【特集2 省エネ最前線】SHK制度改正で未利用エネ活用の進展に期待

2026年6月3日

エネルギーの面的利用で効率化を図る地域熱供給。制度改正などを追い風に活躍の場が広がっている。

インタビュー/松原浩司(日本熱供給事業協会専務理事)

―地域熱供給は、省エネにどのような効果を発揮しますか。


松原 一番の特徴が、都市活動を面的に支える基盤システムという点です。これまで設備の効率化などを積極的に進め、冷暖房、給湯、蒸気を中心にエネルギー効率を向上させてきました。そのため、業務部門を中心に都市、あるいは供給エリア全体での省エネに貢献できると考えています。

清掃工場などの排熱を対象に追加 CO2排出係数の計上が不要に

―今年4月に、温室効果ガス排出量算定・報告・公表(SHK)制度が改正されました。


松原 今回の改正のポイントの一つが、未利用熱の活用が盛り込まれたことです。例えば、清掃工場の排熱を利用した事業者は、CO2排出係数の計上が不要になりました。これにより、地域熱供給のCO2排出原単位がさらに改善されていく方向になると考えられます。また、熱供給各社のCO2排出を実質ゼロにできるメニューの提供をさらに後押しするなど、SHK制度活用の質的な拡大につながっていくことを期待しています。


―ここ最近で注目すべき導入事例は。


松原 一つには、大阪・うめきた地区の再開発による複合施設「グラングリーン大阪」が挙げられます。ここでは、帯水層蓄熱を活用して、冷暖房のエネルギー削減を実現しています。もう一つが長野県小諸市の事例です。同市は、下水熱利用の地域熱供給を採用しました。老朽化した医療機関や市庁舎の更新などを機にしたコンパクトシティ形成に併せて導入し、エリア内のエネルギーの効率化、省エネにつながりました。さらに、エネルギーコストも削減され、財政の負担軽減にも寄与しています。地域熱供給は大都市での導入が中心と思われがちですが、人口約4万人の小諸市がモデルとなれば、規模を問わず、今後、地方へのさらなる展開も期待されます。


―中長期ロードマップの取り組みの進捗はいかがですか。


松原 2050年に向け、①最新技術の導入による省エネ・省CO2運転、②熱の脱炭素化、③街のレジリエンス強化―を3本柱に取り組んでいます。①では、AIによる自動化と人の監視によるハイブリッドのエネマネを進めています。②では、SHK制度や水素の積極的な活用も、想定より前倒しで進んでいる状況です。引き続き、地域熱供給が都市拠点基盤インフラとして都市の発展を支え続ける役割を果たすために取り組んでいきます。

まつばら・こうじ 中央大学法学部卒、通商産業省(現経済産業省)入省。四国経済産業局資源エネルギー環境部長、地域経済部長などを歴任。2021年から現職。