【特集2 省エネ最前線】行動変容促す仕組みで社会全体の需要調整を
新築中心に、住宅の省エネ基準が徐々に強化されている。家庭の省エネへの影響や今後の課題について話を聞いた。
インタビュー/中村 美紀子(住環境計画研究所取締役 研究主幹)
―住宅の省エネ基準の最近の動向について教えてください。
中村 昨年4月に新築住宅の省エネ基準適合が義務化され、全ての新築住宅・建築物が対象となりました。さらに高性能な住宅として位置付けられるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準は遅くとも2030年度までには新築住宅の基本水準として、その性能を確保することが求められています。ZEHの新たな定義が公表されましたが、27年4月からZEHをさらに高性能化した「GX ZEH」も適用される予定です。
―ZEH基準とGX ZEHで異なる点は何でしょうか。
中村 GX ZEHではZEH基準よりもさらなる断熱や設備の高性能化が求められます。太陽光やHEMS(家庭用エネルギー管理システム)の活用、戸建住宅では蓄電池の採用も重視され、エネルギーを効率的に活用し、最適化するための仕様が必要になります。
既築住宅への対応が不可欠 リソース面で自治体間の差も
―新築住宅の基準強化が進む中、既築住宅にはどのような課題がありますか。
中村 脱炭素社会の実現には既築住宅の省エネ対応が不可欠ですが、所有権の問題などから行政介入が困難です。また、省エネ機器の買い替えなどの改修を進めるにあたり、補助制度への予算や専門人材の確保という面では自治体間でリソースにも差はあるようです。
―DR(デマンドレスポンス)の活用についてはいかがでしょうか。
中村 すでに一部地域で導入されているDRですが、今後は社会全体への普及に向け、対応機器の拡充やピーク時の需要コントロールが課題です。調整が需要家の負担とならないよう、需要家にとってメリットのある仕組みが欠かせません。例えば、イギリスでは政策を立案する際にユーザーの行動変容を促す「行動デザイン」の考え方や手法が活用されています。無理なく需要家の参加を後押しする工夫が重要になります。
―効率向上だけでは脱炭素化の実現は容易ではありません。
中村 家庭では、給湯や暖冷房に多くのエネルギーが使われています。これらを高効率な機器へ更新することは重要ですが、高い目標を達成するには、政府や企業の取り組みだけでは十分ではありません。エネルギーを使う需要家への啓発や、行動変容を促す環境整備が不可欠になると思います。



