いずれにせよ、各種の船舶追跡情報に基づけば、タンカーの海峡通航はほぼ全面的に停止している。IMF Port Watch によれば、2月1~27日に1日約40~70隻のタンカー通航が確認されたのに対し、3月2日にはわずか2隻に激減。合同海事情報センター(Joint Maritime Information Center, JMIC)も、3月3日から10日までの間、ペルシャ湾へ入湾したタンカーは1隻のみ、出湾も計4隻と報告している。海運専門紙ロイズリストによれば、3月初めペルシャ湾内に約200隻のタンカーが滞留、このうち60隻が超大型原油タンカー(VLCC)で、世界の正規VLCC船隊の約8%を占める。またMarine Trafficデータの示すところでは、ペルシャ湾外でも150隻を超えるタンカーが、オマーン湾北部海域で待機している。
ペルシャ湾内外における戦争リスクが一気に膨張したことで、既往の船舶戦争保険が一斉に即時修正を余儀なくされ、制度全体が一時的な停止状態に陥った。3月2日に再保険者からの通告を受け、大手海運保険団体が相次いでペルシャ湾および隣接海域での戦争リスク補償を解約。4日にはロイズなどによる戦争保険協議機関・JWC(Joint War Committee)がその「指定海域」をクウェート、バーレーン、カタール、オマーンを加えたペルシャ湾・オマーン湾全海域に拡大した。これを受け、航海ごとに保険料の大幅引き上げが順次再設定される過程にある。船員・船舶への脅威に加え、船舶保険という金融システムへの衝撃が、全面的海峡封鎖の要因として働いた。