【特集2 省エネ最前線】CN実現へ水素対応商品を拡充 需要開拓を図る東邦ガス
東邦ガスは30年以上前から工場向けの工業炉バーナーの開発に取り組んできた。同社が都市ガスを供給する地盤の東海3県が、工場の集積地であることが要因の一つ。工場を含む業務用などの分野へのガス販売量は約8割を占めるという。このほか、都市ガスは、電気に比べて工場までのエネルギーロスが少なく、工業用に適していたことも挙げられる。
東邦ガスエナジーエンジニアリング・産業技術部技術グループの清水誠也次長は「金属を温めたり、溶かしたり、ものを乾燥させたりとさまざまな用途でガスの熱源が必要になる。そこで、ガスの販売量を増やすことを目的に、熱効率の向上と、燃料を削減できる廃熱回収型バーナーなどの高効率工業炉バーナーの開発を始めた」と経緯を振り返る。

バーナーによる省エネのポイントとしては、主に次の二つが挙げられる。一つは空気比の正常化だ。燃料を燃焼させる際に必要な最小限の空気量は、理論空気量という。工業炉でバーナーを使用する時には、その理論空気量よりも若干多めの空気で燃焼させる必要がある。空気量が不足した場合には、一酸化炭素が発生し、安全性低下につながるためだ。
逆に空気が過剰の場合は、排ガスの持出熱が増大してしまう。そこで、バーナーの空気比を低減することで、排ガス量を減らせば、省エネにつなげることができる。
もう一つが、廃熱回収だ。燃焼に使用する空気を排ガスと熱交換することで、廃熱を効率良く回収することができる。
設備投資不要で試験が可能 工業炉の水素転換を支援
同社は、これらの技術の研究、開発を強化することにより、シングルエンドラジエントチューブバーナーといった高効率で耐用年数の長い商品を開発。さらに、省エネニーズに対応した低NOX型や省エネ型バーナーにも着手した。近年はカーボンニュートラル(CN)に対応すべく、都市ガス工業炉バーナーの水素対応モデルを商品化し、販売している。

東邦ガスは現在、メーカーとともに製造・開発した12種類の産業用バーナーを取り扱う。このうち水素燃焼が可能なバーナーは2機種あり、それ以外の機種でも研究、開発を進めているという。
東邦ガス・イノベーション推進本部技術研究所の大栗延章課長は「ステップとしては、仕様に沿って設計、試作をし、初期の性能評価を行う。性能自体に問題なければ、耐久評価を実施。機種によっては1年以上にわたる検証も行いながら、都市ガス仕様と同等の耐久性が証明されたものを商品化する」と開発のポイントを明かした。
さらに、「アルミの溶解などに利用されることが多い浸漬加熱バーナー(GIH)と鋼材などの熱処理向けのリジェネレイティブラジアントチューブバーナー(RSTB)などは、耐久性評価を進めており、商品化も視野に入っている」と新たなラインアップへの期待感をにじませる。同社は今後も要望や需要が見込めるものについて、水素バーナーの商品拡充を図っていくという。
加えて、同社では技術研究所内(愛知県東海市)で工業炉の水素化検討を支援するため、「水素燃焼おためしサービス」を展開中だ。2021年に始めた同サービスは、年間で10件ほどの利用がある。利用する事業者は、都市ガスと水素、それぞれの燃焼状態の比較試験を通じて、水素化による製品や既存設備への影響を確認でき、試験後の燃焼データの報告書も受け取ることが可能だ。また、水素設備への投資が不要で、コスト抑制のメリットもある。

省エネやCNの推進へ 多様な顧客ニーズに対応
東邦ガスは、今年3月に更新した「2050年カーボンニュートラルへの挑戦」の中で、天然ガスへの転換などによる足元からの低炭素化と、複数の手段による供給エネルギーのCN化を掲げる。イラン情勢など、エネルギーを取り巻く環境が激変する中、水素を含む多様なCN化手段に取り組むことで、環境変化に応じた柔軟な対応を実施する方針だ。清水氏は「会社として、しっかりとお客さまの要望や需要に応えることを、第一の目標にしています。省エネやCNの推進に積極的に関わっていきたい」と決意を語った。



