【記者通信】エネ研が創立60周年記念イベント 『大転換期の国際エネルギー秩序』を紹介 ※無料公開
日本エネルギー経済研究所は7月3日、創立60周年記念イベントを開催した。「2050年までの日本のエネルギーシナリオ」と銘打った本イベントでは、同テーマに基づいた研究発表とパネル討論が行われ、最後に小林良和氏(理事 首席研究員 研究戦略ユニット担任 兼 資源・燃料・エネルギー安全保障ユニット担任)が、6月下旬に刊行した同研究所の編著書『大転換期の国際エネルギー秩序』(エネルギーフォーラム刊)の紹介を行った。

小林氏は、本書『大転換期の国際エネルギー秩序』の目的・位置付けについて、「国際情勢が大きく揺らぐ中で、気候変動対策の限界、米中対立の深刻化、経済安全保障の動揺など、エネルギーを取り巻く多様な課題に対して、国際エネルギー秩序という共通の視点から整理しようとする試み」とした上で、各章で取り扱っている内容を次のように紹介した。
〈序章〉
国際エネルギー秩序を、世界のエネルギー安定と持続可能性という“世界益”を守るための国際的メカニズムと定義し、エネルギー安全保障、国際市場の秩序、気候変動対策をその構成要素として位置付ける。また、誰が秩序維持のコストを負担するのか、多極化の中で新たな協調体制がどう形成されるのかといった根本的課題を提示する。
〈第1章〉
過去の国際エネルギー秩序とエネルギー安全保障の歴史的関係を分析し、現在の課題と日本の対応の方向性を示す。
〈第2章〉
気候変動対策をグローバルガバナンスの典型例として捉え、その歴史的変遷と国際エネルギー市場への影響を検討する。また、気候変動対策を名目とした保護主義的措置が自由貿易体制の不確実性を高めている点を指摘し、日本の向き合い方を論じる。
〈第3章〉
経済安全保障の観点で、クリーンエネルギーがもたらす安全保障上のメリット・懸念点を論考する。特に、この分野における中国の台頭が、レアアース依存など新たな脆弱性を生んでいる点を分析した上で、日本の内外戦略を示す。
〈第4章〉
気候対策の限界が見える中で再評価される石油・ガスの重要性に着目し、それぞれのエネルギーが形成してきた国際秩序の違いを比較し、日本の安定供給確保の課題を整理する。
〈第5章〉
ホルムズ封鎖による第三次石油危機で俄然注目を集めている中東情勢を扱う。アブラハム合意以降の地域秩序再編を踏まえ、中東が依然として国際エネルギー市場の鍵を握ることを示し、持続的安定に向けた国際社会の関わり方を論じる。
〈第6章〉
第5章までの分析を踏まえ、日本が取るべき戦略を総合的に提示し、複雑化する国際エネルギー情勢を理解するための新たな視点を提供する。
小林氏が述べているように、本書は複雑化する国際情勢を「国際エネルギー秩序」という統一的な視点で読み解こうとする点が、他の類書とは一線を画している。気候変動対策、エネルギー安全保障、米中対立、経済安全保障、貿易摩擦、中東情勢といった多様なテーマを、一つの枠組みで体系的に整理していることが大きな魅力だ。
各章ではテーマごとの歴史分析から最新の政策動向まで幅広く扱い、エネルギーと国際政治の関係性を立体的に理解できる構成となっている。また、ホルムズ封鎖・第三次石油危機などの最重要トピックはもちろん、石油・ガスやレアアースなどさまざまな資源の課題、中東秩序の再編など国家・地域間の動向について丁寧に取り上げて、日本が直面するリスクと戦略を実践的に示している点も特徴的。
読者に新たな視点と分析軸を提供し、国際エネルギー問題を総合的に捉えるための有益な手がかりをもたらす内容といえるだろう。
【書籍情報】
出版社:株式会社エネルギーフォーラム
書 名:『大転換期の国際エネルギー秩序』
著 者:一般財団法人日本エネルギー経済研究所
小山 堅/小林良和[編著]
久谷一朗/柳 美樹
柳沢崇文/坂梨 祥[著]
判 型:A5判/並製カバー装/248ページ
発売日:2026年6月23日
定 価:2750円(税込)
ISBN:978-4-88555-546-6
●書籍詳細
●Amazon
●プレスリリース(PR TIMES)


