【時流潮流】原発促進の米大統領令から1年 見えてきた成果と課題

トランプ米大統領が昨年5月に原子力産業の発展を促す大統領令を発令してから1年が過ぎた。多数のスタートアップ企業が参入、さまざま新型原子炉の開発競争を続ける。一方で、2030年までに大型炉10基を整備する計画にはメドが立たず、成果とともに課題も見つかっている。

小型新型炉開発でリードするバラード・アトミックス社の「Ward250」。今年2月には原子炉本体をC17輸送機に積み込んだ空輸に成功した=米国防総省提供

トランプ政権は、大量の電力消費が必要となる人工知能(AI)開発で、中国との競争に勝ち抜くためには、原発を大幅に増強する必要があると位置付けている。大統領令では、2050年までに原発の発電容量を現在の4倍の400GWに引き上げる目標を掲げ、SMR(小型モジュール炉)やマイクロ炉など新型炉の早期導入を打ち出した。また、ロシア依存度が高い濃縮ウランや核燃料の米国内で自製や、中露に遅れをとっている原発輸出の促進策なども盛り込んだ。

1年を経て、最も活発な動きがあるのが新型炉の開発競争だ。大統領令を受けて、エネルギー省や軍がさまざまな支援プログラムを確立、資金面や技術面で新規参入企業を後押ししている。

エネルギー省は、米国が建国250年を迎える今年7月4日までに、少なくとも3基の新型炉を臨界させるという野心的なプロジェクトに取り組む。アイダホ国立研究所内の施設などで、臨界に向け新型炉の設置作業を続ける。

現在、先陣争いを繰り広げているのは、ウエスチングハウスの「eVinch」(出力5MW)炉、ラディアント社の「カレイドス」(同1.2MW)炉、アンタレス・ニュークリア社の「RI」(同200~300kw)炉、バラー・アトミック社の「Ward250」(同5MW)炉だ。

中でもWard250炉は、昨年11月に初期臨界を達成、7月までに発電開始を目指すなどトップランナーに位置する。今年2月には、米空軍のC17輸送機での空輸作業(写真参照)に成功、「いつでも、どこにでも、必要な場所に展開できる」炉であることを実証した。

カレイドス炉も注目の炉だ。コンセプトは、送電網にはつながず、米軍基地やデータセンターなどの施設専用に電力や熱を供給するマイクロ炉で、Ward250炉と同様にコンテナサイズで空輸できる。ラディアント社は、この炉を「世界初の量産型マイクロ炉」と位置付けており、28年から供給開始を目指す。

建国記念日までの臨界を目指す取り組みと連携し、米軍は28年9月末までに米国内の基地にマイクロ炉を設置するヤヌス計画に取り組んでいる。空軍はeVinch、カレイドス、RIの3炉を選定し、それぞれ異なる基地への配備を目指す。

「2030年までに10基整備」に暗雲 採算面で不安も

一方、課題も浮上している。そのひとつは、30年までに10基の整備が目標の大型炉建設だ。現時点では、建設に名乗りをあげる電力会社はなく、建設予定地の選定も進んでいない。建設費用が高額な上、工期の遅延も予想されるため、政府の後押しがあっても採算面での不安があるためだ。

その中で、運転を停止した原発の再稼働には進展が見られる。東部ペンシルベニア州のスリーマイルアイランド原発(出力853MW)と中西部ミシガン州のパレイセーズ原発(同800MW)が2年以内に再稼働する予定のほか、中西部アイオワ州のデュアン・アーノルド原発(同615MW)も再稼働する可能性がある。

核燃料などの米国内での自製問題は、商業ベースにのるまではまだ時間がかかりそうだ。大量の原発整備には、必要な数万人規模の労働者確保や、サプライチェーンの整備も必要となるなど課題も多い。さらなる政府の後押しが必要となりそうだ。

【ニュースの周辺】生物多様性・ネイチャーポジティブの現況と企業活動

本稿では、生物多様性・ネイチャーポジティブに関する近年の動向を企業活動の現状にも焦点を当てて見ていきたい。

さて、「生物多様性」については、生物多様性基本法に規定がある。

◎生物多様性基本法

第二条 定義「生物の多様性」

1.「生物の多様性」とは、様々な生態系が存在すること並びに生物の種間及び種内に様々な差異が存在することをいう。また、「自然資本」に関する定義には様々なものがあるが、環境省・農水省・経産省・国交省が2024年3月に策定した「ネイチャーポジティブ経済移行戦略~自然資本に立脚した企業価値の創造~」の中では、IIRC(国際統合報告フレームワーク:統合報告書のガイドライン)の定義で、自然資本には、〇空気、水、土地、鉱物及び森林、〇生物多様性、生態系の健全性、を含むとされている。

Ⅰ.「生物多様性・ネイチャーポジティブ」の意義・状況

Ⅰ-1.「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(22年12月)

22年12月、第15回生物多様性条約締約国会議(COP15カナダ・モントリオール)で「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択された。

◎22年12月「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(抜粋)

環境省「昆明・モントリオール生物多様性枠組の構造」より

*2050年ビジョン 自然と共生する世界の実現

*2030年ミッション 自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させるための緊急の行動をとる

30年ターゲットの例は下記の通り。

<ターゲット3> 陸と海のそれぞれ少なくとも30%を 保護地域及びOECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)により保全(30by30目標)

<ターゲット6> 侵略的外来種の導入率及び定着率を50%以上削減

<ターゲット15> 事業者(ビジネス)が、特に大企業や金融機関等は確実に、生物多様性に関するリスク、生物多様性への依存や影響を評価・開示し、持続可能な消費のために必要な情報を提供するための措置を講じる

Ⅰ-2. 英国・コーンウォールG7サミット(21年6月)

「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(22年12月)の採択に先立ち、G7各国は21年6月の英国・コーンウォールG7サミットにおいて、〇30年までに生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せるネイチャーポジティブな経済の促進、〇自国での「30by30目標」などを約束した。

◎首脳コミュニケ附属文書「G7・2030年自然協約」(抜粋)

次の10年間を通して、我々は、生物多様性の損失を止めて反転させるために、それぞれが政府全体を基礎として動員し、(1)移行、(2)投資、(3)保全、そして(4)説明責任の4つの主要な柱にまたがる行動をとる。

(1)移行:自然資源の持続可能かつ合法的な利用への移行を主導

(2)投資:自然に投資し、ネイチャーポジティブな経済を促進

(3)保全:自然を保護、保全、回復させる(30年までに世界の陸地・海洋の少なくとも30%を保全又は保護するための新たな世界目標を支持)

(4)説明責任:自然に対する説明責任及びコミットメントの実施を優先

Ⅰ-3. 「生物多様性国家戦略2023-2030」(23年3月)

上記の動きを受けて、わが国も23年3月31日、生物多様性に関する国家戦略「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定した。

◎環境省「生物多様性国家戦略2023-2030の概要」より(抜粋)

〈ポイント〉

・生物多様性損失と気候危機の2つの危機への統合的対応、30年までのネイチャーポジティブ実現に向けた社会の根本的変革

・「30by30目標」の達成等の取組により、健全な生態系を確保し、自然の恵みを維持回復

・自然や生態系への配慮や評価が組み込まれ、ネイチャーポジティブの駆動力となる取組など、自然資本を守り活かす社会経済活動の推進

〈戦略〉

*2050年ビジョン 自然と共生する社会

*2030年に向けた目標  ネイチャーポジティブ(自然再興)の実現

5つの基本戦略と、基本戦略ごとに状態目標(あるべき姿 全15個)と行動目標(なすべき行動 全25個)を設定。

基本戦略1 生態系の健全性の回復

基本戦略2 自然を活用した社会課題の解決

基本戦略3 ネイチャーポジティブ経済の実現

基本戦略4 生活・消費活動における生物多様性価値の認識と行動

基本戦略5 生物多様性に係る取組を支える基盤整備と国際連携

Ⅰ-4. 「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」(24年3月)

「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」(環境省・農水省・経産省・国交省の連名で策定)では、経済活動の自然資本への依存とその損失は、社会経済の持続可能性上の明確なリスクとされ、社会経済活動を持続可能とするため、ネイチャーポジティブ経営への移行が必要とされた。

◎「ネイチャーポジティブ経営への移行の必要性」(上記「移行戦略」より)

豊かな生物多様性に支えられた(空気、水、土地、鉱物、森林などの)「自然資本」は、人間が生存するために欠かせない安全な水や食料の安定的な供給に寄与するとともに、防災減災など暮らしの安全・安心を支え、地域独自の文化を育む基盤となるなど、豊かな社会の礎となっている。多くの経済活動が自然資本に依存しており、かつ自然資本は継続的に劣化していることが世界経済フォーラム(WEF)などで報告されている。

「ネイチャーポジティブ経済」とは、個々の企業が自社の価値創造プロセスにおいて自然の保全の概念を重要課題(マテリアリティ)として位置付け(ネイチャーポジティブ経営)、バリューチェーンにおける負荷の最小化と製品・サービスを通じた自然への貢献の最大化が図られ、また、そうした取組を消費者や市場などが評価する社会へと変化することを通じ、資金の流れの変革などがなされる経済を意味する。

Ⅰ-5. 生物多様性損失状況(WWF(世界自然保護基金)報告)

24年10月、WWFが発表した「生きている地球レポート2024」は、生物多様性の豊かさを示す指数が自然環境の損失や気候変動により過去50年(1970年〜2020年)で73%低下したとする。

◎「ファクトシート 生きている地球レポート2024」(抜粋)

24年10月、WWFの「生きている地球レポート2024」は、自然界の現状を科学的知見に基づいてまとめており、対象の野生生物種の個体群を分析した「生きている地球指数(Living Planet Index(LPI)」も含まれる。

同報告書は、自然の損失と気候変動という2つの危機がいかに地球を危険かつ不可逆的な転換点に近づけているかを検証している。

(参照)産経新聞(24年10月10日)

「生物多様性50年で73%減」「環境損失、気候変動が影響」

地球上の生物多様性の豊かさを示す指数は、自然環境の損失や気候変動により過去50年で73%低下したとの報告書を世界自然保護基金(WWF)が発表した。哺乳類や鳥類、両生類など計5495種の生息密度や巣の数などから算出した「生きている地球指数」を用いた。

20年の指数は1970年と比べて73%減少。生息環境別では、河川や湖沼、湿地といった淡水域の減少率が85%と最大で、陸域は69%、海域は56%と評価した。地域別で最も減少したのは中南米・カリブ海の95%で、アフリカが76%、日本を含むアジア太平洋地域が60%、農地開発に伴う森林破壊など生息地の劣化や喪失が脅威になっているという。

【記者通信】エネ代補助で大盤振る舞い 補正予算案を国会提出へ

高市早苗首相は5月26日、中東情勢を踏まえた2026年度補正予算案を来週にも国会に提出すると明らかにした。総額は3兆円強。一般予備費に5000億円を計上し、夏場の電気・ガス料金支援に充てる。新たに創設した「中東情勢等対応予備費」(仮称)には2.5兆円を計上し、ガソリンなど燃料油価格の補助に活用する方針だ。特別高圧電力やLPガスの利用者への支援などを念頭に、重点支援地方交付金も追加措置する。通常国会で補正予算を編成するのは、ロシアによるウクライナ侵略でエネルギー価格が高騰した22年以来だ。

電気料金は低圧で、8月使用分は1㎾時当たり4.5円、7月と9月は同3.5円を支援する。標準的な家庭では3カ月で5000円程度の負担引き下げ効果となり、予算総額は5000億円だ。電気・ガス料金補助は23年1月~24年5月まで続き、その後、24年夏・冬、25年夏・冬、そして今年夏と、復活を繰り返している。

料金補助を実施するにしても、今回の補助額には疑問が残る。昨夏は8月使用分が1㎾時当たり2.4円、7月と9月が同2.0円で、予算総額は2881億円だった。今夏はほぼ倍増となったが、高市首相は「電気ガス料金が昨年の水準以下になることにこだわった」とされる。しかし、昨年は参院選前の「物価高対策」だったのに対し、今年は石油の国家備蓄が放出される有事下にある。なぜ今、電気代を昨年以下にまで抑え込もうとするのか、理解に苦しむ。根底には国民の可処分所得が増え消費が伸びれば、税収も自然と伸びる──といった高市氏の単純な経済観がある気がしてならない。

「170円」を誇る高市首相 野党も迎合

燃料油補助金について高市首相は、26日の会見で「米国を含めたG7で最も安い水準である全国平均170円に抑制している」と誇った。「国民、特に地方住民の生活を支えるために必要」との声も聞かれるが、これまでの総額はいよいよ15兆円を超えた。財政状況の悪化は円安につながり、ドル建ての燃料輸入費用は増え、円安はさらに加速する。円安と金利上昇が顕著な今は、財政に気を配り、ガソリンの消費を抑制させ、円安に歯止めを掛けるべき時ではないのか。

自民党の鈴木俊一幹事長が23日、福岡県で行われた自民党の会合で「大変に財政的な負担がかかるもので、今後のこともしっかり考えなければならない」と述べるなど、ここにきて党内では補助の縮小や制度の見直しが必要との声が高まっている。だが、遅きに失した感は否めない。

今回の補正予算の多くは予備費の積み増しだ。予備費は内閣の責任で迅速に支出でき、国会の承諾は支出後となる。中道改革連合などの野党は「予備費ではなくきちっとした経済対策を」と反発するが、中道、立憲民主党、公明党の3党が25日、政府に提出した緊急提言には「燃料油補助継続のための財源補填」が盛り込まれていた。「もっと出せ」との批判は起きても、「本当に必要なのか」という意見は出てこない。

野村総研エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は25日、自身のコラムで〈生活が強く圧迫される中低所得層に絞った補助金とし、全体の支出規模を抑えるべきではないか。所得制限付きの補助金が技術的に難しいのであれば、電気・ガスの補助金とともにガソリン補助金の金額を抑え、同時に低所得者向けの給付金を新たに検討してもよいのではないか〉と綴った。15兆円を投じてもなお、永田町でこうした意見が主流にならない。

重要案件で質問1社だけ マスコミ嫌いの高市首相

ここにもう一つ、重要な問題がある。年度予算が実施されたばかりでの3兆円規模という大型の補正予算編成という極めて重要な事案にもかかわらず、高市首相の会見では、幹事社の1社にしか質問の機会が与えられなかったことだ。今回に限らず、質問数に上限を設けたり、記者がぶら下がりを希望しても、要望が通らなかったりと、官邸周辺では高市氏の「マスコミ嫌い」を彷彿とさせる対応が目立つ。歴代首相には見られなかったことだ。各種世論調査では、「政府は石油の節約を呼びかけるべきではないか」との声が高まっているが、高市首相は「石油供給は足りている」を繰り返すばかりで、財政、債券安、円安などの重要問題を含めて国民の不安に丁寧に応える姿勢が欠けている。

記者会見には一部、自分の意見を延々と主張したり、会見と全く関係のない質問をしたりする厄介な記者も参加するのは事実。ただ、こうした記者の質問を巧みにかわせれば、首相の評価もいっそう高まるのではないか。

【記者通信】国が燃料油補助を見直しへ 「目標価格」から「定額」へ変更か?

エネルギーフォーラムが再三問題を提起してきた燃料油補助事業が、見直されることになりそうだ。関係筋によれば、レギュラーガソリン1ℓ当たり170円をターゲット価格に設定し補助額が変動する現行方式から、一律で定額を補助する方式に切り替わる可能性がある。それによって、利用者に価格変動のシグナルが伝わり、高騰時には節約を促す効果も期待できる。ただ、有識者の間では「補助金を中途半端に残すのではなく、財政事情を踏まえて廃止すべきだ」(市場関係者)とする見方も少なくない。出口戦略をどう描くのかも含め、議論の行方が注目される。

首都圏では相変わらず150円台の値札が目立つ(5月17日、千葉県船橋市内のガソリンスタンド)

萩生田光一幹事長代行は5月18日の会見で、イラン情勢を背景にした現在の燃料油補助について「文字通り激変緩和措置なので、この170円を全く見直しせずにこのまま延々と続けるというのも、かなり無理がある」と指摘。その上で、「新しい原油については、輸送のコストなどを含めてかなり高いものになっている。そういったことを国民に理解していただくことも、必要ではないか」との見解を示した。一方で、原油量に関しては「代替国も含めて7割くらいの供給、そして220日分の備蓄がまだある。そういう意味では量的には心配はないところまで切り抜けた」と述べた。

翌19日、赤沢亮正経済産業相は閣議後会見で、燃料油補助金の問題についてこう言及した。「燃料油価格の激変緩和措置は、ガソリン価格が200円を超える水準に急騰する恐れがあったことを念頭に、国民生活と経済活動を守るために緊急的に、可及的速やかにガソリン価格を引き下げるために講じたもの。与党からは中東情勢、価格動向、政策の持続可能性を勘案しつつ、政府として柔軟に対応すべきとの提言をいただいている。中東情勢が不透明な中、今後の物価動向や経済に与える影響を注視するとともに、経産省として必要な検討を進めていく」

そもそも燃料油の補助金制度は、萩生田氏が経産相を務めていた2022年1月に原油価格高騰に対処するための激変緩和措置としてスタートした。その後、原油高は収束したものの、今度は円安の進展による輸入コスト高が起きたことから、物価高騰対策として継続。昨年12月末、ガソリン暫定税率の廃止に伴って、ようやく終了した。しかし、そのわずか2カ月後に米国・イスラエルとイランの軍事衝突が勃発。ホルムズ海峡が事実上封鎖され、原油価格が再び高騰したことで、3月19日に補助金が再開された格好だ。

【ニュースの周辺】中東情勢混迷の中で石油需要抑制策に関する二つの発言

米国・イスラエルとイランの戦争が長期化し、原油・石油製品に関して、需給安定、価格高騰対策、需要抑制・省エネ等多くの課題が語られる。

エネルギーフォーラム・オンラインの4月28日付〈【記者通信】経済界が需要抑制を訴えるも国は否定 脱石油政策はどこへは、〈経済界が需要抑制に向けた対策の必要性を訴えているのに対し、政府・与党が経済・社会活動維持の観点からこれを否定するという構図が見られている〉と紹介する。ここでは、いわばその後の続く話として、最近の需要抑制についての発言とそれについての政府の反応などを紹介しておきたい。

*週刊ダイヤモンド 2026/5/16号 『永田町ライブ』 後藤 謙次

連休前から首相官邸内で〈二つの禁句がある〉とささやかれている。「補正予算と節約」だ。

Ⅰ.石油連盟専務理事「早いタイミングで需要抑制策の検討を」発言

4月23日、日本テレビは、石油連盟の鈴木英夫専務理事が取材に応じて、「早いタイミングで需要抑制策の検討を」と政府に迅速な対応を求めた、と報じた。

◎2026年4月23日 日本テレビ

ホルムズ海峡封鎖による原油輸送への影響が続く中、石油元売り各社が加盟する石油連盟の鈴木専務理事は、日本テレビの取材に対し、「備蓄放出と代替調達だけでなく、需要抑制策が必要になってくる」として、政府に迅速な対応を求めました。

石油連盟の鈴木英夫専務理事が映像で)中東に原油を依存している国で需要抑制策をとっていないのは日本だけですので、いくら備蓄が長いといっても、なくなるものはなくなりますから、できるだけ早いタイミングで(需要)抑制策も検討していただきたい

政府は、ホルムズ海峡の封鎖を受け、石油備蓄の放出に加えて、アメリカなどから原油の代替調達を進めていますが、石油連盟の鈴木専務理事は、代替調達などで100%まかなうのは非常に難しい」とした上で、「安定供給をできるだけ長く持続するために、一定程度の需要抑制政策が必要だ」と述べましたその具体策としては、公共交通機関など、自家用車を使わない移動手段や、在宅勤務を推奨すべきとの考えを示しています。また、需要抑制策を打ち出す時期については、「停戦協議が決裂した場合は、決断の一つのタイミング」だとして、政府に対しても、迅速な対応を求めました。 

 (引用終わり)

◎石油連盟の修正プレスリリース

翌日4月24日、石油連盟は「4月23日の報道にある弊連盟幹部の発言について」を公表した

1. 4月23日の報道にある弊連盟幹部の発言は、今後事態が長期化した場合には、需要抑制も含めた着実な供給継続のための取組が必要ではないかと、一定の仮定を置いた発言をしたものです

2.弊連盟は、現時点で「日本全体として必要な量」は確保されており、消費者には「普段通りの給油」を求めていく方針です。従って直ちに石油製品の使用を抑制する必要があるとは考えておりません。

3.弊連盟および会員各社においては、引き続き政府と連携しながら、石油製品の供給の偏りや目詰まりの解消を含め、必要な取組をしっかり行い、安定供給を確保してまいります。

(引用終わり)

テレビ放送のあった翌日に石油連盟が上記の“修正コメント”を出したのには、政府筋から何らかのプレッシャーがあったのであろう。“修正される”羽目になった鈴木英夫氏は経産省OBで、しかも産業技術環境局長、通商政策局長を歴任した局長経験者。いたくプライドを傷つけられたと思われる。

【SNS世論】最終処分地の南鳥島案 議論で盛り上がり欠く

原子力発電での使用済み燃料を再処理した時に出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定を巡り、政府は4月に東京都小笠原村の南鳥島で文献調査を行う意向を示した。同村はその申し入れを受け入れた。これを巡るメディアとSNSの動きを考えたい。

南鳥島は父島(写真)から東南東に約1200㎞離れた場所にある

南鳥島は小笠原村の行政区域に属す日本最東端の島で、一般住民は居住していない。本土から遠いという難点はあるが、住民の反対などで処分地の選定が進まない現状を打開する可能性がある。

選定手続きの第一段階にあたる文献調査が今後行われる。この調査は北海道の寿都(すっつ)町、神恵内(かもえない)村、佐賀県玄海町に続き、4例目となる。過去の3例は地元の意思表示がきっかけだった。しかし反対意見が地元や周辺自治体にあり、反原発を唱えるメディア、政治団体がこの動きを批判した。3自治体では賛成派が多数だが、一方向に議論は進んでいなかった。

寿都町の片岡春夫町長は「やっと一歩進んだ」と、南鳥島での文献調査を評価した。(北海道放送3月13日報道)有力なライバルの出現を警戒するのではなく、国民的な議論を歓迎するという姿勢のようだ。手を挙げた自治体は、政治論争に巻き込まれ負担になる。候補地を増やすことが、現時点では逆に選定が進むことを助けるだろう。

◆関心を向けないSNS世論

SNSは最近、メディアよりも社会への影響力が大きくなりつつある。しかし、この高レベル放射性廃棄物の問題について関心を持つ人が少ない。この問題について述べる投稿や映像が少ない中で、反対を唱える一部オールドメディアや反原発の活動家の声が目立つ印象だ。

SNS世論は原子力の活用派がやや多いように思える。しかし原子力の活用と、廃棄物処分の話は、一般の人は関係づけて受け止めていないらしい。そして原子力発電の後始末の問題について解決の必要性は認めるが、NIMBY(Not In My Backyard、「私の家の庭にはお断り」)の感情が働き、推進の意見を言うことにためらいが生じてしまうのだろう。この問題は複雑で、ある程度の説明と理解が必要だ。SNSは単純な問題を善悪に仕分けて拡散することには向くが、複雑な問題の論評には不向きなメディアだ。

一方で、原子力発電を批判する人は、この問題では元気に活動する。原子力発電には膨大なメリットがあるが、廃棄物処理の点では問題が残るため、「攻め所」と張り切っているかのようだ。そして放射性物質は危険性がある。恐怖に絡められた議論をされると、論理的に反論するのは手間がかかる。

◆一部オールドメディアは南鳥島での動きを批判

一部のオールドメディアは、この問題の解決を妨げようとしているように見える。朝日新聞は4月16日の社説「核のごみ処分 徹底調査と説明責任を」で、「前のめり」「押しつけ」と、南鳥島での動きを批判した。そして離れた場所にある小笠原諸島の村民の疑問の声を紹介した。朝日はいつもの通り他人に自分の意見を言わせるずるい形の記事にしている。

毎日新聞は強い批判を繰り返す。同紙は科学面で〈「絶海の孤島」南鳥島 核のごみ処分場〉という特集(4月13日)で技術的課題をとりあげ、実現性に疑問を示した。特集面では記事〈「手挙げ式」からの方針転換 核ごみ最終処分に動いた政府〉(同日)で、政府が批判で場所の選定に行き詰まり、新しい方法で動いたと指摘する。このように一部のメディアは、解決に協力しようという意思がない。

産経新聞は〈資源に乏しい日本で原子力発電を持続可能なエネルギー源とするために極めて重要な対応である。理性ある決断に敬意を表したい〉と4月15日社説〈南鳥島の文献調査 核地層処分へ意義大きい〉で書いた。これが常識的な反応ではないか。またNHKや読売新聞は、淡々と事実を伝えるだけの姿勢だ。せめてこのような反応をしてほしい。

しかし一連の報道について、SNSではあまり反響はない。

◆今の世代が解決するべき問題

日本政府は、国のプロジェクトでは、できる限り関係者の全員一致の状況を作ろうとする。どんな問題でもそれは難しい。この高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定問題では特に全員一致の問題は難しそうだ。

しかし一部のメディアがこの問題で、マイナスの情報のみを拡散して、人々を反対の方向に動かそうとするのは問題だ。文献調査を受け入れた玄海町の推進派の住民は次のように語る。「地元で静かに議論をできる状況を作ってほしい。感情的な議論、政治運動の対象になって町が混乱するのは迷惑だ。今の時代、メディアに影響される人は少ないだろうが、情報が混乱を引き起こす可能性がある」。

高レベル放射性廃棄物の問題は、SNSには馴染まないし、人気もない。ただし一般の人は、関心を持ってほしい。それが無理でも、問題を混乱させる動きや、一部メディアの偏向報道をおかしいということをSNSでしてもらうと、ありがたい。

この問題は今を生きる世代が、解決しなければならない問題だ。私たちは大量の電気を使う生活を享受し、その結果として原子力発電の使用済み燃料が存在している。その解決の責任は、原子力の活用を賛成する人にも、否定する人にもあるはずだ。SNSの反応が、その解決の行く末に影響を与える。

【時流潮流】ニジェールで続く決死のウラン輸送作戦

世界有数のウラン産出国である西アフリカのニジェールで、決死のウラン輸送作戦が続いている。ルート周辺は、複数の過激派組織が勢力を伸ばす世界でも最も危険な地域だ。陸上輸送は難しく、異例の空輸作戦となる方向だ。

クウェート空港で荷降ろしをするアントノフAn-124輸送機。2004年、イラクに自衛隊を派遣する際、部隊の車両を運んだ=筆者撮影

サハラ砂漠の南端に近いニジェール北部のアーリット鉱山。昨年12月4日、装甲車や多数の武装車両に守られた34両のトラックの車列(コンボイ)が出発した。

トラックの荷台には長さ20mのコンテナが二つずつ載る。コンテナの中には、鉱山で採掘したウラン鉱石を精錬したウラン精鉱(イエローケーキ)を詰めたドラム缶が入っている。総重量は1050tもあり、時価換算では2億ドル(約300億円)近い。輸送先は南部にある首都ニアメーだ。

かつてはフランス領だったニジェールでは、フランスのオラノ社(旧アレバ)が長らくウラン採掘を続けてきた。その多くがフランスに運ばれ、原発燃料に加工されてきた。

だが、2023年7月のクーデターで軍事政権が発足し、情勢は一変する。新政権は、治安維持や対テロ戦争のため駐留していたフランス軍と米軍を国外に追い出し、代わりにロシアの傭兵部隊を招き入れた。

さらに、資源ナショナリズムを掲げ始める。フランスの抗議を無視してウラン鉱山の国有化に踏み切った。ウランの売り先も、これまでのフランスからロシアなど新たな顧客へと変えていく。

輸出ルートに問題発生 代替は「死の回廊」

だが問題が立ちはだかった。輸出ルートだ。従来は、首都ニアメーから南下し、大西洋(ギニア湾)に面する隣国ベナンの港に運ぶ最短ルートを使っていた。だが、ベナンには現在もフランス軍が駐留を続ける。コンボイが足を踏み入れれば、接収される可能性が高い。

ニジェールの軍事政権は一発逆転を狙い、イエローケーキ輸送を開始した直後の昨年12月7日、ベナンでクーデターを仕掛けたとされる。だが、クーデター計画は失敗に終わり、別ルートでの輸送法を探す必要に迫られた。

代替ルートはないわけではない。南下するのではなく、西のブルキナファソにいったん運び、そこから南下して大西洋沿岸国のトーゴのロメ港に運ぶルートだ。だが、国際テロ組織「アルカイダ」系や、過激派組織「イスラム国」(IS)系の武装集団が横行する「死の回廊」と呼ばれる危険な地域を通り抜ける必要がある。

国連によると、24年の世界のテロ犠牲者のうち半数がニジェールやブルキナファソがあるサヘル地域で起きている。被害者数はこの5年間で10倍に増えた。その地域を突っ切るのは、あまりにも過酷な作戦となる。フランスのメディアは映画になぞらえて「マッドマックス作戦」とはやしたてる。

八方塞がりとなったニジェールの軍事政権は、コストは張るが、空輸に切り替える算段を進めた。ロシアの輸送機で運び出す考えだ。

今年に入り、ロシアの超大型輸送機「アントノフAn124」がニアメーに飛来するようになった。積載能力は世界最大の100㌧もある。10往復すればイエローケーキ全量を運び出せる計算になる。

だが、首都ニアメーといえども治安は万全ではない。今年1月26日、IS系の武装集団の部隊がバイクに分乗し、ドローンも使い空港を襲った。政府軍はロシア軍の応援を得て、約1時間におよぶ戦闘の末に20人を殺害、撃退に成功した。空港内の倉庫などには、まだイエローケーキが残っているとされる。強奪や、ばらまかれて深刻な汚染問題が起きる危険があった。

ニジェールのウラン鉱山でウラン採掘を続ける限り、綱渡りのマッドマックス作戦が続くことになりそうだ。

【記者通信】電気・ガス料金補助再開か またもバラマキに疑問相次ぐ

去る3月19日の燃料油補助金の復活に続き、政府が7~9月の期間限定で電気・ガス料金の補助を再開する方向で検討していることが、複数の関係筋の話で明らかになった。ホルムズ海峡の実質封鎖を背景にした原油・LNG価格の高騰と円安局面が続く中、電力・都市ガス会社では燃料・原料費調整制度に基づき6月ごろから電気・ガス料金の上昇が顕在化してくるため、補助金によって利用者の負担軽減を図る。予算額は今冬と同等規模の5000億円程度と見る向きがあり、予備費からの投入が見込まれている。だが、単純な補助金支給を巡っては費用対効果を疑問視する見方が多い。巨額の国費を国民経済に資する形でいかに有効活用するか、政府の手腕が問われている。

エネ補助金の総額は14兆円超 予備費枯渇の可能性も

電気・ガス料金の補助事業については、ロシアのウクライナ侵攻などの影響によるLNG価格や原油価格の高騰を受け、2023年1月使用分(2月検針分)から開始。当初は一時的な措置のはずだったが、価格高騰の長期化によって24年5月まで実施された(予算額3兆7490億円)。その後、円安に伴う物価高に対応する目的で、同年8~10月に再開(同2124億円)。以降は、エネルギー使用量が増える夏場と冬場の期間限定(25年1~3月=3194億円、25年7~9月=2881億円、26年1~3月=5296億円)で、断続的に補助金を投入し、これまでの合計は5兆985億円(予算額はいずれも共同通信調べ)。燃料油の補助も含めると、エネルギー代補助の総額は14兆円超に達するとみられている。

その財源となっているのが、国の予備費だ。前年度と今年度の予備費は計約2兆円とされており、3月に再開された燃料油補助金は予備費から基金を通じて支給されている。⁠経済産業省によると、4月下旬現在で基金の残高は9800億円程度。補助金の指標となる北海ブレントの原油先物価格は100~110ドル前後で推移しており、この水準が続けば夏までに基金は底を付く可能性がある。ここに電気・ガス料金の補助が加わると、予算の枯渇が一層早まるのは確実だ。高市政権は補正予算の編成について「現時点で検討していない」としているが、いずれかの段階で補正での対応が必要になるのは避けられそうもない。

エネルギー補助金を巡っては、「単純に利用者の負担を軽減させるという意味では、それなりの効果を上げている。消費者物価指数の上昇に歯止めを掛けていることは、公表されている民間調査機関のレポートを見ればよく分かる」(永田町関係者)と、一定の評価が聞こえているのは事実だ。「特に電気・ガス代の補助は、車に乗る人と乗らない人で恩恵に格差の出るガソリンとは違う。実施する意義はあると思う」(経済誌記者)

【時流潮流】イラン戦争で揺らぐ湾岸諸国の「安全神話」 AI企業の投資戻らず

戦闘開始から2カ月となるイラン戦争は、サウジアラビアなど湾岸諸国にも深刻な打撃を与えた。イランのミサイル攻撃やホルムズ海峡封鎖で、エネルギー産業に影響が出たほか、「安全神話」も揺らいだ。中でも、脱石油の「切り札」である人工知能(AI)産業では、安全を求めて「脱中東」の動きが加速しており、湾岸諸国は対応に追われている。

エミレーツ航空が本拠地とするUAEのドバイ国際空港=筆者撮影

イランは開戦初日から、湾岸諸国にミサイルとドローンで猛攻を浴びせた。各国に駐留する米軍基地をはじめ、国際空港やホテル、AIインフラ拠点にも攻撃を仕掛けた。

湾岸諸国は戦前、イランからの報復攻撃を防ごうと、自国内の基地からの攻撃は「認めない」と宣言した。保険をかけたつもりだったが、米軍の空中給油機や空中早期警戒機(AWACS)など作戦行動と密接に連携する軍用機の基地使用を黙認した。この詰めの甘さが仇となる。イランは「建前と現実」の違いを鋭く突いた。

アラブ首長国連邦(UAE)は、停戦までの38日間にミサイル563発、ドローン2256機の合計2819回もの攻撃を受けた。2番目に多いクウェートは合計1211回だったため、その2倍以上にあたる。3位はバーレーン、4位はサウジと続いた。

湾岸諸国は9割以上という高い確率でミサイルとドローンの迎撃に成功する。だが、撃ち漏らしもあり、人や施設に被害が出た。

エネルギー関連では、カタールの液化天然ガス(LNG)施設が被弾し、輸出能力の17%が奪われた。修復には最大5年間かかる。サウジやUAE、クウェートの油田や製油施設なども一部が損傷した。

UAEはデータセンターなどの防衛強化へ

ホルムズ海峡封鎖も大きな打撃となる。サウジやUAEには、封鎖に備えた迂回パイプラインを持っているが、それがないカタールやクウェートは封鎖の影響をまともに受けた。開戦以後、LNGタンカーは1隻も海峡を通過できていない。

貯蔵施設が満杯となり、減産も強いられた。国際エネルギー機関(IEA)によると、3月の産油量はイラクの66%減、クウェートの53%減などの大幅減となった。

各国が成長分野と期待する産業も軒並み打撃を被った。日本人旅行客の利用も多いUAEのエミレーツやエティハド航空、カタール航空は、空港が攻撃されたため、全便欠航となる日もあった。欧州、アジア、アフリカの「ハブ&スポーク(結節点)」の役割を果たしてきたが、欧州やアジアの競争他社に客足を奪われた。観光客も8割減となった。

深刻なのは、AI関連施設への攻撃だ。アマゾンがUAEとバーレーンに設置した3カ所のデータセンターが、イランのドローンに襲われた。イランは、AIで処理した情報が「イランへの攻撃目標選定などに使われている」と非難、アマゾン以外のAI関連企業も「標的にする」と警告している。

マイクロソフトやグーグルは「安全神話」が崩れた湾岸地域に見切りをつけ、安全なインドやシンガポールなどに投資を増やす方針を相次いで発表した。取材した専門家からは「AI企業の投資が湾岸地域に戻ることはないだろう」との声も聞かれた。米中両国に次ぐ世界3位のAI拠点を目指してきた湾岸諸国の取り組みは、絶体絶命のピンチを迎えている。

巻き返そうと、UAEは4月下旬から新たな対策に動き出す。イスラエルからミサイル防衛システム「アイアンドーム」を調達し、データセンターなどの防御強化を図る試みだ。だが、これだけでは万全と言い切れない。傷ついた「安全神話」を取り戻す道は、茨の道となる気配が濃厚だ。

【記者通信】経済界が需要抑制を訴えるも国は否定 脱石油政策はどこへ?

ホルムズ海峡封鎖に伴う石油供給の不足を巡って、日本国内で奇妙な現象が起きている。経済界が需要抑制に向けた対策の必要性を訴えているのに対し、政府・与党が経済・社会活動維持の観点からこれを否定するという構図が見られているのだ。米国とイラン側による和平交渉の再開が停滞する中、ホルムズ海峡の実質封鎖が続いており、原油価格相場は北海ブレントが4月27日に108ドル台を付け再び上昇傾向を強めている。中長期的な先行きが全く見通せない状況にもかかわらず、高市早苗政権は経済・社会活動維持の観点から安定供給確保への取り組みを強調するばかり。その姿勢には、需要家側からも疑問の声が上がっている。そもそも一昔前まで、国は「脱石油」と言っていたのだが・・・。

高市首相「経済・社会活動を止めるべきではない」

「燃油とか、そういうものについても、使うのを少し控えるように制限かけたらどうかという声もいただくが、しかしながら、私は経済活動、今止めるべきではないと思っている。社会活動も止めるべきではないと思っている」「日本全体として必要となる量は確保できており、年を越えて、石油の安定供給のめどはついている」――。27日に行われた参議院予算委員会での集中質疑で、高市早苗首相は立憲民主党の森本真治議員の質問に答える形で、需要制限に否定的な姿勢を示した。

現時点で石油節約の必要はないというのは、政府・与党の一致した見解だ。「政府がいま節約を呼びかけたらどうなるか。国民の不安をあおり、社会に混乱を招く恐れがある。備蓄放出や代替調達ルートの確保によって、当面必要な量の石油供給は手当てできている。いまは経済を回すことが重要であり、需要抑制などを行う時期ではない」(永田町関係者)

経団連会長「長期化を想定し需給両面で総合対策を」

一方、経済界の代表である経団連は異なる見解だ。筒井義信会長は、4月6日の定例会見で「需要抑制策の検討は、国民のマインドに大きな影響が出てくる可能性があるため、十分なアセスメント(評価)が必要だ。混乱を回避し、冷静な対応を促すため、安心の確保という観点に留意した発信が必要」としながらも、「石油備蓄に余裕があるうちに、長期化を想定した、需給両面での総合的な検討を急ぐべきだ。需要抑制策の検討に際しては、当然、マクロ経済への影響も斟酌しなければならない。また、検討にあたっては、省エネ・節電などに関し、経済界として必要な対応を政府に進言し、協力もしていく決意だ」「どのような節約の方法が考えられるのかという点について、具体的には申し上げないが、国際エネルギー機関が例示した対応策も踏まえ、わが国の特徴も考慮した形での需給両面での対策の中身、さらに発動の条件や対象を十分に検討する必要がある」などと強調。20日の会見でも「ホルムズ海峡の周辺国を含めて石油関連施設の破壊もみられる中、仮にホルムズ海峡の封鎖が解かれたとしても、復旧・復興に数カ月を要するのか、あるいは1~2年を要するのかを見通すことはできない。一定期間こうした状態が継続することを見据えて、様々な政策面での検討が必要となろう」と述べた。

【論考/4月27日】深刻化する石油危機 豪州「軽油外交」が示す市場の機能不全

イランによるホルムズ海峡封鎖に、米軍による対イラン海上封鎖が加わり、未曾有の石油供給危機は、より深刻化しつつ進行している。国際エネルギー機関(IEA)によれば、本年3月のペルシャ湾経由の石油輸出量はわずかに日量200万バレル強、その過半はイラン産だった。これは昨年平均水準に比して日量・約1800万バレルの激減。迂回ルート(サウジアラビア紅海岸およびアラブ首長国連邦(UAE)・オマーン湾岸)からの原油輸出が日量・約400万バレル増加したので、これを差し引いて、減少総量は日量約1400万バレルだった。

4月8日にパキスタンを仲介として米・イランは2週間の停戦に合意。しかし11−12日にイスラマバードで行われた両国協議は不調に終わり、米軍は11日にホルムズ海峡で機雷除去を開始。13日にはオマーン湾・アラビア海北部に展開する15隻以上の艦艇を用いて、事実上の対イラン海上封鎖を敷いた。16日、トランプ米大統領による10日間のイスラエル・レバノン停戦発表を受け、17日にはアラグチ・イラン外相が米・イラン停戦期間中の海峡開放を宣言したが、同日イラン革命防衛隊は海峡航行の実効支配をあらためて主張。米国も海上封鎖を解かず、18日にイラン政府はホルムズ海峡の「再封鎖」を発表した。21日トランプ大統領は停戦期限の延長を発表、イランからの再提案を待つ、としている。

イランはレバノンを含む全戦線での戦闘終結、戦争被害賠償、ウラン濃縮の権利確保、対イラン制裁措置の全面解除に加えて、在中東米軍の撤退、イランによるホルムズ海峡実効支配の継続を和平条件としている。いわば中東湾岸地域におけるイランの覇権的地位を実質的に承認するよう求めており、その中核にホルムズ海峡支配がある。外相の海峡開放宣言が即座に打ち消されたことも、イランの対外行動が海峡支配を「生命線」と見なす強硬派・革命防衛隊の主導下にあることを示唆する。

米側は3月21日にトランプ大統領がイラン国内発電施設攻撃の意思を公言し、48時間内の海峡開放を迫ったが果たせず、以来、攻撃期限をいたずらに延期してきた。対イラン海上封鎖は無差別空爆に代わる策だが、これによってイラン産、非イラン産を問わずペルシャ湾からの石油輸出がほぼ全面的に途絶する。迂回ルートのみが機能するとすれば、湾岸全体の輸出量は昨年平均水準から日量約1600万バレル減少となる。

世界原油生産余力は、その大半がサウジ、UAE、クウェート、イラクに集中していたが、これがホルムズ海峡封鎖によって無力化されているので、既に3月時点で実質ゼロとなった。巨大な供給途絶と機動的生産余力の喪失により、一旦在庫が底をつけば、未曾有の石油消費量激減が不可避となる。

【目安箱/4月24日】日本が直面するシーレーン問題 ホルムズ封鎖で危機感足りず!?

今年の4月、日本各地では例年の通り「お花見渋滞」が起こっている。平和な光景で、それを喜ぶべきだろう。しかし同じ時期にイランによるホルムズ海峡封鎖の影響で世界各国では原油が不足した。その結果、さまざまな国でガソリン価格の上昇による社会混乱、車利用の減少が起きている、と伝えられる。そして政府が車の使用自粛を呼びかけている。日本では何も行われていない。大丈夫だろうか。

この危機感のなさは当然かもしれない。ガソリン価格は日本で動いていない。日本政府が補助金により、無理に価格を抑制している。

全国平均でのレギュラーガソリン小売価格(税込)の推移は、ホルムズ海峡封鎖の発生する前である今年22月には、約158〜160円(1リットルあたり)で比較的安定していた。価格は円安のため上昇気味だったが、今年1月からの暫定税率廃止などの効果もあって上値は抑えられていた。

◆補助金が危機を見えなくした

米国やイスラエルが2月28日にイランを攻撃し、3月中旬ごろからイランがホルムズ海峡を通過する船舶へ無差別攻撃を行った。3月16日のレギュラーガソリン価格は1ℓ当たり190.8円で、日本国内での史上最高値圏までは跳ね上がった。しかし政府の補助金が3月19日から始まったことから、価格はその後下がり、全国平均170円前後で推移している。

政府は国家分を含め約8ヶ月分の石油備蓄を保有していたが、危機直後に国内需要約45日分を放出。紅海周りのルート、インドネシアとの交渉など、原油や天然ガスの代替調達を急いでいる。また石油製品の確保、増産、輸入に動いている。

日本は他国のようにガソリンや石油製品の消費抑制、規制などには踏み出していない。もちろん国民の不安をあおらないようにするという意図もあるのだろう。また備蓄など過去の準備が、今回の危機で効果があった面がある。しかし、熱心に政府が対策をしているようには見えない。国民に危険を強く訴えていない。楽観的すぎないだろうか。先行きは見えないのだ。

◆太平洋戦争が教えるもの

一つの印象的な画像がある。第二次世界大戦における日本海軍の軍艦の沈没地点をGoogleマップで記録し、可視化したものだ。米国の戦史マニアが作ったようだが、今はそのサイトは消えている。

この画像を見てわかるのは、軍艦の沈没場所は、当時の海上交通線と重なっている。当時は東南アジアの油田地帯や資源採掘地から、フィリピンやベトナム沖、そしてバシー海峡(台湾とフィリピンの間の海峡)を通って日本に原油や資源が運ばれていた。激戦地の南太平洋でも船は沈んでいるが、沈没数はその海上交通線周辺の方が多い。

日本海軍は海戦で敗れただけではなく、海上交通線防衛のために戦い、それに失敗して戦争に敗れた。そのことを、このマップは教えてくれる。海軍は補給、海上交通線の防御の重要性を、戦争前に深く考えず、艦隊決戦ばかりに関心を向けていた。

日本の置かれた状況は、第二次世界大戦から80年以上経過した今でも変わらない。日本は島国としての地理的特性と資源の大半、食料の多くを海上からの輸入に依存する経済・社会構造を持つ。現時点は原油の場合は、99%が海外に依存する。さらにその9割が中東に依存する。その7−8割がイランによる武力紛争前はホルムズ海峡を通過していた。

そして現代の日本の海上交通線は脆弱だ。ホルムズ海峡のような「チョークポイント」(要衝)は他にもある。マラッカ海峡(マレー半島とスマトラ島の間)、バシー海峡、南シナ海を日本向けの船舶が原油や資源を満載して通過し、日本の工業製品を運ぶ。それは80年前、日本の商船、軍艦が大量に沈んだ場所と重なっている。

◆ドローンの登場で武力攻撃が容易に

今回のホルムズ海峡の封鎖は、イランの海空軍が米軍によって制圧された後に起きた。ドローンと見られる物体により船舶が無差別攻撃された。3月下旬から攻撃はなくなり、この記事を執筆中の4月20日時点では米とイランは停戦中だ。しかし保険会社が海運への保険を拒否し、各国の船舶会社も運行を懸念し、海運が元に戻らない。

第二次世界大戦当時と今を比べると、人命や民間資産の価値は重くなっている。危険な海で民間商船を航行させられないのだ。日本の海上交通線を遮断しようという国は、脅威や不安を与えるだけで、それを混乱させられる。しかもドローンという簡便な兵器で海運を止められる。

台湾有事の可能性がある。中国が日本を締め上げる意図を持った場合に、ホルムズ危機の先例を考えれば、海上交通の封鎖は容易に行えそうだ。

◆過去の教訓を直視し、危機に誰もが備える

今は原油不足の問題で表面的に混乱は起きていないかもしれない。しかし日本の米国などとの太平洋戦争は、米国などによる石油や資源の禁輸というエネルギー危機によってそれを打開する資源確保の目的を一因に始まった。そして原油の輸送ルートを断たれて戦争に負けた。昭和天皇は、太平洋戦争を「油で始まり、油で終わった」と戦後振り返ったという。また1972年、79年に起きたオイルショックでは日本が混乱した。原油の遮断は日本の国家の存亡に関わる重要な問題だ。

海上交通線を米国などと協力し、安全を高める必要がある。しかし海上交通線を全部守り切るのは難しい。2度の石油ショックから、日本は「脱石油」「脱中東」「省エネ」「技術開発」というエネルギー政策を進めてきた。今回のエネルギー危機のショックが、他国より少なかったのはその努力の結果だろう。しかし、その成功ゆえに、緊張感が薄れているように思える。

今も出ている燃料油補助金、そして今後出そうな電力・ガス補助金は、経済の体質を変えず、石油やエネルギーの消費を促しかねない。危機が深刻になっていない今のうちに、国が実情を国が明らかにし、無限に続き書けない補助金政策をやめ、国民に危機への準備を呼びかけた方がよい。政治と政府は危機意識を持ってほしい。

【時流潮流/4月23日】台湾とドイツに見る原発再稼働の明暗

2月末から始まったイラン戦争でホルムズ海峡が封鎖され、エネルギー情勢は激しく揺さぶられている。危機乗り切りを図る切り札に原子力発電所が浮上。再稼働や整備を加速する動きが世界に広がる。

ドイツの火力発電所。脱原発政策は維持する方向だ=筆者撮影

開戦から1カ月たった3月末、台湾電力は昨年5月に止めたばかりの第3原発の再稼働計画を核能(原子力)安全委員会に提出した。28年再稼働を目指す。

台湾は1985年に3カ所のサイトで原発2基ずつが稼働する「3原発(計6基)体制」を確立した。しかし、2011年の東京電力福島第一原発事故を機に反原発運動が高まり、政府は運転開始から40年を迎えた原発から順次、停止する措置をとった。最後の原発は昨年5月に止まった。

ただ、再稼働を求める声は根強い。半導体産業が経済を引っ張る構造にあり、人工知能(AI)時代の到来で電力消費の増大が見込まれるからだ。

昨年8月には再稼働を問う国民投票を実施した。賛成票が反対票の3倍近くを占めたが、投票総数が有権者総数の25%に達せず「否決」となった。

だが、イラン戦争で状況は一変する。台湾は、原油調達の7割を中東諸国に頼るほか、LNGも約3割をカタール産が占める。戦略備蓄が約120日と少ないことも危機を増幅させた。調達先変更などで急場をしのぐが、今後は、再生エネルギーの拡充に加え、23年に停止した第2原発(北部・新北市)を含めた原発の再稼働を見据える。

欧州の多くの国が原発推進に転換

欧州でも原発回帰の動きが強まる。欧州委員会のフォンデアライエン委員長はイラン戦争開戦直後の3月10日、パリで開かれた「原子力エネルギーサミット」で、「欧州が(原発に)背を向けたのは戦略的誤りだった」と、脱原発政策を批判した。

欧州では、90年には原発が電力の3分の1を供給していたが、ドイツの脱原発などにより、現在は「15%」足らずだと委員長は嘆いた。新型モジュール炉(SMR)などの早期導入が必要と訴えた。

ドイツ出身のフォンデアライエン氏は、メルケル政権で環境相を務め、「脱原発」を熱心に取り組んだ人物だ。皮肉な巡り合わせと映る。

名指しされた形のドイツは複雑な事情を抱える。キリスト教民主同盟(CDU)党首であるメルツ首相は、個人的には原発再稼働に前向きだ。だが、脱原発政策は「残念だが見直さない」と明言する。連立政権を組む社会民主党(SPD)が脱原発政策を維持しており、再稼働には極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)との連携が必要となる。そんなことは、政治的にできないからだ。

首相の判断の背景には、電力業界最大手のRWEが原発再稼働に慎重姿勢であることも一因のようだ。RWEのクレバー最高経営責任者(CEO)は、原発再稼働には数年以上の準備期間と数千億円単位の投資が必要で、投資回収には20年以上が必要と指摘する。電力会社にとって再稼働は「経済的・経営的なリスクが大きすぎる」との主張だ。

再稼働に応じても、数年後に政権が変わり再び「脱原発」に戻れば、投資は「ドブに捨てた」も同然になる。そんな主張をするCEOが、姿勢を変える可能性は低そうだ。

ただ、欧州全体を見れば、ベルギーやスイス、イタリアなど原発推進に転換する国が多い。イラン戦争を機にそうした動きが加速しそうだ。

【記者通信/4月17日】豪州で深刻化する石油危機 日豪防衛相は呑気にゴルフ計画?

中東情勢が収まりを見せない中、燃料不足の懸念が絶えないオーストラリアに追い打ちをかけるような事故が起きた。豪州国内に2カ所しかない製油所の1つ、ビクトリア州のジーロング製油所で15日夜に大規模な火災が発生した。約12時間後に鎮火したものの、豪州国内の10%を供給する製油所は稼働率を低下した運転を余儀なくされており、燃料供給への不安は一層高まった。

こうした中、小泉進次郎防衛相が豪州のマールズ副首相兼国防相との会談のため、18日に豪州入りする。安全保障問題で日豪両国の結束を確認するのが目的だが、中東情勢についても意見を交わすものとみられる。だが2人は事もあろうに18日午後、会談を行うメルボルン郊外でゴルフに興じる予定を当初組んでいた。世論の反発を恐れたか、ゴルフの予定はキャンセルされたが、両国が燃料問題で緊迫している中、閣僚の緊張感のなさを露呈した格好だ。

豪州で製油所火災 「国内の燃料供給に影響」

同製油所の火災はガソリン製造設備で発生した。被害はガソリン生産ラインが中心だという。大都市メルボルンがあるビクトリア州には約50%供給しており、ボーエン気候変動・エネルギー相は16日、「国内の燃料供給に影響する」と述べた。

同製油所は火災発生後からガソリン生産は約4割減、ディーゼルおよび航空燃料は約2割減と稼働率を下げて操業している。同製油所はオーストラリア国防軍(ADF)向けに航空、海上、陸上用燃料も供給しており、国防への影響にも懸念が出ている。

運営会社ビバ・エナジーのスコット・ワイアット最高経営責任者(CEO)は複数のメディアに対し、「製油所の設備を安全に復旧させるためには作業が残っている。フル稼働に戻すのはまだ時間がかかる」と語った。

一方、アルバニージー首相は17日、火災の影響について燃料制限措置の引き上げにはつながらないとの認識を示した。

豪州では燃料が不足した場合に備え、4段階の制限措置を設けている。現在は2段階目の状態で自動車運転者らに必要な分だけ購入するように呼びかけている程度だ。アルバニージー首相は「今回の火災によって何らかの変更は生じない」と明言した。

しかしあるエネルギー企業の関係者は「供給能力の約10%が影響を受けることで、燃料不足の懸念が一層高まる。政府は高値での追加的な輸入をする可能性もあり、いったん下がった燃料価格が再び高騰することになるだろう。市場経済の論理で製油所を次々と閉鎖してきたことがここに来て大きな足かせになっている」と指摘する。

緊張感欠く2閣僚 ゴルフは急遽取りやめに

こうした状況下で、小泉防衛相とマールズ国防相が吞気にゴルフの計画を立てていたことには驚きを隠せない。

豪州では国民に燃料の買い控えを要請しているにもかかわらず、閣僚の緊張感のなさに国民の中には「crazy!(どうかしている)」とあきれる声も出ている。

日本でもナフサ不足が顕在化しており、液化天然ガス(LNG)燃料の逼迫も指摘されている。ガソリンには多額の補助金が投じられており、訪問先とはいえ閣僚としての緊張感が欠如していると批判されても反論できないだろう。折しも自民党大会で自衛官が国歌斉唱した問題が取り沙汰されている中だけに、「内閣の一員として当事者意識がなさすぎる」(政府関係者)との声が出るのも納得だ。

ゴルフの予定はこうした悪影響を危惧したのか、急遽取りやめになったが、あたかもバカンス気分で会談するという印象は拭い切れないだろう。

イラン情勢が先行き不透明で燃料問題は長期化の様相を見せている。燃料問題がさらに深刻化した時、戦火が激しくなった際にこのような軽佻浮薄な閣僚に国の安全を任せていいものか、甚だ疑問だ。

【記者通信/4月8日】米・イランが2週間停戦で合意 今こそ国を挙げて省エネ支援を

おそらく世界中の人々が胸をなでおろしたに違いない。米国とイスラエル、イランは米東部時間4月7日夜(日本時間8日朝)、2週間の停戦で合意した。報道などによれば、トランプ米大統領はSNSを通じ、イランが事実上封鎖している原油輸送の要衝ホルムズ海峡の開放を条件として停戦を受け入れたと表明。イランのアラグチ外相は、軍の調整などによってホルムズ海峡の安全な通航が2週間は可能との声明を発表した。CNNによると、イスラエルも一時停戦に合意した。

カーグ島攻撃を速報で伝えたテレビニュース。その6時間後に停戦合意が表明された

仲介役を務めるパキスタンのシャリフ首相は、「イランと米国、その同盟国などは、レバノンを含むあらゆる地域での即時停戦に合意した」と言及。停戦は即日発行した。中東を舞台に、世界的なエネルギー供給不安をもたらしたイラン戦争は、開始から1カ月以上がたって初めて米国、イランの双方が歩み寄りを見せた格好だ。パキスタンでは両国の代表団を11日に首都イスラマバードに招き、恒久的な解決に向けた本格協議を行うとみられる。

米国が設定した、イランの発電所や橋など重要インフラへの総攻撃の猶予期限が7日午後8時(日本時間8日午前9時)に迫る中、米国はトランプ大統領が発した「イランを石器時代に戻す」「今夜一つの文明が滅びる可能性がある」との警告を実行に移すかのように、イランの原油輸出の9割を担うペルシャ湾の要衝カーグ島で、エネルギー施設を除く50以上の軍事目標を攻撃し、世界中に緊張が走った。そして猶予期限まで2時間を切るギリギリのタイミングでの、急転直下の停戦合意表明だった。「日本でも大人気のアメリカの連続ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』の一場面を見ているようだ」。大手都市ガス会社のOBは、こんな感想を漏らした。

イランのペゼシュキアン大統領との電話会談について会見する高市首相(首相官邸ホームページより)

高市早苗首相は8日午後4時から25分間、イランのペゼシュキアン大統領と電話会談を行い、米国とイランの2週間にわたる停戦合意を歓迎する意向を示した上で、「ホルムズ海峡は世界の物流の要衝で国際公共財」との考えを強調。日本を含む全ての国の船舶について安全な航行が迅速に確保されるよう強く求めた。これに対し、ペゼシュキアン大統領はイランの立場を説明したという。両首脳は今後も意思疎通を図っていくことで一致しており、ホルムズ海峡の完全開放に向けて日本が一定の役割を果たせるか、注目される。