10月4日に投開票された自民党総裁選は、党員・党友票の大量得票を獲得した高市早苗元経済安全保障相が勝利した。自民党の総裁に女性が就任するのは結党以来初めてとなる。今月中旬にも召集される臨時国会で、憲政史上初の女性首相が誕生する見通しだ。国民的な人気は高いものの、自民党内では不人気という高市氏は当初、国会議員票で苦戦すると見られていた。だが予想以上の党員票の獲得に議員票がなだれ込み、勝利が濃厚とされていた小泉進次郎農水相に29票差をつけての圧勝劇となった。党員の減少や前3回の大型選挙で「自民党離れ」が加速する中、党員人気の底堅さが高市氏に勝利を呼び込んだ。

ただ衆参ともに過半数割れしている少数与党の現状に変わりはなく、今後の国会運営や政策実現にはいくつもの難関が待ち受けている。石破茂前政権と同様、綱渡りの政権運営となりそうだ。野党との連立拡大を模索するとともに、党内では国民的な人気が続く間に早期の解散総選挙を期待する声も出ており、永田町では緊張が張り詰めている。
地道な「仲間づくり」で党員票4割
「これほどまでに党員票を獲得するとは想定外の出来事だ」
4日午後、党員・党友票の開票が始まってまもなく自民党内に衝撃が走った。党員・党友票の開票結果が各陣営に逐一報告されたが、そのほとんどが高市早苗票だったからだ。
総裁選には5人が立候補し、1回目投票は295人の国会議員票と、これと同じ数を割り振られた党員・党友票の合計590票で争われた。高市氏が獲得した党員・党友票は4割を超えた。報道各社の党員調査でも高市氏がトップではあったものの、2位の小泉氏とつばぜり合いを演じると予想されていた。蓋を開けてみると、小泉氏は3割未満にとどまり、高市氏とは大きな差を生んだ。
この党員・党友票の動向にいち早く反応したが麻生太郎元首相で、率いる麻生派の議員に「党員の声を反映した形でフルスペックの総裁選になった。党員の声を聞け」と決選投票になった際の投票先を暗に「高市」と指示したのだ。これにより、高市氏の勝利は決定的になった。
菅義偉元首相をはじめ、旧岸田派の一部が支援に回った小泉陣営にはかなりの動揺が見られたという。1回目はともかく決選投票は一体誰に入れたらいいのか。勝ち馬に乗らなくていいのか。そんな思惑が交錯した。その結果が決選投票での国会議員票が1回目と比べ85票も上積みした高市氏に対し、65票の上積みにとどまった小泉氏との差に表れた格好だ。
ある陣営関係者は「高市さんがこれだけ党員・党友票で支持を集めたのは、前回の総裁選に敗れてから地方や団体の会合に足しげく通い、選挙応援でも選り好みせずに駆けつけるという地道な活動を続けていたからだ。前回敗れた後に麻生元首相から『仲間を増やす努力をしなさい』と助言を受けていたが、高市氏は忠実に実行に移した結果だといえる」と話した。













