【記者通信/1月21日】常態化する電気ガス代支援 国が本来注力すべき施策とは

政府が物価高対策の一環として実施する電気・ガス料金の負担軽減策が常態化しつつある。激変緩和対策事業として始まった2023年1月からこれまでに投じられた税金は、ざっと5.5兆円規模に達する。それだけの国費投入に見合う効果は、国民経済的にきっちりと表れているのか。電力・ガス業界関係者からは疑問の声が相次ぐ中、国による検証もないままズルズルと続く電気・ガス代補助は、完全に止め時を見失った感がある。国民ウケ狙いの付け焼き刃的な支援ではなく、国が本来注力すべき施策とは。

衆院解散を表明した高市首相の会見(首相官邸ホームページより)

「国民の皆さまが直面する物価高対策については、これもう待ったなしの課題だ。高市内閣として、速やかに対策を打つ必要があった。高市内閣が編成した令和7年度補正予算で措置した、ガソリン・軽油の値下げ、電気代・ガス代支援、重点支援地方交付金、物価高対応子育て応援手当により、1世帯当たり、標準的には8万円を超える支援額となることが見込まれる。ガソリンと軽油の価格については、補助金も活用したことで、既に値下がりしている。電気代とガス代の支援もまさに今月から始まっている」

高市早苗首相は1月19日の衆院解散を表明した記者会見の冒頭、物価高対策への取り組みを強調しながら、電気・ガス代支援の成果をアピールした。この件について、世論は概ね好意的に受け止めており、メディアの論調を見ても表立った批判は見られない。国民負担の軽減につながる施策であれば、基本的に良しとする風潮は理解できる。

しかし、だ。言うまでもなく、物価高の主因は円安である。高市政権が掲げる「責任ある積極財政」は、マーケットには「円安要因」と受け止められている。現在の日本のような、物価上昇局面での積極財政は、通貨の信頼低下やインフレ懸念を通じて円安を加速させやすい側面がある。消費減税論の高まりを背景にした財政悪化への警戒感から、長期金利も上昇し27年ぶりの高水準となっている。つまり物価高対策としての積極財政が円安や金利上昇を招き、結局は回りまわって物価高を助長させているのが実態だ。この本質的問題にメスを入れない限り、国民経済的にマイナスとなっている現状の物価高局面は解消されないだろう。

【記者通信/1月16日】電事連の林会長が辞任 浜岡の不祥事受け「痛恨の極み」

電気事業連合会の林欣吾会長(中部電力社長)は16日午後、都内で記者会見を行い、同日付で辞任することを明らかにした。林氏は浜岡原発の基準地震動算定に関する不適切事案について、「原子力事業の根幹を揺るがしかねない極めて深刻なもの」と改めて謝罪。その上で「中電社長として、事実解明、原因究明、再発防止策の策定に専念しなくてはらない」と辞任の理由を語った。

会見で辞任を表明した林会長

午前中に行われた会議で各社の社長に意向を伝え、了承を得た。会議で反対する意見はなかったという。タイミングについては「今日の今日まで悩み続けた。中部電力の社長として事実解明や組織の解体的な再構築に専念したいという強い思いがある一方で、電事連会長としての責務もあり、辞任によって空席を作ることの影響や周囲への迷惑を考え、どうすべきかずっと悩んでいた」と明かした。後任が決まるまでは、3人いる副会長(松田光司・北陸電力社長、森望・関西電力社長、安藤康志・関電執行役常務待遇)が職務を代行する。

3月末まで残されていた任期途中での辞任となった。任期中の昨年2月に、原子力推進へと舵を切った第7次エネルギー基本計画が閣議決定されるなど、原子力の重要性が再評価されている時期だけに、会見では「痛恨の極み」と繰り返した。柏崎刈羽原発の再稼働など業界全体の取り組みについては「着実に進むことを願っている」とし、後任に対しては「ビジョンを持ってリーダーシップを発揮し、山積する課題を一つずつ着実に前に進めてほしい」と期待を寄せた。

実態解明には数か月

林氏がデータの不適切な取り扱いの可能性を把握したのは昨年12月2日のことだ。2日前の11月30日には浜岡原発の工事費未払いの責任を取り、原子力本部長の伊原一郎副社長と同本部の名倉孝訓執行役員が辞任したばかりだった。林氏は、昨年5月ごろに原子力規制庁との間で地震動に関するヒアリングが始まったことは知っていたが、不適切事案だとは認識していなかったという。12月2日以降、社外弁護士を通じて十数名にヒアリングを行い、原子力土建部の数名が関与していたことが明らかになった。18日、原子力規制委員会に結果を報告した。

規制委の山中伸介委員長は1月7日の会見で、「ねつ造であり明らかな不正行為」と強く非難。組織的な不正だったのか、社内でブレーキをかける声はなかったのか、どのレベルの社員まで把握していたのか──といった実態は、第三者委員会の調査や規制委による本店立ち入り検査などで明らかになる見通しだ。

【SNS世論/1月16日】原子力規制の「権力監視」に期待 頼りないオールドメディア

中部電力は1月5日、同社の浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査で「不適切事案」があったと発表した。詳細は完全に明らかではない。しかし、いつもの通りオールドメディアの報道は、中部電力と原子力への批判一色となった。関係者、そしてオールドメディアは冷静に問題に向き合うべきだ。そして権力者である原子力規制当局の行動のチェックが、メディアや政治によって行われていないことも改めて分かった。SNS世論が適切な意見を示し、規制当局や関係者の行動を牽制してほしいと思う。

問題となっている中部電力浜岡原発

◆状況不明、なぜ中部電が?

発表や報道などによると、中部電力は原発の耐震設計の要である基準地震動を策定する際に、条件の異なる20種の試算を行った。規制庁に提出する資料では、地震動の中で代表となる試算4種で平均に最も近い試算を選んだと説明。ところが地震動を意図的に会社側が選び過小評価したものを提出した疑いがあるという。

しかし、この不祥事の中身は、まだはっきりしない。中部電力の行動が発電所の安全や審査にどのような意味があるのか分からない。また当局の規制や審査の妥当性を専門家ともに検証する動きが少ない。浜岡原発は東南海地震の危険があるために、審査で地震動はこの10年常に問題になっており、規制当局が何回も出し直させているらしい。それは意味があることなのか不明だ。

ただし筆者は中部電力を積極的に擁護する意図はない。2011年の東京電力の福島第一原発事故の後で、原子力への厳しい批判が続き、厳格な行政当局の規制が行われる中で、中部電力のようなしっかりした会社が、なぜ批判を受けかねない行動をしたのか残念に思う。

◆原子力に敵意?オールドメディアの過剰な批判報道

オールドメディアはいつもの通り、この問題でもおかしな報道を続ける。「『どこが信用できるのか分からない』 原子力規制委、浜岡再稼働の審査を白紙化」(東京中日新聞、7日)など、規制当局側や関係者の批判的な声を集め、再稼働を遅らせるような記事を書く。朝日新聞を例にすると、同社サイトの検索で、発表の5日から14日まで、「浜岡」と入った記事は、24本になった。同社の社説では中部電力批判と、原子力規制を強化し各原発に追加調査をしろと、似た内容を2回も取り上げた。

一方で原子力規制庁は最近、不祥事を起こした。昨年11月、同庁職員が私用で訪問した中国で業務用スマートフォンを現地で紛失していたことが6日、明らかになった。機密性が高いため公表していない核セキュリティー担当部署の職員名や連絡先が登録されていたという。

謎の多い事案だ。日中両国間の緊張が高まる中で、なぜ中国に業務用スマホを持って私用でいったのか。スマホは中国の情報機関に盗まれたのではないのか。しかも「関係者」への取材で分かっただけであり、規制庁からの公式発表ではない。再び朝日のサイトで検索すると、記事は1本のみ。浜岡報道に比べ熱量が明らかに少ない。

【時流潮流/1月13日】脚光浴びる揚水発電 米国が普及拡大へ本腰

原発ブームが下火になって意向、すっかり忘れ去られていた揚力発電所が、いま静かなブームに沸いている。太陽光や風力発電の急速な普及に伴い、調整弁機能に注目が集まる。世界各地で着工や導入検討が相次いでいる。

日本最大の714mの高低差を利用した葛野川揚水発電所。120万kwの出力がある=東京電力リニューワブルパワーのウェブサイトから

揚水発電所は19世紀末にイタリアとスイスで始まり、米国でも1930年から導入が始まった。出力調整が難しい原発の普及に伴い、20世紀半ば以後に世界各国で建設が相次いだ。夜間の余剰電力を使い低い場所にある調整池の水を標高が高い上部の貯水池にくみ上げ、需要が高まる時間帯に放水して発電する巨大なバッテリーの役割を果たす。

だが欧米や日本で原発ブームが去り、揚水発電の着工数も激減した。米国では、21世紀に入って以後は二件しか新規着工がなく、忘れられた存在になりかけていた。

転機は、地球温暖化対策として太陽光などの再生可能エネルギーが注目を浴び始めたことにある。これらの再生可能エネルギーも、原発と同様に弾力性ある出力調整が難しい。太陽光は、夜間は発電できず、風力も風が吹かなければ発電できない。

さらに、状況に恵まれ発電しすぎてしまい、送電線に負荷をかけすぎてパンクさせる事故も相次ぐ。そうした中、「巨大な蓄電池」とも言える揚水発電所は柔軟な運用が可能で、調整弁の役割を果たせるはずとの期待が高まり始めた。

昨今の原発ルネサンス到来も、ブームを後押しする。米国は、エネルギー貯蔵面でも世界のトップリーダーの地位を築こうと、2020年から揚水発電所の普及拡大に本腰を入れ始めている。中国産のレアアースが必要なリチウムイオン電池とは違い、揚水発電所は「国内資源」であるという魅力もある。

米国は再生可能エネルギーの「調整弁」としての役割に加え、揚水発電所に老朽化が目立つ送電インフラ対策の役割も期待している。病院、空港、軍事基地など重要インフラへの送電が万が一止まった場合のバックアップ電源として位置づけられている。

ルーマニアやブルガリアと協力関係構築へ

最近では、海外に米国製原発を売り込む際に、揚水発電所をセット販売する動きもある。2025年5月には、欧州を訪問した米エネルギー省のライト長官が、ルーマニアとブルガリア両国のエネルギー相と個別に会談、原発だけでなく揚水発電所所でも協力関係を築くことで合意した。

原発や風力や太陽光などの再生可能エネルギーで余分に発電した電力を、揚水発電所で活用すれば「安全で手ごろな価格、そして、クリーンなエネルギーの確保」が可能となりますというのが、米国の売り文句だ。

現在、揚水発電所は世界に約400カ所あり、約200GWの発電容量がある。トップ3は、中国の51GW、日本の22GW、米国の18.9GWで、この三カ国だけで約5割を占める。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、2050年にカーボンニュートラルを達成するには、世界で新たに420GWの揚水発電所の整備が必要と試算するが、中国など東アジア諸国を中心に旺盛な投資意欲があり、目標達成は確実とみられている。

豪州の研究機関によると、揚水発電所の適地は世界に60万カ所以上もある。今後、急速に普及する可能性が高そうだ。

【現地ルポ/1月6日】航空の脱炭素化どうする?〈下〉 トランプ大統領テコ入れと日本のメリット

◆生産プラント増設計画続く、価格安定の期待

それでは、今後のSAFの供給体制はどうか。

イリノイ州立大学のシュテファン・ミューラー教授を訪ねた。同教授は、二酸化炭素排出、バイオ燃料の計測の専門家。米国のバイオ燃料の各委員会にも参加している。

前述したように米国の農業は効率化が進んでいる。それに伴いエネルギー使用量が減少し二酸化炭素は減少傾向だ。2019年までのデータだが、一貫してバイオ燃料のCI値(カーボン・インテンシティ、炭素排出原単位、算出一単位ごとの二酸化炭素排出量)は低下している。ここ数年のCCSの導入で、一段と減少することが見込まれるという。「バイオエタノール、SAFの使用は、脱炭素の有効な手段だ」と同教授は指摘した。

エタノール製造におけるCIの減少。シュテファン教授作成

またエネルギー調査会社のアーガス社のアナリストの話も聞いた。現在は供給が不足しており、また需要も多くなく、価格が乱高下している。バイオエタノールからSAFへの転換する工場の増設が予定されており、供給増に対応していくことが見込まれる。「価格も落ち着き、需要が増えるが価格は低下傾向になるだろう」と予想した。そしてSAF使用の国際協定があり、EUを中心に規制強化が見込まれる。EUは域内でのSAF製造を試みるだろうが、「米国の安いSAFは使われていくだろう」と見ていた。

◆「トランプ案件」になったSAF

「SAFはトランプ大統領自ら関わる重要な政治問題になっています」。首都ワシントンで農業団体のロビイストは現状を説明した。ロビイストとは、企業や団体などの利益代表として議員や政府関係者に働きかける専門家のことで、米国の場合は登録制だ。このロビイストは弁護士・法務博士で弁が立ち、政治の裏表に詳しかった。

2025年のトランプ政権が発足した後で、このロビイストは戸惑ったという。バイデン政権と民主党の議員らは、「エコ」という言葉に飛びつく傾向にあり、バイオエタノールを巡る要請では「脱炭素」の面を押し出した。一方でトランプ大統領と与党の共和党議員の多くは、「エコ」という言葉が嫌いで、「トランプの言葉でバイオ燃料を語るようにした」という。トランプ政権のスローガンである「アメリカ・ファースト」という言葉に対応し、「バイオエタノール、SAFは米国農家の利益になる」と強調している。そして今は、SAFへの支援、制度作りにも、現政権は協力的で、「大統領の関心も高い」という。

米国では、トウモロコシ由来のバイオエタノールが自動車向けの混合燃料として定着している。その製造で、全国で10万軒以上の生産農家、直接雇用約5万5500人、間接雇用約26万人に収入をもたらす巨大な産業になっている。これを再加工するSAFによって、この産業はさらに発展する可能性がある。当然、政治影響力も強い。「共和党、民主党の政治的な立場に関係なく、バイオ燃料の拡大と政治の支援は続く。米政府からの日本への購入のお願い、ビジネスの売り込みも続くだろう」とこの人は述べた。

【現地ルポ/1月5日】航空の脱炭素化どうする?〈上〉 米国バイオ燃料産業が準備着々

航空業界の脱炭素のため、「SAF」(Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料))を使い、燃料の面から航空産業の脱炭素を進めようという動きが世界各国で始まった。米国ではトウモロコシ由来のSAFの製造業を政府、民間が育成しようとしている。そして重要な顧客として日本が期待されていた。米国現地を訪ねて関係者の話を聞いた。

航空業界でSAFの使用は広がるのか(写真はiStockより、イメージ)

筆者は、2025年7月に米国産バイオエタノールの現地取材のリポートをエネルギーフォーラムに掲載している。米国のSAFはバイオエタノールを加工して作るものが中心で、今回はその続編となる。

「米国バイオエタノール事情<上> 脱炭素・価格・支援策のポイント」

「米国バイオエタノール事情 <中>「食料を燃料に使うな」にどう向き合うか」

「米国バイオエタノール事情<下> 問われる日本の選択」

◆不耕起栽培で作られるトウモロコシ

まずSAF製造の新しい動きを〈上〉では紹介してみよう。

刈り入れの済んだ、地平線まで広がるトウモロコシ畑を訪問した。米国ノースダコタ州北部のスペンサー農場だ。ここはエネルギーベンチャーのジーボ・グループ(Gevo)と提携して、デントコーンというトウモロコシを生産している。それが加工されてバイオエタノールになる。ここでは土を耕さない農法である不耕起栽培を行っている。地面を調べると、土は硬いままだった。経営者には広大な農地の刈り入れ中で会えなかった。

ノースダコタは北海道北部よりやや北の緯度にある寒冷地でトウモロコシ生産の適地ではない。この農場は、4000エーカー(1600ha)の農場を2人で運営していた。日本の平均耕作面積は3.6ha。その440倍の面積だ。米国の農家の豊かさ、産業としての農業の強さの一因は、この規模の大きさにあると理解した。

広大なノースダコタ州のトウモロコシ畑、不耕起栽培が行われていた

不耕起栽培は炭素を土中にそのまま残すことで、栽培での二酸化炭素の削減を目指す。農家の手間も減る。耕した方が食物の成長に良い影響があるが、適切に肥料、改良種を使うことで収穫は増加することもある。この農法での二酸化炭素の削減量を排出量削減クレジットとして評価する計測法もある。米政府はこの農法を行う場合に、二酸化炭素の削減量に合わせ25年までの3年平均で1エーカー(0.4ha)当たり25ドルの補助金を出したという。この支援はトランプ政権では終わってしまった。

◆CCSと繋げ、バイオエタノールを脱炭素に

ジーボ社のノースダコタ工場。バイオエタノールを生産(資料より)

ジーボ社のノースダコタにあるバイオエタノール工場を訪ねた。ここでは集めたトウモロコシを分解し、その30%の糖分からバイオエタノールを作る。30〜40%を家畜飼料にする。製造工程で出る20%程度の二酸化炭素は圧力をかけて液化し、パイプで2kmほど離れた地下2000mの砂岩層に流し込み地中に埋める。これはCCS(二酸化炭素回収・貯留)という取り組みだ。

砂岩の上下は岩盤で、二酸化炭素はその中に閉じ込められることになる。ランニングコストでは、1t分の二酸化炭素を貯留するのに5ドル(750円程度)という。モニタリングも行い、州と国に情報を共有している。

CCSは日本でも検討されているが、適地が少ない。米国は国土が広く、その結果、地層も多様であり、CCSで使える適地が多いようだ。ジーボ社のCCSを日本のNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が支援していて、そこからデータを収集していた。「環境負荷の少ないバイオ燃料が、完全にカーボンフリーに近づく。22年から始めたが二酸化炭素が外に漏れるなどの問題は起きていない。今後は他の生産プラントから、液化した二酸化炭素を受け入れてCCSを行うことを検討している」と、同社の担当者は話した。

ジーボ社は、バイオエタノールを原料とするSAF工場の建設を予定している。不耕起栽培、またCCSは「生産で炭素を削減した」と認定される。それはバイオエタノールの販売で付加価値として提供され、商品価値を高める。さらに同社は米国の公的な温室効果ガスの指標に加えて、炭素削減の価値評価指標を独自に作り、顧客に提供している。

米国政府、そして米国企業は、環境問題では数字を示し、データで議論やPRをしようとする。イメージで環境を語る傾向がある日本の行政や企業より、その姿勢は客観的で、説得力を持つ。この姿勢は、見習った方が良いだろう。

【記者通信/12月24日】メガソーラー規制を強化 閣僚会議が対策パッケージ決定

政府がメガソーラーに関する関係閣僚会議(議長:木原稔・内閣官房長官)の初会合を12月23日に開き、対策パッケージを決定した。「地域との共生が図られた望ましい事業は促進する一方で、不適切な事業に対しては厳格に対応する必要がある」とし、関連法の規制強化や、2027年度以降の事業用太陽光でFIT(固定価格買い取り)・FIP(市場連動買い取り)制度による支援廃止の検討など、さまざまな対策を提示。関係省庁が連携し、速やかに実行していく方針だ。

これに先駆け、18日には自民党の経済産業部会や環境部会などの合同会議が政府に提言を提出。その方向性を共有し、①不適切事案に関する法的規制の強化、②地域の取り組みとの連携強化、③地域共生型への支援の重点化――の3本柱でまとめた。

事業用へのFIT・FIPの支援停止へ アセスや電事法も見直し・強化

具体的には、例えば、自然環境保護に関して環境影響評価(アセス)法の対象の見直しや電気事業法での実行性強化を図る。その他、種の保存法や文化財保護法、自然公園法、森林法、景観法などでも規制・運用強化を図る。

そして、地域共生型を重点的に支援する方針を一層強化するため、事業用太陽光(地上設置)へのFIT・FIPによる支援の在り方を見直す。27年度以降の事業用太陽光について廃止を含めて検討し、25年度中に方針を決める予定だ。他方、次世代型電池の開発・導入や屋根置きへの導入支援の重点化などで、望ましい再エネの普及拡大を図る。

地域との連携強化に向けては、地方三団体(全国知事会、全国市長会、全国町村会)を交えた「再エネ地域共生連絡会議」を新設。また、法令違反通報システムによる通報や、「再エネGメン」による調査の対象に、非FIT・非FIPも追加する。

政府はこれまでも再エネ特措法の改正などで段階的に規制を強化してきたが、十分な効果を発揮できなかった。号令をかけるだけでなく、パッケージで示した方針を各地できちんと実施できるような体制の構築が欠かせない。

【記者通信/12月23日】柏崎刈羽再稼動の地元同意完了 「分断」と批判した朝日の見識を問う

新潟県の花角英世知事は12月23日、赤沢亮正経済産業相と面会し、柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働に同意する考えを伝えた。東京電力は24日にも原子力規制委員会に使用前検査を申請する。来年1月20日ごろには6号機が再稼働する見込み。ようやく地元同意が完了したが、一連のプロセスを巡っては朝日新聞など左派系メディアの的外れな批判が目に余った。

赤沢経産相(右)と面会した花角知事

メディアが頻繁に使う言葉に「分断」がある。特に原子力や沖縄県の米軍基地に関する記事など、イデオロギーが対立しやすい分野で多用される傾向にある。普天間基地の辺野古移設を巡って島が分断している──こんな使われ方を目にしたことがある人も多いだろう。

知事の判断が分断を招く?

新潟県の地元合意に際しても、やはり「分断」が使われた。朝日新聞は11月18日(花角氏の容認判断の前日)、「東電の再稼働 分断を招く判断 避けよ」と題した社説でこう主張した。〈地域住民の分断を招くおそれのある判断は避けるべきだ〉

やや話はそれるが、この社説を呼んで米大統領選を思い出した。2018年に第1次トランプ政権が誕生した時、メディアは盛んに「トランプが米国社会を分断させている」と報じた。トランプ氏が分断を作り出している「原因」だという主張だった。

確かに、トランプ氏の発言が米社会の分断を「加速」させている側面はあるだろう。しかし、「原因」と言われると疑問符がつく。トランプ氏の登場以前から、グローバリズムへの疲弊感や格差の拡大、移民の流入による白人アイデンティティの喪失などで、すでに米社会は分断していた。その「結果」がトランプ氏の当選だったというのが現実だ。

話を再稼働問題に戻すと、朝日の社説は「分断を招く恐れがある判断は避けるべきだ」と、花角氏の判断が分断の「原因」であるかのような書きぶりだ。だが、意見が対立している状況を「分断」と呼ぶのなら、花角氏が再稼働を容認しようが、判断を先送りしようが、新潟県はとうに分断されている。反対派からすれば、知事が容認すればいい気はしないし、また判断を先送りしても、早期再稼働を求める立地地域を中心に不満が噴出する。意見が拮抗している以上、分断を招かない判断などないのだ。

再稼働問題と同じように、意見が拮抗しているテーマに選択的夫婦別姓がある。各種世論調査では、現制度の維持・通称使用の拡大・選択的夫婦別姓の導入の三つで世論は割れている。最近まで政府は「分断を招く判断を避けて」きたが、再稼働問題と異なり、朝日は「早期実施を」と主張してきた。結局は「原発を動かしたくない」「選択的夫婦別姓を導入したい」といったイデオロギーが先行した二重基準(ダブルスタンダード)でしかないのだ。

丁寧なプロセスだった

そもそも、「分断」という言葉自体に違和感がある。米社会のように低中所得者層とエリート層、人種間の対立が激化し、時にそれを原因とする暴動などが起きる状況は「分断」と言えるだろう。

一方、柏崎刈羽の再稼働を巡って、そこまでの混乱は生じていない。ただ単に県民の間で意見が割れているだけで、むしろ民主主義社会としては健全な状態だ。そして、県民は首長や議員を通じて自分たちの意見を反映させようしている。事実、花角氏は公聴会や首長との意見交換、県議会は再稼働問題に焦点を絞った委員会の開催などで、そうした機会を設けてきた。その上で、知事が政治家として最終判断を下す──。民主主義が機能した丁寧なプロセスだった。

こうしたプロセスを踏んだ上でも、朝日は「判断を避けるべき」と書いた。朝日の主張に従えば、住民の意見が拮抗している物事に対しては、政治家が判断を下せなくなってしまう。政治家の存在意義の否定と言われても仕方がない。

規制委の判断こそ重要

新潟県の混乱を反面教師として、再稼働を巡る「事前了解権」のあり方は再考すべきだ。福島第一原発事故後は、立地基礎自治体と都道府県の同意が、再稼働に向けた事実上の必須条件となった。泊や東海第二では基礎自治体以外にも事前了解権が拡大し、柏崎刈羽でも拡大を目指す動きがある。

原発の運転は「地元」の理解があってこそ成り立つものだ。ただ、その「地元」とは、原発が所在する自治体なのか、重大事故時に避難や屋内退避が求められるPAZ(原発から30キロ以内)圏内の自治体なのか、都道府県も含まれるのか──。今後、なし崩し的に事前了解権が拡大すれば、いくら国民が原子力の活用に賛成しようとも、1人の慎重派の首長が反対姿勢を貫けば運転できなくなってしまう。

原発の新規制基準は司法の場でも合理性が認められている。法治国家の日本でこれ以上の安全・安心の材料は存在しない。安易な事前了解権の拡大は、電力大量消費時代のエネルギー政策に暗い影を落とすかもしれない。

【ニュースの周辺/12月19日】新潟県知事の柏崎刈羽再稼働容認を巡るメディアの論調

11月21日、新潟県の花角英世知事が臨時記者会見において 東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を容認すると表明した。本稿ではこの容認表明に至るまでの「最近の経緯など」、次に11月21日の臨時記者会見での知事の説明を見た上で、メディアの論調を紹介していきたい。

◆最近の経緯など

1.最近の動き

2023年12月 原子力規制委がテロ対策の不備による運転禁止命令を解除

24年3月 齋藤健経済産業相(当時)が新潟県知事、柏崎市長、刈羽村村長に再稼働の理解を要請

24年9月 原子力関係閣僚会議で、県の要望に応じ、避難対策の具体的対応として、避難路の整備、除排雪体制強化、屋内退避施設(シェルター) 整備強化などの方針を確認

25年2月 「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」が報告書「柏崎刈羽原子力発電所の安全対策の確認」をまとめる

→確認すべき22項目のうち18項目は「特に問題となる点はない」、残り4項目も「原子力規制委員会の判断を否定するものではない」とした

25年4月 新潟県議会が、再稼働の是非を問う県民投票を実施するための「再稼働に関する新潟県民投票条例案」を否決

25年8月 原子力関係閣僚会議で、「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特措法」の指定対象地域を概ね半径10kmから30km圏に拡大することを決定

25年10月 東電ホールディングスの小早川智明社長が新潟県議会で、①同県の産業・地域活性化、防災支援に向けて総額1千億円規模の資金拠出を表明、柏崎刈羽原発1号機、2号機に関して廃炉の方向で具体的に検討を進める旨を表明――

25年10月 新潟県議会が、知事が県民の意思を確認する方法として県議会を選択した場合、同じく県民を代表する立場にある議会として、再稼働の是非に関する意思を示すことを決議

25年11月 新潟県が県民意識調査公表(→結果の一部につき後述)

25年11月 花角知事が臨時記者会見で再稼働を容認すると表明

2.花角英世知事のキャリア

新潟県佐渡島出身。新潟高校・東大法学部卒、運輸省入省

1999年10~2000年7月 二階俊博運輸大臣秘書官

10年8月 大阪航空局次長、局長。関西国際空港と大阪国際(伊丹)空港を一体運営する新関西国際空港の設立に携わる

12年9月 大臣官房審議官(海事局、港湾局併任)

13年4月 新潟県副知事

15年9月 海上保安庁次長

18年6月 新潟県知事

22年6月 新潟県知事(2期目)

3.「県民の信を問う」

花角知事は知事就任時より「県民の信を問う」としていたが、知事選、県民投票、議会で承認、これらのうち、どのタイミングでいずれを選択するかはなかなか明確にならなかった。毎日新聞は、「議会で信を問う」判断に至る経緯を次のように解説する。

◎毎日新聞12月3日付〈政府、再稼働問う知事選封じ〉〈花角知事の師、二階氏動く〉〈柏崎刈羽容認表明〉〈……花角氏が官僚時代に秘書官として仕え、師弟関係にある自民党の二階俊博元幹事長は、経済産業省が長らく花角氏とのパイプ役として頼ってきた人物だ。24年に政界を引退した後も地方の議員らへの影響力を保っており、国は二階氏を通じて、県民投票や知事選で再稼働の是非を問う必要を主張している自民の有力県議に翻意を促すなど動きを進めた。政界の動きと連動するように、資源エネルギー庁の幹部らの動きは強まり、自民県議団に「県議会こそ民意の代表だ」という説得を続けた。花角氏は18年の知事選の際、再稼働に関して……「県民の信を問う」と明言した。その手法についてこれまで明らかにしたことはなかったが、有力な選択肢とみられていたのが県民投票や選挙だった。……一方、国は県議会から“信”を得させる形で、花角氏が再稼働の容認表明をしやすくする環境作りに躍起になって(いた)。……野党が強い地盤を持つ新潟県。昨年10月の衆院選では5つの小選挙区全てで自民が敗北した。今年7月の参院選でも立憲民主党の現職が再選し、自民党は敗れた。(近年の国政選挙の状況は文末添付資料参照)……仮に(知事)選挙で花角氏が野党系候補に敗れて再稼働が遠のくのは“悪夢のシナリオ”(経産省幹部)として、国は知事選は避けたいのが本音だった。〉

この毎日新聞記事に関連して言えば、筆者は、新潟県知事就任以前において、花角氏と二階事務所の“つながり”については一端を垣間見たことはある。なお、ちなみに多田明弘元経済産業省事務次官は二階俊博経済産業大臣時代の秘書官である。

4.新潟県議会 柏崎刈羽原発の再稼働に関する新潟県民投票条例案を否決

3月27日再稼働に関する県民投票を実施する条例案が14万人超の署名で新潟県議会に請求された。これに対し、否定的な知事意見も出され、否決された。

◎県民投票条例案に対する知事意見(4月8日、抜粋)

〈……柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の是非については、国のエネルギー政策上の必要性をはじめ、原子力規制委員会の審査や県技術委員会によって確認されてきた施設の安全性、原子力災害発生時における避難計画の実効性、そして東京電力に対する信頼性といった課題があり、すでに多岐にわたる観点から議論されているところである。……条例案第10条は、県民は、投票用紙の賛成欄または反対欄に〇の記号を記載して二者択一で自らの意思を表明することと……している。しかしながら再稼働の是非については、上記のとおり多岐にわたる観点から議論されてきて……いる。……条例案第10条に規定する「賛成」または「反対」の二者択一の選択肢では、県民の多様な意見を把握できないと思われる。……〉

〇4月18日の議会での採決結果

◎朝日新聞4月19日付(抜粋)〈柏崎刈羽原発再稼働を問う県民投票条例案が否決〉〈傍聴席から怒号も〉〈……最大会派の自民(議長を除き31人)と公明(2人)、真政にいがた(3人)の計36人が反対、議長を除いた県議52人の半数を上回った。野党系の第2会派“未来にいがた”(9人)とリベラル新潟(6人)、無所属1人の計16人が賛成した。……〉

5.柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関する 県民の意識調査の一部

〇県全体 11月6日公表 母数3360

「q:どのような対策を行ったとしても再稼働すべきではない」

再稼働否定 そう思う28.4% どちらかといえばそう思う18.7% 計47.1%

再稼働肯定 そうは思わない23.3% どちらかといえばそう思わない27.3% 計50.6%

paz(原子力施設から概ね半径5km圏内 予防的防護措置準備区域)、upz(pazの外側の概ね半径30km圏内 緊急時防護措置準備区域)地域を対象 11月11日公表 母数1573

「q:どのような対策を行ったとしても再稼働すべきではない」

再稼働否定 そう思う21.4% どちらかといえばそう思う21.6% 計43.0%

再稼働肯定 そうは思わない24.1% どちらかといえばそう思わない32.9% 計57.0%

q:東京電力が柏崎刈羽原発を運転することは心配だ

心配だ そう思う29.9% どちらかといえばそう思う32.4% 計62.3%

心配でない そうは思わない12.0% どちらかといえばそう思わない25.7% 計37.7%

【時流潮流/12月19日】韓国の原潜導入を巡る紆余曲折 米国と激しい駆け引き

韓国が原子力潜水艦の保有国になる可能性が出てきた。今まで難色を示してきた米国が、ゴーサインを出した。ただ、原潜の建造場所や核燃料などを巡り米韓両国の思惑には違いが目立つ。実現までに紆余曲折が予想される。

首脳会談に臨む米韓両国の首脳=ホワイトハウス提供

韓国は約30年前から原潜計画に着手した。以後、計画は浮かんでは消えを繰り返してきた。原潜保有が実現すれば、世界で8カ国目、核兵器を保有しない国としては豪州、ブラジルに次ぐ国となる。

造船大国の韓国は、今年10月にも新型の潜水艦を進水させるなど、建造実績がある。原子炉も輸出するなど主力ビジネスに育っている。原潜保有の残る課題は核燃料だけで、濃縮度19.75%の低濃縮ウランの供給を米国に要請してきた。

だが米国は、原潜導入は核兵器開発の「入り口」になる可能性があると警戒。核燃料提供だけでなく、原潜導入に難色を示してきた。

転機が訪れたのは10月末だ。韓国の李在明大統領は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合出席のため訪韓したトランプ米大統領との会談で勝負をかけた。

北朝鮮や中国の潜水艦を追跡するには、韓国が保有するディーゼル潜水艦では「限界がある」と訴え、原潜を導入できれば「米国の負担も減る」とたたみかけた。

実は、これまで韓国は米国や日本などが実施する中国原潜の監視・追跡活動に参加した実績はない。李氏はトランプ氏の関心を買おうと、発言を「盛った」ようだ。

造船や核燃料ですれ違う米韓の思惑

トランプ氏は韓国の原潜保有を認めた。ただ、建造は韓国企業が昨年買収した米東部ペンシルベニア州ピッツバーグにある造船所が担当するとSNSに投稿した。米国は造船業を立て直し中だ。少なくとも4隻と見込まれる韓国の原潜を建造すれば、雇用確保にもつながる。トランプ氏にとってこれは譲れない一線と言える。

自国での建造を計画していた韓国はこの投稿内容に慌てた。ピッツバーグ造船所は原潜建造の実績がなく、技術者や熟練工の確保や施設整備が必要となる。さらに、輸出許可や米議会の承認など手続きが増え、30年代半ばに予定する就役が危うくなる。

原潜に使う核燃料を巡っても米韓両国の思惑はすれ違う。合意文書には、原潜計画と関連づけられていないものの、韓国企業2社が米中部オハイオ州にある米企業のウラン濃縮施設に出資すると記されている。

米国は、ロシア製濃縮ウランをこれまで大量に購入してきたが、ウクライナ戦争を受けて脱ロシアに路線を転換、自国でのウラン濃縮拡大に取り組んでいる。韓国の原潜計画を「渡りに船」と活用し、濃縮事業拡充と雇用増を同時に達成しようという思惑が透ける。造船と同じ構図と言え、トランプ氏のしたたかさを感じる。

一方、韓国にはこれまで米国に禁じられてきたウラン濃縮を、自国で始めたいとの思いが強い。今後、普及が見込まれる小型原子炉(SMR)の開発も手がけており、この炉で使うHALEWを自国で製造できればビジネスチャンスもさらに広がるからだ。

トランプ氏の圧力をはね返し、思惑通りに夢を韓国は実現できるのか。今後も激しい駆け引きが続きそうだ。

【記者通信/11月27日】豪州で電気代高騰の実情 脱炭素政策が国民生活に大打撃

2035年までの温室効果ガス排出量を大幅に引き上げたオーストラリアが電気料金の高止まりに悩まされている。豪政府統計局(ABS)が先ごろ発表した25年第3四半期(7~9月)までの1年間の統計によると、前年同期比で23.6%上昇した。これは住宅や食料品など消費者物価指数の対象項目の中で最も上昇率が高かった。再生可能エネルギーの導入拡大に伴う送電網整備にかかるコストが増加したことが主要因だ。

「電気料金補助」政策は取らないのが日本政府との大きな違いだ(写真は連邦議会)

再エネの拡大を進めるアルバニージー政権は電気料金の軽減策として、太陽光発電がピークを迎える日中の時間帯に、最大3時間電気料金を無料にする政策を打ち出した。

一方、野心的な脱炭素政策が電気料金の高止まりにつながっていると主張する野党保守連合(自由党・国民党)は、50年ネットゼロ目標を破棄し、足元の経済重視の政策に方針に転換した。脱炭素政策を推し進めることによる経済的な「痛み」が現実となり、世界的な脱炭素の退潮傾向に拍車をかけているが、豪州でも国民生活への影響が顕著になってきた。

「住宅の次は電気か」の懸念

ニューサウスウェールズ州南部のオニール・ケリーさん(仮名)の家庭では今年7~9月までの電気ガス料金の請求を見て「目を疑った」という。昨年の同じ時期の請求に比べて「2倍強」に料金が膨れ上がったからだ。オニールさんは借家住まいで月40万以上の住宅費も負担している。オニールさんは「住宅の次は電気の値上がりが家計を圧迫するのか」と憤る。

アルバニージー政権は今年春に実施された総選挙で、再エネの拡大は将来的な国民生活の軽減につながるとさかんに強調していた。

しかしABSの統計は将来的なことはともかく、再エネ導入の拡大期には電気料金の価格抑制の効果がなく、インフラ整備にかかるコスト負担が家計を圧迫している現実を浮き彫りにした。

日本より平均年収が高い豪州とはいえ、衣食住の生活必需品が日本の2倍以上する状況でこれ以上の家計負担が増えることには国民は納得していない。

電力市場を運営する豪州エネルギー市場オペレーター(AEMO)によると、全国平均の卸電力価格は下落している。だが発電の約8割を再エネが占める南オーストラリア州の電力単価はほかの州と比べ約2割高いのが現実で、小売価格に反映されていないのが現状だ。

メルボルンにあるAEMOの本部

豪州エネルギー規制機関(AER)は、標準電力料金のうち送電事業者から小売業者に課される固定費が、最大で約5割を送電網の拡張や再エネ整備による再エネ導入に伴うコストが占めるとの見通しを示している。

さらに連邦政府や一部州政府が出していた補助金も打ち切りになり、豪州の電力コンサルタントは「卸電力料金が下がっても小売料金が上がり続ける環境が出そろっている」と指摘する。

【ニュースの周辺/11月26日】高市首相・小林自民党政調会長のエネルギー政策観<資料編>

参考1自民党「立地に寄り添うエネルギー政策推進議員連盟」 総裁選候補者にエネルギー政策を調査 高市候補・小林候補の回答

参考2自民党・日本維新の会 連立政権合意書 6.エネルギー政策

参考3高市首相の閣僚への指示書 ~エネルギー・環境に関する部分~ 

参考4高市首相 所信表明演説 ~「エネルギー安全保障」に関する部分~

【参考1】

自民党「立地に寄り添うエネルギー政策推進議員連盟」  総裁選候補者にエネルギー政策を調査  高市候補・小林候補の回答

滝波宏文議連事務局長 フェイスブックより (抜粋)

1.わが国におけるエネルギーの現状を踏まえた、原子力を含む現実的かつ責任あるエネルギー政策の推進

●高市候補

日本企業の国内回帰を促し国内のものづくり基盤を守るためにも、特別高圧・高圧の電力を安価に安定的に供給できる対策を講じていく必要がある。特に、AIの社会実装、それに伴うデータセンターの拡大などDXの進展により、電力需要が拡大すると指摘される中、それに応えられる脱炭素エネルギーを安定的に供給できるかが国力を左右するといっても過言ではない。一方で、わが国は国産エネルギー源に乏しく化石燃料の太宗を海外に依存している中で、ロシアのウクライナ侵略や中東地域の不安定化など、資源・エネルギーをめぐる情勢は、複雑かつ不透明な状況。エネルギー自給率を向上させ、強靭なエネルギー需給構造への転換を進めることが必要。供給サイドにおいては、将来にわたってわが国のエネルギー安定供給を確実なものにするため、あらゆる選択肢を確保しておくことが重要であり、自給率向上に貢献し脱炭素効果の大きい原子力を最大限活用する。まずは、安全性の確保を大前提に、原子力規制委員会による審査・検査を踏まえ、地元の理解を得た原子炉の再稼働を進める。さらに、地域の理解確保を大前提に、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設の具体化を推進する。さらには、ウランもプルトニウムも使わず、高レベル放射性廃棄物も発生しない核融合(フュージョンエネルギー)について、世界に先駆けた2030年代の発電実証を目指す。一方、需要サイドにおいては、徹底した省エネルギーに取り組む。冷媒適用技術や光電融合技術など、わが国の優れた省エ技術の研究開発・実用化を進め、国内の省エネ、更には、わが国の省エネ製品・技術の輸出拡大にも取り組む。

●小林候補

第7次エネルギー基本計画にある通り、すぐに使える資源に乏しく、国土を山と深い海に囲まれるなどの地理的制約を抱えている我が国の固有事情を踏まえれば、エネルギー安定供給と脱炭素を両立する観点から、特定の電源や燃料源に過度に依存しないようバランスのとれた電源構成を目指していく必要がある。特に、DXやGXの進展による電力需要増加が見込まれる中、再エネか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、原子力をはじめエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用していかなければならない。その中で、原子力は、エネルギー安全保障の確保、将来増加する電力需要や経済成長・産業競争力の強化に必要な脱炭素電源の拡大、電力料金抑制や燃料価格の影響を受けにくい経済構造への中長期的な転換、50年カーボンニュートラル実現のためにも、最大限活用すべきと考える。

2.リスクを負って安定安価な電力を供給してきた、「原子力立地地域に寄り添う」諸政策の強力な推進(原子力避難道の整備、最終処分地の確保、立地地域の振興など)

●高市候補

わが国の原子力利用は、原子力立地地域の関係者の安定供給に対する理解と協力に支えられてきた。今後も原子力利用を進めていく上で、立地地域との共生に向けた取り組みが必要不可欠である。立地地域の実情やニーズに即した地域振興支援や、新産業・雇用創出を含む将来像を自治体・国・事業者が共に描く取組など、対象地域から高い評価を得たグッドプラクティスの他地域への横展開などを進める。また、災害に対する地域住民の不安の声や自治体の業務負担の増大なども踏まえ、人材育成を含めた自治体の取組への支援、避難道の整備など防災対策の見直しと不断の改善に向けた官民連携などを進め、防災対策の一層の充実・強化を図る。最終処分の実現に向けた取組に関しては、最終処分事業に貢献する地域への敬意や感謝の念が社会的に広く共有されるよう、国主導での国民理解の促進や自治体などへの主体的な働きかけを抜本強化するため、政府一丸となって、かつ、政府の責任で、最終処分に向けて取り組んでいく

小林候補

わが国の原子力利用は、原子力立地地域の関係者のご理解とご協力に支えられてきた。立地地域に感謝の念を持って、課題に真摯に向き合い、産業振興や住民福祉の向上、防災対策のための予算措置、避難道路の多重化・強靭化など、立地地域に寄り添って、ともに歩む

3.脱炭素社会実現と国力維持・向上のために必要な、我が国の原子力技術・人材・立地を保つ、最新型原子炉によるリプレース実現。そのための長期投資を可能とする事業環境の整備

●高市候補

将来にわたってわが国のエネルギー安定供給を確実なものとするため、あらゆる選択肢を確保していくことが重要。原子力に関しても、今後とも、革新技術による安全性向上、エネルギー供給における「自己決定力」の確保、GXにおける「牽引役」としての貢献といった原子力の価値を実現していくため、そして足下から安全向上に取り組んでいく技術・人材を維持・強化していくためにも、地域の理解確保を大前提に、六ケ所再処理工場の竣工などのバックエンド問題の進展も踏まえつつ、安全性の確保を大前提として、新たな安全メカニズムを組み込んだ「次世代革新炉」の開発・建設の具体化に取り組む。特に、大型電源については投資額が大きく、総事業期間も長期間となるため、事業期間中の市場環境の変化などに対応できるような事業環境の整備を推進する。同時に、研究開発や人材育成、サプライチェーン維持・強化に対する支援を拡充する。同志国との国際連携を通じた研究開発推進、強靭なサプライチェーン構築、原子力安全・核セキュリティ確保にも取り組む。次世代革新炉としては、革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、フュージョンエネルギーといった研究開発が進んでいる。特にフュージョンエネルギーはウランもプルトニウムも使わず、高レベル放射性廃棄物も発生しないことから、わが国のエネルギー問題を解決する切り札として期待される。わが国は、フュージョンエネルギーに関して技術的優位性を持っており、その実現は、産業振興を通じた産業競争力の強化およびエネルギーを含むわが国の自律性の確保を通じた経済安全保障の強化に資することから、戦略、法制度、予算、人材面での強化が必要である。 野心的な目標ではあるが、世界に先駆けた30年代の発電実証を目指していく

小林候補

原子力は、エネルギー安全保障の確保や脱炭素電源の拡大、電力料金抑制などの観点からも、最大限活用すべき。 安全性の確保を大前提に再稼働を進め、廃炉を決定した原子発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での次世代革新炉への建て替えなどについても進めていく。それを支える我が国の優れた原子力産業基盤や人材の維持・強化に取り組むとともに、電力システム改革によって競争が進展した環境下においても、予見性を持って投資が可能となるような事業環境整備を進める

4.核燃料サイクルを堅持し、民主党政権の二の舞を避ける

高市候補

わが国は、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減などの観点から、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウムなどを有効利用する核燃料サイクルの推進を基本的方針としており、これを堅持する。具体的には、使用済燃料の再処理について、日本原燃は六ケ所再処理工場の新たな竣工目標実現に向けて、規制当局との緊密なコミュニケーションなどにより、安全審査などへの対応を確実かつ効率的に進める。また、プルサーマルの推進や使用済燃料の貯蔵能力の拡大などに向けて、電力事業者が連携し、地元理解に向けた取組を強化するとともに、国もこうした取組をサポートし、主体的に対応する

●小林候補

核燃料サイクル政策を堅持する。使用済燃料の再処理をはじめとする核燃料サイクル、円滑かつ着実な廃炉、高レベル放射性廃棄物の最終処分といったバックエンドへの対応はいずれも原子力を長期的に利用していくにあたって重要な課題。原子力に対する様々なご懸念の声があることを真摯に受け止め、それぞれの課題にしっかりと取り組み、丁寧に説明を行いながら、原子力を活用していく。

5.リプレースに向けた最新型原子炉の建設に必要な規制基準の迅速な設定とそのための事前審査など、適正手続(デュープロセス)などを踏まえた原子力規制委員会の規制行政の改善。および、政府のエネルギー政策との整合性確保に向けた原子力規制委員会の改革

●高市候補

原子力規制委員会は、科学的・技術的見地から、公正・中立に、かつ独立して意思決定を行う機関であり、いかなる事情よりも安全性を全てに最優先させるとの前提の下、同委員会が、次世代革新炉の安全確保について、適切な判断を行えるよう、必要な体制の整備に向けた取組を進めていく。また、事業者・ATENA(原子力エネルギー協議会)による、原子力規制委員会との共通理解の醸成・改善への協働を促していく。

小林候補

原子力の最大限活用のためには、安全性の確保を大前提に再稼働や次世代革新炉の開発・設置などを加速化させていく必要がある。そのためには、原子力規制委員会や原子力規制庁による行政の改善・改革(審査の効率化や審査体制充実など)は根幹的に重要。安全の確保を最優先にしつつ、審査プロセスの継続的な改善に取り組む。

6.太陽光・風力など再エネにおける立地共生の推進

●高市候補

あらゆる電源に共通して、地域の理解や地域との共生は大前提。私たちの美しい国土を守るため、法令に違反する太陽光パネルが設置されることのないよう、地域の声を丁寧に聞きながら政府が前面に立って取り組んでいく。これまでの仕組みありきとせず、関連する規制・制度を総点検する。また、間もなく耐用年数を迎える初期に設置された太陽光パネルの安全な廃棄にも取り組む。同時に、特定の国にサプライチェーンを依存することなく、エネルギー自給率を向上させながら、わが国の産業競争力強化と経済安全保障を確保する観点から、ペロブスカイト太陽電池の普及を進める。日本で開発された技術であり、薄くて曲がることから建物への導入が可能で、主要な材料であるヨウ素は国内調達が可能であることから、日本国内はもとより海外にも展開していく。また、エネルギーを地産地消にすることで自然災害などによる広域大規模停電を防止する手段にもなるため、国産バイオマスや中小水力発電の活用、次世代型地熱発電の実用化に向けた取組なども進める

小林候補

再生可能エネルギーの導入に当たっても、立地地域との共生は大前提であり、関係法令の遵守を厳格に求めるとともに、適切な事業規律を一層確保するなど、関係省令や地方公共団体が連携した施策の強化に取り組む。その上で、高くて不安定な再生可能エネルギーは、その政策を見直していく必要がある。特に、太陽光については、地域住民の方々との摩擦やサプライチェーン上のリスクもあり、立ち止まる必要があると考える

7.火力における脱炭素に向けた現実的なトランジションの推進、そして、立地地域の意見を踏まえた跡地活用

●高市候補

現状、火力発電は電源構成の7割を占めており、今後の電力需要の拡大が見込まれる中で安定供給をないがしろにすることのないよう、したたかなエネルギー転換を進める。具体的には、火力発電全体で安定供給に必要な発電容量は維持しつつ、非効率な石炭火力を中心に発電量を減らしていく。また、LNG火力は現実的なトランジションの手段として有効であり、将来的な脱炭素化を前提とした新設・リプレースを促進する火力発電所を休廃止する場合には、地域経済や雇用への影響を最小化すべく、跡地活用のあり方を含め、事前に立地地域と十分にコミュニケーションを行う

小林候補

火力発電は、引き続き、供給力や再エネの変動を担う調整力として重要な役割を担う。石炭火力は、CO2の排出量が多いため、非効率な石炭火力を中心に発電量を減らしていくが、必要な供給力が十分に確保されていない段階で、直ちに急激な抑制策を講じることになれば、電力の安定供給に支障を及ぼしかねない。 従って、非効率な石炭火力のフェードアウトを着実に進めるとともに、水素・アンモニアやCCUSなどを活用した火力の脱炭素化を引き続き進めていく。また、火力発電所のトランジションに際しては、こうした燃料転換による脱炭素化のほか、発電所を廃止して跡地を産業用途などに有効活用する事例も見られる。火力発電が地方税収、雇用、地元企業への外注などを通じて地元経済に貢献している中で、地域経済や雇用への影響などを踏まえながら、地域の実情などに応じたトランジションの検討を推進する

【参考2】

自民党・日本維新の会 連立政権合意書10月20日(抜粋)

6.エネルギー政策

◇電力需要の増大を踏まえ、安全性確保を大前提に原子力発電所の再稼働を進める。また、次世代革新炉および核融合炉の開発を加速化する。地熱などわが国に優位性のある再生可能エネルギーの開発を推進する。

◇国産海洋資源開発(エネルギー資源および鉱物資源)を加速化する。

【参考3】

高市首相の閣僚への指示書 ~エネルギー・環境に関する部分~(抜粋)

●松本文部科学相

◇原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介など、東京電力福島原子力発電所事故による損害の迅速な損害が講じられるよう、引き続き関係大臣と協力して対応する。

●赤沢経済産業相

◇関係大臣と協力して、東京電力福島第1原子力発電所の廃炉・汚染水・処理水対策、帰還困難区域の避難指示解除に向けた取組、原子力災害被災者の生活支援や生業再建などに全力で推進する。

◇国民生活や経済活動の基盤となるエネルギーの安定供給に万全を期す。S+3E(安全、安定供給、経済効率性、環境適合)の観点から、資源・エネルギーの多様で多角的な供給構造を確立する。安全を大前提とした原発の利活用、国内資源の探査・実用化、日本が潜在力を持つ再生可能エネルギーの最適なエネルギーミックスを実現し、日本経済をエネルギー制約から守り抜く

◇エネルギー安全保障と脱炭素を一体的に推進する中で、産業競争力の強化、新たな需要・市場創出を通じた成長フロンティアの開拓を図り、強靭な経済構造を構築することを目指す。50年カーボンニューラルおよび30年度の温室効果ガス排出削減の実現に向け、グリーントランスフォーメーション(GX)2040ビジョンなどを踏まえ、官民協調による10年間で150兆円超のGX関連投資を推進する。

●石原環境相

◇放射性物質を含む廃棄物の処理、特定帰還居住区域における除染など、東日本大震災からの復興・再生の取組を着実に実施する。

◇50年カーボンニュートラルおよび30年度の温室効果ガス排出削減目標を実現し、世界の脱炭素を主導するため、GX実行推進担当大臣など関係大臣と協力して、地球温暖化対策を推進する

◇関係大臣と協力して、40年までに追加的なプラスチック汚染ゼロを目指す。

◇原子力規制委員会における原子力安全規制および体制の強化を強力にサポートする。

◇関係大臣および原子力規制委員会と協力しつつ、原子力防災体制の抜本的強化を図る。

◇内閣府の事務のうち、原子力災害対策本部および福島第一原子力発電所事故調査に係るフォローアップに関する事務を担当させる。

◇原子力防災会議に関する事務を担当させる。国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)をはじめとする気候変動問題に係る国際会議などへの対応を円滑に推進するため、行政各部の所管する事務の調整を担当させる。

【参考4】

高市首相所信表明演説~「エネルギー安全保障」に関する部分~10月24日(抜粋)

国民生活および国内産業を持続させ、さらに立地競争力を強化していくために、エネルギーの安定的で安価な供給が不可欠です。特に、原子力やペロブスカイト太陽電池をはじめとする国産エネルギーは重要です。GX(グリーントランスフォーメーション)予算を使いながら、地域の理解や環境への配慮を前提に、脱炭素電源を最大限活用するとともに、光電融合技術などによる徹底した省エネや燃料転換を進めます。また、次世代革新炉やフュージョンエネルギーの早期の社会実装を目指します。こうした施策を直ちに具体化させてまいります。我が国の総力を挙げて、強い経済を実現していこうではありませんか。

【ニュースの周辺/11月26日】高市首相・小林自民党政調会長のエネルギー政策観<本編>

石破茂首相辞任表明を受けて、10月4日に行われた総裁選で高市早苗前経済安全保障相が新総裁に選ばれ、21日には臨時国会で首相に選任された。自民党の役員人事では総裁選に出馬した小林鷹之元経済安全保障相が政調会長に就任した。本稿では、今回の総裁選から組閣に至る中で表明された両氏のエネルギー・環境政策に関する見解(主な内容は【資料編】に掲載)について、前々回(2021年9月29日岸田文雄新総裁誕生)、前回(24年9月27日石破茂新総裁誕生)の総裁選時など、それ以前の発言などからたどって、ここ最近の言動として見ておきたい。そのために、まずは【参考】として、近年のエネルギー・環境政策の流れを菅義偉首相以降の政権の動きと併せて時系列で見ておく。

◆近年のエネルギー・環境政策の流れと政権の動き【参考】

◎菅義偉政権で 

20年10月26日 所信表明演説で「50年温室効果ガス排出実質ゼロ」表明

21年4月22日 気候変動サミット前の地球温暖化対策推進本部での発言「50年目標と整合的で野心的な目標として30年度に温室効果ガスを13年度から46%削減することを目指す。さらに50%の高みに向けて挑戦を続ける」

菅首相は21年9月3日退陣表明

◎第6次エネルギー基本計画 21年10月22日閣議決定(岸田政権発足直後)

その方向性は、岸田政権発足(10月4日)当初も継承され、10月22日、「第6次エネルギー基本計画」を閣議決定。併せて、「日本のNDC(国別目標)」を決定した(地球温暖化対策推進本部)。菅政権下の21年5月ごろには一時、カーボンニュートラルに貢献するものとして、原発の新増設・リプレースなど、「原子力発電の最大限活用」に向けて、党内の議連などの動き・提言が活発化した。ただ最終的には、「必要な規模を持続的に活用していく」とされたものの、「可能な限り原発依存度を低減する」という第5次エネ基の記載は残った。

◎岸田政権「GX実現に向けた基本方針」22年12月22日

岸田政権はその後、国際的な脱炭素化の進展や、国際情勢の変化などによるエネルギー安全保障の懸念などを受けて、22年12月22日、「GX実現に向けた基本方針」で原発政策について大きな転換を表明した。徹底した省エネの活用、再エネの主力電源化とともに、原子力の活用を謳った。

・廃炉を決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替えを具体化

・40年+20年の運転期間制限を設けた上で、一定の停止期間に限り追加的な延長を認める

◎第7次エネルギー基本計画2月18日閣議決定 参考=石破政権 24年10月1日発足

2月18日、「第7次エネルギー基本計画」、「地球温暖化対策計画改定」、「GX40年ビジョン改訂」が閣議決定され、併せて新たに日本の「NDC(国別目標)」を決定した。

地球温暖化対策計画

50年ネットゼロ実現に向けて温室効果ガスを35年度、40年度において、それぞれ13年度から60%、73%削減することを目指す。

第7次エネルギー基本計画

40年に向けた政策の方向性」として、需要側の省エネルギー・非化石転換脱炭素電源の拡大と系統整備などに分けて論じる。

〇脱炭素電源の拡大と系統整備

再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する。

●再生可能エネルギー

地域共生・国民負担抑制を図りながら最大限の導入を促す。

・ペロブスカイト太陽電池 

・EEZなどでの浮体式洋上風力 

・地熱発電の導入拡大、次世代型地熱の社会実装加速化

・自治体が主導する中小水力の促進

原子力

・安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用する。

・廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での次世代革新炉への建て替えを、六ケ所再処理工場竣工などバックエンド問題の進展も踏まえつつ、具体化を進める。

●火力

・安定供給に必要な発電容量(kW)を維持・確保しつつ、非効率な石炭火力を中心に発電量(kW時)を減らしていく。

・トランジション手段としてのLNG火力の確保、水素・アンモニア、CCUSを活用した火力の脱炭素化を進める。

次世代電力ネットワークの構築

・地域間連系線、域内基幹系統などの増強

・蓄電池やDRなどによる調整力の確保、系統・需給運用の高度化

〇次世代エネルギーの確保/供給体制

水素など(アンモニア、合成メタン、合成燃料含む)、バイオ燃料

〇化石資源の確保/供給体制 (天然ガス、石油、LPガス、石炭)

特に現実的なトランジション手段としてLNG火力を活用するため、官民一体で必要なLNGの長期契約を確保する必要。

【論考/11月25日】亡国の「暫定税率」廃止 なぜ日本を弱体化させるのか⁉

円安が原油高の主因を成す現実から逃避し、国の将来の為に今あるべき税率を考えようともせず、しかも課題解決に挑む創造力を自ら萎縮させる「日本弱体化」政策――。それが燃料油価格補助金に続く暫定税率廃止である。

11月5日、自民と日本維新の会の与党2党、および立憲民主、国民民主、公明、共産の野党4党により、ガソリン、軽油の特例税率(いわゆる暫定税率)をそれぞれ今年末、来年4月1日に廃止することが正式合意された。基本的に前政権下で定まった既定路線の踏襲だが、軽油の暫定税率廃止が明確となる一方、年間約1兆5000億円とされる減税分の財源確保は「今年末までに結論」と先送りされた。移行を円滑にするべく、目下価格補助金が段階的に引き上げられており、12月中旬にはガソリン・軽油小売価格に暫定税率廃止と同様の値引き効果が現れる。

「挙国一致」で進められるガソリン、軽油の暫定税率廃止だが、これは日本の原油高対策としても、また石油政策、安全保障政策としても根本的に誤っている。この過誤が全政党によって見過ごされ、これをただす冷静な議論が政治の場で提起されない事態は、今日の日本の視野の内向化・狭窄化、国力の衰弱を鮮明に映し出している。

2022年1月末以降の燃料補助金の誤謬と弊害を、筆者は本誌上で指摘してきたが、内容の重複に寛恕を乞いつつ、暫定税率廃止の問題点を以下に論じる。

問題からの逃避:日本の「原油高」は円安が主因

言うまでもなく、原油高とは、日本の原油輸入費用の増大、をいう。したがって、原油高対策の第一義的な目標は、日本の原油輸入代の低減だ。ところが2022年以降、現在までほぼ4年間、補助金によって国内燃料油価格を人為的に抑制し続ける中で、この本来の意味での原油高対策は置き去りにされてきた。問題から顔を背けるその逃避の姿勢は、今回の暫定税率廃止にも引き継がれてみいる。

日本の原油輸入価格は、ドル建ての国際原油価格と円・ドル為替レートの積で決まる。ロシアによるウクライナ侵攻以前の22年1月を基準とし、その後の日本の原油輸入価格の上昇を分析すれば、早くも22年・第4四半期から円安効果が主因となっていたことが分かる(図1参照)。昨年の年間平均では原油輸入価格上昇の9割弱が円安効果による。ドル建て価格は22年1月に1バレル当たり約80ドルだったが、昨年11月にはこれを割り込み、今年1~9月平均値も75ドル強と、むしろ「原油安」に転じている。

言い換えれば、これまで今年の「日本の原油高」は100%円安に帰因している。日本にとって原油高とは、すぐれて円安問題なのだ。原油高対策とは、まず何より現今の行き過ぎた円安を是正し、適度な円高を促すものでなければならない。この簡明な点を全政党が無視している。

ところで22年以降の円安、22年1月の1ドル115円に対し、昨年平均・150円強―の最大の原因は、1000兆円を超える国債発行残高、30年間以上赤字の続く基礎的財政収支と、日本の財政が重度の慢性疾患に陥っていることにある。日銀の国債保有率の突出した高さも相まって、インフレ環境下での金利上昇に対する財政・金融上の脆弱さが、円の反発力を著しく制約している。

よって円安を主因とする日本の原油高を是正するには、国債発行残高と将来の基礎的財政収支の黒字見通しとの整合性を回復すべく、財政規律の強化につながる施策を講じなければならない。また、石油が日本の最大の輸入品目である以上、円安是正のためには、その輸入抑制を促す施策が必要となる。

しかし累積予算額8兆円の燃料油補助金も、今回のガソリン、軽油引取税率をほぼ半減とする大幅減税も、日本の財政規律を犠牲とした国内の「石油大安売り」であり、財政負担を増すと同時に石油輸入を下支えし、円安圧力を生む。即ち、日本の原油輸入費用を増大させる「原油高誘導策」である。

今年6月、日本のドル建て原油輸入単価はバレル当たり70ドル強で、22年1月対比9ドル強下落している。もし為替レートが22年1月時点と変わらず115円を保っていれば、この間の原油代の円建てでの下落幅は1ℓ当たり約7円となる。22年1月の日本のガソリン平均価格は168円だったから、同じ下落幅を当てはめると、今年6月は161円となる。

これは実際の補助金投入後の価格173円より12円安く、21年後半の平均価格とほぼ等しい。このように、円の価値が守られていれば、国際原油価格の動きに合わせ、財政に何ら追加的負荷を掛けずとも、国内燃料油価格は十分に下落していた。円の防衛は、日本の本来の意味での原油高対策の核心にある。ところが、円の価値に打撃を与える大規模補助金・減税措置が、「原油・物価高対策」の名の下に行われている。ここに誤謬の最たるものがある。

【記者通信/11月21日】新潟知事が柏崎刈羽の再稼働容認 「反対」の立憲はどう動く?

新潟県の花角英世知事が11月21日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働容認を表明した。記者会見で同氏は知事職を続けることについて、「県議会から信任または不信任の判断をいただきたい」と述べ、12月2~22日に開かれる新潟県議会で自身の判断について県民の信を問う方針だ。県議会は再稼働に前向きな自民党が過半数を占めており、年内にも正式に国からの再稼働要請に回答し、年度内には営業運転を開始できる見通しだ。

12月議会では再稼働関連の補正予算案の提出が予定されている。その議決をもって知事の判断を信任する案や、県議会が知事判断を信任する付帯決議を提出する可能性もあるという。

花角氏は今夏以降、公聴会や首長との意見交換、県民意識調査などで県民の意思を確認するプロセスを踏んできた。中でも意識調査については「(再稼働に)肯定的な方と否定的な方が大きく分かれている」と認めつつ、「正確な情報を県民に提供し、周知していくことを継続していけば、再稼働に対する理解も広がる」と判断したと結論付けた。

また、事業主体が福島第一原発事故の当事者である東京電力である点や、柏崎刈羽で発電される電力が東電管内に送られること、豪雪地帯で緊急時の避難に対する不安感が他地域よりも大きいといった新潟県特有の課題を挙げた。その上で、国に対しては①県民への丁寧な説明と理解促進、②不断の安全性向上、③緊急時対応と住民理解促進の徹底、④避難体制の迅速かつ集中的な整備、⑤最終処分場問題など長期的な課題への国の責任、⑥東電の信頼性回復と監視の実効性確保、⑦電源三法交付金の対象範囲拡充──という7つの項目について確約を得た上で、県として了承するとした。

今後、県議会の動きのほかに気掛かりなのは、立憲民主党の動きだ。新潟県は「立憲王国」で、昨年10月の衆院選では全選挙区で立憲が勝利。参院と合わせて県内の国会議員は7人に上り、新潟日報が行ったアンケートでは全員が「再稼働すべきではない」と回答している。同党の野田佳彦代表は21日、「現時点では反対」「県連の移行を踏まえ党として判断する」との見解を示した。柏崎刈羽のお膝元である新潟4区選出の米山隆一衆院議員は、来年6月の県知事選に「県民投票の実施」を公約として立候補する可能性を示唆しており、県連がどのような判断を下すか注目だ。

朝日は今日も能天気 驚愕の「天声人語」

柏崎刈羽の再稼働によって、東日本の厳しい電力需給構造が改善に向かうのは間違いない。来年8月に0.9%とされる東京エリアの予備率は3%を確保できる可能性が高い。ところが、11月18日に「東電の再稼働 分断を招く判断 避けよ」と題する社説を掲載した朝日新聞は、こうした現実に目を向けようとしない。21日の天声人語を見て愕然とした。

〈つきつめれば、私たちの暮らしに安定した電力が必要だから、ということなのだろう。でも、本当にそうなのか。人が減り、町が細り、災害が絶えぬ列島で、これからも電気をどんどん使い、依存を深める社会というのは現実的と言えるのか〉

紛れもなく、私たちの暮らしには安定した電力が必要だ。改めて言うまでもなく、電気は国民生活、経済活動の根幹を支える極めて重要なライフラインである。省エネは大事だが、デジタル化の進展で電力需要は急増が予測されている。また、「依存を深める社会」というが、電力依存を深めない社会の方がよほど非現実的ではないのか……。しかしそこまで言うからには、朝日は今後、できるだけ電力に依存しない形で新聞やテレビ番組、ネット情報などを提供し、DX時代に対応していくのだろう。まるで想像がつかないだけに、楽しみではある。