【特集2 省エネ最前線】東京電力パワーグリッドが変圧設備の絶縁媒体に植物油を適用

2026年6月3日

大型電力インフラで脱石油依存の取り組みが進んでいる。CNにも資する東京電力パワーグリッドの戦略を聞いた。

インタビュー/塚尾茂之(東京電力パワーグリッド工務部変電技術担当部長)

―電力系統における設備運用で、化石資源の使用を減らす取り組みを進めています。


塚尾 カーボンニュートラル(CN)への取り組みが前提で、東京電力の第5次総合特別事業計画では2013年度比で30年度に50%以上のCO2削減を目指しています。例えば、適正な電圧に昇降圧する変圧器の絶縁媒体は、従来は鉱油や不燃性の特徴を持つSF6ガスでした。とりわけ都心部の地下変電所への設置が多い当社では、省スペース設計が可能で、防災面から不燃性であるSF6をよく使います。ただ、CNの観点から、化石資源の鉱油や地球温暖化係数(GWP)がCO2より非常に高いSF6ガスの使用を減らしています。

実運用下で防火性を明らかに 安全性担保する評価基準策定へ

―鉱油を減らすための具体策は。


塚尾 変圧器の絶縁媒体に植物油を適用することに取り組んでいます。植物油にはパームヤシを原料とした植物由来エステル系と、菜種や大豆を原料とした天然エステル系があり、植物が成長する過程でCO2を吸収することからCNと位置付けられています。植物由来エステルは引火点が鉱油と同等かつ低粘度で特性が似ています。機器のコンパクト化や高効率設計が可能ですが、引火点が鉱油と同じであることから、万が一の変圧器内部事故時の火災リスクを排除できません。一方、天然エステル系は鉱油と比べ高粘度で引火点が高く、海外では難燃性の油として知られています。国内流通量が最も多いのは国産で対応できる菜種油で、海外では大豆油が主流です。当社では24年度から導入を始め、パームヤシ、菜種、大豆それぞれを運用し、特性を見極めています。


 また、菜種と大豆は難燃ですが不燃ではありません。現在、実運用において不燃と難燃の防火性の違いを明らかにしようと業界全体で取り組んでいます。それらの評価基準をまとめた「電気協同研究」の報告書を28年度に発行する予定です。発行後はその基準を基に、各社の導入がさらに進むと思います。


―SF6ガスを使わない取り組みは。


塚尾 多くの設備でSF6ガスが使われていますが、今後はGWP1未満の自然由来ガス機器の開発・適用を進めていきます。当社府中変電所には、電力会社としては日本初となる代替ガス仕様のGIS(ガス絶縁開閉装置、72kV)を開発・導入しました。今後は開閉装置だけでなく変圧器でも代替ガス仕様の設備を開発し導入していきたいと考えています。

つかお・しげゆき 1994年3月早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。同年4月、東京電力入社。主に変電所設計や技術開発に従事。