【記者通信/3月11日】福島原発事故から15年 浮上する「廃炉」以外の選択肢

福島第一原発(1F)事故から15年が経過した。原発再稼働や運転期間の延長、建て替えなど、原子力の活用に向けて歯車は回りだした。一方で遅滞を取り戻せずにいるのが1Fの廃炉だ。政府と東京電力は事故直後に示した「2051年までの廃炉完了」という目標を維持している。しかし、この目標を「現実的なものに見直すべきだ」とする意見が目立ち始めている。

東電は現時点で51年目標を変更しない方針だ。その背景には、現場環境の改善がある。処理水の海洋放出は計画通り行われ、作業エリアの大半で一般作業服での作業が可能になった。使用済み燃料プールからの燃料取り出しも進展し、事故直後のような緊急対応の段階は脱した。燃料デブリ取り出しに集中できる時期を迎えつつある。

それでも、51年目標は非現実的だとする声は根強い。事故直後に示された中長期ロードマップでは、21年までにデブリ取り出し開始を予定していた。しかし、4年以上経過した今、推計880tのうち、取り出したのは試験回収での0.9gにすぎない。格納容器内部の状況把握、デブリの性質の解析、遠隔ロボットの技術開発など課題山積で、回収開始から全量取り出しまで68~170年かかるという試算もある。これでは51年どころか22世紀に突入してしまう。

NHKは11日のウェブ版記事「福島第一原発事故15年 2051年までの廃炉 実現の見通し立たず」で〈現在は核燃料デブリの取り出しを終える具体的な時期は示されておらず、政府と東京電力が掲げる2051年までの廃炉の完了を実現できる見通しは立たない状況となっています〉と伝えた。

廃炉か、それとも……

こうした現実を前に、廃炉を巡る議論は「いつ終わるか」だけでなく、「どう終わらせるか」にも広がっている。10日には毎日新聞がウェブ版に「原発事故の跡地利用に『遺構』支持する声 『議論早すぎる』の指摘も」との記事を公開。1Fの一部を原爆ドームのように「遺構」として残すことを提案する大学教授の声などを取り上げた。

朝日新聞も11日の朝刊オピニオン欄で、〈更地にして返してもらえると思っている福島県民も多いでしょうが、国と東京電力は廃炉の最終形をあいまいにしたままで、不誠実です。(中略)現実的で具体的な工程を練り直すべきではないでしょうか〉と、福島県いわき市を拠点に活動する地域活動家のインタビューを掲載した。

被災地である福島への責任として廃炉以外の選択肢を模索することは、これまで世論的にタブー視されてきたが、左派系の有力メディアがそこに目線を向け始めたことは、ある意味で驚きだ。

全量取り出し、石棺化、遺構化──。それぞれ技術的困難性や周辺地域の再利用の制約、放射線量の維持管理などの課題がある。1F処理の方針は東電の再建に直結する話で、高度な政治的判断が必要だ。廃炉にかかる費用はすでに5.2兆円が確定しており、政府が試算した8兆円枠を超えることは不可避とみられている。それだけに「廃炉→更地」化を諦めるのであれば、時期は早いに越したことはない。そう遠くない将来、国民的議論が巻き起こりそうな予感がする。

【時流潮流/3月10日】ガスPLがつなぐ欧州との絆 ウクライナ戦争5年目に

ロシア軍の侵攻で始まったウクライナ戦争がこの2月、5年目に入った。トランプ米政権が仲介して和平実現を探る動きが続く。だが、ロシアのプーチン政権は、ウクライナのゼレンスキー政権を放逐するまで戦争継続を望む姿勢を崩していない。戦争終結が見通せない中、欧州諸国はエネルギー面での脱ロシアに取り組み、エネルギー事情は大きく変わりつつある。

ウクライナの首都キーフ(キエフ)の聖ソフィア大聖堂。ロシアとの戦争は5年目に入った=筆者撮影

脱ロシアの取り組み筆頭は天然ガスだ。「シェール革命」により、2009年にロシアを抜いて世界一の産ガス国となった米国から液化天然ガス(LNG)がものすごい勢いで欧州に流れ込んでいる。

ウクライナ戦争前、欧州はガス調達量の約4割をロシア産のガスに依存していた。だが、輸入停止に踏み切る国が相次いだことで、24年は11%にまで減少した。ロシア産に代わり米国産LNGがシェアを高め、24年に約4割を突破、25年には約6割に達した。

エネルギー安全保障の観点から見れば、ロシアであろうと、米国であろうと1国に依存する態勢は脆弱性がある。とはいえ、日本も原油の多くを中東に依存している。それぞれの国に、それぞれの事情がある。

米国産LNGは、タンカーに積まれ大西洋を横断して欧州各国の港に運ばれる。そこれから内陸諸国にパイプライン(PL)で輸送される。LNG受け入れの中心拠点のひとつが、地中海に面するギリシャだ。ギリシャは、エネルギー分野ではこれまで周縁国のひとつに過ぎなかったが、今や米国産LNGを受け入れる欧州有数のハブとして、重要なポジションを得ている。

浮体式のLNG受け入れ施設を整備して以後、LNGの輸入を急激に増やした。米国産LNGのシェアは、24年の4割から25年は8割に増え、輸入総量は20年の60億立方メートルから、24年には170億立方メートルに増えた。うち110億立方メートルを周辺諸国に「再輸出」しており、ギリシャはエネルギーの「純輸出国」となった。

エネルギー調達ルートにとどまらない「垂直回廊」

このギリシャから、中東欧諸国やウクライナにまで米国産LNGをパイプラインで運ぶプロジェクトも始まっている。ギリシャから垂直に北上して、ブルガリア、ルーマニアを経由し、モルドバ、ウクライナに至るルートと、枝分かれしてハンガリー、スロバキアに運ぶルートで、「垂直回廊」と呼ばれている。

新たに敷設するパイプラインはごくわずかで、既存のパイプラインを逆流させたり、容量を増やしたりすることで組み立てる。欧州連合(EU)は昨年5月、LNGも含めたロシア産ガスの調達を、27年末までに段階的に禁止することに合意している。「垂直回廊」は、ロシア産ガスの供給が途絶える諸国にガスを送る切り札と位置づけられている。

ウクライナにとって「垂直回廊」は、単なるエネルギー調達ルートという意味だけにとどまらない。欧州との関係を強固にする絆と期待されている。ウクライナには巨大なガス貯蔵施設があり、非需要期の夏にガスをため込み、需要期の秋以後に供給量を増やすシステムを築ける。それを活用すれば、欧州側にとっても受給調節や安定供給の面でメリットが大きい。

ロシアにとっては、稼ぎ頭だった欧州向けガス輸出が止まる事態は財政的に痛い。戦費調達にも支障が出そうだ。「垂直回廊」の整備は、ロシアへのボディーブローとなるかもしれない。

【論考/2月25日】「分断の時代」映す国際石油市場の勢力図 脱石油戦略に見る中国のしたたかさ

米国とイランの軍事衝突の危険が高まっている。米国は、昨年6月「12日間戦争」で米・イスラエル側が得た戦力優位の固定化を図るべく、イランに対し核開発中止に加え弾道ミサイル開発制限、および親イスラエル武装勢力支援の中止を迫り、2つの空母打撃群をアラビア湾、地中海に展開。2003年の対イラク戦争以来最大の航空兵力を集結させ、軍事的威圧を加えている。2月初旬以降、米国とイランの核協議が断続的に続く一方、イランはホルムズ海峡で軍事演習を行うなど、ペルシャ湾・アラビア海での軍事行動を辞さぬ構えを見せている。

ペルシャ湾が戦域と化す恐れ、あるいは米国の安全保障能力への不信は、域内産油国に生産・輸出増大を急がせる一方、消費国には政策的な脱・省石油の加速化を促すはずだ。事実、既に昨年の国際石油需給に、その新たな潮流の兆しが現れている。

昨年は石油供給過剰が鮮明化し、ブレント原油価格も第4四半期は平均・バレル当たり65ドルを下回り、中東情勢の如何に関わらず国際石油市場は安定し得るという楽観論も多く見られた。しかし事態はむしろ逆だ。石油供給途絶の危険性が高まる中で、消費国(端的には中国)は脱・省石油を加速化し、中東産油国は生産・輸出増を急ぎ、その結果として供給過剰が生じた。国際石油市場は深刻化する世界の分断を映し出していると見るべきだ。

以下、需要側では中国の電気自動車(EV)普及による石油需要の下方屈曲、供給側ではサウジ主導のOPECプラス「有志国」による原油増産に焦点を当て、主要な国際石油需給動向を整理する。

【目安箱/3月2日】イラン攻撃がエネルギー需給に与える影響を考える

米国とイスラエルが2月28日にイランに攻撃を行った。そして両国は3月1日に、イランの最高指導者ハメネイ氏と政府や同国の革命防衛隊首脳を殺害したと発表した。この軍事衝突が、今後はどのようになるかは不透明だが、得られる情報から、日本と世界のエネルギー需給に与える影響を考えたい。

ただし、この原稿は3月1日時点の執筆であり情勢は流動的であること、また報道ベースの情報収集で得られる事実は部分的であることを、読者におかれては留意いただきたい。

◆目的は軍事能力の除去で短期終結を狙う?

イスラエルと米国は、2月28日のイラク現地の深夜から早朝にかけて、巡航ミサイルなどでイランを攻撃した。イランの核兵器開発関連施設、弾道ミサイル施設が破壊された。

28日の攻撃後にトランプ氏は、ホワイトハイスのウェブサイトや、SNSに8分間のビデオ演説を投稿した。そこで、米国の目的を周辺諸国に脅威を与えている弾道ミサイルを破壊すること、さらに核兵器開発を止め、「アメリカ国民が将来に核の危険に晒されない」ことを目的とするとした。つまり、大量破壊兵器の開発を止めることが攻撃の目的という。

2025年6月のイスラエルとイランとの戦闘は12日間で終結した。米国や有志連合も参加した。その際に、イランの核施設と防空施設はかなり破壊されたとされる。その核関連施設をさらに破壊する意図のようだ。

イランは今、反体制勢力を弾圧し、今年1月から国が3万人の国民を虐殺した可能性がある。トランプ大統領の演説を見る限り、同国の政治体制転換はこの攻撃の意図ではないが、強く期待している。イラク国民に「私たちがやり終えた時、あなた方は自分たちの政府を奪い取りなさい。あなた方の手に入る状態になっている」と述べた。

2月26日のジュネーブで、オマーンを仲介にする協議が行われた。そこで進展があったとされ、武力行使の可能性は遠のいたと見られた。この攻撃はかなり意外感を持って世界では受け止められている。

米軍は、2003年のイラク戦争以来最大級の戦力集中を中東に行った。米国は空母打撃群を10部隊持つが、その2つに加えて1部隊が派遣中。さらに中東にある米国の航空基地から、百数十機規模の航空機、潜水艦、自爆型ドローン部隊、ミサイル部隊が展開している。これらが攻撃に参加したもようだ。しかし、詳細は伝えられていない。

トランプ氏は政治リスクを避けるため、短期で成果を出すことを軍に求めているらしい。イランは中東の米軍基地、イスラエルへのミサイルでの攻撃をした。今後は、さらにはペルシャ湾とホルムズ海峡封鎖、テロが行われるかもしれない。

【時流潮流/3月1日】イラン攻撃でハメネイ師死亡 想定される4つのシナリオ

米国とイスラエルは2月28日朝(現地時間)、イランへの大規模空爆を開始した。首都テヘランでは政府要人の居住地を狙い撃ちにした。米国は28日、最高指導者のハメネイ師の死亡を確認したと発表した。最高指導者を失ったイランは今後どうなるのか。

今年1月末、革命47周年を記念し、ホメイニ師の息子ハッサン師(中央)とホメイニ廟を訪問したハメネイ師=ハメネイ師のX(旧ツイッター)から

●4月で87歳

ハメネイ師は、1979年のイラン・イスラム革命を主導したホメイニ師が89年に亡くなったことを受けて二代目の最高指導者に就任した。イスラム教シーア派の法学者として35年以上に及ぶ治世を続けてきた。4月に87歳を迎えるはずだった。

「米国に死を」をスローガンに掲げる革命政権の指導者らしく、最後まで米国に抵抗する道を選んだ。米国のトランプ政権はイランに核兵器開発にもつながるウラン濃縮を断念するよう重ねて求めてきたが、濃縮は原子力の平和利用の重要な柱として核拡散防止条約(NPT)でも認められている権利だとして要求を突っぱね続けきた。

最近は、米国との対立が激化する現状を、シーア派3代目イマームが7世紀後半にイラク南部のカルバラで、負けるとわかっていた戦いに挑み殉教した故事になぞらえる発言が目立っていた。米国に「ひざまずいて生き延びるのではなく、立ち上がって死ぬ」ことを潔しとした。

最高指導者の死を受けてイランのどうなるのか。様々なシナリオがある。

●シナリオ1:「神権政治」の継続

トランプ氏は28日の開戦時のビデオ演説で「我々の任務が終わったら、あなたたちの政府を掌握してください」とイラン国民に、体制転換を実現するよう促した。だが、現時点で最も可能性が高いのは、イスラム法学者をハメネイ師の後継に据えた「神権政治」継続だ。

ハメネイ師は今年1月末、初代の最高指導者ホメイニ師の息子であるハッサン・ホメイニ師とともに、テヘラン郊外にあるホメイニ廟で祈りを捧げる写真を公開した。革命政権を継続するためハッサン師を後継者にするというサインだとの分析もある。

また、ハメネイ師は昨年、米国とイスラエルとの「12日間戦争」後に、後継者候補3人を選んだとされる。ただ、その名前は公表されていない。突然の死に備えた準備を進めていたのは確実で、粛々と後継者が決まる可能性がある。

●シナリオ2:イラン革命防衛隊の治世に

二つ目は、イラン革命防衛隊(IRGC)が実権を握る可能性だ。IRGCは、イラン革命後に、革命政権を守るために設立された軍隊だ。それまでの正規軍は、王政時代を支えてきた勢力であるため、革命政権は独自の軍隊を作りあげた。ただ、正規軍は現在も残る。軍に徴兵される兵士は、正規軍かIRGCの好きな方に入隊できる。正規軍には都会育ちのリベラル派、IRGCは田舎育ちの保守派が多いとされる。

革命から半世紀近くを経て、IRGCは軍としての機能だけでなく、巨大な企業群を形成した一大勢力となっている。一説には、イランの国内総生産(GDP)の何割かはIRGCの息のかかった活動と言われ、欧米などによる厳しい経済制裁が続く中、闇ビジネスなどの利権を独占している。こうした「利権」を守るためにも、革命政権の継続が必要で、体制内クーデターを起こしてでも、権力を奪取する可能性がある。ハメネイ師の後継者を上手に祭り上げながら、IRGCが院政を敷くなどさまざまなパターンが想定される。

【記者通信/2月26日】六ヶ所・神恵内で首長選 原子力推進派「圧勝」で問われる国の覚悟

2月は核燃料サイクルの関連市町村での首長選が相次いだ。15日投開票の青森県六ケ所村長選では、サイクルを推進する元村議の新人・橋本隆春氏が初当選。22日に投開票された北海道神恵内村長選では、高レベル放射性廃棄物の最終処分場建設に向けた調査を推進する現職・高橋昌幸氏が7選を果たした。いずれも推進派の圧勝であり、原子力「バックエンド」政策の前進に向けた地合いが整いつつある状況が改めて浮き彫りになった。

概要調査に向け1歩前進した神恵内村(写真は村役場)

最終処分場建設を巡り、北海道では2020~22年、寿都町と神恵内村で調査の第1段階である「文献調査」が実施された。第2段階の「概要調査」に進むには、法律上、町村長と北海道知事同意が必要となる。

寿都町は概要調査に進むかどうかを問われた場合、住民投票を実施する予定だ。既に住民投票条例を制定済みで、春以降に町民向けの勉強会を再開する。神恵内村はどのようなプロセスを経るのかは未定だ。高橋村長は当選後、「(概要調査に)進みたいが、時期をみて村民に説明し、意見を集約したい。住民投票は方法の一つだが、どんなやり方がいいかも考えたい」と述べた。

北海道の危機感

概要調査に進む上で最大の「山場」となるのが、鈴木直道知事の同意獲得だ。昨年12月12日の記者会見でも、「現時点で文献調査から概要調査に移行する場合は、反対の意見を述べる考えに変わりはない」との見解を示した。背景には、最終処分の議論が「北海道だけの問題」と受け止められつつあることへの危機感がある。

市町村の調査への自発的な応募を待つ「手挙げ方式」の限界が指摘される中、赤沢亮生経済産業相は今年1月16日、全国の都道府県知事に対して、調査地域拡大に向けた国の取り組みの理解を求めるレターを発出した。ただ、新地点での調査開始や手挙げ方式の転換といった動きがなければ、概要調査への進展は見通しにくい。

青森との約束

再処理工場ばかりが注目される六ケ所村は、高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵地でもある。日本はフランスやイギリスに使用済み燃料の再処理を委託し、発生した高レベル放射性廃棄物は同村の一時貯蔵施設で保管されているのだ。青森県と六ケ所村、日本原燃は、貯蔵期間を30~50年とする協定を結び、「青森を最終処分地にしない」という“約束”がある。既に最初の高レベル放射性廃棄物が運び込まれてから30年が経過しており、約束を守るために残された時間は長くない。

原発再稼働の進展や再処理工場の竣工が見えてきた今こそ、最終処分場の重要性が高まっている。安定基盤を確保した高市政権には「国が前面に立つ」という覚悟を見せてもらいたい。

【SNS世論/2月25日】日本型リベラルの崩壊とエネルギー政策への影響

2月の衆議院選挙で野党が大敗した。敗因をめぐる議論が直後からネットで盛んだ。どのように解釈するかは人それぞれであろうが、私は国民が「日本型リベラル」を批判し、改革と変化を求めていることの現れと、この敗因を見ている。そして敗北はエネルギー政策など多くの問題に影響を与えていくだろう。

選挙時点の野田佳彦、斉藤鉄夫共同代表。政見放送の時から精彩を欠いていた(NHK政見放送より)

SNSで共感を集めた論考の一つに、評論家の白川司氏の「そりゃボロ負けするわ…中道改革連合が若者にソッポを向かれた納得の理由」(ダイヤモンド・オンライン、2月11日)があった。政治史、思想史から紐解き、「与党は悪、自分たちは善の二重基準が露骨」な「変化を否定し続けるリベラル派」に対する若者への嫌悪が現れたと選挙結果を総括した。

「若者 リベラルを権威視」(同12日)という阿部真大・甲南大教授への毎日新聞のインタビューも話題になった。古い権益を守るリベラルが「権威」と見られ、それへの若い世代の反抗との分析が、オールドメディアでリベラル色の強い毎日新聞に掲載された。

おかしくなったリベラル像

これらの分析は適切であるように思う。今回の選挙結果は、保守回帰とか、高市人気だけが理由ではない。かなり根の深い変化を表したものに思える。

リベラルとは欧米では「国家からの自由」「社会的公正」を主張する政治的立場のことだった。しかし最近は世界で左派政治勢力の総称に変わり、日本でもかつて「革新」「左翼」と呼ばれた人たちが自称した。その人たちは日本の政治空間では独特の意味を持つスローガン「護憲と九条を守れ」「平和と反戦と反核」「平等と福祉拡大」「多様性」を掲げてきた。そういう古い行動をする勢力を仮に「日本型リベラル」とこの論稿では呼ぼう。

そして今、リベラルへの批判が世界で増えている。理想論に流れ、社会を変えないとの批判だ。トランプ米大統領はその先頭だ。その世界の潮流と重なりながら、その批判が、日本の今回の選挙では爆発してしまった。

リベラル自壊に気づかない当事者たち

オールドメディア側では、選挙結果をめぐる浅い分析が多かった。毎日新聞は外国人ジャーナリストに聞いた「夢売った『アイドル』」(同13日)との記事で、高市早苗首相を賛美する国民が軽薄な主張に飛びついたとの主張を載せた。東京新聞は「#ママ戦争止めてくるわ ネットで共感」(14日)との記事で、高市政権への批判票を入れて戦争を止めようとする選挙前のSNSでの広がった運動を賛美した。この動きは、厳しい安全保障情勢を日本政府だけのせいにするなと批判も多かった。いずれも「現実をゆがめている」と、ネットでいわゆる「炎上」になった。

日本ではリベラル勢力と一部新聞は、同じ主張を語ってきた。「日本型リベラル」の崩壊を認めると、新聞は自らの過去への批判を含んだ総括が必要になる。だから積極的でないのかもしれない。

SNSはこうした日本型リベラルの行動、その周囲の言論空間のおかしさを暴く、重要な役割を果たした。忖度があって動けないオールドメディアとは違う。影響力は、新聞やテレビなどのオールドメディアを上回りつつあり、さらにその力は増しそうだ。

そして当事者の日本型リベラルの中の人の多くは、社会の変化に気づいていない。元民主党代表で、中道改革連合で落選した岡田克也氏は落選の理由をこう総括した。「ネットを見ている人の支持が非常に低かった。デマや批判が渦巻いていた」。ネットの中にある当然の批判、そして変化に気づいていないらしい。岡田氏は選挙の時に72歳。年齢を悪くいうつもりはないが、時代の変化に取り残されている。

若い世代に支持されず、かつて支持をしていた人々の高齢化もあり、「日本型リベラル」の衰退は今後止まりそうにない。

【記者通信/2月20日】電事連新会長に関電の森社長 原子力の信頼回復へ重責

電気事業連合会は2月20日、中部電力の林欣吾社長の会長辞任に伴い、後任として関西電力の森望社長を選任した。副会長には北海道電力の齋藤晋社長が就く。理事・事務局長代理には4月1日付で九州電力の井筒海志執行役員が就任する。森氏は2月20日の記者会見で原子力事業を巡る不祥事について陳謝し、「電力業界が一丸となって、電気事業や原子力事業に対する国民の信頼を確かなものとすることが最大の使命だ」と語った。

記者会見する電事連の森望・新会長

森氏は会見の冒頭、基準地震動を巡る浜岡原発の不適切事案について「原子力事業の根幹を揺るがしかねない極めて深刻なもので、国民に不安を与えていることに改めて深くお詫びする」と謝罪。信頼回復に向け、原子力エネルギー協議会(ATENA)と連携し、再発防止策の水平展開を徹底する方針を示した。

約6年ぶりとなる関電社長の就任については、コンプライアンス事案は自社の経営課題として対応を続けるとした上で「電事連の役割に思いを巡らし、各社からの推挙・賛同を得たことから、会長職を受けるのが筋だと考えた」と就任の背景を明かした。電事連への出向経験などにも触れつつ、「送配電部門出身だが、多岐にわたる部門を経験してきた。その経験を生かして、電事連会長という重責において最大限の力を尽くしたい」と意気込んだ。

「むつ」への関与否定 特重期限見直しは評価

柏崎刈羽原発の再稼働については「安全最優先で、丁寧かつ着実にステップを踏むことが重要だ」と強調。今回のプロセスで見られたように、必要であれば躊躇なく一旦立ち止まって確認を行うような対応を継続してほしいとの考えを示した。

東京電力と日本原子力発電が昨年末、むつ中間貯蔵施設で他社との連携を検討する方針を示したことに関しては、「東電と日本原電が進めている事業で、電事連としてこの件に関与しておらず、相談も受けていない。動向を注視していく」と述べるにとどめた。同施設を巡っては、20年に電事連が関電などとの共同利用案を提案したが、地元の反発でとん挫した経緯がある。

26年度中の竣工を予定する六ケ所再処理工場については、「核燃料サイクルの実現に向けた大きな柱であり、その実現は極めて重要な課題」とし、日本原燃が26年度中の竣工を確実にやり遂げるもの」との認識を示した。

原子力規制委員会で特別重大事故等対処施設(特重)の設置期限見直しに向けた検討が進んでいる点は「われわれが主張してきたことが一定程度理解され進められている」と評価した。

電力需要の増加や脱炭素への対応などエネルギー政策は転換点にある。そんな中、突然明るみになった中部電力の不祥事。森氏は政策の前進と信頼回復という二つの重責を負うことになった。

【ニュースの周辺/2月20日】衆院選とエネルギー環境政策 関係議員の当落を総括

日本の国内政治は、石破茂前政権下における衆院選(2024年10月27日)での自公連立政権の過半数割れ、石破氏退陣に伴う昨年10月の高市早苗政権発足、その後の公明党の連立離脱、日本維新の会との“連立”形成と大きく動いてきた。そして年明けの衆院解散。立憲民主党と公明党は中道改革連合を立ち上げて対抗したが、結果は自民単独で全議席の3分の2以上の316議席、維新36議席と合わせて352議席と大勝した。

逆に中道改革連合は167議席から49議席へと大敗を喫した。小選挙区で大きく負け越した上に、比例で旧公明党の候補者を優先(単独で28人が当選)したこともあって、旧立憲民主党の小選挙区落選者の比例復活の道が極端に狭まった。このため、小選挙区単独出馬であった岡田克也氏をはじめ、枝野幸男、安住淳、馬淵澄夫、江田憲司、小沢一郎、玄光一郎らのベテラン議員、さらに本庄知史共同政調会長らの中堅議員も落選した。 長篠の戦で武田の名だたる武将が戦死したような状況となった。

さて、エネルギー・環境政策は、脱炭素化と経済成長の両立という困難な課題に対応するため、政・官・民の多くの関係者がそれぞれの立場で関与している。その中で政権与党においてエネルギー・環境政策に携わる議員は、政策決定について役割を果たしてきた。政権与党である自民党議員の今回選挙での当落結果を見ておきたい。

自民党 エネルギー・環境政策に関わる議員の状況

1.総選挙結果に関する業界紙の報道

業界紙の電気新聞2月10日付は、衆院選の結果を下記のように報じた。

与党が過半数割れした前回衆院選時の報道では、「政権運営は不安定化へ」「電力関係者 立民躍進に危機感」「エネ政策の推進力どう維持」といった見出しが並び、エネルギー・環境政策に関係する多くの議員の落選を報じた。今回は、そうした議員の復活を報じている。

◎電気新聞2月10日付〈「衆院選自民圧勝 単独3分の2」〉〈「エネ政策、腰据え」〉〈—自民党が単独で316議席と圧勝した。—与党の政策推進力が格段に強化された。新潟県をはじめ原子力立地地域でも自民が多数を占めた。  前回衆院選で落選したエネルギー政策に精通した議員が返り咲きを果たした。—〉〈立地地域の一つ、新潟県では5つの選挙区を自民が独占した。前回衆院選では立憲民主党が全勝していた。—〉〈福井2区では無所属の斉木武志氏が当選し、自民から追加公認を受けた。原子力や電気料金問題など、電力会社を厳しく追及してきたことで知られるが、地元紙のアンケートでは新増設・リプレースを推進すると明言した。〉〈落選前に自民党のエネルギー政策議論を支えていた鈴木淳司氏や細田健一氏、石川昭政氏が復帰した。あるエネルギー業界関係者は“少数与党だった自民は人手不足で役職 の兼務も多かったため、これから一つ一つの課題にしっかり向き合えるようになりそうだ”と期待を込める。環境省からは、環境相経験者の返り咲きを喜ぶ声が出る。丸川珠代氏、伊藤信太郎氏、西村明宏氏が当選した。 西村氏は自民党総合エネルギー戦略調査会で幹事長を務めた経験から、経済産業省からも歓迎の声が上がる。—〉

【時流潮流/2月18日】米露対立最前線、アルメニア原発商戦の行方

米国のバンス副大統領は9日、アルメニアを初めて訪問し、原発建設や核燃料供給など総額90億㌦(約1兆4000億円)の契約をまとめた。米国製の小型モジュール炉(SMR)を導入する方向で、来年中に詳細を決める。

首都エレバン近郊にあるアルメニア原発の遠景。1970年代半ば以後に2基のソ連製原発が整備され、現在は2号機だけが稼働中だ=ARMENIAN NUCLEAR POWER PLANT(ANPP)のウェブサイトから

アルメニアは地中海とカスピ海に挟まれた南コーカサス地方にある内陸国。西はトルコ、東はアゼルバイジャン、南はイランに接する。「ノアの方舟」が漂着したとされるエルブールズ山脈が連なる人口300万の小国だ。

旧ソ連から1991年に独立したが、その後もロシアとの親密な関係を続けた。原発や天然ガス供給などのエネルギー面や、軍事面で連携を深めた。ロシアが主導する集団安全保障条約機構(CSTO)に加盟、約5000人のロシア兵が駐留している。

米政府高官としては最高位となる今回のバンス氏訪問は、ロシアの「裏庭」に、米国が土足で踏み込んだ形と言え、アルメニアは米露両国が火花を散らす最前線になった。

アルメニアには現在、80年に運転を開始したソ連製原子炉「VVER440(出力41.6万kw)」が1基稼働中だ。旧型で原子炉格納容器がなく、地震多発地帯でもあるため、「世界で最も危険な原発のひとつ」として知られる。

安全性を危惧する欧州連合(EU)は、再三にわたり支援を引き換えに原発閉鎖を働きかけ、一時は2003年に閉鎖することが決まった。だが、諸般の事情があり、その後も寿命延長を続け、現時点では36年まで運転を続ける計画だ。

後継原発を巡っては、ロシアが最有力だった。バンス氏の訪問直前にも、モスクワを訪問したアルメニア国会議長がロシア国営原子力企業ロスアトムのトップと会談し、包括的な提案を受けたばかりだった。

だが、アルメニアとロシアの関係はこの数年、険悪化する。きっかけは、アゼルバイジャン領内にあるアルメニアが実効支配する「飛び地」ナゴルノカラバフの領有権争い。アゼルバイジャンが23年に攻勢をかけ取り戻し、12万人のアルメニア人が家を追われた。

アルメニアはCSTOの規定に沿ってロシアに援軍派遣を要請した。だが、ウクライナ戦争で手いっぱいのロシアにそんな余裕はなかった。

好機とみたトランプ政権 経済・軍事面で関係強化へ

両国の関係悪化を好機とみたのがトランプ米政権だ。昨年8月に、アルメニアとアゼルバイジャンの両首脳をワシントンに招き和平合意をお膳立てした。署名式にはトランプ氏自らも出席した。今回のバンス氏訪問は、その流れに沿うもので、原発に加え、軍事用ドローンの売却にも合意するなど、経済・軍事両面で関係強化を目指そうとしている。

ロシアも傍観しているわけではない。今年6月投票のアルメニア総選挙に向け、昨年春から「ハイブリッド戦争」を仕掛け始める。SNSを使い、汚職やセックススキャンダルなど欧米寄りの政府の不祥事をあげつらう偽情報を流し続けている。

アルメニアは隣国トルコとも難しい関係にある。アルメニア側の主張では、第一次世界大戦中の1915年に「オスマントルコによる殺害・追放で、最大150万人が犠牲になるジェノサイド(集団虐殺)があった」とされる。トルコはこれを否定する状況が続く。

そうした歴史もあり、親露派勢力は「安全保障のためには、ロシア軍の駐留継続や手助けが必要だ」と訴える。

親露派が政権を握り返せば、原発ビジネスも「一波乱」ある。そんな気配が漂う。

【記者通信/2月12日】衆院定数の98%が「原発再稼動」 規制委審査見直しの好機到来

長期停止が続いている原子力発電所の早期再稼動に向け、政治的環境が整った。2月8日に投開票が行われた第51回衆議院選挙で、自民党が単独で議員定数465の3分の2を上回る316議席を獲得。また連立を組む日本維新の会のほか、野党の国民民主党、参政党、チームみらいに加え、立憲民主党時代の脱原発路線を軌道修正した中道改革連合も含めると、衆院議員の約98%(455議席)が原発再稼動を推進する立場となった。有権者の期待に応える意味でも、これを機に早期再稼動の足かせとなっている原子力規制委員会の審査の在り方について、政治主導で見直しが進むことが求められる。

度重なるハードルを乗り越え再稼動を果たした東京電力柏崎刈羽原発

今回の衆院選で10議席以上を獲得した各党の公約などを見ると、原子力政策については主に次のような書きぶりになっている。

自民党(公示前198→316)〈東京電力福島第一原子力発電所事故への真摯な反省を出発点に、国民の原子力発電に対する不安をしっかりと受け止め、二度と事故を起こさない取組みを続けます。原子力規制委員会により厳しい安全性基準への適合が認められた原子力発電所については、立地自治体等関係者の理解と協力のもと再稼働を進めます。新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組みます〉

日本維新の会(公示前34→36)〈電力の安定供給とエネルギー安全保障の観点から、原子力規制委員会の審査の効率化を図りつつ、新規制基準の許可を得た原子力発電所の早期再稼働を進めます

国民民主党(公示前27→28)〈安全基準を満たした原子力発電所の早期再稼動に向けて、原子力に関する規制機関の審査体制の充実・強化や審査プロセスの合理化・効率化等を図り、適合性審査の長期化を解消します

参政党(公示前2→15)〈現下の電気料金高騰や電力供給問題へ対応するため、既存原発・化石燃料の活用や再エネ賦課金の見直しなど現実的な手段を用いた、国民の不安と負担の早急な払拭〉(政策9の柱から)

チームみらい(公示前0→11)〈2030年での原子力比率 20〜22 %の達成を目指し、国主導で再稼働支援策を整備します。2030 年時点で 25 基以上の運転を実現できるよう、手続きの迅速化と地域支援を両立させます。〉

中道改革連合(公示前167→49)〈将来的に原発に依存しない社会を目指しつつ、安全性が確実に確認され、実効性のある避難計画があり、地元の合意が得られた原発の再稼働

参政党以外は、「再稼動」を明記。中でも維新と国民については「早期再稼動」に向けて、規制委の審査の効率化などに言及している点が特筆される。チームみらいは、30年目標達成に向け、具体的な稼働基数目標を打ち出しているのが興味深い。

【記者通信/2月9日】自民歴史的勝利と中道大敗で見えた衆院選の「勝負所」

真冬の政治決戦は高市早苗首相率いる自民党が歴史的大勝利を収めた。8日に投開票された衆院選で、自民党は単独政党が戦後獲得した最多議席の316議席(追加公認含む)を獲得した。衆院の定数465議席のうち3分の2を超えるのも戦後初めて。選挙戦最中の報道各社、政党などの情勢調査でも自民党有利の予想はあったが、予想を超える事態となった。消費減税や安全保障政策など高市自民党が掲げる政策が評価されたと指摘する向きもある。だが、これだけの大勝をもたらした最大の要因は、SNSなどを駆使して「サナエ」を前面に推しだした「推し活」選挙を繰り広げたことだと言える。国民の感覚に機敏に対応すれば勝利を呼び込めると読んだ自民党の底力を見せつけられた格好だ。

高市自民党総裁の勝利会見を中継する日テレニュース

アイドル化した「サナエ」 YouTubeランキングでトップ

「これは高市早苗写真集か」。今回の選挙に用意した自民党の政策公約冊子を見ると、高市首相の写真が各ページの半分以上を占めている。鮮やかな赤色を中心に、高市首相が様々な場面で見せた表情やしぐさをこれでもかというぐらい配置した。ある政党関係者が漏らした前出の言葉は今回の選挙の特徴を象徴する。各候補者のポスターにも高市首相の姿が多く見られた。

解散直後の1月下旬、議員会館で選挙準備にとりかかる各議員の事務所には、地方組織、地元後援者などからひっきりなしに電話やメール着信音が鳴り響いていた。電話での会話の内容はもっぱら「高市首相はいつ入るのか?」「高市首相に入ってもらえるようお願いしたい」といったものだった。現役首相の選挙応援だからいつものことかと思いきや、ある議員秘書は「サナエ人気は純ちゃん(小泉純一郎元首相)に匹敵するよ」というものだった。

実際、選挙戦が始まると「サナエ」が行くところに人だかりができた。

「サナエちゃーん」。中年女性の集団が高市首相が現れると、奇声を上げた。一目見ようと行列ができることもあったという。真冬の寒空など関係なく、「サナエ」が行くところは熱気に包まれていた。

この現象はかつて人気を誇ったAKB48などアイドルグループの推し活に似ているではないか。中年女性の間で人気な藤井風、SNOWMan、若い女性に支持を受けるテイラー・スイフトのコンサート会場と間違うような雰囲気だ。

サナエを推す活動を「サナ活」というそうだ。SNSの世界では高市首相が使っているボールペンを買って書き記す若い女性のYouTube動画が5万回も再生されるという摩訶不思議な現象が起こっていた。

そしてYouTube最速1億回再生ランキングのトップにはなんと「高市総裁メッセージ、日本列島を、強く豊かに」が上がった。わずか9日でのトップは、2位のYOASOBI「アイドル」の35日、3位の米津玄師「IRIS OUT」の73日を大きく引き離した。

結果論だが、これらの現象から考えると高市自民党の勝利は必然だったかもしれない。2ちゃんねるの創設者で実業家のひろゆき氏は政治家を選ぶ基準について、「政策が素晴らしいからではない。単に見た目や話し方が好きなだけ」と持論を展開した。今回のサナエブーム、そして自民党大勝の結果を見ればこの指摘は正しいように思えてくる。

そして高市首相を前面に推した戦略を敷いた自民党の読みは当たったといえる。もちろん高市首相が自身の進退をかけた解散の仕掛け方も「わかりやすさ」で評価が高まった。

小泉元首相が郵政解散時に発した「国民に聞いてみたい」というフレーズは、高市首相が解散表明の記者会見で発した「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか、今主権者たる国民の皆様に決めていただく」と重なる。

高市首相が仕掛けた解散で郵政解散時の自民党の獲得議席(296議席)を抜いた。時代背景もあるが、「小泉超え」を果たした高市首相にはアイドル性が備わり、それが戦後最多議席につながったと言えよう。

【時流潮流/2月3日】騒擾の海にあるイランと米国 近づく「戦争」の足音

イランを巡る緊張が高まっている。米国は、空母「エイブラハム・リンカーン」を中心とした海軍部隊や、戦闘機などの空軍部隊を中東地域に展開させ、いつでも攻撃できる態勢を築いている。一方、イランの最高指導者ハメネイ師は「戦争になれば地域戦争に発展する」とけん制する。ただ、双方とも妥協の余地はなく、戦争の足音が近づいている。

米軍は中東海域に原子力空母やイージス駆逐艦、原子力潜水艦などで構成する空母打撃群を派遣、イラン攻撃を見据えている(米国防総省提供)

イランは昨年末以降、騒擾(そうじょう)の海の中にある。通貨イラン・リヤルが大暴落、欧米からの厳しい経済制裁なども重なり、物価は1カ月前より60%も上昇する狂乱状態にある。不満を募らせた国民は、12月下旬から首都テヘランをはじめ全土で抗議活動を始めた。

デモは年明け以後、急速に激化し政府機関や金融機関などが襲われた。鎮圧のため治安部隊が発砲、多数の死傷者が出た。当局発表の死者数は3117人だが、実際ははるかに上回るとの観測が広がる。1月中旬以後は、デモは沈静化している。

イラン当局は、イスラエルの情報機関モサドや、米中央情報局(CIA)などの外国勢力が暴動を先導、武器も配布したと非難する。犠牲者には、イラン当局が「テロリスト」と呼ぶ約700人も含まれる。

外国スパイの関与説は、政権側の「言い訳」とも聞こえるが、取材に応じた専門家は「一定程度は現実だろう」と指摘する。昨年6月にあったイランとイスラエル、米国の「12日戦争」の際にも、イスラエルなど多数の外国情報機関員が事前にイラン国内に潜入して準備を重ね、ドローンなどで軍高官を根こそぎ殺害した「実績」もあるからだ。

混乱に乗じ、大幅譲歩をイランから引き出そうと圧力を強めるのがトランプ米政権だ。トランプ氏は昨年末、米南部フロリダでイスラエルのネタニヤフ首相と会談、弾道ミサイル増強や、核活動再開などの動きがあれば、イランを再攻撃する考えで一致、イランに「次の攻撃はもっとひどいものになる」との警告を続ける。

サウジやUAEが自制求めるも歩み寄りは困難か

米軍が攻撃に踏み切るタイミングはまだ見通せていない。攻撃を受ければ、イランが中東諸国に置く米軍基地などを報復攻撃するのは確実で、地域全体が大混乱に陥る事態も予想される。そうした事態を避けようと、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)は「イラン攻撃にわが国の領空や領海は使わせない」と、米国に強く自制を求めている。

さらに、サウジアラビアやエジプト、トルコなど中東主要国は、米国とイランの直接交渉をお膳立てするための外交努力も続ける。ただ、仮にこうした努力が実を結び、交渉が実現した場合でも、事態の好転は見込めそうもない。米国とイラン両国の主張はこれまでも大きくすれ違ってきた歴史があるからだ。

米政権は、核兵器開発につながるウラン濃縮の完全停止や、イランが保有する弾道ミサイルの総量や飛距離に上限に設けることなどを求めている。一方、イランはこうした要求に応じる考えはないとの主張を続ける。双方が歩み寄り、妥協点を見いだすことは極めて難しい状況にある。私が取材した専門家の中からは「時期は見通せないが、米軍のイラン攻撃は必ず年内にある」と指摘する声も上がる。

中東全体を巻き込む戦争になれば、中東地域に石油・天然ガスの供給を頼る日本にとっても一大事となる。心して準備する必要がありそうだ。

【記者通信/1月29日】25年度新エネ大賞が決定 革新的新型水車の開発が最高賞

新エネルギー財団が2025年度新エネ大賞の受賞者を決定し、最高位の経済産業大臣賞や、それに次ぐ資源エネルギー庁長官賞など14件を選出した。1月28日に都内で表彰式を開いた。太陽光、風力、水力などさまざまな分野の新技術や導入事例があり、GXにつながる内容やAIの活用なども目立った。

新エネ大賞は1996年に創設し今回で29回目。新エネの機器開発や設備導入、地域共生などの先進事例を表彰し、新エネの普及促進を目的とする。

今年度大臣賞に輝いたのは、秋田県産業労働部、東北小水力発電、早稲田大学による「広範囲な流量・落差で運転可能な新型水車の開発」。ポイントは、従来型フランシス水車を改良し、これまでの設計の常識を覆す革新的技術により、低水量域での安定発電を実現した点。運転可能な流量域や落差の拡大、高効率化により、発電電力量が増大する。また、柔軟な水車の配置によりトータルコストの低減が見込め、これまで開発を断念していた地域での導入も期待できる点が高い評価を得た。

長官賞は2件 地域版GXや福島復興支援を評価

エネ庁長官賞には、「洋上風力×データセンターの連携による地域活性化への挑戦」、「福島の復興と地域発展に貢献する『国内最大』の陸上風力発電所」の2件を選んだ。

前者は、グリーンパワーインベストメント、グリーンパワーリテイリング、京セラコミュニケーションシステムの取り組みで、地域版GX・DXモデルとして期待される。石狩湾新港洋上風力(北海道)と、近隣に建設した太陽光を電源とし、蓄電池やAIを活用した需給制御などを実施。事業開始時点ではデータセンター事業として日本で初めて常時再エネ100%を実現した。

後者では、福島復興風力が運営する阿武隈風力発電所の売電収入の一部を避難指示解除区域などに拠出。地域住民の雇用や地元メーカーの活用にも積極的で、まもなく福島原発事故の発生から15年を迎える中、着実に復興を後押ししている点が評価ポイントとなった。

同財団の寺坂信昭会長は、第7次エネルギー基本計画の策定から1年となる中、さまざまな情勢変化があることに触れつつ、「カーボンニュートラルの国際的な流れが一部で足踏みしているのは事実だが、底流では再エネの導入拡大を内外で競い合う姿に変わりはない」「わが国においても経済安全保障、GX産業立地、地域との共生と国民負担の抑制を意識しながら、産学官の再エネ導入拡大に向かう取り組みはさらに力を増していく」と強調した。

【記者通信/1月28日】リプレース容認なのか? 見えぬ「中道」の原発政策

第51回衆議院選挙が1月27日、公示され、超短期決戦の選挙戦がスタートした。物価高対策が最大の焦点となっているが、各党の原発政策も関心を集めている。そんな中、中道改革連合の野田佳彦共同代表は26日、日本記者クラブ主催の党首討論会で原発の「新増設」を認めない方針を明らかにした。推進派からは「やっぱりか」「立憲のままだ」と落胆が広がったが、背後には原発建設を巡る「言葉のあや」がある。

立憲民主党は綱領で「原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会」を掲げ、基本政策には「原子力発電所の新設・増設は行わず、すべての原子力発電所の速やかな停止と廃炉決定」を盛り込んでいた。

一方、中道の基本政策には相変わらず「将来的に原発へ依存しない社会」と明記されているが、新増設や建て替え(リプレース)には触れていない。合流前、公明党はリプレースを認めていたが、立憲内では認否を巡って議論が続いていた。

政府も新増設は認めていない

混同されやすいが、新増設とリプレースは同義ではない。新増設は原発を新たな地点に建てたり(新設)、1~7号機がある柏崎刈羽原発の8号機を建てたり(増設)することだ。かたやリプレースは、廃炉と引き換えに新しい炉をつくることを意味する。

政府が昨年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画では、「廃炉を決めた事業者の敷地内限定」で「リプレース」を容認した。例えば、九州電力なら玄海1、2号機が廃炉済みなので、新たに川内原発3号機の建設が可能になる。新増設ではなく、リプレースのみを認めたのは「国内原発の総基数を増やさない」と主張する公明党に配慮したからだ。

ここで中道の原子力政策に話を戻すが、討論会で記者は野田氏に「新増設」を認めるかどうかを問うた。新増設は、公明党はおろか政府ですら容認していないのだから、中道が認めるはずがない。

記者が問うべきは新増設ではなく、「リプレース」だったのではないか。公明党が容認している中で、旧立憲執行部は党内左派を抑えられたのかどうか……。野田氏は同じ討論会で、米軍普天間飛行場の辺野古移設について賛否を明らかにできなかったが、リプレースについても苦しい答弁を強いられたかもしれない。

いずれにせよ、中道が原発政策を巡って火種を抱えているのは確かだ。中道の松下玲子議員は21日、Xに「原発再稼働反対です。入った上で、中で頑張りたいと思います」と投稿した(後に「覚悟に欠ける投稿があった」として謝罪)。

心強い維新・国民の原子力政策

他党の公約はどうか。

自民党は「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置」を盛り込んだ。新増設でもリプレースでもない「設置」という言葉には妙がある。新地点で小型モジュール炉(SMR)の建設を推進しても公約違反とはならない。

連立を組む日本維新の会は「原子力規制委員会の審査の効率化」「早期再稼働」を掲げた。規制委に斬り込む姿勢や「早期」という一言が心強い。

国民民主は「安全確保を大前提とした上で、原子力発電所の再稼働・リプレース・新増設や核融合等で安価で安定的な電力確保とエネルギー自給率50%を実現」と新増設にも踏み込んだ。

参政党は「次世代型小型原発や核融合など新たな原子力活用技術の研究開発を推進」としたが、再稼働やリプレースについて具体的な記述はない。1月25日の福井県知事選では支援した石田嵩人氏が当選した。地方議員の数も増えており、政策の中身と実行力が問われる。