【特集2 省エネ最前線】伊藤忠エネクスが「テラりんアイ」で家電別電力消費量を可視化

2026年6月3日

一般送配電事業者が全需要家に導入したスマートメーターを活用し、電力の使い方を高度化する新たなサービスが生まれている。伊藤忠エネクスグループで家庭向けの電力小売りを手掛けるエネクスライフサービスでは、簡易型家電分離サービス「テラりんアイ(AI)」を展開中だ。スマメから取得した30分単位の電力データを使い、家庭内の電力消費を冷暖房、待機電力、冷蔵庫、照明、その他の機器―の五つのカテゴリーに分離。それぞれの消費する電力量の見える化を実現する。ドライヤーや電子レンジ、洗濯機など、人が生活する上で使われる電気は「その他」に分類される。


ユーザーは最新のIoT家電に切り替える必要はなく、HEMS(家庭用エネルギー管理システム)や各家電に取り付けるセンサーの費用なども掛からない。面倒な家電登録も不要だ。

AI分析で推定値を算出 電力波形から技術を構築

テラりんアイには、エネルギーベンチャーであるインフォメティスのテクノロジーを活用している。インフォメティスは、東京電力パワーグリッドと間接的に資本関係を持つ会社だ。公的な統計データなどを活用し、季節や天気、時間といったさまざまな条件からAIが分析して電力消費量を算出する。電力消費量は、正確値ではなく推定値という点がポイントだ。


インフォメティスはこれまで、分電盤に取り付けたセンサーから得られる消費電力のデータ解析に実績がある。家電ごとに異なる電力波形に注目し、膨大なデータを蓄積。波形の組み合わせを推定したNILM(ニルム)と呼ばれる機器分離推定技術を構築したことで、今回のサービスが可能になった。


エネクスライフサービスの張誠堅電力カスタマーサービス次長は、「他の新電力との差別化を図るために無料でサービスを提供している。使用量がどのように変わったかをお客さまご自身で確認できることで、顧客満足度の向上や解約率の低減につながっている」と話す。また、家電の稼働状況も把握できることから、簡易的な見守りサービスも検討している。


最近では、AIを活用した節電アドバイス「テラりんのAIでんき診断」というサービスを開始した。直近7日間、および30日間の電力使用状況を分析し、適切な節電方法をAIがアドバイスするサービスだ。


今後は、デマンドレスポンス(DR)の活用や家電ごとの利用に応じた新たな電気料金メニューの設計も検討中だ。さらに、ガスとの連携も見据えている。例えば、暖房、給湯の用途を「分計」できる機能を持つガスメーターを設置している家庭では「今月はエアコンを使った方がお得」「来月はガスファンヒーターの方がお得」というように、用途に応じた電気とガスの使い分けが経済的なケースもある。「ベストミックスによって『節約のための我慢の暮らし』ではなく、『快適さを保ち無駄を省く暮らし』をお客さまに届けたい」と張氏は意欲を見せている。

スマメの30分値を活用する