【特集2 省エネ最前線】「省エネとCN」一石二鳥の水素転換
エネルギー、工業製品ともに影響を及ぼす原油不足。小林准教授は、水素転換などを本気で考える好機と話す。
インタビュー/小林敬幸(名古屋大学大学院工学研究科先進化学工学システム 准教授)
―中東危機の影響をどのように捉えていますか。
小林 ナフサ不足が一番のインパクトです。日本は、国内需要量の半分以上のナフサを輸入している一方、原油からナフサを生産すると、連産品として軽油やガソリン、重油も作られます。特定の石油製品の生産量を増やしたり減らしたりすると、おのずと他の製品の生産量にも影響します。例えば、プラスチックの使用量を減らすことは、ガソリンの消費量を減らすのと同じこと。つまり、プラスチック生産を減らすには省エネも必要で、省エネで賄えない部分は石油以外への燃料転換で、全体バランスを考えた設計が必要になります。
電力の供給源も各種電源を組み合わせたベストミックスとなるバランスが重要です。逆風にある石炭火力も発電効率を上げるための技術開発やアンモニア混焼など、温暖化対策に向けて取り組める内容はあると思います。
―化学産業において、例えば、原油から天然ガスへの転換はできるものですか。
小林 工業製品は、水素とCO(一酸化炭素)があれば製造できるので、天然ガスも使えます。ただ、価格の安さから、原油を原料とした製造が主流になっているのが現状です。
燃焼への使用で水素価格低減へ 地産地消モデルへの展開も
―水素のような次世代エネルギーの利用拡大のきっかけになるでしょうか。
小林 オーストラリアでは国と民間企業の連携で水素プロジェクトが進んでいますし、水素を活用したいという需要家も出てきていて利用が加速する方向にいくと思います。ただ、課題は価格です。現状では燃料電池用の高純度水素での供給がメインですが、工業炉の燃料用であれば、もう少し純度の低い水素でも使用が可能になり、価格を落とせます。また、そうした純度の水素であれば、例えば、ごみ焼却場の余剰電力で水素を作り、地域で活用するモデルも考えられます。水素の利用拡大につながるケースだと期待しています。
―製造現場などでも水素の研究は進んでいるのでしょうか。
小林 水素は燃焼速度が非常に早く、火炎の短さが特長です。それを踏まえ、バーナーの配置や炉内の空間設計を工夫することで燃焼効率を上げることは可能です。水素転換は、化石資源の削減とCO2排出削減の一石二鳥です。今後、水素の利用を進める上で、工業炉の構造を見直すチャンスだと思っています。



