月現在、系統用蓄電所、太陽光発電所の併設型、工場・事業所向け蓄電池を合わせて、受注金額は約400億円を超える。


蓄電池事業は、五つの部署が担う。営業本部は顧客から高圧・特高の系統用蓄電所のEPCを受託し、系統接続の取りまとめから設備工事まで一貫して対応する。また、過去に太陽光発電所を納入した既存顧客を中心にFITからFIPへの転換と蓄電池併設も提案している。


一方、国内事業本部は、「開発型EPC」を展開する部隊。系統用蓄電池の系統接続や用地開発、EPCなどに主体的に関与し、開発に関する一連のソリューションを提供する。また、自社で所有する太陽光発電のFIP転と蓄電池併設も手掛ける。

蓄電池を併設した自社グループの太陽光発電所


営業本部と国内事業本部の案件を形にするのが設計と工事を担当するエンジニアリング本部だ。同社では蓄電池EPCの設計積算を集中的に対応する蓄電池チームを設置。品質の確保はもちろん、蓄電池購買力の強化や仕様標準化による効率化などを通じ、コストダウンにも取り組む。


運開後の案件を引き継ぎ、蓄電ビジネスを成り立たせるのが電力需給本部の役目。アグリゲーターとして、需給調整市場をはじめ、容量市場や卸電力市場において電力取引・販売を行い、収益性の確保を図る。


さらに、運開後の体制も万全だ。CS本部がメンテナンスなどのアフターフォローを担当。日々の稼働状況を確認しながら、安定した運用をサポートする。

事業予見性の低さに課題 各市場の変更点を常に把握

顧客向けの案件に加え、自社サイトの開発も進行中だ。その第一号案件として、鹿児島県内4カ所で、連結子会社の太陽光発電所のFIP転と蓄電池の設置工事を行った。こうした幅広い提案や開発ができるのは、主力とするエンジニアリングやメンテナンス事業で築いた経験と知見があるからだ。


電力小売り事業におけるノウハウも、各電力市場で取引する際の強みとなっている。だが、電力市場の活用は今後の課題でもある。「各市場の制度設計は変化にさらされており、事業の予見性が低い状況にある。変更点を常に把握しておくことが欠かせない」。国内事業本部本部長 (兼) 電力需給本部本部長の井元良平氏はこう話す。その対策の一つとして、業界全体で課題を出し合うなどの動きが出ているという。


こうした課題を抱えつつも、同社の引き合い案件は、系統用蓄電所で累積380件、太陽光発電所のFIP転と蓄電池併設で累積210件に上る。これらの実現に向け、今後も蓄電池事業の拡大を図っていく方針だ。

【特集2】充放電で太陽光発電をバリューアップ 30年100万kWに事業規模を拡大へ

【大阪ガス】

太陽光発電の導入拡大に伴い、出力抑制が増える中、再生可能エネルギー由来の電気を最大限有効活用するために蓄電池を併設する事例が増えてきた。従来の再エネ併設型蓄電池は高圧(2000kW級)規模までであったが、大阪ガスは特別高圧の併設型蓄電池の建設を決定した。

九電管内の出力抑制に対応 追加投資で設備を効率化

同社は、世界的な再エネ発電のデベロッパーであるSonnedix Holdings(ソネディックス)と共同出資している発電所運営会社が保有・運営する大分市の太陽光発電所(発電容量3万9000kW)で、再エネ併設型蓄電池の導入を決めた。併設型としては国内最大規模となる定格出力3万kW、定格容量約12万5000kW時の蓄電池を設置するもので、これに伴い同発電所はFIT(固定価格買い取り)制度からFIP(市場連動価格買い取り)制度へと転換する予定だ。FIP転後は、発電・放電された電力の全量を大阪ガスが引き取る形となる。蓄電池は2026年11月に完成予定だ。

大規模太陽光に大規模蓄電池を併設する


3万kWの併設型蓄電池は特別高圧で系統に接続されることになる。特別高圧での蓄電池投資は、高圧に比べて系統接続の負担金や工事費などが増大する。それでも、大型蓄電池への投資を決めた。22年にソネディックスが保有する国内3カ所の太陽光発電所に出資したものの、大分発電所は再エネの出力抑制が他の地域に比べて多い九州電力管内にあり、設備の効率的な運用が制限されていた。太陽光発電所をこのまま放置するか、蓄電池に追加投資して効率化するかの選択に迫られ、今後出力抑制がさらに増えていく可能性も考慮した上で、投資による採算確保が可能と判断した。


大型の蓄電池を併設して昼間に太陽光発電の電気を充電し、需要が増える夕方以降に放電することで、九州電力管内のピークシフトに貢献でき、太陽光発電所のバリューアップが可能となる。設置する蓄電池には、昼間にフル充電した電気を4時間連続で供給できる規模がある。大阪ガスはこの電力をアグリゲーターとして引き取り、市場や需要家向けに販売していく。


ROIC(投下資本利益率)経営を重視する大阪ガスとして、太陽光発電のバリューアップの意義を高く評価した結果が大型併設蓄電所への投資というわけだ。投資決定の背後には、同社が積み上げてきた、系統用蓄電池の運用で得た安全性評価などの知見が生かされている。また、子会社KRIが行ってきた基礎研究や実証などの実績を使って蓄電池を選定するなど、グループ全体の力を結集する。


同社は今後、他事業者が保有する太陽光発電所も対象としてバリューアップの提案を進め、30年に系統用と併設型を合わせて100万kWにまで蓄電池事業を拡大していく考えだ。

【特集2】自社ブランドの大型システムを販売 他社と共同で系統連系蓄電所を展開

【伊藤忠商事】

さまざまな企業が参入する蓄電池業界において、伊藤忠商事のビジネススタイルは異彩を放つ。「商社っぽくない動き方」「珍しいタイプのプレイヤー」。業界関係者はこう評す。


特徴の一つが、メーカーとしてのポジションによる事業展開だ。中国の電気自動車(EV)大手BYD、蓄電池ベンチャーのパワーエックス(岡山県玉野市)と提携し、OEMで自社ブランドの蓄電システム「Bluestorage(ブルーストレージ)」を販売している。工場などに設置する産業用をはじめ、系統用蓄電池や太陽光発電サイトなどに併設する蓄電池をラインアップした。


次世代エネルギービジネス部電池ビジネス課の道野僚太シニアマネージャーは、「一番の強みは、導入しやすい価格設定に加えて、安定した蓄電ビジネス環境を提供できる点にある」と説明する。製造にあたっては、自社工場を持たない「ファブレス型」を採用。日本市場に適した基本設計の下、中国で製造することでコストを抑える。その一方で、システムを導入した後は、同社が監視・制御といったエネルギーマネジメント、メーカー同様のレベルでの保証や保守・メンテナンスまで全面的にサポートする。ブルーストレージ採用の蓄電所は2025年9月現在、全国7カ所で稼働中のほか、14カ所で建設中、100カ所で検討が進んでいる。

第1号案件の蓄電所(兵庫県豊岡市)

協業でプロジェクトに参入 網羅的な事業経験を生かす

もう一つの特徴として、他社との協業が挙げられる。その関わり方は、実にバラエティに富んでいる。系統連系プロジェクトを例に挙げると、カネカグループと手掛けた兵庫県内の蓄電所では、EVで使ったリユース蓄電池で構成するシステムを納入し、周辺の太陽光発電を使ったPPA事業やマイクログリッドを実施。西日本鉄道(福岡市)の蓄電所に蓄電システムのリース提供で関わる一方、東急不動産グループと運用する蓄電所では、蓄電池の調整力を各電力市場での最適運用と収益化に活用するアグリゲーターとして参画する。パートナー企業の意向やプロジェクトの特徴を踏まえ、多様な役割を果たしてきた。


こうした動きの背景には、同社が原料トレードや電池のリサイクル、蓄電池の開発、システム販売、設備の保有・運用までを網羅する形で蓄電事業に携わってきた経験にある。また、累計6万台超を販売した家庭用蓄電池での知見も大きい。


自社の蓄電事業にとってもメリットがある。「電気事業は制度などで難しい面があるので、他社との協業で理解を深められる。また、他社とのコミュニケーションから気付きが生まれ、新たな事業に派生させるきっかけになる」(道野氏)という。

24年には、系統用蓄電池専業ファンド運営大手の英ゴア・ストリート・キャピタル(GSC)と共同で、国内初かつ国内唯一の「東京都蓄電所ファンド」を設立した。蓄電所の運用ノウハウを投資企業に還元し、蓄電所の普及を図っていく方針だ。

【特集2】系統用と再エネ併設型で経験を蓄積 28年度の産業用事業参入を目指す

【サーラエナジー】

サーラエナジーは2025年10月20日、「サーラ東三河太陽光併設蓄電所」(愛知県豊橋市)の開所式を行った。電力系統との接続による蓄電に加え、既存建物の屋根上に設置した太陽光発電(約736kW)で発電した電気も蓄電する。リチウムイオン電池の容量は7520kW時で、出力は1999kW。一般家庭約600世帯分を賄える。また、この5日前には、浜松市内に系統用の「サーラ浜松蓄電所」も開所した。

東三河太陽光併設蓄電所の開所式


蓄電所の検討を開始したのは21年。先代社長からの意向を受けて始まった。その後、補助金を活用しながら、建設を進めてきた。


系統用、併設型ともにこれから本格稼働を控える同社だが、最終的に目指すのは、産業用蓄電池への参入だ。電力事業推進部の瀧本修部長は「今後、産業用を手掛ける際に、系統用と再エネ併設型で培った経験やノウハウが大きな強みになる」と話す。産業用参入の有望なタイミングとして、28年度に予定されている化石燃料賦課金の導入を挙げる。「税金を払うのではなく、自社でエネルギーを電池に貯めて、無駄なく使いたいと考える事業者さんは少なくないはずだ」(瀧本部長)という。

日本初のモデルに挑戦 電力市場取引のみを活用

サーラ東三河太陽光併設蓄電所が注目を集めている大きな理由は、FITやFIPの認定を受けず、市場取引のみで収益化を図るという点だ。同蓄電所は、19年に運開した東三河バイオマス発電所の敷地内にあり、同発電所がすでにFITを活用している。そのため、二重に認定を受けられないということから、電力3市場(卸電力・需給調整・容量)での取引を通じて収益を獲得する日本初のビジネスモデルとして取り組むことになった。

豊橋市にある太陽光パネルと蓄電施設


同社は、電力事業を中⾧期の成⾧分野と位置付け、再生可能エネルギーの導入を促進する蓄電池の普及・拡大が必要不可欠だと考えている。今回の蓄電所の稼働開始により、電力事業の成長を加速させる基盤が整った。今後は、自社の再エネ電源の開発や蓄電所の運用にとどまらず、地域に根を張るグループ各社との連携を通じて、顧客のニーズが高まる蓄電池の設置や蓄電所の建設を推進していく。

23年に開始したサーラグループの中期経営計画は25年に最終年を迎えた。3年間累計150億円を計画していた成長投資については、蓄電所など新分野への投資を中心に順調に進捗し、今後の展開が期待される。


瀧本部長は「今後、蓄電事業に注力するにあたり、顧客の伴走者となり、蓄電事業を通じてお客さまのお困りごとを一緒に解決する姿勢を示していきたい」と意気込みを語った。

【特集2】国内企業2社が協働して全国展開 導入から保守までをパッケージ化

【ニシム電子工業】

ニシム電子工業はパワーエックスと組み、パッケージ化システムを展開中。
受注エリアは全国各地に及び、順調に導入実績を伸ばしている。

九州電力グループのニシム電子工業は、大型蓄電池の製造・販売などを手掛けるパワーエックスと連携し、蓄電所への蓄電池やシステムの導入計画から20年間の保守までをパッケージ化し、日本全国に展開している。

この蓄電所パッケージでは、パワーエックスのコンテナ型蓄電池にニシム電子工業が自社開発したエネルギーマネジメントシステム(EMS)「TAMERBA EMS」を導入し、蓄電システムの運用、保守、最適制御を行っている。2025年11月末までの受注件数は60件超となり、受注エリアは全国30道府県に及ぶ。

国の求める安全要件に適合 セキュリティー品質に評価

同社とパワーエックスの蓄電所パッケージには四つの特長がある。一つ目は、安価な海外製蓄電池が広く普及する中、蓄電システムを構成する主要機器のメーカーが全て国産であることだ。そのため、約20年という長い事業期間にわたり手厚いサポートの提供が可能になり、安心して導入できる。二つ目にはEMSの運用性の高さが挙げられる。ニシム電子工業は通信機器の保守やネットワーク構築といった創業以来磨き上げてきた技術をフル活用し、システムを開発してきた。そのため、今後制度変更があったとしても柔軟に対応できる。三つ目は、各種法令への対応や補助金申請といった手続き面でのサポートが受けられる点だ。例えば、系統用蓄電所が電力系統連系する際の電力会社との協議も同社がフォローする。四つ目は、日本中に豊富な導入実績があること。多様な条件・制約下での納入に対応している。

25年9月には、TAMERBA EMSの電力管理システム(PMS)が、国のセキュリティー要件の評価制度に適合していると認められた。安全品質に関して国からお墨付きをもらった格好だ。

ESS事業部ESS営業グループの横尾貴志リーダーは「電力需要拡大や再エネ主力電源化という大きな流れの中で、蓄電所の果たす役割は大きい。変化に柔軟に対応し、お客さまに必要とされるシステムを提供していく」と語る。新たな市場で強みを武器に攻勢をかける同社の存在感は今後一層高まりそうだ。

第1号案件の丸紅の三峰川伊那蓄電所(長野県)

インフォメーション

関電不動産開発

東京にスタートアップ向けオフィスビル新設

関電不動産開発は10月31日、「関電不動産茅場町ビル」(東京都中央区)の完工を発表した。地上9階建ての小規模オフィスビルで、スタートアップ企業などの入居を見込む。同物件は高い断熱性能に加え、さまざまな環境配慮技術を採用することで設計段階での年間一次エネルギー消費量を50%以上削減し「ZEB Ready」を取得。オール電化と関西電力の「再エネECOプラン」を導入することで物件全体のゼロカーボンを実現した。福本恵美社長は「今後10年間で1500億円投じて、規模を問わず首都圏への進出を進める計画。小規模ビルは毎年複数棟を企画・開発していく」と展望を語った。

ABB

アジア太平洋地域のエネ移行準備指数を発表

スイスABBは11月6日、自社で実施した調査「エネルギー移行準備指数」に関する説明会を開催した。同指数はアジア太平洋地域での再生可能エネルギーへの転換やIT導入について12の市場、10の産業、4085の企業を対象に調査したもの。日本は「自社のエネマネ導入や再エネへの移行計画は整っている」と認識する企業が70%と平均の65%を上回った一方、デジタル化や自動化への設備投資の進捗は平均を下回った。また、「AIが再エネへの移行や転換達成の重要な促進要因になる」という回答は61%で平均を10ポイント下回るなど、再エネ転換への意識は高い半面、ITへの関心は低い結果となった。

NTTドコモ

電気・光・FWAでナンバーワン・キャリアを狙う

NTTドコモは10月29日、「ドコモでんき」や「ドコモ光」など家庭向けインフラサービスを統合した「イエナカサービス部」の事業戦略を発表した。従来はモバイル回線契約を軸に電気・ガス・インターネットなどのサービスを展開してきた。今後は、同社がイエナカサービスと総称する家庭向けインフラサービスが軸になり、モバイル回線や「dカード」など他サービスの契約拡大を図っていく。小島慶太部長は「戦い方がモバイル中心から総合力へと変わる。電気・光回線・FWA(固定無線アクセス)の契約者数で2027年度までにナンバーワン・キャリアを目指す」と述べた。

東北電力/北洋硝子など

太陽光パネルを伝統工芸品にアップサイクル

東北電力は北洋硝子と提携し、廃棄された太陽光パネルのガラスを青森県の伝統工芸品「津軽びいどろ」にアップサイクルする取り組みを開始した。アップサイクルは、本来捨てるはずの物に新たな付加価値を加え、別の製品に変えて再利用すること。使用済みパネルの廃棄問題が注目される中、資源循環型社会の構築に向けた取り組みの一環として実施する。

ウィズガスCLUB

家庭用エネの脱炭素化について講演

住環境に関わる企業団体連合のウィズガスCLUBは10月31日、「暮らしの未来シンポジウム2025」を開催した。住環境計画研究所の中村美紀子主席研究員は、「暮らしとエネルギーの変遷」と題して家庭用エネルギーの歴史における電気の普及や暖房燃料の変遷を紹介。他、家族構成や地域差の違いを踏まえ、省エネと行動変容による脱炭素化の重要性を語った。

レモンガス

社員研修会を開催し社員や支店を表彰

LPガス販売のレモンガスは10月31日、横浜市内のホテルで社員研修会を開催した。8月までの過去1年間で、電気やLPガス、機器販売に加えて、業務効率化などに貢献した社員や組織を優秀賞や優良賞、団体賞などを設けて表彰した。赤津欣弥会長は「今年は最優秀賞の該当者がいなかった。来年は獲得を目指して頑張ってほしい」と社員の発奮を促した。

【特集2】自治体や事業者と連携しサービス実証 製造業の枠超えソリューションを創出

【愛知時計電機】

愛知時計電機は、クラウド上でのデータ配信サービスを提供している。
個人情報漏えいのリスクがなく、使いやすいことから事業者に好評だ。

ガス、水道メーターの製造で国内トップシェアを誇る愛知時計電機。同社が提供する「アイチクラウド」は、スマートメーターからさまざまなデータをクラウド上に集め、事業者へインターネット経由で提供するデータ配信サービスだ。事業者にとっては高機能メーター設置による検針業務の効率化というメリットに加え、データの活用次第で新サービスの創出にもつなげることができる。

アイチクラウド全体イメージ図

「見守り」の有効性を実証 水道・都市ガス使用量を監視

アイチクラウドが多くの事業者に選ばれている理由は主に二つある。一つは、個人情報漏えいのリスクが回避されている点だ。検針端末の番号を顧客番号にひも付けており、消費者の個人情報は登録しない。そのため、個人情報は洩れようがない仕組みとなっている。二つ目は、企業がすでに運用している基幹システムと連携しやすい構造になっている点だ。基幹システムの改修を行うことで事業者は普段使っている基幹システムを操作すれば、連動してアイチクラウドが作動する仕組みを構築できる。結果的に、事業者にとっては使いやすく、情報更新ミスも起こりにくい。


同社はすでに自治体や地域のガス事業者と連携し、スマートメーターを活用した高齢者の見守り実証実験を実施している。静岡県掛川市や御殿場市では、高齢者世帯に設置したスマートメーターを通じてクラウドに自動収集された水道・都市ガスの1時間ごとの使用量データを監視。水道使用量では、使用状況が通常と異なる状況を検知した場合に安否確認の連絡を行うサービスの有効性について検証を行った。水道とガス、二つの使用量データを重ね合わせることで人の「生活サイクル」をより精緻に把握できる。今後は、健康異変を検知するコンテンツの創出など、データの持つ価値を最大化させる取り組みにもつなげていく。

武田賢治執行役員は「今後は他社との連携を通じて製造業の枠を超えたイノベーションを実現し、社会課題の解決に貢献していく」と語る。同社は今後、流体計測技術をコアに、社会的インパクトの強いソリューションの創出に注力していく構えだ。

【特集2】専門家交えガイドライン改定 外部接続に関する体制を強化

【一般送配電事業者】

今年度、次世代スマートメーターの導入がいよいよスタートする。
計量部の仕様統一やガイドライン改訂など、設置に向けた準備が着々と進んでいる。

現行のスマートメーターの検定有効期間満了(検満)に伴い、今年度以降、次世代スマメへの入れ替えが順次始まる。次世代スマメは、今よりも細かい計測粒度(計測する間隔)で電力使用量の把握が可能。これにより、停電の早期解消といった電力レジリエンスの強化、新サービスによる需要家の利便性向上も期待される。


こうした中、一般送配電各社では導入開始に向けた体制を着々と整えてきた。2023年6月には、次世代スマメ計量部の仕様統一を完了。現在、作業手順や設置作業に係る工事費の策定、今年度分の購買契約などを進めている段階だ。


一般送配電各社が特に重視するのが、システム全体のセキュリティーを確保すること。日本電気協会は今年2月、「スマートメーターシステムセキュリティガイドライン」を改定した。この改訂にあたり、旧一般電気事業者やスマメシステムの提供者に加え、サイバーセキュリティーの専門組織や学識経験者を交えて議論。サイバー攻撃の動向や法制度などを踏まえ、外部接続に関するセキュリティー強化、外部接続事業者との合意形成などを盛り込む内容へとバージョンアップした。

能登の復興にデータを利用 自治体対応への有効性示す

一方、現行スマメの導入による成果も上がっている。一つが設備のスリム化だ。例えば、柱上変圧器(高電圧の電気を需要家向けに低電圧に変換する装置)の容量を決める際、需要家の使用電力を30分単位で把握することで、実際の最大電力に合った容量の選定が可能になった。

             都内に設置されたスマメ


また、経済産業省は、石川県と連携し、能登半島の地震・豪雨被害を踏まえ、被災者の救出・救助、避難者の生活や復旧・復興支援などに電力データを活用する実証を実施。さらに、実際の災害対応業務に電力データを活用した石川県の事例から、その有用性を確認している。

今後は民間企業などによるビジネス展開も予想される。現状、電力データを活用するためのシステムは一般送配電事業者が所有しているスマメデータを集約するシステム、データ利用者にサービスを提供する法人が所有するシステムなどが分離しており、システムを所有する事業者がそれぞれ異なる。


今後、電力・ガス基本政策小委員会の方針の下、事業者間でのシステム統合を進めていく状況だ。これによってシステムコストの低減を図ることができれば、電力データによるサービス事業の活性化、普及拡大につながることが見込まれる。

【特集2まとめ】社会課題を解決するインフラへ スマートメーター進化論

通信ネットワークを取り入れて進化するスマートメーター。


電力業界では第2世代の仕様が決まり、2025年度中に取り付けが始まる。


都市ガス業界では、大手3社が先陣を切って設置に乗り出したほか、データの送受信を担うセンターシステムの運用などに取り組む。


地方都市ガス事業者は、独自に導入を検討する動きが活発だ。


スマートメーターは大規模なシステム構築が求められてくるが、設備のスリム化、保安の高度化など、導入のメリットは大きい。


社会課題の解決するインフラの一翼を担うものになりそうだ。

【アウトライン】次世代スマメが拓く社会変容 情報産業の新たな価値創造へ

【インタビュー】「価値獲得」へ各社が手探り 自治体の付加価値向上も

【レポート】専門家交えガイドライン改定 外部接続に関する体制を強化

【レポート】異業種・自治体と共同実証 地域課題解決に資するサービス

【レポート】都市ガスの新たなインフラ創り 全域への設置完了へ着実に前進

【レポート】電力スマメの通信網を利用 コストを抑制し全件に導入へ

【トピックス】自治体や事業者と連携しサービス実証 製造業の枠超えソリューションを創出

【トピックス】唯一のIoT専業の通信事業者 多様な規格をそろえ事業に対応

【インタビュー】利便性とセキュリティを両立 30年代に全戸への導入目指す

【特集2】次世代スマメが拓く社会変容 情報産業の新たな価値創造へ

電力・ガスのスマートメーター普及が全国で進んでいる。
業務効率化、省エネ推進、データ利活用などのさらなる進展が期待される。

従来型メーターに通信機能が備わったスマートメーター(スマメ)。既に第一世代の導入は完了し、第二世代への置き換えが始まった今、どのような進化を遂げ、今後、社会にどのようなインパクトを与えようとしているのかに関心が集まっている。


第一世代の全件導入がもたらした成果は大きい。これまで人手に頼ってきた検針業務や電気の遮断・復旧を遠隔で行えるようになったことで、委託費用の抑制につながった。さらに、災害時に電力データを活用することで早期復旧に貢献している。


実際に、石川県は2024年の能登半島地震および奥能登豪雨の災害対応業務に電力データを活用。発災直後から復興支援までの幅広い場面での電力データの有効性が確認された。また、最近では「共同検針」の実証を始めた自治体もある。例えば四国電力送配電が取り組む、電力スマメのネットワークを利用して水道やガスなどの検針を行う共同検針は、社会的コストの合理化、検針保安業務の効率化などさまざまなメリットがある。

             集合住宅に設置されたスマートメーター

分散化・多層化志向に対応 リアルタイム制御が可能

第二世代導入を推進する背景にあるのが、再生可能エネルギーなど分散型エネルギーの導入拡大だ。再エネのコストが低下しているのに加え、デジタル技術の進展によるエネルギーマネジメントの高度化、災害時のレジリエンス強化に対する関心の高まりや、カーボンニュートラル宣言などが後押ししている。


とりわけ、分散化・多層化を志向する次世代の配電プラットフォームにおいては、データを活用した電力ネットワーク運用の高度化、電力分野以外への電力データの利用拡大、需要側リソースの拡大に伴う取引ニーズの多様化などに対応することが求められている。これにより、リアルタイムでの電力需給調整や、分散型電源の増加に対応した電圧制御、さらには多様なIoT機器との連携が期待されている。


今後10年間で8000万台を再度導入していくに当たり、23年6月に次世代スマメの計量部の仕様統一は完了している。その一方で、第一世代の導入と運用の経験から課題も浮き彫りになってきた。


一つは、導入に関わるコストを回収できるかどうかだ。レベニューキャップ制度の第一規制期間(23~27年度)においては物価上昇などは原価参入を認めないとされており、最近の物価高の影響を回避できていないのが実情だ。一般送配事業者がそういった影響を自助努力のみで吸収することには限界があり、物価などの変動影響を制度に適正に反映することが求められている。


二つ目は、情報セキュリティー対策だ。第一世代導入から「スマートメーターシステムセキュリティガイドライン」に準拠してきたが、さらに見直しを進め、今年2月に改定した。


主な改定点は、外部接続に関するセキュリティー強化で、外部機器・システムとの接続点におけるリスクアセスメントや脆弱性管理の徹底、接続点の最小化、ログ収集などの取り組みを明確化した。


また、外部接続事業者との管理・合意形成に関し、外部機器・システムとの接続や運用に関する責任分界点、通報・遮断・再接続手順などを整理し、合意形成を求める方針を明記した。今後増加することが見込まれる共同検針のように、電力以外のデータを電力ネットワークに受け入れることを考えれば、システム全体のセキュリティーの確保は極めて重要だ。

先行投資に膨大な負担 中小向けの支援を想定

ガス業界のスマートメーターについては、経済産業省が大手事業者とそれ以外の二つに分けて導入・運用のロードマップを示している。大手事業者は20~30年代前半までを導入段階、30年代前半以降を運用段階としている。このロードマップに沿って、東京、大阪、東邦の大手都市ガス3社は20年からシステムの共同開発に着手。その結果生まれたのが、個々のスマートメーターと3社の業務システム間で情報の送受信を担うセンターシステム「SMANEO(スマネオ)」だ。3社共通のインフラとして機能するため、開発・維持管理のコスト低減につながった。

ガスのスマートメーター化も今後進む


22年12月から東京ガスを皮切りに、大阪ガス、東邦ガスでも順次運用が始まっており 10年後には、3社合計2200万台超のスマメがSMANEOに接続される。これは全都市ガス需要家の約70%に相当し、都市ガス業界全体として業務の効率化や保安・レジリエンスの高度化が図られることになる。


中小事業者については、大手事業者の運用開始後に導入を始めるというロードマップが描かれている。20~30年代に検討、30年代以降に導入、40年代以降に運用というスケジュールだ。トライアルで導入している事業者も一部あるが、多くの事業者は現在、情報収集を進めているところ。導入には、メーター本体に加えて、通信ユニット、中継器、システム改修などの設備投資の負担が避けられない。今後、中小事業者が導入を加速させていくには、これらの膨大な先行投資を促す経済的な支援策が必要になると想定されている。一方で、スマメの導入は人件費の低減に直結するため、早期に導入を進めたいと考える事業者もいる。


本特集では、スマートメーターの次世代化を通じて、エネルギー供給の安定性と業務効率の向上を図るとともに、ビッグデータを活用した新たな価値創出を目指す取り組みを紹介する。

【特集2】都市ガスの新たなインフラ創り 全域への設置完了へ着実に前進

【東京ガスネットワーク】

都市ガス業界でスマートメーターの導入が着々と進んでいる。
供給エリア全域設置にいち早く着手した東京ガスネットワークを取材した。

首都圏を中心とした約1200万件への都市ガス供給を担う東京ガスネットワークは、2024年1月から供給エリア全域を対象にスマートメーターの導入を開始した。


現在、既存ガスメーターの検定有効期間満了(検満)による交換、あるいは新設などの時期にスマートメーターへの入れ替えを進めている。今年10月末時点の設置件数は約350万件。全需要家の3割ほどへの導入が完了したことになる。30年代前半には供給エリア全域への設置を終える計画だ。


既存のガスメーターは「マイコンメーター」と呼ばれ、家庭用を中心に供給エリア全域に設置されている。ガス使用量の計量機能に加え、高い保安機能を持っているのが特徴だ。ガス漏れや震度5強相当以上の地震の揺れを検知すると、自動でガスを即座に遮断する。東日本大震災などの災害時には、その威力を発揮してきた。

       無線機能付きマイコンメーター

複数タイプに先行導入 多種多様な通信環境を確認

この既存ガスメーターに通信端末を取り付けたのが、導入を進めているスマートメーターだ。一般的に、メーターは電池で駆動する。そのため、検満までの10年間、電池交換しなくて済むよう、省電力になる通信方式が採用されている。


まず、メーターで計測したガス使用量などの情報は、各需要家のメーター間を転送するマルチホップ通信によって中継器に送られる。続いて、中継器が集約したメーター数十台分の情報をLTE(携帯電話回線)通信網を介し、同社のセンターシステムに送信する仕組みだ。


同社は今回の全域導入を始めるにあたり、19年から一部エリアへの先行導入を実施してきた。最初に設置したのは商業ビルや工場、戸建て住宅、集合住宅など、さまざまなタイプの需要家が混在するエリア。スマートメーター推進部スマートメーター企画グループの滝沢孝一マネージャーは、「業務用、一般住宅用といったさまざまな環境下でのメーターの設置性や通信状況などを確認するためだった」とその意図を説明する。


例えば、メーター同士の距離が離れていた場合、マルチホップ通信ができるかどうかの確認が必要だ。マンションに設置したケースでは、ガスメーターが鉄製のボックスに設置されていたり、構造上の壁が隔たりとなる場合、通信環境が不安定になることも判明した。

課題に直面するたび、仮説を立てて検証を行い、改善策を講じていく―。この積み重ねによって築かれたノウハウが、全域導入に向けた大きな足掛かりへとつながった。

大手3社でシステム開発 維持管理費などを低減へ

将来的なスマートメーターの普及を見据え、20年からは大阪ガスネットワーク、東邦ガスネットワークとともに、システムの共同開発も行ってきた。それがスマートメーターと3社の業務システム間での情報の送受信を担うセンターシステム「SMANEO(スマネオ)」だ。

スマートメーターによる遠隔検針の仕組み


その特徴は大きく三つ挙げられる。一つが通信方式の柔軟性だ。通信業界は技術の進歩が早く、通信方式が刻々と変化する。そこで、通信制御を行う「通信モジュール」と業務に関する情報の保持や処理を担う「業務モジュール」を分離したシステムを構築した。これにより、将来、通信方式が変わっても、通信モジュールだけを修正すれば対応が可能になっている。二つ目が、サーバーの拡張性だ。検満の時期に応じて、接続するスマートメーターが段階的に増えていく状況に対応できるよう、クラウド上でシステムを構築した。


最も苦労したのが、三つ目となる3社共通のインターフェース(API)を作ること。当然ながら、3社が保有する検針・メーター管理や緊急保安といった業務システムが必要とするインターフェースやシステム機能はそれぞれ異なる。そのため、1年近くかけて要件定義に取り組み、3社の業務に必要な機能やインターフェースの共通化を実現した。一方で、共同開発ならではのメリットもあった。同部スマートメーター事業グループの木津吉永マネージャーは、「3社の考えを持ち寄ってインターフェースを構築したことで、自社の業務にも生かせるノウハウや知見が得られた」という。システムの共通化、共同利用で、開発・維持管理コストの低減にもつながった。


こうして、約2年の月日をかけ、SMANEOは無事に完成。22年12月からの東京ガスネットワークを皮切りに、大阪ガスネットワーク、東邦ガスネットワークでも順次、運用が始まっている。最終的に、3社合計で2200万台超のスマートメーターがSMANEOに接続される予定だ。


全域への導入を開始して、もうすぐ2年が経過する。「全てのメーターをつなぐ通信ネットワークの構築は、都市ガス供給事業における新たなインフラづくり。挑戦を重ねながら着実に前進していく」。同部の若狭匡輔部長は語る。同社は今後も目標とする完了時期に向けた設置を着実に進め、安定した運用に注力しながら、業務の効率化や保安・レジリエンスの高度化を図っていく構えだ。

(左から)木津マネージャー、若狭部長、滝沢マネージャー