【特集2 動き出した柏崎刈羽】再稼働の先を見据えて 次世代に描く将来像

14年の月日を経て再稼働を果たした柏崎刈羽原子力発電所。
石川氏と稲垣所長が、次の時代に向けた展望を語り合った。

石川和男/政策アナリスト

稲垣武之/東京電力ホールディングス柏崎刈羽原子力発電所長

石川 今年4月に6号機が本格的に運転を開始した時の率直な気持ち、また発電所内の雰囲気はどうだったのかを教えてください。


稲垣 再稼働までの14年は大変に長かったですが、2021年の安全対策工事未完了の解決や3年にわたる追加検査など、さまざまな課題の克服に全力で取り組んできました。今年1月、制御棒駆動系の電源トラブルで起動工程を一時中断した際には、徹底したトラブルシューティングを行いました。


 それらの対応を経て出力が上がり、制御室のモニターに表示された「1400(MW)」という発電出力の数字を目にした時は格別な思いが込み上げました。「改めてわれわれは電気を作っている会社だ。そしてようやく関東に電気を送れる、安定供給に貢献できる」と、発電所員や協力企業の皆と喜びを分かち合えたと思っています。

 おかげさまで、現在は定格熱出力一定運転を続けています。ちなみに、発電出力の約140万kWは一般家庭約35万~45万世帯分に相当します。

事故対応能力の弱さを痛感 報じるべき内容の区別必要

石川 日本では第一次オイルショック以降、天然ガスや原子力の利用を促進し、エネルギー安全保障を確保してきました。しかし、東日本大震災以降、化石資源、とりわけ天然ガスへの依存度が高まり、その水準は下がっています。さらに、原子力は安全性確保への要求レベルが厳しくなり、これまで大変な努力を重ねてきたと思います。


稲垣 私自身、福島第一原子力発電所の事故を現場で経験しました。この時、事故対応能力の弱さを痛感したからこそ、それを克服することが事故を経験したわれわれの最大の責務だと思っています。新規制基準に基づいた設備面の強化はもちろんですが、運用面の向上にも注力しました。24時間365日、事故対応がしっかりできる体制づくりに相当苦労しましたが、決して無駄な時間ではなかったと思っています。


石川 一方で、一部メディアの報道には疑問があります。新潟県内のメディアでは「重大事故ベスト10」という特集記事を目にしましたが、(所員の)「突き指」や「転倒」といった原子炉と何ら関係のないものが掲載されていて驚きました。


 また、他の発電所のケースですが、タービンの蒸気漏れといった不具合が、原子力安全上の過酷事故と同じトーンで報道されていたこともあります。重大なこと、そうでないことを明確に区別して報道すべきだと思います。


稲垣 われわれとしては丁寧な情報発信と説明が非常に重要だと感じています。例えば今回、本格運転の前に不具合がありました。説明しますと、制御棒の駆動に関して、当所の1から5号機や福島第一などは水圧で動かす仕組みです。一方で6、7号機は、制御棒の駆動は通常は電動モーターを使い、緊急時に水圧で動かします。水圧システムは稼働できる状態なので安全上の問題は全くなかったのですが、「制御棒のトラブル」とだけ報じられると、「非常に危ない」となります。


 そこで、記者会見などでは、「どういう装置で、どういう不具合なのか。なぜ安全性に問題がないのか」までを丁寧に説明するようにしました。その後、「問題がある」といった報道はありませんでしたし、新潟県知事や柏崎市長をはじめとした地域の皆さまからも安全性への一定の評価をいただいたと感じています。

中央制御室で確認している

【特集2 動き出した柏崎刈羽】柏崎市民にようやく笑顔戻る 信頼回復に向けた努力を評価

地元経済界が待ち望んだ再稼働がようやく実現した。
西川会頭は「正常化への第一歩」と喜びをにじませた。

インタビュー/西川正男(柏崎商工会議所会頭)

―6号機が営業運転を再開しました。


西川 東日本大震災の後、私たちは「原子力発電所の『正常化』」という言葉を使い、早期再稼働を求めてきました。発電所は運転状態が正常だと考えるからです。再稼働は正常化の第一歩でとても喜んでいます。同時に街の雰囲気が変わったと感じています。市民の表情にも笑顔が増えた気がしますね。


―東京電力の取り組みはどうでしたか。


西川 信頼回復に向けて地道に努力してきたと思います。テロ対策を巡る不適切事案の後には、担当者が会員企業を1社ずつ回りました。最初は厳しい声も多かったようですが、何度も顔を合わせるうちに、最後には期待の声を掛けてもらえるようになったと聞いています。発電所入口での稲垣武之所長のあいさつ活動も、いつしか東芝や日立といった関連企業も一緒に取り組むようになり、構内では東電社員以外もあいさつをしてくれるようになりました。「笑顔が増えた」というのは、東電や関連企業の皆さんにも言えることだと思います。震災後、社員の皆さんには何となく後ろめたさが付きまとっていたはずですが、ようやく元気を取り戻したように感じます。


―地元経済への期待は。


西川 再稼働によって今後は定期検査が行われます。運転が止まって以降、定検に携わっていた方々は、福島第一原子力発電所や青森県六ヶ所村に出向いてしのいできました。今後、他号機が動き出すことで、常にどこかの号機で定検を実施している状況になることを望んでいます。また来年には、柏崎駅前に東電の原子力部門の本社機能を備えた事務所が完成します。約200人が勤務するとのことで、地域経済にとっては確実にプラスです。

経済界主導で協議体を発足 街づくりデザインを官民で共有

―7月17日には新たな地域振興のための協議体「柏崎刈羽地域共創イニシアティブ」が設立されました。狙いは。


西川 発電所の正常化を求める活動に注力せざるを得ませんでしたが、もう一度、発電所を活用した地域振興を考える時です。地域全体の街づくりのデザインを共有しながら動いていくために、柏崎市、刈羽村、新潟県、国、東電も加わる形で協議体を立ち上げました。青森県や福井県にも同様の枠組みがありますが、それは国主導です。私たちが目指すのは地元主導です。若い世代が「自分の発言で街が動く」と実感できれば、柏崎はもっと元気になります。その道筋を描きたいですね。

さいかわ・まさお 1956年柏崎市生まれ。79年日本大学卒業後、81年西川鉄工所(現サイカワ)入社、94年から社長。柏崎青年会議所理事長などを経て2010年から現職。

インフォメーション

学びのイノベーション・プラットフォーム

高校生が天然ガスの重要性を学ぶセミナー開催

数少ない国産天然ガスの産出地である新潟県で5月26日、未来を担う高校生にその重要性を知ってもらおうと「持続可能な未来とエネルギー:天然ガスが鍵を握るワケ」をテーマにセミナーが開催された。主催は、STEAM教育を推進する「学びのイノベーション・プラットフォーム(PLIJ)」。INPEXの北村俊昭相談役と三菱商事の宮本直人・エネルギー&パワーソリューショングループCEOが講演したほか、INPEXの豪事務所や直江津LNG基地と中継をつなぎ、天然ガスビジネスの最前線を紹介した。北村氏は「安定供給の確保は最大の責務。だからこそ直江津LNG基地は事業の心臓部だ」と強調した。

日本ガス協会/全国LPガス協会/日本ガス石油機器工業会など

省エネ給湯器普及を目指した会議体を設立

給湯器メーカーやエネルギー事業者などの24団体は5月、関係省庁と連携し、「ガス石油省エネ給湯機普及促進会議(スマいる給湯プロジェクト)」を設立した。同会議は省エネ給湯器を2035年度までに設置可能な全物件に設置し、市場全体の75%まで引き上げることを目指す。
政府が掲げる温室効果ガス削減目標の達成には、エネルギー消費の約3割を占める家庭部門での普及が不可欠で、消費者の認知度不足などの課題を官民協働で解決する。座長を務める芝浦工業大学建築学部の秋元孝之教授は設立発表会で「さまざまなステークホルダーが連携し、省エネ給湯機の普及促進を進めることが重要」と述べた。

INPEX/大阪ガス/三菱重工業

デジタルプラットフォームでクリーンガス証書を管理

INPEX、大阪ガス、三菱重工業の3社は6月4日、「世界最大級のメタネーションによるCO2排出削減・有効利用実用化技術開発事業(長岡メタネーション実証)」でeメタンの環境価値を証書化し、移転・管理するシステムの運用を開始した。大阪ガスと三菱重工が開発した「CO2NNEX」を活用した都市ガス業界初の仕組みで、回収したCO2と水素から製造したeメタンの属性や証書を一元管理する。新潟県長岡市や朝日酒造、岩塚製菓と連携し、地産地消モデルの構築と将来のクリーン燃料証書制度の先行事例化を目指し、eメタンの社会実装とカーボンニュートラル実現に貢献していく方針だ。

川崎重工業

ごみ焼却施設でのCO2分離回収技術の実証を開始

川崎重工は6月3日、ごみ焼却施設から発生する排ガスを対象としたCO2分離回収技術「Kawasaki CO2 Capture(KCC)」の実証設備が完成し、実証試験を開始したと発表した。同社は2023年度から福島県郡山市と連携した取り組みを進めており、設備や運用面での課題を検証するとともに、回収したCO2の資源活用を図る「郡山モデル」の実現を目指す。

ヤマハ発動機/中部電力ミライズ

CN実現に向けたパートナーシップ協定を締結

ヤマハ発動機と中部電力ミライズは6月15日、カーボンニュートラル(CN)実現に向けたパートナーシップ協定を締結した。両社はこれまでも温室効果ガス排出量の削減に取り組んできた。今回の締結により、2035年のスコープ1.2.達成に向け、水素活用や再エネ導入、サプライチェーンの脱炭素化などを推進し、持続可能な社会の実現を目指す方針だ。

ヤマト住建

耐水害仕様の住宅販売を開始

ヤマト住建は6月、豪雨災害や浸水被害への対策として、建物内部への浸水を防ぐ「耐水害住宅仕様」を発売した。約2年にわたる共同研究と4回の止水実験を経て開発。地盤面から最大1mの浸水や、キッチンや浴室・トイレなどからの下水逆流を想定して基礎や外壁などを対策した。同社は今後も、水害発生後も住み続けられる住宅を目指すとしている。

【特集2 分散型エネルギー事情】急ピッチのDC向け供給インフラ整備 小回り利く電源が新戦力に

DC向け需要が増える中、分散型インフラ整備が急ピッチで進んでいる。
既存インフラとともに供給を担う、各地のコージェネ・再エネ事例を取材した。

分散型電源の機能がにわかに注目されている。国内のエネルギー事情が劇的に変化しつつあるからだ。中東戦争に端を発する上流の化石資源調達の供給不安は言わずもがな、下流の利用側に目を向けるとデーターセンター(DC)を筆頭に電力需要が急増している。こうした状況に対し、設備整備を担う一般送配電事業者のある幹部は頭を抱える。「DC向けには1サイト当たり10MW級のオーダーが求められている。資機材が高騰し工事力も不足する中、2年や3年といった事業者が求める時間軸ではインフラを整備できない。ネットワーク全体の潮流も管理しながら、DC向けにどこまでリソースを割けるか。もし仮に計画が白紙となったら……」。そんな悪夢が脳裏をかすめてしまうという。


そこで白羽の矢が立つのが分散型だ。大手都市ガス会社は、ガスコージェネを武器にDC向けにソリューションを仕掛けている。DCの敷地内に大型のガスエンジンを敷設すれば「3年程度で電力供給が可能だ」(大手ガス)という。周辺にガス導管が整備されていれば、その運用は一層スムーズだ。


だが、そもそも分散型でも対応できるという発想がDC事業者側には浸透していない。技術の進展によってガスエンジンの大型化も進み、発電効率は50%近くに達している。分散型利用の認知度が高まれば、激変する昨今のエネルギー事情に大きく貢献できる。


熱の有効活用も鍵を握る。秋澤淳・東京農工大学工学研究院教授によれば、「ガスエンジンの高温排熱を吸収式冷温水機に投入することでDCの冷却用に使える。DCからの低温排熱を利用する技術もあり、施設全体のエネルギー効率を高められる」。また、岡本浩・東京電力ホールディングス上席フェローは、「熱の地産地消が必要だ。DCサイト周辺に熱を使う産業を呼び込めばエリア全体の効率改善になる」との見解を示す。

小規模ながらも存在感 既存系統との共生・融合へ

これまで大規模電源を中心に整備されてきた電力インフラ。今後はガスエンジンのような小回りの利く分散型も欠かせないピースになっていく。


さらに再エネや蓄電池によるマイクログリッド、地域資源を燃料に有効活用するバイオマス火力など、小規規模ながらも存在感を発揮する事例も生まれている。各地の事情を追う。

地域資源を活用する大野浦バイオマス発電                         提供:広島ガス

【特集2 分散型エネルギー事情】水素の供給量に合わせた空調運転実現へ 大阪ガスなどが仕様検討進める

脱炭素化を実現するには、都市ガス業界が導入を目指すe―メタン(合成メタン)のほか、水素やアンモニアといった多様なカーボンニュートラル(CN)燃料に対応する機器やソリューションの準備が急務だ。こうした中、大阪ガスとDaigasエナジー、パナソニックの3社は、昨年8月に技術開発と製品評価の完了を発表した業界初の「水素および都市ガス混焼対応吸収式冷温水機」の商品化に向け、仕様の検討を進めている。


水素と自然冷媒によるカーボンフリー空調を実現できるとあって、発表後には企業などから大きな反響が寄せられた。今年6月には、電気需要最適化に資する優れた機器やシステムに贈られる「令和8年度デマンドサイドマネジメント表彰(DSMA)」(ヒートポンプ・蓄熱センター主催)の機器部門で優秀賞を受賞した。NOX低減技術が水素活用の発展に大きく貢献できる点や、既存機への水素・都市ガスの燃焼部の後付け可能であるといった先進性が評価されたのだ。

DSMA表彰式に臨む関係者ら

精緻な制御技術を確立 混焼率に応じ空気を供給

グリーン水素を生成する上で欠かせない再生可能エネルギー由来の電気は、天候に左右されやすく、それによって供給できる水素量が変動してしまう。同製品の特長は、将来的にカーボンニュートラルな水素の供給量や価格が見通せない中で、水素と都市ガスの混焼率を調整することで、その状況下に合わせた適切な燃料を選択し、安定した冷暖房を提供できる点にある。それを可能にした技術の要が、パナソニックの「低NOXバーナ技術」と、Daigasエナジーの「燃焼制御技術」だ。


水素は都市ガスに比べて燃焼速度が約6倍と極めて速い。そのため、そのまま燃焼させると局所的な高温が発生し、NOXが基準値を上回ってしまうことが導入する上での大きな課題だった。


そこでパナソニックは、燃焼後の排ガスを再利用することで水素を燃焼しにくくし燃焼速度を抑える構造を採用した「低NOXバーナ」を開発。局所的な高温の発生を防ぐことで、水素専焼時であっても、NOXの排出量を都市ガス専焼時と同等以下に抑制する。


一方のDaigasエナジーが手掛けたのは、独自のデジタル燃焼制御システム「Dr.Flame(ドクターフレーム)」の技術を応用した、精緻な流量制御技術の確立だ。冷暖房の出力変動に伴い燃焼量を変える際、水素と都市ガスの混焼比率ごとにNOX値を基準値以内に収めるための適切な空気の割合は変動する。混焼率に応じた水素と都市ガスの流量、そしてその混合率に応じた最適な空気量を適切にコントロールしなければならない。


空気量のコントロールには「リンケージ方式」と呼ばれる従来技術が用いられることが多いが、使用範囲の全領域で精密にコントロールすることが難しい。この問題を克服するため、同社が着目したのが、流量を制御する弁の前後の「圧力差」だ。開発を担当したビジネス開発部技術開発チーム燃焼技術開発グループの神谷一彰チーフは、「弁の前後に圧力計を設置しその差を検知することで、流量計なしで適切な制御が可能になった」と、ポイントを説明する。

混焼率に合わせ空気比を適切にコントロールする

既存機をアップデート可能 リスクなくCNに対応

3社は現在、市場へのヒアリングを重ねながら、商品化に向けたスペックの絞り込みを行っているところ。現段階では水素インフラがどのような規模、スピード感で導入されていくかを見極めることは難しい。技術開発チーム空調・業務用開発グループの金内健チーフは、「まずは副生水素を活用できる工場などでの導入を見込んでいる」とし、「現在、商品化時期の検討を進めている」と明かす。


大型機器を導入してしまうと、水素供給が滞った際のリスクが高く、顧客企業にとって大きな投資負担となってしまう課題もある。その点、本体を丸ごと買い替えるのではなく、既存の都市ガス対応の吸収式冷温水機に、バーナや燃焼制御ユニット、燃焼制御盤といった燃焼関連部品を追加・交換するだけで、水素混焼・専焼機へとアップデートできるようにする本開発は、企業の低リスクでスムーズな水素運用を後押しする意義は大きい。

燃料関連部品の追加・交換のみでアップデートが可能だ


都市ガスへのe―メタン導入によりCNを目指す大阪ガス。その移行期における水素活用のニーズに向け、 同製品の開発を進めてきた。技術開発チームの山下祥史マネジャーは、「社会全体で CNの実現に向かっている中、その移行期においても水素をはじめとした多様な燃料に対応可能な技術開発を進め、貢献していきたい」と、次のステップを見据える。

【特集2 分散型エネルギー事情】静岡で鈴与のマイクログリッドが稼働

鈴与商事がエネルギーの地産地消プロジェクトを開始した。
太陽光と蓄電池などを活用し、長期停電時の電力供給を両立する取り組みだ。

鈴与商事は3月、静岡市清水区日の出地域で「日の出地域エネルギー供給プロジェクト」を開始した。同プロジェクトは、静岡県の「清水港港湾脱炭素化推進計画」と静岡市の「脱炭素先行地域」の取り組みと連動し、2030年カーボンニュートラル実現を目指すもの。太陽光発電や蓄電池、エネルギーマネジメントシステム(EMS)を組み合わせ、再生可能エネルギーの地産地消と災害時の自立電力供給を両立する地域一体型モデルを作り上げた。

プロジェクトを実施する日の出地域

物流倉庫の屋根に太陽光設置 自立運転試験で需要家に供給

設備としては日の出地域の大型物流倉庫3棟の屋根などに合計1008kWの太陽光発電を設置。これに電力を平準化させることを目的とした蓄電池を併設したのに加え、系統用大型蓄電池(出力1950kW、容量5484kW時)を建設した。これにより、年間約100万kW時の発電量を確保、一般家庭263世帯分の消費電力に相当するほか、地域のCO2排出量を約半分に削減する見込みだ。


また、同プロジェクトでは、地域マイクログリッドとして電力供給を行うことも可能。電源開発、中部電力パワーグリッド、鈴与電力とコンソーシアムを組み、平常時は地産地消を進めつつ、台風などによる長期停電時には配電系統から切り離して自立運転できる。2月15日に実施した発動試験では、約3時間にわたり防災施設である清水マリンビルをはじめ23件の需要家に電力を供給した。


開所式で伊藤正彦社長は「エネルギー供給の不安定さが高まる中、地域でエネルギーを作り、蓄え、安定的に使う仕組みの重要性を改めて感じている」と述べた。同プロジェクトではフィルム型ペロブスカイト太陽電池導入も検討する。従来設置が難しかった場所でもエネルギーの創出を図っていく構えだ。

開所式には平木静岡県副知事や難波静岡市長も参加

【特集2 分散型エネルギー事情】広島ガスの2MW級バイオマス発電所が運開

再生可能エネルギー電源の開発を着実に進めてきた広島ガス。
燃料の全てを国産資源で賄う、新たな発電所が稼働した。

広島ガスが手掛けた大野浦バイオマス発電所(1990kW、広島県廿日市市)が運開した。中国電力との共同出資による海田発電所に続くバイオマス発電所で、今回は初の単独事業だ。発電量は年間約1380万kW時、一般家庭約3200世帯分に相当する。燃料は全量を国産木質バイオマスとし、主に山口県東部森林組合の林地残材活用のチップを使う。木質バイオマスの年間使用量は約2万8000tで、CO2を約6165t削減するほか、地域森林資源の有効活用や土砂災害の被害軽減、森林保全にもつなげる。

燃料は全て国内の未利用材を使用


100%子会社のHG Wood Powerが発電所の維持管理を担い、業務委託先の8人が二交替で運転を監視する。本発電所は、FIP(市場連動価格買い取り)制度を活用し、広島ガスをはじめとする小売電気事業者など供給先を柔軟に選定していくという。

電力を収益事業の柱に 自社電源確保へ投資を継続

本発電所は瀬戸内海に面する約3万8000㎡もの広大な社有地の一角に立地する。主要幹線道路や高速道路からアクセスが良く燃料輸送の効率に優れ、また発電に適した工業用地であるためこの地が選定された。


タクマのプラントをパッケージで採用し、約1万㎡にボイラー、タービン棟、チップヤード、チップ供給棟を備える。HG Wood Powerの木戸志紀氏は、「コンパクトに配置できた。排ガスから熱を回収し空気温度を上げることで燃焼性が高まるほか、幅広い形状の燃料へ対応可能なトラベリングストーカ炉によって安定運転が見込める」と説明する。


広島ガスはこれまで各地で太陽光や風力発電事業に参画しており、2030年度までに6万kWの再生可能エネルギー電源の開発を目標にしている。本発電所の稼働で4万8000kWに達し、目標に一歩近づいた。30年度までに電力小売り契約10万件の達成を目指しており、都市ガスやプロパンガスと並ぶ収益事業の柱に据えたい考え。経営企画部の井上仁・イノベーション推進室長は、「電力事業を展開する上で供給力の確保は大きな課題。自社電源の強みを生かすべく、電源ポートフォリオの拡充を進めていきたい」と、さらなる再エネ開発投資に意欲を見せる。

【特集2 分散型エネルギー事情】運用の柔軟性が強みに 熱の脱炭素化が重要課題

多様な役割のある、コージェネレーションなどの熱利用。
その重要性や普及に向けた課題などを秋澤教授に聞いた。

インタビュー/秋澤 淳(東京農工大学工学研究院化学物理工学部門教授)

―分散型エネルギーとしてのコージェネの役割について聞かせてください。


秋澤 コージェネは、熱と電気を自前で作って使うという仕組みに意義があります。省エネやレジリエンスへの貢献をはじめ、昨今では再生可能エネルギーが増えてきたことにより電力系統の調整力への貢献も期待されています。コージェネの特長の一つである柔軟な運用によって系統電力と協調させるなど、多面的な役割が担えます。


―電力需要が増加中のデータセンター(DC)に導入するニーズも生まれています。


秋澤 発電時の熱を吸収冷凍機の熱源に利用することで、空調(冷房)用の冷水を作れます。DCに電力を供給すると同時に排熱利用により空調もできるので一石二鳥です。さらに熱と電気を使い切る上では、DC単独への供給だけでなく、熱需要のある施設を呼び込んでエリア全体での面的利用計画も有効です。自治体などとも連携し、立地エリアのメリットにつながる展開が望ましいです。

約70℃の温度帯で利用が可能 排熱や太陽熱にポテンシャル

―排熱の有効活用が重要です。


秋澤 課題である熱の脱炭素化に有効です。排熱は脱炭素熱源なので、活用していけばCO2削減につながります。また、私の研究分野である熱駆動ヒートポンプの吸着式冷凍機は、70℃ほどの温度帯の熱でも約10℃の冷水が作れます。70℃程度の排熱は工場などのいたるところで発生しますから、有効活用のポテンシャルが大きいはずです。


―太陽熱利用も有効です。


秋澤 例えば、工場の屋根などに太陽光発電を無償設置して、発電した電力の使用分を支払うPPA(電力購入契約)という仕組みがあります。これを太陽熱にも活用して「再エネ熱版PPA」として普及を図っていくのも一つの方法です。


―熱利用の促進に向けた今後の課題は。


秋澤 太陽熱利用などの成熟した技術には、電気の固定価格買い取り(FIT)制度のような支援がなく、普及しないまま認知度が低下していることが問題です。また、第4次から第7次までのエネルギー基本計画でも再生可能エネルギー熱に触れていますが、なかなか進展していません。国の制度的な支援が必要であるとともに、今後、エネルギー会社にはCO2削減スキームなどのサービス提供を通して、再エネ熱利用も提案してもらいたいと思います。

あきさわ・あつし 1995年東大大学院工学系研究科修了。東京農工大工学部准教授などを経て2007年から教授。19年度から22年度まで同大大学院生物システム応用科学府長。

【特集2 分散型エネルギー事情】TGESが大型コージェネを活用 DC向けに早期のエネ供給実現

現在、急激にニーズが高まっている国内のデータセンター(DC)市場。それに伴う電力需要も増加の一途をたどることが予想されている。


ただ、大規模なDC向けとなると1サイト当たりに要する電力供給力のオーダーは5万kW、10万kWにも上ることがあるが、このような「特別高圧」レベルの送電インフラは全国津々浦々で十分に整備されているわけではない。


突如として沸いた電力需要に対して、既存の電力系統のインフラだけでは不十分で新たな設備が必要になるが、「(一般送配電事業者から)整備するまでに10年かかる」と言われるケースが少なくない。このことが、現在のDC建設の大きな障壁となっている。

鍵は電源ハイブリッド 不足分を賄う供給方式

既存の電力インフラに頼り過ぎない対策案はないか――。エネルギー業界がこうした悩みを抱える中、東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)が「電源ハイブリッド型DCソリューション」の提案に力を入れている。


この「電源ハイブリッド」という文言は、2025年3月に経済産業省と総務省が立ち上げた「ワット・ビット連携官民懇談会」で使用された表現だ。この会議は、DC向け電力供給に対する前述のような課題を視野に電力と通信インフラの一体整備を目指す狙いでスタートしたもの。既存の電力インフラを有効活用しつつ、不足分をガスコージェネなどの他の電源で補うという考え方が示された。設備を完全に既存の電力系統から切り離す「オフグリッド」で運用するのではなく、系統電力で受電できる分は受け、足りない分を分散型で賄うというハイブリッドの方式である。


では、こうした分散型にはどのようなメリットがあるのか整理してみよう。まずはDC向け電力供給に至るまでの時間軸の短さが挙げられる。エネルギーソシューション本部の一色大輔・営業技術ソリューション部長は次のように説明する。


「場合によっては、(一般送配電事業者による)電力系統インフラの増強整備の時間に比べて圧倒的に早く電力供給を実現できる。早ければ3年ちょっとで供給できるようになるだろう。DC事業者にとっては、早期にビジネスを開始できるチャンスになる」

分散型のメリットを語る一色氏


大口需要が生まれることによる電力系統網の潮流全体の管理、それを踏まえた用地買収や送電網の敷設工事など、一般送配電事業者は膨大な時間をかけてインフラを整備する必要がある。それに比べてガスコージェネの場合は、DCの敷地内に設備を設置すればよく、供給までの時間軸を大幅に短縮できる算段である。


次にコージェネの発電効率の高さが挙げられる。メーカーの技術開発により、コージェネの単機当たりの大型化が進み、とりわけ1万kW近くの大型機においては、昨今では50%近くの発電効率を実現している。一定の負荷の下、一年中稼働しているDCに対して、コージェネも高い稼働率が求められる。自ずと発電効率の高い運転が可能となるわけだ。


さらに「DCは大量の熱が発生するため、冷却が欠かせない。コージェネからの排熱を排熱投入型吸収式冷温水機で冷熱に変換し冷却に利用することで、全体のエネルギー効率をさらに高めることができる。予備機を含め冗長性と信頼性も確保した設計で運用を支えられる」(同)

大型コージェネが大きな役割を果たす

DC側の弱点を補完 エネサービス事業で支援

こうしたメリットを踏まえて現在、TGESが進めているのが電源ハイブリッド型DCソリューションなのだ。


DC側の設備運営スタッフはビル管理といった建屋運用に類するノウハウは持ち合わせてはいても、発電設備などの特殊な運用ノウハウを持たないことがほとんどだという。そこに、エネルギー設備運用のプロであるTGESがサービス事業としてサポートすることで、その弱点を補完できる。


また、TGESは安定運用の体制も整備している。DCは24時間365日の安定稼働が絶対条件だ。同社の設備運用拠点である「ヘリオネットセンター(東京・江東)」を通じて24時間体制で遠隔監視を行い、トラブルの予兆検知や緊急時の出動に対応する高度な運用保守(O&M)体制を整えている。


このソリューションは、DC同様に大量の電力と熱を必要とする半導体工場などにも応用可能だ。さらにTGESでは、DC向けだけでなく、コージェネを核としたエネルギーの面的利用も視野に入れている。DCサイトの周辺に熱を利用する需要家を呼び込めば、エリア全体のエネルギー効率を高めることができる。「企業誘致を担う自治体にも、このソリューションの意義を伝えている」(同)


同社の電源ハイブリッド型DCソリューションは、単なる設備の導入にとどまらない、電力不足という社会課題に対するソリューションである。公共インフラの運用を担う一般送配電事業者の負担を減らし、DC事業者への早期電力供給を果たすことで、社会全体の三方良しを実現するソリューションとしての活用が期待される。

【特集2まとめ】分散エネ共生時代 系統と融合する多様な供給網

火力や原子力など大規模電源を核に、

今日の電力供給網は整備されてきた。

だが今、分散型のエネルギーシステムへの注目度が

日に日に高まっている。

建設ラッシュのデータセンターなど、

新たな需要向けの供給源として期待されているのだ。

コージェネや再エネなど多様な分散型を駆使した、

新たな時代の安定供給体制とは―。

従来のシステムと融合していく分散型の今を追う。

【アウトライン】急ピッチのDC向け供給インフラ整備 小回り利く電源が新戦力に

【インタビュー】運用の柔軟性が強みに 熱の脱炭素化が重要課題

【レポート】TGESが大型コージェネを活用 DC向けに早期のエネ供給実現

【レポート】東急不動産が北海道内の再エネのみでDC運用

【トピックス】次世代ITイベントで注目 熱利用産業と一体の電力インフラ整備

【レポート】水素の供給量に合わせた空調運転実現へ 大阪ガスなどが仕様検討進める

【レポート】AIを使った熱供給の運転自動化に挑む丸の内熱供給

【トピックス】広島ガスの2MW級バイオマス発電所が運開

【トピックス】静岡で鈴与のマイクログリッドが稼働

【特集2 分散型エネルギー事情】AIを使った熱供給の運転自動化に挑む丸の内熱供給

日本有数のビジネス街、東京都千代田区の大手町・丸の内・有楽町(大丸有)エリア。地下には配管が張り巡らされ、オフィスビルなどに冷暖房、給湯用の温熱や冷熱が供給されている。その熱供給を担うのが、丸の内熱供給だ。内幸町・青山エリアを含む全23カ所の地域熱供給プラントを所有。そのうち5地点を監視拠点とし、オペレーターがエリアごとの設備運用・管理を行っている。そんな同社は2月、プラントの運転自動化に向け、AIを活用した試験運用に着手した。


採用したAIは、プリファードネットワークス社が開発したプラント自動化AIソリューション「PlantPilot」。過去の稼働データと運転ノウハウを学習し、センサーデータをもとに最適な操作の提案を行う役割を担う。現在は、大手町ビルサブプラントのターボ冷凍機に先行導入し、実稼働データをAIに読み込ませるガイダンス試験を実施中だ。運用開始以降、順調に稼働中。これから冷熱需要がピークを迎える夏季が、本格的な評価の場となっていく。2027年度中に本格稼働する予定だ。

熱需要が大幅増の見込み 人材不足問題に先手の対策

安定供給には、オペレーターの経験とノウハウが不可欠。設備のインバーター搭載・非搭載機の使い分けをはじめ、電力会社との契約内でピーク電力を超えない範囲での電力使用量などを管理しながら、需要変動に応じて冷凍機の温度設定や稼働台数を調整。需要家ごとの使用状況に合わせて熱供給している。


こうした複雑な判断を求められるオペレーター業務の自動化をなぜ進めるのか。小林伸和常務執行役員は、「日本では少子高齢化が進み、労働人口が減少しており、将来、オペレーターの担い手が減ってくる。そこで、人材不足をAIで補完する形を目指すことにした」と説明する。とはいえ、完全な無人化ではなく、人がやるべき業務はオペレーターが担い、それ以外の業務については、AIの活用を進めていくという。また、大丸有エリアは現在、大規模再開発の真っただ中。将来的に熱需要の大幅な増加が見込まれ、プラントの増設が必要になる。開発技術部の八木秀隆副部長は「プラントが増えても、AI導入やDⅩ推進によって業務負担を減らし、現在の運用体制を維持し高度化していきたい」と話す。


同社はすでに冷凍機との熱交換を行うクーリングタワー(冷却塔)の運転に新菱冷熱と共同開発したAIシステムを採用し、運用の最適化による省エネを実現している。今回の運用試験で自動化による安定供給を目指しつつ、将来的には、既存のAIシステムとの融合を図り、運用の効率化にもつなげていく考えだ。さらに、「今後は複数プラントの連携によって日本最大級の熱導管ネットワークを構築してきたノウハウを生かし、業界全体の課題解決にも貢献してきたい」と小林常務は意欲を示す。 AIを使い安定供給を図る今回の取り組みは、地域熱供給業界の新たなモデルとなる。

試験運用を実施中のターボ冷凍機

【特集2 分散型エネルギー事情】東急不動産が北海道内の再エネのみでDC運用

データセンター(DC)は東京や大阪などの都市部に集中している。これを補完・代替する地域として有力視されているのが北海道だ。寒冷地のため省エネ運用が可能なほか、南海トラフ地震のリスクを回避できるなどの利点がある。こうした中、東急不動産は6月、「石狩再エネデータセンター第1号」を完成させた。延床面積は約1万㎡、受電容量は1万5000kWで、6区画のテナントが入る。

寒冷地の利点を生かしたDC


特長は再生可能エネルギー100%の電力で運用する点だ。同社が主体となり、石狩市が出資する「石狩地域エネルギー合同会社」を介した電力供給スキームを採用。DCに隣接する約5000kWの太陽光発電所、さらに今後新設予定の風力発電所から自営線を使いオンサイトPPA(電力販売契約)で直接供給する。不足分は同社グループの新電力ReENE(リエネ)が扱うオフサイトPPAや、リエネ所有の銭函風力発電所(小樽市)などから環境価値を調達するなど、道内の再エネ電源から系統経由で賄う。電力料金は「中間マージンなどを削減し、大手電力と同じ価格で提供する。100%再エネという付加価値のある電力を低価格で供給できるスキームを作り上げた」と担当者は強調する。

通信にIOWNを採用 遠隔地の弱点を補う

DC内の設備は、日本データセンター協会のファシリティスタンダードで最高位となるティア4相当に準拠する。UPS(無停電電源装置)は必要台数に予備2台を加えた構成で、サーバーまでの電源経路を物理的に複数化した。停電時はUPSのバッテリーから数分間給電し、その間に非常用ガスタービン発電機が立ち上がり、48時間の継続運転が可能だ。


冷却空調は空冷方式で、1データホール当たり8台利用し、最終的に計40台を実装する計画だ。サーバーからの排熱は空調設備で回収して冷やし、再びサーバー室に送られる。DC内で空気を循環させているため、排熱を外部に放出することはないとのことだ。

空調設備で排熱を取り込み冷気を送る


通信面ではNTT東日本のIOWN構想に基づくAPN(オールフォトニクス・ネットワーク)を今年8月に導入する。東京・大手町と接続して、高速・大容量・低遅延・省電力での通信を実現する。遠隔地DCの弱点を補い、災害対策用途や都市型DCとの一体利用といった新たな需要を狙う。


脱炭素先行地域である石狩市で再エネの地産地消とDC立地を一体化させた同事業は、国が掲げる「ワット・ビット連携」とDC地方分散の先行モデルとなる。GXとDXの同時実現を掲げる同社においても、試金石となる取り組みだ。

【特集2 分散型エネルギー事情】次世代ITイベントで注目 熱利用産業と一体の電力インフラ整備

IT業界向けのイベントで注目されたDCを巡るエネルギー事情。
パネルセッションでは、DCの在り方などが話し合われた。

日本最大級の規模を誇るインターネットテクノロジーの専門イベント「Interop Tokyo 2026」が6月10~12日の3日間、千葉県の幕張メッセで開かれた。同時開催の「デジタルサイネージジャパン 2026」「AI NATIVE EXPO 2026」「画像認識 AI Expo 2026」では、エネルギー業界に向けた注目の講演が目白押し。「AIネイティブ時代のインフラ戦略」「デジタルインフラと北海道」「データセンター向け電力ソリューション」「AI時代のサイバーセキュリティ最前線」「電力・熱・密度を制する新サーバー」などの講演に多くの聴講者が集まった。

東電HDが熱の有効活用に言及 寒冷地の暖房需要にメリット

中でも注目されたのが「激変するデータセンタービジネスとデジタルインフラ―AIの進化とワットビット連携―」だ。江崎浩・東京大学大学院情報理工学系研究科教授を司会に、岡本浩・東京電力ホールディングス上席フェロー、田中邦裕・さくらインターネット社長がディスカッションした。


岡本氏はデータセンター(DC)向けのエネルギー供給事情に触れながら「近年、エネルギーの地産地消という概念や取り組みが広がってきた。今後はデータの地産地消に加え、熱の地産地消という概念が必要になる」と指摘した。


この熱の地産地消とは「DCから膨大に発生する熱を有効に活用する」という視点だ。例えば、農業の温熱ハウス向けの熱利用。現状では重油を活用するケースが多いが、「DCからの熱を有効に活用できる」(岡本氏)とし、DCを集積させるだけでなく農業など熱を使う他の産業を呼び込むことを前提とした整備計画の必要性を述べた。田中社長はDC事業者として北海道での取り組みに触れ、「暖房用にDCからの排熱を使っている。暖房費はほとんどかからない」と強調。寒冷地におけるメリットを話した。


最後に岡本氏は「公共インフラである電力とともにAIやDC自体も社会に欠かせない基盤インフラになりつつある」とし、田中氏は「DCには水やエネルギーのインフラが備わっていて災害時には拠点にもなり得る。地域社会に受け入れられるDC建設や運用が一層必要になっていく」との考えを示した。

多くの人が来場し関心の高さがうかがえた

インフォメーション

サイサン/鈴木商館

一般高圧ガス容器再検査事業に進出

サイサンは産業ガス商社の鈴木商館と共同で、一般高圧ガス容器再検査事業を5月7日に開始した。同社にとって初の事業で、経験豊富な鈴木商館と共同で行う。サイサンの伊奈高圧ガスセンター(埼玉県北足立郡伊奈町)に再検査所を開設し、1日に開所式を行った。再検査所は耐圧検査や容器洗浄、乾燥、研磨、塗装などに用いる最新設備を導入。川本知彦社長は「今回の共同プロジェクトは、首都圏中央の好立地と最新設備、そして何よりディーラー間の連携が非常に画期的だ。充填、配送などへ共同化を広げ、新たな仲間も募って事業を拡大したい」と抱負を述べた。

東急電鉄/東急/東急パワーサプライ/東北電力など

鉄道運行にかかる使用電力の約3割を再エネに

東急電鉄は今年度から25年間にわたり、追加性のある再エネ由来の電力と環境価値を調達し、鉄道運行の約3割まで再エネの利用割合を高める。東急などが出資する複数の発電合同会社が東急電鉄向けに計約9万8000kWの太陽光発電所を国内各所で開発。調達した電力は東横線や田園都市線などの運行に使用する。発電合同会社が開発する太陽光発電所は今年4月から27年度末にかけて順次運用を開始する。これにより、28年度には、鉄道運行にかかる使用電力量の年間約3.7億kW時のうち、約1.1億kW時相当が同スキームによる追加性のある環境価値付き電力となる。

富士電機機器制御

製造現場向け無線対応電力計測ユニットを発売

富士電機の子会社である富士電機機器制御は5月12日、製造現場向け無線対応電力計測ユニットを発売した。製造業ではCO2削減に向けて製品のカーボンフットプリント(CFP)を可視化する取り組みが始まっている。欧州向け製品では、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)によるCFPの明示など、国際基準への準拠が求められている。同製品は製造現場における電力使用量の計測・管理の需要に対応するもので、センサーを無線化することで分電盤内の配線を減らし、取り付け時の時間と工数を削減できる。設置することで、生産する製品の電力使用量の見える化と生産性向上の両立に寄与する。

古河電気工業

北九州響灘洋上風力向け海底ケーブル工事が完了

古河電気工業は4月23日、北九州響灘洋上ウインドファーム向けの海底ケーブルシステムの設計・製造・敷設据付工事が完了したと発表した。同発電所は北九州市沖の響灘海域に位置し、出力9600kWの風車25基で構成される。最大出力は22万kW。完成時点では国内最大の洋上風力発電所となる。今回敷設した海底ケーブルは総延長59kmに及ぶ。

東京電力エナジーパートナー

エネ供給が空気調和・衛生工学会賞を受賞

東京電力エナジーパートナーは5月14日、森ビルと設立した虎ノ門エネルギーネットワークが運用する「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」が空気調和・衛生工学会の第64 回技術賞建築設備部門を受賞したと発表した。同ビルでは、街区内の需要家へ熱エネルギーの供給を行うための地域冷暖房プラントを設置。AIを活用し、効率的な自動運転を行っている。

KDDIグループ

全世界にあるDCの電力を再エネ100%に

KDDIグループはこのほど、国内外のデータセンター(DC)で使用する電力を再エネ100%に切り替えたと発表した。同グループでは、エネルギー事業会社auリニューアブルエナジーが開発・運用を手掛ける太陽光発電の電気をDCなど向けに追加性のある再エネとして活用している。今回、DCからの排熱再利用など省エネと組み合わせ再エネ100%を実現した。

【特集2 省エネ最前線】エレクトロヒートセンターが加熱分野で電化を積極推進

産業界の電気利用による加熱・冷却システムの技術向上と普及拡大を図る日本エレクトロヒートセンター(JEHC)。省エネの余地が大きい加熱分野ではヒートポンプ、アークプラズマ、赤外線などのアプローチがある。中でも同センターがさらなる省エネに期待するのが、産業用ヒートポンプだ。


産業用ヒートポンプの一般的な導入スタイルは、既存の燃焼ボイラーとの組み合わせによるもの。給水された水をヒートポンプで60~90℃程度まで昇温し、その予熱によってボイラーの負荷を軽減するハイブリッド方式だ。同センターによると、年間で400台程度の産業用のヒートポンプ設備が導入されているそうだ。本来であればヒートポンプのみで対応するほうが省エネの効果は大きい。ただ、高温度帯への開発や大容量化など、産業用途の本格的な利用にはまだまだ技術的な開発に課題を残しているのが現状だ。


同時に生産プロセスを担う設備の改良も期待されている。その一例が、洗浄機などの設備メーカーが開発した、あらかじめヒートポンプを組み込んだ「プロセス一体型ヒートポンプ」だ。こうした設備によって、ユーザーは生産品の品質リスクを抑えつつ、汎用的な設備として取り入れやすくなる。

最適な提案・設計が必要に 専門人材の育成が課題

技術開発だけでなく、今後の省エネを進める上で欠かせない取り組みが、現場への導入を支援する人材育成だという。JEHCの関係者は「エネルギー供給事業者、設備メーカー、そしてユーザーの間をつなぎ、産業現場全体の生産プロセスを最適に仕上げる設備提案や設計をするインテグレーターが必要だ。残念ながらそういった人材はまだまだ少ない」と話す。


そうした状況を少しでも改善しようと、JEHCでは現在、用途や目的に応じた導入を解説するガイド本を販売中だ。また、定期的にセミナーなどを開催し、エネルギー事業者やメーカー、ユーザーの知見を広く共有しながら、産業用途の省エネに向けた取り組みを進めている。

設備導入を支援するガイド本