【時流潮流】米国が兵器級プルを核燃料に 供与先1社で核弾頭625発分!?

米政府は5月、核兵器に使っていた兵器級プルトニウムを、先進型原子炉の核燃料に使う計画に着手した。エネルギー省は、先進炉「オーロラ」の開発を手がけオクロなど5社を供与先に選定し、協議を始めた。供与量は約20t。このうち5tをオクロは受け取る見込みだ。

オクロ社が開発する新型原子炉「オーロラ」の概念図=オクロ社のウェブサイトから

兵器級プルトニウムは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)など核兵器に使っていた純度の高いプルトニウムだ。プルトニウム239の割合が93%以上ある。冷戦終結に伴い米露両国が核兵器の削減に合意、不要となった核兵器から取り出したものだ。

米国は不要となった約60tのプルトニウムのうち、34tを再利用することを2000年にロシアと合意、南部サバンナリバーの施設で軽水炉用核燃料(MOX)加工に取り組んだ。

MOXは、フランスのオラノ(旧アレバ)や、日本の旧動力炉核燃料開発事業団(動燃、現日本原子力研究開発機構)が「ふげん」のために製造し、使用してきた実績がある。だが、英国は品質が高いMOXを作れず悪戦苦闘、福島第1原発事故で日本での需要がなくなったことも重なり11年8月にセラフィールドのMOX工場を閉鎖した。

米国もMOX製造に手間取った。最大の原因は、兵器級プルトニウムに1%ほど含まれるガリウムだった。これを完璧に取り除かないと、核燃料を詰めるジルコニウム製の被覆管が腐食して破断する確率が高まるため使えない。ガリウムを取り除く工程が増えたことで、工期も費用も増大、18年に計画断念が決まった。

兵器級プルトニウムの処理に困った米政府は、その後、プルトニウムに混ぜ物をして希釈し、米南西部ニューメキシコ州にある地下処分場に廃棄処分する作業に着手している。その費用は190億ドル(約3兆円)もの巨額に達する。

風向きが変わったのは25年のトランプ氏の米大統領復帰だった。トランプ政権は、人工知能(AI)開発競争で「中国に負けない」ことを旗頭に掲げた。AI開発に不可欠となるデータセンターの運営用の電力を確保しようと、原子力発電推進に向けた4本の大統領令を出した。その中には、兵器級プルトニウムの活用と、カーター政権以後、長らく封印してきた使用済み核燃料の再処理再開などが盛り込まれていた。

兵器級プルトニウムの供与を受ける1社であるオクロは、生成型AIの「チャットGPT」を開発したOpenAIのアルトマン最高経営責任者(CEO)が投資するスタートアップ企業だ。プルトニウムに劣化ウランを混ぜて金属燃料に加工する。これを自ら開発中の金属燃料高速中性子炉「オーロラ」で燃やす考えだ。

新型原子炉向け核燃料確保が課題に 厳重な管理体制が必要

米国では、「オーロラ」をはじめとする新型原子炉に使う核燃料「HALEU」の確保が課題となっている。制裁発動のため、ロシア産HALEUの輸入が禁止されており、米国内で製造するしかなく、供給が軌道に乗るのは30年代半ばとみられている。

一方、オクロは、核燃料がなかなか手に入らないライバル各社を横目に、兵器級プルトニウムを加工した核燃料を使うことで先行者利得を得る思惑を描く。

ただ、プルトニウムの加工はウランよりも危険度が高く、扱いが難しい。施設整備や規制当局からの許認可取得などが必要になるため、時間がかかるとの指摘も多い。

国際原子力機関(IAEA)の基準によると、兵器級プルトニウムは8㎏で核爆弾1発を製造できる。オクロが手にする予定の5t分は、核兵器に換算すれば実に625発分となる。テロリストなどに手に渡らないために厳重な管理態勢を築く必要があるほか、IAEAの厳しい監視下にも置かれる。オクロが思い描く夢物語が本当に実現するかは、まだ、確定していない。

【論考】米イラン「イスラマバード覚書」 ペルシャ湾は「イランの海」に⁉

米国およびイスラエルが、イランの現体制打倒、あるいは「無条件降伏」という空想的な戦争目的に沿って開始した無謀な戦争の結果、米国はペルシャ湾における覇権を失い、今後ホルムズ海峡・ペルシャ湾はイランの勢力下に置かれることになりそうだ。というのも、6月17日に米・イラン両国首脳によって署名、即時発効した14項目から成る両国間の戦闘終結の覚書(イスラマバード覚書)が、この覇権の交代を事実上認めているためだ。

覚書はその第5項で「ホルムズ海峡における将来の管理および海事サービスを定義する」主体を、事実上、イランと認めている。オマーンとの対話、ペルシャ湾岸諸国との協議、また国際法遵守という制約は加えられているが、この「対話・協議」から米国は除かれている。イランはオマーンおよび湾岸諸国のみを相手に、同項で言及された「ホルムズ海峡沿岸国(すなわちイラン、オマーン)の主権的権利」を根拠に、軍事的優位を背景として自国本位に海峡管理を「定義」し得る。イランはホルムズ海峡の無償航行を当面60日間認めるが、その後はこの「定義」次第となる。

4月末にイラン最高指導者モジタバ・ハメネイ師は、ホルムズ海峡に「新たな管理」を導入すると声明。イラン政権は5月に「ペルシャ湾海峡庁(PGSA)」を、海峡通航を管理する「法的機関・代表当局」として設け、覚書合意成立後も、通航する商船に対してPGSAへの事前申請および、一方的にイラン領海内に設定した航路での通航を要求している(国際海事機関(IMO)が定める従来の分離航路はオマーン領海を通っていたが、今回の開戦後イランは当海域に機雷を敷設し、北側の自国領海通過を商船に強要してきた)。また60日間の無償航行に関して、PGSAは安全・環境等の「サービス」及び関連の「保険」料金の一時免除、と説明しており、将来これらの名目で事実上の通航料を課す意図を隠さない。

5月20日にPGSAが公表した「管轄区域」は、フジャイラ等のUAE沿岸をも含んでいる。直後のIMO会合において、UAE、サウジアラビア、クウェート、カタールおよびバーレーンは共同声明を出し、PGSAという機構自体を拒絶。5月27日に米財務省もPGSAを制裁対象に加えていた。しかし今回の覚書により、イランはその海峡管理を強く正当化できる。海峡航路、「サービス・保険」料その他の通航方式、管轄区域等をめぐりイランと湾岸諸国は鋭く対立するが、米国が航行自由確保に最終的に関与しない以上、湾岸諸国の抵抗も何らかの妥協を探る「条件闘争」に止まろう。既に6月23日にオマーンはイランとの間で「通航管理・サービス」費用に関する共同作業部会の立ち上げを合意している。

【記者通信】 支給額はわずか6円に! 来週にもガソリン補助金停止か

来週にもガソリン補助金の支給がなくなるかもしれない。米国とイランの戦闘終結に向けた暫定合意を受けて原油価格が下落し、6月25日にはドバイ原油が70ドルを割り込んだ。経済産業省の資料によると、25日~7月1日の補助金支給額はこれまでで最低の6円となった。この時のドバイ原油は74ドル台である。ガソリン価格や原油価格の下落傾向が続けば、現在のスキームでは近いうちに補助金の支給要件を満たさなくなる。

中東情勢の緊迫化を受け、政府は3月19日からガソリン価格を170円程度に抑える補助金を投入してきた。支給単価は前週のガソリン価格や原油価格の変動分によって決まる。ホルムズ情勢やさらなる円安など為替動向は依然として不透明だ。ただ計算式に当てはめると、来週、これらの価格が大きく上昇しなければ補助金は停止となる可能性がある。

支給単価=今週の価格x円+前週の支給額「6円」+原油価格の変動分-Y円)-基準価格170.0円

欧州は300円超 今すぐ出口戦略を

補助金制度廃止のチャンス到来と言っていい。経産省の資料によると、海外の1ℓ当たりのガソリン価格(6月8日時点)は、フランス370円、ドイツ358円、英国332円、ベルギー325円、米カリフォルニア州238円、韓国217円、米国173円だ。200円超えはおろか、欧州では300円以上が常態となっている。補助金で価格統制を続ける日本では、国民が現在の原油価格の下落を実感できずにいる。

6月に入り、国会ではガソリン補助金、電気・ガス料金補助を目的とした3.1兆円の補正予算が成立したが、補助金継続は党内でも疑問視する向きがある。「あくまで激変緩和策だ。170円の水準を全く見直さないのは現実的ではなく、持続可能でない」(小林鷹之政調会長)、「まったく見直しをせずに延々と続けるのはかなり無理がある」(萩生田光一幹事長代行)

ガソリンなど燃料油の激変緩和措置は、新型コロナ禍からの急激な経済回復による需要急増、ウクライナ情勢の緊迫化を理由に2022年1月に始まった。ガソリン税の旧暫定税率が廃止となる昨年末までだらだらと続いたが、高市政権は今年3月、中東情勢の緊迫化を受けて「激変緩和措置」として復活させた。米国とイランの暫定合意で激変が緩和されてきた今、補助金制度の廃止、少なくとも発動基準価格の在り方を見直すといった出口戦略の好機を迎えている。

【目安箱】沖縄で原子力発電はできるのか⁉ 専門家が可能性を検討

沖縄で原子力発電は可能だーー。こんな構想を考える研究メモを有識者らが執筆した。採算性と安全性を高めた小型原子炉(SMR)やマイクロ炉(MMR)を活用すると、十分採算が取れて、電力料金も大幅に下がるという。最新技術で電力ビジネス、そして沖縄の未来に可能性が広がっている。

出力30万kW級の発電設備で効率化

この構想は電力関係者やエネルギー研究者でつくる「SEJ・日本のエネルギーを考える会」の論考「沖縄地域における小型モジュール炉およびマイクロ炉導入に関する可能性の検討」(今年6月14日)で、原子力研究者の植田脩三氏が示した。小型炉は発電能力30万kW、マイクロ炉は数万kWクラスの原子力発電の炉をいう。

試算では、沖縄本島に30万kWの小型モジュール炉、宮古島と石垣島に2万kWのマイクロ炉を設置し、電力が最も多く使われる夏場を4つの時間帯にわけて、各時間帯の需要を満たせるかなどの分析をした。

想定した原子力発電設備であれば、これら三つの島では太陽光、風力をカットすることなく、またコストの高い火力発電の使用をかなり抑える形で電力需要がまかなえる、効率的な発電ができるとの試算が得られた。それによって運転費用(ランニングコスト)が安くなる。

電力は需要・供給の規模が大きければ価格は下がる。離島はそれが限定されるために、発電コストが高くなる傾向にある。沖縄もそうだ。その単価は1kW時当たり40〜60円だ。

米国のアイダホ国立研究所の試算によれば、マイクロ炉による原子力発電の場合は建設費を考慮に入れても同21円と約半額になる。設備建設費用は7000kWあたり110万円という。小型モジュール炉(SMR)については国際機関などの試算では、発電コストは同10~20円、初期投資単価は1kW当たり45~90万円とされている。原子力を使えば、沖縄の電力価格を大幅に下げられるのだ。

電力の供給では、大量に発電できる原子力を「ベース電源」として、気象状況に左右される再エネを「変動電源」としてそれに上乗せするのが、効率的でランニングコストが安くなる。再エネと原子力発電は対立するものではなく、それを合わせて使用することで電力システムは効率的になる。

沖縄県の電力供給での再エネ比率は10〜15%(日本全体では20%前後)にとどまり、脱炭素化が遅れている。CO2を排出しない原子力発電と再エネの組み合わせは、その削減にも貢献する。

かつてあった原子力発電の計画 新技術で状況は変わる

沖縄では、米国の施政下にあった1960年ごろに2基の原子炉を導入する計画があった。中止の理由は、当時の原子力発電技術の未成熟と、採算性と思われる。

今はその予定地に、沖縄電力金武火力発電所がある。その後、地域の事実上の独占企業である沖縄電力による原子力発電所の建設計画は具体化していない。

理屈の上で原子力発電所の建設は可能であっても、原子力は政治的な争いに巻き込まれやすいため、その実現は難しいだろう。また現在は中国との緊張が高まっており、東アジアの米軍の拠点になり、台湾有事に巻き込まれる可能性のある沖縄で、安全保障上の観点から沖縄での原子力発電所の建設を疑問視する声も出ると思われる。

ただし、それでもこの構想を考える意味はあるだろう。

思い込みを取り払って沖縄の未来を考える

現在、SMRはまだ実証研究段階で、量産は始まっていない。軽水炉型の原子炉の大型化が進み、最新型は発電能力で140万kWを超える。ただし邦貨で1兆円近い巨額の建設費用がかかるため、世界の先進国では原子力発電所の建設が停滞している。SMRを使うことで、採算性のある効率的なシステムを作れる。

日本政府は米国との共同開発でSMRの開発と商用化を進めようとしている。高市早苗首相は政治家としてSMRを積極的に支援してきた。SMRには世界各国で期待が広がり、政府と消費者、経済界の支援という追い風も吹いている。

「建設が大変」とか「危険」との原子力をめぐる思い込みを取り除いて、「沖縄で世界に先駆けて小型炉やマイクロ炉で原子力発電を行う」ことの可能性を考えてもいいだろう。新しい技術は社会や経済を変えていく。これから社会実装化の始まるSMRも、電力ビジネスや経済、社会の姿を変えそうだ。沖縄に限らずSMRの活用を国づくり、地域づくりのために考えることは、未来の可能性を広げる。

【特別寄稿】米・イラン和平協議の行方 ホルムズ海峡は再封鎖の可能性

米国とイランが和平条約の覚書に署名し、和平条約の締結に向けた協議が始まった。しかし、このまま戦争が終結し、ホルムズ海峡の通航が完全に正常化するとみるのは早計と思われる。

まず、イスラエルが和平に同意しておらず、そもそもイランが、イラン革命以来、イスラエルを主権国として認めていないので、今回の戦争の原因の一つとなったイランの核開発問題が完全に解決されない限り、イスラエルとイラン及び同盟勢力との関係が和らぐとは考えにくい。イスラエルを含む三国の今後の対応次第では、イランが再びホルムズ海峡を封鎖する可能性は十分にある。

イランがホルムズ海峡の通航をコントロールすることで収益が得られることをわかったことは、今後も火種として残り続けると思われる。現時点で、大きな被害を被ったイランが、この利権を手放すとは考えにくい。米国にとっても、自ら引き起こしたことではあるが、自国経済への直接的な影響が大きくない「対岸の火事」ともいえる状況なので、米国、イランともに和平条約において不利な条件を飲まなくてはならない必然性は薄い。

仮に、ホルムズ海峡の封鎖が解かれることになったとしても、敷設された機雷を完全に除去するのに2か月程度の期間を要するとみられており、その間は、船舶の通航が制約される。

再認識された中東の産油・産ガス国の地政学リスクの高さ

世界の原油需要は日量1億バレル余り(以下、日量バレルをBDと表記)、今年2月以前は、その20%程度に相当する2000万BDがペルシャ湾岸の8か国(イラン、イラク、バーレーン、サウジアラビア、クウェート、カタール、オマーン、UAE)から供給されていた。さらに、原油および石油製品の世界の輸出入取引に占めるペルシャ湾岸8か国の比率が2025年実績で約35%、アジア諸国の多くは8割程度から9割超に及んでいた。この大半がホルムズ海峡を通過するタンカーによって輸出されていたが、今年3月から、この輸出が大幅に減少していた。

アジア諸国では、ペルシャ湾岸諸国からの原油の調達減少分の一部を備蓄および在庫の取り崩しでカバーして石油・石化製品を生産している。わが国では5月から前年同期を上回る原油処理量を確保しており、ペルシャ湾岸諸国以外からの輸入の拡大に取り組んでいる。しかし、アメリカをはじめとする他産油国の増産・出荷および輸送余力からみて、短期間で他地域に振り替えることはできない。中東依存度を下げる取り組みが再びエネルギー政策において大きな課題になったと考えられる。

なお、ペルシャ湾岸諸国からホルムズ海峡を経ずに原油・石油製品を輸出することはできるが、その量が制約されている。サウジアラビアは、ホルムズ海峡ルートで輸出されていた原油の一部をパイプラインで同国内西岸の紅海側にあるヤンブー港に移送し、バーブ・マンタブ海峡から輸出しているが、パイプラインの輸送能力は約700万BD程度で、国内の製油所向けやヤンブー港の出荷能力を考慮した輸出能力は500万BD程度と推定されている。UAEも、内陸部の油田からアブダビ・パイプラインでホルムズ海峡の外側にあるフジャイラに移送して、原油を輸出しているが、その能力は通常150万~180万BD、緊急時でも240万~270万BDにとどまる。これら2ルートを利用してホルムズ海峡ルートで出荷されている原油および石油製品を迂回させることができるのは、2月以前の出荷量の3~4割程度にとどまると推察される。サウジアラビア、UAEともにホルムズ海峡を迂回するパイプラインの増強・増設を計画しているが、運用できるのは数年先になる。

原油価格が2月以前の水準まで低下するとは思えない

和平合意の観測報道を受け、原油価格は低下したが、70ドル台半ばで下げ止まった。

中東の地政学リスクが高いことが再認識されたことで、石油および天然ガス輸入国では、中東諸国からの原油の調達が正常化した後に、備蓄および在庫を元の水準に戻すだけでなく、リスクを考慮して、さらに積み増す動きが広がると予想される。この間、原油需要はかさ上げされ、需給は緩みにくくなる。これが、地政学リスクの高まりと併せて、原油価格が下がりにくくなる原因になると予想される。

石油備蓄制度の運用を見直す必要もあるのでは

石油備蓄制度の運用を見直す必要もあると思われる。今回、備蓄原油を大量に放出し続けることが難しいことが判った。この課題に対処するために、備蓄された原油を定期的に国内の製油所で処理して一定量ずつ入れ替えるようにしてはどうだろうか。そのためには必要な輸送手段を整備・確保することも必要になる。また、民間備蓄における製品備蓄の構成比を高くするのも有効な対策の一つと思われる。

伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役兼アナリスト 伊藤敏憲

【記者通信】米イランが戦闘終結へ覚書 ホルムズ暫定開放も最終合意は不透明

トランプ米大統領とイランのペゼシュキアン大統領は6月17日、ホルムズ海峡の期間限定無料開放など14カ条からなる戦闘終結に向けた暫定的な覚書に電子署名した。米ニュースサイト「アクシオス」によると、これにより覚書は発効。バンス副大統領、ガリバフ国会議長の両氏が19日にもスイスで会合を開き、核放棄や対イラン制裁の緩和などを巡る「最終合意」を目指し60日間の交渉に入るとみられる。

ただ、問題を先送りした今回の合意を巡っては早速、身内の共和党内から「対イラン軍事作戦によって得られた成果を手放すものであり、大統領の目標と完全にかけ離れている」(ウィッカー上院軍事委員長)、「イランの核開発の野望は抑えられず、ホルムズ海峡を脅かすことが有効だと学んだ。今後間違いなく武器として活用するだろう。ここ数十年で最悪の外交政策上の失策だ」(カシディ上院議員」などと批判が噴出。さらに最終合意に向けても「レバノンへの攻撃を続けたいイスラエルが全てをぶち壊す可能性がある」(大手一般紙記者)と厳しい見方が出ている。これに対し、トランプ氏は18日、SNS上で「株式市場が史上最高値を更新し原油価格が暴落するなか、私がイランに十分に厳しい姿勢をとっていないと考える愚か者たちは嫉妬しているか、悪い人か、ばかのどれかだ」と反論した。

米政府が明らかにした覚書の詳細は次の通り。

①両国および各同盟国はレバノンを含む全戦線での軍事作戦を即時・恒久停止し、武力行使や威嚇(いかく)を控える。最終合意で全戦線における戦闘の恒久停止を確定する。

②相互の主権と領土保全を尊重し、内政干渉を控える。

③最大60日以内(双方同意で延長可)に最終合意に向け交渉・妥結する。

④米国は署名後直ちに海上封鎖の解除に着手し30日以内に完了する。期間中の船舶航行数は戦前の水準に比例させる。最終合意後30日以内に周辺から米軍を撤退させる。

⑤イランはペルシャ湾・オマーン湾間の商船の安全通航を60日間に限り無償で確保すべく最善の努力を尽くす。商船の航行は直ちに開始され、技術的・軍事的障害の除去や、イランによる機雷除去の必要性を考慮し、30日以内に確立される。オマーンや他の湾岸諸国と議論してホルムズ海峡の将来の管理などを定義する。

⑥米国はイランの復興と経済開発のため、地域パートナーと共に少なくとも3000億ドル(約45兆円)規模の計画を策定する。実施メカニズムは60日以内に最終決定し、金融取引に必要なライセンスや適用除外措置、許可は米国が付与する。

⑦米国は、国連安全保障理事会決議や国際原子力機関(IAEA)理事会決議、全ての米国の一方的制裁を含む、全ての対イラン制裁を最終合意の日程に従い解除する。イランと米国は制裁解除の問題が極めて重要であることを認識し、相互合意を達成するため、交渉においてこれらの問題に直ちに取り組む。

⑧イランは核兵器を調達・開発しないことを再確認する。米国とイランは備蓄濃縮物質の処分について、第7項の日程に従い、相互に合意される仕組みに基づき解決することで合意した。最低限の手順として、IAEA監督下で現地において低濃縮化を行う。将来の核のニーズや濃縮問題などの重要事項についても、最終合意で定める枠組みに基づき協議する。

⑨最終合意まで現状を維持する。イランは核計画の現状を維持し、米国は新規制裁や追加部隊の派遣を行わない。

⑩署名直後から制裁解除まで、米財務省はイラン産原油・石油製品の輸出や、銀行取引・保険・輸送などの関連サービスに適用除外措置を発行する。

⑪本覚書の実施に伴い、米国は凍結または制限されている資産や資金を完全に利用可能にする。

⑫本覚書の履行と最終合意の順守を監視するメカニズムを確立する。

⑬署名後、第1・4・5・10・11項の実施開始と継続を条件として、その他の項目についてのみ最終合意の交渉を開始する。

⑭最終合意は法的拘束力のある国連安保理決議で承認される。

依然として残る火種 「イラン有利の覚書」の声

合意署名を受け、ペルシャ湾内に滞留している船舶が続々とホルムズ海峡に向かい始めているもよう。すでに、日本のタンカーなどが通過したとの情報もある。ただ60日という期間では、新たにタンカーがペルシャ湾内に入り、石油やLNGなどを積み込んで湾外に輸送するのは難しい状況だ。今のところ原油価格は下落基調を強めており、WTI先物は17日午後9時現在1バレル当たり75.1と3月初旬以来の水準に。日経平均株価は終値が7万1053.49円と終値としては初の7万円を超え、4日連続で最高値を更新した。一方、円相場については、有事のドル高が解消に向かうとの予想に反し、1ドル160.8円と円安が進んでいる。

今回の合意で石油供給が持続的に正常化するかは、見通せないのが現状だ。覚書では、イランがホルムズ海峡の安全な商船の通航を「60日間に限り無償」で実現する措置を取るとしているが、ガリバフ氏は60日間の期限が過ぎた後、イランはホルムズ海峡を通過する船舶に通行料を課すと言及。またトランプ氏も、合意を受けてホルムズ海峡の通航量が大幅に増えているとする一方で、イランが合意を尊重しなければ再び爆撃すると警告している。

日本最大の物流ニュースサイト「ロジスティックス・トゥデイ」では、〈サプライチェーンにとって本当の正常化とは、船が一隻通過することではない。保険会社が料率を下げ、船主が湾岸へ戻り、銀行が決済し、港湾が貨物をさばき、荷主が安全在庫を減らせる状態になることだ。MOUは30日以内の封鎖解除と通航回復に向けた作業、60日間の無償通航、原油・保険・輸送・銀行取引への適用除外(waiver)を定めた。しかし61日目以降のサービス料、機雷除去、戦争危険保険、制裁コンプライアンスは残る〉と報じている。

軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は、〈60日後に最終合意が決裂するのを前提と仮定すると、船舶の通航については、要するに「あくまで一時的(30日後開始で60日後まで?)に無料でイラン管理下で開放。その代わりイランも米軍封鎖なく石油輸出できる」ということ〉〈今回の覚書は、とにかくホルムズ開放を優先したい米が、イランを合意させるために圧倒的にイラン有利な内容の文章に。これでイランは大勝利と自賛できる。ただし、実際にはイランが米国の要求に応じないと履行されない項目だらけで、そこは画に書いた餅〉〈覚書では「60日間無料」とだけ書いてあって、具体的に何が無料か書いてない点。こういうのは屁理屈競争みたいなところがあって、イランが「通航料は無料だが、安全管理には経費かかるのでその代金まで無料とは書いてない」とか言い出す可能性もあるのではないかな〉などと、SNSに投稿している。

【時流潮流】原子力空母を浮体式原発に 船から陸側に電力供給へ

米海軍が、原子力空母を浮体式原発として使う実験を予定している。自然災害やサイバー攻撃などにより、電力供給が途絶した場合を想定したものだ。米海軍省のハン・アコ長官代行が5月中旬にあった下院公聴会で明らかにした。早ければ、今夏にも実験が実施される。

11カ月に及ぶ任務を終え、母港ノーフォークに帰港する米海軍空母「ジェラルド・フォード」=米国防総省提供

米海軍は現在、11隻の原子力空母を運用している。今回の実験に選ばれたのは、最新鋭の世界最大の空母「ジェラルド・フォード」だ。2月下旬に始まったイラン戦争に従軍するため、地中海東部や紅海に展開していたほか、1月にはベネズエラのマドゥロ大統領強襲作戦に参加するためカリブ海を遊よく、11カ月にも及ぶ任務を経て5月中旬に米東海岸バージニア州ノーフォークにある母港に帰還した。

原子炉は出力12万5000㎾の加圧水型原子炉「A1B」を2基積む。BWXテクノロジーズが原子炉と核燃料を製造、ベクテルがシステムを担当した。これまでのニミッツ級原子力空母に比べ出力が25%も向上している。

約10万世帯分に相当する電力を供給できる能力を誇るほか、航海中も海水を蒸留して約5000人の乗員に新鮮な飲料水を提供できる。

通常、原子力空母は母港寄港中、原子炉の出力を落とし、陸上の基地から電力供給を受けている。今回の実験は、このシステムを利用し、電力を船から陸に逆流させる。

実は、米海軍は原子力船を含め、これまで空母などの艦船を使って地上施設に電力供給をした経験を持つ。古くは1929年12月から翌30年1月にかけ、米海軍初期の空母「レキシントン」が、電力危機に陥った米西海岸ワシントン州タコマに出向き、電力を供給した。

第二次世界大戦中も、米英の駆逐艦7隻を改造して「浮体式発電施設」として利用している。

目的は基地の強靭化 7月までにマイクロ炉3基が臨海に

戦後に入ってからは、輸送船を改造して、出力1万㎾の小型原子炉を積む「スタージス」号を陸軍が運用し、当時、米国が管理していたパナマ運河に派遣した。68年から75年まで現地で電力の供給を続けた例がある。

また原子力船としては89年に初めて原子力船が災害救援活動に派遣された。89年にサンフランシスコ近郊で起きた地震で大規模停電が発生した際、原子力潜水艦が電力を供給した。また、サイパン島が台風で大きな被害を受けた際も、原潜が支援にあたった例がある。

ただ、合わせて25万㎾もの出力がある原子炉を2基積む原子力空母と違い、原潜の原子炉は1基で、その出力は最新鋭のバージニア級原潜でも約3万㎾と小さく、大規模な災害支援には限界がある。また、潜水艦は空母と違い、海に潜っていてこそ、その役割が果たせるという運用法の違いもある。

今回、原子力空母「フォード」の実験は、米国が中露に比べて「浮体式発電所」の開発に遅れている現状に鑑み、まずは空母を使い本格参入に向けた道筋を開こうという試みではない。目的は、米軍が目指す基地の強靱化策にある。米陸軍と空軍は、2028年9月までに、マイクロ原子炉の基地配備を目指す「ヤヌス計画」を米エネルギー省と連携して取り組んでいる。今年7月の建国250年までに、将来の基地配備を目指す少なくとも3基のマイクロ炉を臨界させる予定だ。こうした中、海軍としても、原子力空母が同様の能力を持っていることを内外に誇示する狙いがあるようだ。

【記者通信】高市首相のメディア対応に批判 内閣記者限定で質問制限も

高市早苗政権のメディア対応が物議を醸している。高市首相が大手メディアと直接対応する回数が極端に少ないためだ。しかも質問数を制限し、質問者も官邸詰めの内閣記者会加盟社の記者に限る方法を採っている。外遊時には海外メディアを締め出した経緯もある。首相周辺は「高市総理の体調や公務との兼ね合いで調整がつかない場合もある」と釈明しているが、大手メディア関係者は「実際はフリーランスやネット系、海外メディア、週刊誌記者などから予期せぬ質問攻めに遭うのを避けるためだ」と指摘する。官邸は5月から試行していた内閣広報室のXを6月2日から本格運用し、記者とのぶら下がり取材の回数を増やすことでメディア側からの批判をかわすことに躍起になっている。

幹事社1社しか質問できなかった補正予算案に関する高市首相の会見(5月25日)※首相官邸ホームページより

極端に少ない取材対応 質問も多くて3問

「質問は全社で一度だけですので幹事社からまとめてお聞きします」。2026年度の補正予算案がまとまった5月25日、官邸で開かれた高市首相のぶら下がり会見の一幕だ。

冒頭、高市首相は会見時間22分のうち12分もの長い時間を割いて補正予算についての説明。しかし記者からの質問は幹事社1社でわずか4問に限られたのだ。それも内閣記者会加盟社の記者にしか事前告知せず、記者クラブに属していないフリーやネットメディアは参加できない限られた会見だった。年度予算が始まって間もない時期での3兆円超の大型補正予算という極めて重要な案件にもかかわらずである。予算成立後など節目で時間を割いて記者会見を開いてきた歴代政権と比べるとメディア対応は雲泥の差だ。

ただこうした対応は今に始まったわけではない。高市首相は就任以来、メディアからの質問を極力避けている。例えば26年度の予算審議が大詰めを迎えている2月から3月にかけてのぶら下がり取材の回数はわずか4回。しかも質問数は多くて3問、大抵は1、2問というありさまだ。これにはさすがに記者団から「国民の知る権利に影響を与えている」との指摘が出たが、高市首相は対応を改めていない。

あまりに連れない対応に怒りを露わにしたのは海外メディアだ。5月29日の木原稔官房長官の定例会見で「(高市首相の)直近の記者会見は記者の人数も限られ、事実上質問の制限があった。高市首相は記者会見をどう思っているのか。国民向けの発言だけと思っているのか、それとももっと幅広く、海外メディアも含めて自由に質問されたことに答えることなのか。高市総理になってから海外メディアに答えたことはほぼないと思うが、それは異常ではないか」と迫った。

木原官房長官は「政府としてはあらゆる機会を通じ、国民の皆様に対して、政府としての考え方をお伝えしていくということがまず重要だと考えている。このため高市総理は、年頭であるとか、国会の閉会時、外国訪問時など、そういった節目節目に記者会見を行っている」と通り一遍の回答に終始した。

そして当の高市首相本人も6月2日の国会で「多様な方法をどう組み合わせてコミュニケーションを図るのが好ましいか、試行錯誤しながら見いだしてまいりたい」と、開き直りに近い答弁で煙に巻いた。

【記者通信】エネ代支援の補正予算案が閣議決定 危機克服の道筋見えず

ホルムズ海峡封鎖に基づくエネルギー価格高騰への対応を目的とした2026年度補正予算案が6月3日に閣議決定、国会で審議入りした。5日に成立する見通しだ。予算案の一般会計総額は3兆1135億円。具体的には、①ガソリン補助金の継続を想定し、中東問題に特化した「中東情勢等対応予備費」を創設するため、2兆5000億円を計上、②7~9月の電気・都市ガス料金について標準的な家庭で5000円程度支援するため、今年度当初予算の予備費から5135億円を支出することに伴い、予備費の使用分を穴埋め、③LPガスや特別高圧電力の料金低減を目的に、自治体の判断で使える「重点支援地方交付金」として1000億円を計上――の3本柱だ。

ロイター通信によると、補正後の歳​出は125兆4228億円に膨らみ、追​加歳出に伴う赤字国債⁠の増発で公債依存​度は26.1%に悪化。政府は当初予算の編成時​に​基礎⁠的財政収支(プライマリーバラ​ンス)が一般会計ベ​ース⁠で黒字になるとアピールしてきたが、⁠今​回の補正編成​で再び赤字に転じること​が避けられない情勢という。為替では円安が進み、3日午前時点で1ドル160円に迫る水準。11兆円規模の為替介入は帳消しになった形だ。そうした中で、今回の大型補正予算編成を巡っては、業界内外から費用対効果を疑問視する声が高まっている。

5000億円規模で電気ガス代支援も「子供の小遣いにもならない」

「7~9月の3カ月間の合計で、標準世帯にして5000円程度の電気・ガス代支援など、子供の小遣いにもならない金額だ。そのために、5000億円以上もの税金を投入する必要性がどこにあるのか。だいたい季節に関係なく、円安と原油高の局面が続く限り、エネルギー代が高止まりするのは避けられないだろう。高市(早苗)政権の人気取り政策にしか思えない」。大手メーカーに勤める横浜市在住の40代会社員は、こんな批判を投げ掛ける。

経済産業省によると、電気代の支援は一般家庭向けなど低圧の場合、7月と9月の使用分が1㎾時当たり3.5円、8月が4.5円。標準的な世帯だと、7月1490円、8月2084円、9月1536円の支援額になるという。ガス代については7月と9月の使用分が1㎥当たり14円、8月が18円だ、暮らし方やエネルギー機器の状況に応じて使用量は変動するため、戸建て住宅で在宅率の高い家庭ほど支援額は高くなる見込み。一方、ワンルームに単身で暮らし、日中不在が多く、夏はシャワーで済ませるような世帯は、恩恵を実感できそうもない。

「そもそもガスについては夏場にあまり使わず、支払う都市ガス料金もかなり安いので、補助金のありがたみを全然感じない。また、マイカーも持っていないから、ガソリン補助金も基本的に関係ない。それよりも、エアコンと給湯機がそろそろ買い替え時期なので、次は省エネタイプにしたいと考えているけど、何しろ高額。これを国が補助してくれると大いに助かる。東京都では『ゼロエミポイント』制度で買い替えを支援しているが、残念ながら埼玉県にはない。住んでいる地域によって、支援に格差があるのも納得がいかないので、ぜひ国レベルでの補助制度をお願いしたい。5000億円もの財源があれば、相当な購入支援ができるのではないか」(さいたま市在住の30代会社員)

【記者通信】国の先行く都の補正予算案 「サナエはユリコを見習うべき」の声も

東京都の小池百合子知事は5月29日、542億円規模の補正予算案を発表した。昨年の同予算は物価高対策として、夏場の水道料金無償化がメインだったが、今回はEVや再エネ・畜エネ、非石油由来製品の開発支援など「エネルギー需給構造などに向けた先駆的な施策に対し、前倒しで着手する中身」(小池氏)となった。

赤沢経産相に水素社会に向けた支援強化を要請する東京都の小池知事(右)

542億円のうち、173億円を「先駆的施策」に費やす。小池氏は29日の会見で「ホルムズ海峡がストップしている状況などを鑑みて、石油だけに依存しないで、新しい産業を生み出すきっかけにすべき」だと予算の狙いを語った。

中心となるのは、83億円を計上したEV補助金の拡充だ。車両価格の上昇などを踏まえ、上限額を引き上げる。地産地消型再エネ・蓄エネ設備や需給最適化に向けたアグリゲーションビジネスへの補助には22億円を、省エネ設備の導入運用改善支援には36億円を充て、どちらも拡充する。

ホルムズ情勢を受け、非石油製品の開発支援・利用推進にも注力する。国内で製造した持続可能な航空燃料(SAF)は新たな支援策を打ち出した。当初予算で海外製造との価格差支援を実施しているが、羽田空港で国産SAFを供給する企業に既存燃料との価格差を補助する。

都が国に先駆けて「エネ需給構造改革」

水素社会の実現に向けた自治体間連携事業には1億円を計上した。小池氏は29日、愛知県の大村秀章知事、福島県の内堀雅雄知事と首相官邸や経済産業省を訪問し、水素社会の実現に向けた支援強化を要請。GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債の水素・アンモニア施策への割り当ての拡充などを訴えた。

都の補正予算案には物価高騰対策なども含まれるが、6月5日成立予定の国の同予算案とは趣が異なる。国は3兆円超のうち、ほぼ全てをエネルギー料金への補助金に充てたが、都は中長期的な取り組みが目立つ。足元だけを見る国と、未来を見据える都──。小池氏は会見で「ピンチをチャンスに変える、その時ではないだろうか」と述べたが、今回ばかりは自らが好んで使う「ワイズ・スペンディング(賢い支出)」を地で行ったように見える。

「ガソリン補助金はあくまで応急措置に過ぎない。世界的な石油危機下において、政府が取り組むべきはエネルギー需給構造改革だ」。自民党の有力議員は、エネルギーフォーラムの取材に対し、こう本音を明かした。東京都は今回の補正予算編成にあたり「エネルギー需給構造の転換」を柱に掲げた。本来、国が手掛けるべき施策を、都が国に先駆けて打ち出した格好と言っていい。「サナエ(高市早苗首相)はユリコ(小池氏)のやり方を見習うべきだ」。大手エネルギー会社の元幹部は、皮肉交じりにこう話す。政府・与党は、いつになったら「補助金バラマキ」のポピュリズムから脱却できるのだろうか。

【記者通信】スマホ紛失3年間で16台 原子力規制庁の危機管理を問う

原子力規制庁の職員のスマートフォン(スマホ)の紛失が国会で問題になった。日本保守党の代表で、作家の百田尚樹参議院議員が同院の経済産業委員会で質問した原子力規制庁の公用スマホの紛失は、2023年度2件、24年度4件、25年度10件と増え、この3年で16件になった。また規制庁側は、紛失場所は明らかにしないとしている。

政府側の危機感を欠けた答弁に、百田議員は不快感を示した。「危機管理なさすぎに呆れるが、もっと驚くのは、「どこで失くしたか?」と何度聞いても絶対に答えないことだ。人を舐めているのか」と批判した。そのXの閲覧数は19万件をこえた。同意する国民が多いということだろう。百田議員の質問と答弁は、SNSやYouTubeに転載されて拡散している。

電力・原子力関係者は、このやりとりと原子力規制委員会・規制庁に、不快感を抱くだろう。同委は、その創設以来、原子力発電所の厳しい安全対策を事業者に求めてきた。そこでは、設備に加えて、人の安全対策もあった。事業者側は再稼働のために、その厳しい要求を受け入れてきた。ところが、それ規制庁側がスマートフォンさえ管理できていない。自分の管理体制に問題があるのに、他人に管理を要求できるのかという疑問を抱いてしまう。

中国への私用旅行で紛失例も

原子力規制庁(NRA)職員の業務用スマホ紛失事件は、昨年末に中国・上海での一件が明らかになった。原子力規制庁の職員が25年11月3日、私的な旅行中に、上海の空港保安検査時にスマホをなくしたもようだ。手荷物を預けた際とみられる。帰国後に3日経過した11月6日に気づき、空港などに問い合わせたが見つからなかった。

このスマホは防災に使う業務用で、核セキュリティー担当部署の非公表職員名・連絡先、職員名簿などの個人情報・機密情報が登録されていた。国外にあるため、追跡や外部ロックができないという。規制庁は、情報漏えいの可能性を否定できず、規制庁は海外持ち出し禁止を注意喚起した。それを含めて25年に12件もスマホ紛失が起きてしまった。またこれによる処分を、規制庁は公開していない。

報道によると、規制庁は約600台の防災用スマホを職員に業務のために貸与しているが管理が甘すぎる。今年5月にトランプ大統領は財界人を連れて中国を訪問した。そこでは訪問者は全員、スマホを中国国内で所持せず、自分のスマホは電源を入れなかったという。必要な人は、使い捨て携帯を国が支給。宿泊施設は完全に盗聴器調査をし、中国から送られたものは全て中国に捨ててきた。そうした情報セキュリティ対策と中国への不信を、米国は世界の報道陣に公開した。米国の姿勢と対比すると、日本の甘さが際立つ。

【時流潮流】原発促進の米大統領令から1年 見えてきた成果と課題

トランプ米大統領が昨年5月に原子力産業の発展を促す大統領令を発令してから1年が過ぎた。多数のスタートアップ企業が参入、さまざま新型原子炉の開発競争を続ける。一方で、2030年までに大型炉10基を整備する計画にはメドが立たず、成果とともに課題も見つかっている。

小型新型炉開発でリードするバラード・アトミックス社の「Ward250」。今年2月には原子炉本体をC17輸送機に積み込んだ空輸に成功した=米国防総省提供

トランプ政権は、大量の電力消費が必要となる人工知能(AI)開発で、中国との競争に勝ち抜くためには、原発を大幅に増強する必要があると位置付けている。大統領令では、2050年までに原発の発電容量を現在の4倍の400GWに引き上げる目標を掲げ、SMR(小型モジュール炉)やマイクロ炉など新型炉の早期導入を打ち出した。また、ロシア依存度が高い濃縮ウランや核燃料の米国内で自製や、中露に遅れをとっている原発輸出の促進策なども盛り込んだ。

1年を経て、最も活発な動きがあるのが新型炉の開発競争だ。大統領令を受けて、エネルギー省や軍がさまざまな支援プログラムを確立、資金面や技術面で新規参入企業を後押ししている。

エネルギー省は、米国が建国250年を迎える今年7月4日までに、少なくとも3基の新型炉を臨界させるという野心的なプロジェクトに取り組む。アイダホ国立研究所内の施設などで、臨界に向け新型炉の設置作業を続ける。

現在、先陣争いを繰り広げているのは、ウエスチングハウスの「eVinch」(出力5MW)炉、ラディアント社の「カレイドス」(同1.2MW)炉、アンタレス・ニュークリア社の「RI」(同200~300kw)炉、バラー・アトミック社の「Ward250」(同5MW)炉だ。

中でもWard250炉は、昨年11月に初期臨界を達成、7月までに発電開始を目指すなどトップランナーに位置する。今年2月には、米空軍のC17輸送機での空輸作業(写真参照)に成功、「いつでも、どこにでも、必要な場所に展開できる」炉であることを実証した。

カレイドス炉も注目の炉だ。コンセプトは、送電網にはつながず、米軍基地やデータセンターなどの施設専用に電力や熱を供給するマイクロ炉で、Ward250炉と同様にコンテナサイズで空輸できる。ラディアント社は、この炉を「世界初の量産型マイクロ炉」と位置付けており、28年から供給開始を目指す。

建国記念日までの臨界を目指す取り組みと連携し、米軍は28年9月末までに米国内の基地にマイクロ炉を設置するヤヌス計画に取り組んでいる。空軍はeVinch、カレイドス、RIの3炉を選定し、それぞれ異なる基地への配備を目指す。

「2030年までに10基整備」に暗雲 採算面で不安も

一方、課題も浮上している。そのひとつは、30年までに10基の整備が目標の大型炉建設だ。現時点では、建設に名乗りをあげる電力会社はなく、建設予定地の選定も進んでいない。建設費用が高額な上、工期の遅延も予想されるため、政府の後押しがあっても採算面での不安があるためだ。

その中で、運転を停止した原発の再稼働には進展が見られる。東部ペンシルベニア州のスリーマイルアイランド原発(出力853MW)と中西部ミシガン州のパレイセーズ原発(同800MW)が2年以内に再稼働する予定のほか、中西部アイオワ州のデュアン・アーノルド原発(同615MW)も再稼働する可能性がある。

核燃料などの米国内での自製問題は、商業ベースにのるまではまだ時間がかかりそうだ。大量の原発整備には、必要な数万人規模の労働者確保や、サプライチェーンの整備も必要となるなど課題も多い。さらなる政府の後押しが必要となりそうだ。

【ニュースの周辺】生物多様性・ネイチャーポジティブの現況と企業活動

本稿では、生物多様性・ネイチャーポジティブに関する近年の動向を企業活動の現状にも焦点を当てて見ていきたい。

さて、「生物多様性」については、生物多様性基本法に規定がある。

◎生物多様性基本法

第二条 定義「生物の多様性」

1.「生物の多様性」とは、様々な生態系が存在すること並びに生物の種間及び種内に様々な差異が存在することをいう。また、「自然資本」に関する定義には様々なものがあるが、環境省・農水省・経産省・国交省が2024年3月に策定した「ネイチャーポジティブ経済移行戦略~自然資本に立脚した企業価値の創造~」の中では、IIRC(国際統合報告フレームワーク:統合報告書のガイドライン)の定義で、自然資本には、〇空気、水、土地、鉱物及び森林、〇生物多様性、生態系の健全性、を含むとされている。

Ⅰ.「生物多様性・ネイチャーポジティブ」の意義・状況

Ⅰ-1.「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(22年12月)

22年12月、第15回生物多様性条約締約国会議(COP15カナダ・モントリオール)で「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択された。

◎22年12月「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(抜粋)

環境省「昆明・モントリオール生物多様性枠組の構造」より

*2050年ビジョン 自然と共生する世界の実現

*2030年ミッション 自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させるための緊急の行動をとる

30年ターゲットの例は下記の通り。

<ターゲット3> 陸と海のそれぞれ少なくとも30%を 保護地域及びOECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)により保全(30by30目標)

<ターゲット6> 侵略的外来種の導入率及び定着率を50%以上削減

<ターゲット15> 事業者(ビジネス)が、特に大企業や金融機関等は確実に、生物多様性に関するリスク、生物多様性への依存や影響を評価・開示し、持続可能な消費のために必要な情報を提供するための措置を講じる

Ⅰ-2. 英国・コーンウォールG7サミット(21年6月)

「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(22年12月)の採択に先立ち、G7各国は21年6月の英国・コーンウォールG7サミットにおいて、〇30年までに生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せるネイチャーポジティブな経済の促進、〇自国での「30by30目標」などを約束した。

◎首脳コミュニケ附属文書「G7・2030年自然協約」(抜粋)

次の10年間を通して、我々は、生物多様性の損失を止めて反転させるために、それぞれが政府全体を基礎として動員し、(1)移行、(2)投資、(3)保全、そして(4)説明責任の4つの主要な柱にまたがる行動をとる。

(1)移行:自然資源の持続可能かつ合法的な利用への移行を主導

(2)投資:自然に投資し、ネイチャーポジティブな経済を促進

(3)保全:自然を保護、保全、回復させる(30年までに世界の陸地・海洋の少なくとも30%を保全又は保護するための新たな世界目標を支持)

(4)説明責任:自然に対する説明責任及びコミットメントの実施を優先

Ⅰ-3. 「生物多様性国家戦略2023-2030」(23年3月)

上記の動きを受けて、わが国も23年3月31日、生物多様性に関する国家戦略「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定した。

◎環境省「生物多様性国家戦略2023-2030の概要」より(抜粋)

〈ポイント〉

・生物多様性損失と気候危機の2つの危機への統合的対応、30年までのネイチャーポジティブ実現に向けた社会の根本的変革

・「30by30目標」の達成等の取組により、健全な生態系を確保し、自然の恵みを維持回復

・自然や生態系への配慮や評価が組み込まれ、ネイチャーポジティブの駆動力となる取組など、自然資本を守り活かす社会経済活動の推進

〈戦略〉

*2050年ビジョン 自然と共生する社会

*2030年に向けた目標  ネイチャーポジティブ(自然再興)の実現

5つの基本戦略と、基本戦略ごとに状態目標(あるべき姿 全15個)と行動目標(なすべき行動 全25個)を設定。

基本戦略1 生態系の健全性の回復

基本戦略2 自然を活用した社会課題の解決

基本戦略3 ネイチャーポジティブ経済の実現

基本戦略4 生活・消費活動における生物多様性価値の認識と行動

基本戦略5 生物多様性に係る取組を支える基盤整備と国際連携

Ⅰ-4. 「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」(24年3月)

「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」(環境省・農水省・経産省・国交省の連名で策定)では、経済活動の自然資本への依存とその損失は、社会経済の持続可能性上の明確なリスクとされ、社会経済活動を持続可能とするため、ネイチャーポジティブ経営への移行が必要とされた。

◎「ネイチャーポジティブ経営への移行の必要性」(上記「移行戦略」より)

豊かな生物多様性に支えられた(空気、水、土地、鉱物、森林などの)「自然資本」は、人間が生存するために欠かせない安全な水や食料の安定的な供給に寄与するとともに、防災減災など暮らしの安全・安心を支え、地域独自の文化を育む基盤となるなど、豊かな社会の礎となっている。多くの経済活動が自然資本に依存しており、かつ自然資本は継続的に劣化していることが世界経済フォーラム(WEF)などで報告されている。

「ネイチャーポジティブ経済」とは、個々の企業が自社の価値創造プロセスにおいて自然の保全の概念を重要課題(マテリアリティ)として位置付け(ネイチャーポジティブ経営)、バリューチェーンにおける負荷の最小化と製品・サービスを通じた自然への貢献の最大化が図られ、また、そうした取組を消費者や市場などが評価する社会へと変化することを通じ、資金の流れの変革などがなされる経済を意味する。

Ⅰ-5. 生物多様性損失状況(WWF(世界自然保護基金)報告)

24年10月、WWFが発表した「生きている地球レポート2024」は、生物多様性の豊かさを示す指数が自然環境の損失や気候変動により過去50年(1970年〜2020年)で73%低下したとする。

◎「ファクトシート 生きている地球レポート2024」(抜粋)

24年10月、WWFの「生きている地球レポート2024」は、自然界の現状を科学的知見に基づいてまとめており、対象の野生生物種の個体群を分析した「生きている地球指数(Living Planet Index(LPI)」も含まれる。

同報告書は、自然の損失と気候変動という2つの危機がいかに地球を危険かつ不可逆的な転換点に近づけているかを検証している。

(参照)産経新聞(24年10月10日)

「生物多様性50年で73%減」「環境損失、気候変動が影響」

地球上の生物多様性の豊かさを示す指数は、自然環境の損失や気候変動により過去50年で73%低下したとの報告書を世界自然保護基金(WWF)が発表した。哺乳類や鳥類、両生類など計5495種の生息密度や巣の数などから算出した「生きている地球指数」を用いた。

20年の指数は1970年と比べて73%減少。生息環境別では、河川や湖沼、湿地といった淡水域の減少率が85%と最大で、陸域は69%、海域は56%と評価した。地域別で最も減少したのは中南米・カリブ海の95%で、アフリカが76%、日本を含むアジア太平洋地域が60%、農地開発に伴う森林破壊など生息地の劣化や喪失が脅威になっているという。

【記者通信】エネ代補助で大盤振る舞い 補正予算案を国会提出へ

高市早苗首相は5月26日、中東情勢を踏まえた2026年度補正予算案を来週にも国会に提出すると明らかにした。総額は3兆円強。一般予備費に5000億円を計上し、夏場の電気・ガス料金支援に充てる。新たに創設した「中東情勢等対応予備費」(仮称)には2.5兆円を計上し、ガソリンなど燃料油価格の補助に活用する方針だ。特別高圧電力やLPガスの利用者への支援などを念頭に、重点支援地方交付金も追加措置する。通常国会で補正予算を編成するのは、ロシアによるウクライナ侵略でエネルギー価格が高騰した22年以来だ。

電気料金は低圧で、8月使用分は1㎾時当たり4.5円、7月と9月は同3.5円を支援する。標準的な家庭では3カ月で5000円程度の負担引き下げ効果となり、予算総額は5000億円だ。電気・ガス料金補助は23年1月~24年5月まで続き、その後、24年夏・冬、25年夏・冬、そして今年夏と、復活を繰り返している。

料金補助を実施するにしても、今回の補助額には疑問が残る。昨夏は8月使用分が1㎾時当たり2.4円、7月と9月が同2.0円で、予算総額は2881億円だった。今夏はほぼ倍増となったが、高市首相は「電気ガス料金が昨年の水準以下になることにこだわった」とされる。しかし、昨年は参院選前の「物価高対策」だったのに対し、今年は石油の国家備蓄が放出される有事下にある。なぜ今、電気代を昨年以下にまで抑え込もうとするのか、理解に苦しむ。根底には国民の可処分所得が増え消費が伸びれば、税収も自然と伸びる──といった高市氏の単純な経済観がある気がしてならない。

「170円」を誇る高市首相 野党も迎合

燃料油補助金について高市首相は、26日の会見で「米国を含めたG7で最も安い水準である全国平均170円に抑制している」と誇った。「国民、特に地方住民の生活を支えるために必要」との声も聞かれるが、これまでの総額はいよいよ15兆円を超えた。財政状況の悪化は円安につながり、ドル建ての燃料輸入費用は増え、円安はさらに加速する。円安と金利上昇が顕著な今は、財政に気を配り、ガソリンの消費を抑制させ、円安に歯止めを掛けるべき時ではないのか。

自民党の鈴木俊一幹事長が23日、福岡県で行われた自民党の会合で「大変に財政的な負担がかかるもので、今後のこともしっかり考えなければならない」と述べるなど、ここにきて党内では補助の縮小や制度の見直しが必要との声が高まっている。だが、遅きに失した感は否めない。

今回の補正予算の多くは予備費の積み増しだ。予備費は内閣の責任で迅速に支出でき、国会の承諾は支出後となる。中道改革連合などの野党は「予備費ではなくきちっとした経済対策を」と反発するが、中道、立憲民主党、公明党の3党が25日、政府に提出した緊急提言には「燃料油補助継続のための財源補填」が盛り込まれていた。「もっと出せ」との批判は起きても、「本当に必要なのか」という意見は出てこない。

野村総研エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は25日、自身のコラムで〈生活が強く圧迫される中低所得層に絞った補助金とし、全体の支出規模を抑えるべきではないか。所得制限付きの補助金が技術的に難しいのであれば、電気・ガスの補助金とともにガソリン補助金の金額を抑え、同時に低所得者向けの給付金を新たに検討してもよいのではないか〉と綴った。15兆円を投じてもなお、永田町でこうした意見が主流にならない。

重要案件で質問1社だけ マスコミ嫌いの高市首相

ここにもう一つ、重要な問題がある。年度予算が実施されたばかりでの3兆円規模という大型の補正予算編成という極めて重要な事案にもかかわらず、高市首相の会見では、幹事社の1社にしか質問の機会が与えられなかったことだ。今回に限らず、質問数に上限を設けたり、記者がぶら下がりを希望しても、要望が通らなかったりと、官邸周辺では高市氏の「マスコミ嫌い」を彷彿とさせる対応が目立つ。歴代首相には見られなかったことだ。各種世論調査では、「政府は石油の節約を呼びかけるべきではないか」との声が高まっているが、高市首相は「石油供給は足りている」を繰り返すばかりで、財政、債券安、円安などの重要問題を含めて国民の不安に丁寧に応える姿勢が欠けている。

記者会見には一部、自分の意見を延々と主張したり、会見と全く関係のない質問をしたりする厄介な記者も参加するのは事実。ただ、こうした記者の質問を巧みにかわせれば、首相の評価もいっそう高まるのではないか。

【記者通信】国が燃料油補助を見直しへ 「目標価格」から「定額」へ変更か?

エネルギーフォーラムが再三問題を提起してきた燃料油補助事業が、見直されることになりそうだ。関係筋によれば、レギュラーガソリン1ℓ当たり170円をターゲット価格に設定し補助額が変動する現行方式から、一律で定額を補助する方式に切り替わる可能性がある。それによって、利用者に価格変動のシグナルが伝わり、高騰時には節約を促す効果も期待できる。ただ、有識者の間では「補助金を中途半端に残すのではなく、財政事情を踏まえて廃止すべきだ」(市場関係者)とする見方も少なくない。出口戦略をどう描くのかも含め、議論の行方が注目される。

首都圏では相変わらず150円台の値札が目立つ(5月17日、千葉県船橋市内のガソリンスタンド)

萩生田光一幹事長代行は5月18日の会見で、イラン情勢を背景にした現在の燃料油補助について「文字通り激変緩和措置なので、この170円を全く見直しせずにこのまま延々と続けるというのも、かなり無理がある」と指摘。その上で、「新しい原油については、輸送のコストなどを含めてかなり高いものになっている。そういったことを国民に理解していただくことも、必要ではないか」との見解を示した。一方で、原油量に関しては「代替国も含めて7割くらいの供給、そして220日分の備蓄がまだある。そういう意味では量的には心配はないところまで切り抜けた」と述べた。

翌19日、赤沢亮正経済産業相は閣議後会見で、燃料油補助金の問題についてこう言及した。「燃料油価格の激変緩和措置は、ガソリン価格が200円を超える水準に急騰する恐れがあったことを念頭に、国民生活と経済活動を守るために緊急的に、可及的速やかにガソリン価格を引き下げるために講じたもの。与党からは中東情勢、価格動向、政策の持続可能性を勘案しつつ、政府として柔軟に対応すべきとの提言をいただいている。中東情勢が不透明な中、今後の物価動向や経済に与える影響を注視するとともに、経産省として必要な検討を進めていく」

そもそも燃料油の補助金制度は、萩生田氏が経産相を務めていた2022年1月に原油価格高騰に対処するための激変緩和措置としてスタートした。その後、原油高は収束したものの、今度は円安の進展による輸入コスト高が起きたことから、物価高騰対策として継続。昨年12月末、ガソリン暫定税率の廃止に伴って、ようやく終了した。しかし、そのわずか2カ月後に米国・イスラエルとイランの軍事衝突が勃発。ホルムズ海峡が事実上封鎖され、原油価格が再び高騰したことで、3月19日に補助金が再開された格好だ。