日本各地で最高気温が40度を超す酷暑日を記録するなど日本は今年も暑い夏が続いている。日本だけでなく欧州や北米にも猛暑が襲いかかる。欧州では主要河川の水量が減る渇水も重なり、原発の運転に支障が出始めている。

猛暑による渇水の被害が最も出ているのが東欧諸国だ。ヨハン・シュトラウス2世の「青き美しきドナウ」で知られるドナウ川の水量減少が深刻だ。ドイツ南部の黒い森を水源に西から東へと流れるこの川は、ドイツからオーストリアを通りハンガリー、セルビア、ブルガリア、ルーマニアなど10カ国を経て黒海に注ぐ。全長2850㎞あまりの欧州では2番目の大河として知られる。
水位が下がり、冷却水を川から取り入れる取水口が水面より上となり、取水できない状態となっている。水温が30度にまで上昇したことで冷却効果が落ち、原発は出力低下を強いられている。また、通常より温度の高い温排水を川に戻せば、河川に生息する動植物の生態系を破壊しかねない環境問題などの観点からの影響も出ている。
こうした影響を受けているひとつがハンガリーのパクシュ原発だ。ロシア製の原発4基を運転する同国唯一の原発で、電力供給に占める割合は4割以上を占める重要施設だ。
4基合計の出力は約200万㎾あるが、渇水の影響を受けて徐々に出力を下げたり、運転を停止したりした。現在、稼働しているのは1基足らず。出力も全体の約10%に落ち込んでいる。政府は7月末に、大口需要家に自主的な節電を要請するとともに、国民にも電力需要の高まる夕方から夜の時間にかけての節電をするよう強く呼びかけている。
事態は深刻化する一方で、マジャール首相は、ドナウ川の水位がさらに低下すれば「完全停止する可能性がある」と表明した。ただ、上流に位置するオーストリアで降雨があったため、一時的に水位が20㎝ほど回復したものの、危機を脱したとはいえない状況にある。
ルーマニアも渇水被害 影響は原発大国フランスでも
ハンガリーの下流にあたるルーマニアでも渇水が原発を襲っている。チェルナボーダ原発でも冷却水不足が起き、2基のうち1基が運転停止に追い込まれている。これを解消するため、8月3日には、原発用の冷却水が取水口から確保できるようにルーマニア軍がドナウ川の岩盤を爆薬で爆破する荒療治を行った。
ルーマニアのポロジャン首相「ドナウ川の流量減少による発電量の低下を受け、8月いっぱいは全国を警戒体制に置く」ことを先月末に表明した。フランスのルノー系の自動車メーカーは8月中旬までの生産停止を発表するなど、人日の生活面だけでなく、経済活動にも大きな影響が出始めている。
猛暑と渇水の影響はフランスでも出ている。8月上旬に、フランス北東部を流れるミューズ川とモーゼル川の水量が低下し、チョーズ原発の2基の原子炉が運転を停止。カトノム原発も渇水の深刻化を見越して予防措置として1基の原子炉を止めた。
フランスでは22年にも歴史的熱波に見舞われ渇水と水温上昇が重なり、原発が運転を停止したり、出力を下げたりした。その結果、電力輸出国だったフランスが、一時的に電力輸入国に転落する事態に陥った。
筆者も欧州勤務時代、最高気温が40度を超す熱波に襲われた。日本とは違い、住宅だけでなく商業施設の多くにもエアコンがなく、扇風機すらなかった。強い日差しを浴びて部屋の気温が上昇するのを防ぐため日中は鎧戸を落とし、窓を閉めて過ごす。石造りの建物は、そうした方が涼しかった。気温が下がった未明には窓をあけ、明け方には閉める作業を続けて酷暑を乗り切ったことを思い出す。
欧州の酷暑と渇水は8月いっぱい続くとの予報もあり、被害が拡大する可能性もありそうだ。













