【記者通信/5月30日】原油処理装置を自動運転 ENEOSがAIでプラント革新


石油精製プラントの運転をAIで自動化する取り組みが動き出した。ENEOSが川崎製油所(川崎市)にある原油処理装置の自動運転に乗り出したもので、同装置で常時自動運転を行うのは世界で初めて。運転ノウハウを持つ熟練作業員の高齢化が進む課題に直面する中、人の技量に左右されずに設備の安定運転を実現することが狙いだ。

ENEOS川崎製油所の常圧蒸留装置

今回のAIシステムは、AI開発を手がけるPreferred Networks(PFN、東京都千代田区)と共同開発したもので、保安力の向上にもつなげたい考えだ。AIシステムの採用先は、原油に含まれる各成分の沸点の差を利用して異なる種類の石油製品を作り出す「常圧蒸留装置」。今後はENEOSの他の製油所にもAIシステムを広げるほか、ソリューションとして国内外のエネルギー企業へ外販することも視野に入れている。

常圧蒸留装置は、温度や圧力、流量などの制御対象が24個に達するほか、予測に用いるセンサーの数も930個と多い。このため経験を積む熟練運転員の技術や知識が必要で、従来は各センサーを通じて取得したデータを運転員が24時間体制で監視したり、バルブ操作の判断を行ったりしていた。

AIシステムを採用することで、こうした装置を運転・制御する仕組みを自動化した。常時監視と13個に及ぶバルブ操作を同時に行うことも特徴で、原油処理量の変更や原油種を切り替える際の変動調整作業に対応できるようにした。例えば、運転に影響を与える外気温の変化などが大きい状況下であっても、センサー値とバルブ操作間の相関関係を学習したAIが威力を発揮。外部因子による運転への影響を最小化し、正常運転を維持できるようにするという。

手動操作を超える経済性・効率性

すでにENEOSとPFNは2018年度から、石油プラントを自動運転するAIシステムの開発に着手。23年1月には、同製油所の石油化学プラント内にある「ブタジエン抽出装置」でAIシステムの常時使用を始め、手動操作を超える経済的で高効率な運転を達成したという。

背景には、プラントに携わる熟練者の高齢化に伴う技能伝承や人材確保の問題があり、先進技術を駆使して設備を安定運転できる環境づくりが望まれていた。こうした対応は大規模で複雑なプラントを持つエネルギーや素材など産業界共通の課題で、AIを駆使して設備の効率的な運用や保安に生かす動きは一段と広がりそうだ。

【記者通信/5月30日】電力株が好業績で好調 内部からは「違和感」も


大手電力株が好調だ。TOPIXの電気・ガス業指数を見ると、上昇率は東証33業種のトップクラスで、5月下旬現在、東京電力の第一原発事故が発生した11年3月以来の高値圏で推移している。燃料費調整制度の上限値の影響などで各社が赤字に陥った2021~22年度決算から一転、燃料費の期ズレや規制料金の値上げ、原子力稼働率の向上などが奏功し、23年度は軒並みの過去最高益となった。ただ24年度については、期ズレ効果が一服することもあり、大半が減益予想だ。大手電力の関係者からは「儲かっている実感はないのに、なぜ株価だけ急上昇しているのか」と不思議がる声も聞こえている。

◆みずほ証券、一部の電力株で投資判断を引き上げ

5月27日にみずほ証券証は27日、電力株の投資判断を、東北電、関西電、四国電で引き上げた。東北電については判断を「中立」から「買い」、目標株価を1000円から1700円に見直した(29日の終値は1548円)。同社は5月25日、女川原子力発電所2号機の安全対策工事の完了を発表し、24年度内の原子力再稼働の期待が出た。

関西電の目標株価も2400円から2900円に引き上げ。投資判断は「買い」を継続した(29日終値2816円)。原発の安定稼働により、将来の電力需要が増える局面にコスト競争力で相対的な優位性があると評価した。業績が大幅に改善した四国電力も中立から買いとした。

これら3社の上昇に釣られて、北海道電力の株価も上昇し、11年3月以来の高値圏だ。た。同社は泊原発再稼働の目処が立たない。しかし半導体企業ラピダスの進出や、企業のデータセンターの建設が営業地域で続くことなどの期待が材料視されたという。しかし、カルテル問題の罰金問題を抱える中国電力や、東京電力の上昇の出足は鈍い。

かつて電力株は、配当の高さと収益の堅実さで「大儲けできないけれども、収益が見込める」安定資産として一定の人気があった。ところが、福島原発事故や電力システム改革で、株価の低迷が続いた。22年には国際エネルギー市況が上昇したのに規制の残る低圧の料金を機動的に値上げできず、各社は軒並み赤字に陥った。カルテル問題、東電の福島の賠償問題なども尾を引き、株価は低迷を続けた。

◆株高が経営の負担に? 強まる値下げ要求への懸念

それが一転して、各社の業績は好転した。そして電力株は株式市場の注目を集めている。今の上昇は「相場が上がっているから買う」「仕手筋の参加などもある」などと、株の掲示板ではささやかれる。どこまで上がるかの関心が、市場関係者の間で高まる。

ある大手電力の中堅幹部に、この株高の感想を聞いた。「お客さまの需要は、実体経済が好転していないので、それほど好調ではない。意外な結果だ」という。そして「経過措置規制の影響で低圧・電灯の標準料金は国の許認可が必要だったりするなど、自由化が中途半端。実際は、世論に怯えながらの経営だ。儲かったり、株高で目立ったりすれば、また値下げ要求が広がる」と、株高が逆に経営に負担になることを警戒していた。

実際、再生可能エネルギー賦課金の上昇や国の負担軽減措置の廃止、容量拠出金の支払い開始などによって、前年同期と比べ電気料金は大幅に上昇する傾向にある。この状況を受け、メディアは続々と電気料金上昇問題を報じ始めており、電力会社への値下げ圧力が強まってきている。「儲かっているなら値下げを!」。そんな世論がある限り、「好業績、株高はもろ手を挙げて歓迎できるものではない」(大手電力関係者)といえよう。それにしても、小売りが全面自由化されて、需要家は数多くの小売事業者の中から自由に買えるわけだから、メディアも大手電力に対し値下げしろなどと声高に主張するのは筋違いだろう。好業績で株価を上げて企業の資産価値を引き上げるのも、自由化時代の重要な経営戦略の一つなのだから。

【記者通信/5月28日】電気料金報道のミスリードを両断 今求められる対策とは


4月23日付の記者通信で既報の通り、再生可能エネルギー賦課金の上昇と国の負担軽減措置の終了に伴い、一般家庭の電気料金が7月分から前年同月比でkW時当たり9.09円上昇する。資源高・円安進行による燃料費上昇もあいまって、需要期の夏場に電気料金の大幅上昇が顕在化するのは避けられない。4月から始まった容量拠出金を電気料金に上乗せしている新電力の需要家ではさらに上昇。オール電化や大家族の家庭だと、前年同月比で5000円以上の値上がりになるケースも予想される。こうしたことから、記者通信では「それで一部のマスコミや消費者団体、政治家が騒いだりすると、負担軽減措置の復活とかおかしな矢が飛んできかねない」とする大手電力会社関係者のコメントを紹介したのだが、案の定、そんな懸念が現実のものとなってきた

補助金打ち切りは岸田政権の横暴なのか

〈6月電気代、最大46.4%上昇 補助金終了、再エネ賦課金負担増〉(共同通信5月22日)、〈6月の電気料金、大手電力10社全てで大幅値上がり 補助金廃止で、最大46.4%上昇〉、(産経新聞5月24日)、〈電気料金6月分から値上げ 関西電力は前月比で468円値上げの見通し 物価高対策の補助金終了〉(読売テレビ5月22日)、〈「厳しすぎてやっていけない」 電気代6月分から約400円値上げ 政府の補助金終了で〉(日本テレビ5月22日)――。

5月中旬以降、テレビや新聞などの大手メディアは一斉に電気料金上昇問題を報じ始めた。中には、「値上げ」と書いているところも。この表現だと、電力会社が自らの判断で「値上げ」したような印象を与えるが、正しくは制度や政治上の外的要因による「値上がり」もしくは「上昇」である。ただ、大手一般紙系などはまだいいほうだ。これが、夕刊紙や週刊誌、ネットメディアになると・・・。

〈政府の電気料金補助廃止が直撃!この夏は「災害級の暑さ」予想で国民生活どうなるのか〉(日刊ゲンダイ5月27日)、〈岸田首相の〝無策〟に怒り 電気代暴騰、補助金切れ、再エネ賦課金放置 物価上昇に苦しむ国民を「恩着せ減税」でごまかす狙いか〉(夕刊フジ5月24日)、〈「定額減税吹っ飛ぶ」6月電気代、補助金終了・再エネ賦課金負担増で最大46.4%上昇…SNSで広がる恨み節〉(FLASH5月23日)、〈電気料金値上げに悲痛の声「えっぐい・・・」「健康で文化的な最低限度の生活ができなくなるぞ」〉(All About5月23日)――。

もはや補助金を打ち切るなど言語道断といった論調だ。記事の中には、SNSのつぶやきを引用する形で目に余るミスリードも見受けられる。そもそも、燃料油高騰の激変緩和措置に巻き込まれる形で、岸田文雄政権の肝いりとして始まり、業界の一部からは「市場の価格決定メカニズムをゆがめる筋の悪い政策」との悪評も聞こえる電力・ガス補助金なのだが、そんな経緯など知ったことではないとばかりの報道ぶり。「筋悪だろうが、何だろうが、とにかく補助金を復活せよとの世論が高まれば、ただでさえ支持率悪化に悩む自民党議員にとっては、政治的に動く材料になってしまう」(大手電力関係者)

そして、事態はそんな見方の通りに動きつつあるのか。自民党の木原誠二前官房長官は5月26日のフジテレビ「日曜討論」で、こうコメントした。「もちろん5月にいったんは(政府の補助金)やめるということを決めていますが、同時にその時に状況の変化があれば臨機応変に対応しますということも政府は言ってきていますから、何ができるかしっかり検討したいと思います」(スポニチ5月26日)〉

料金上昇は当然の帰結 省エネ支援こそ「王道の政策」

2011年3月の福島第一原発事故以降、わが国政府は脱原発、再エネ大量導入、総括原価方式廃止という電気料金を上昇させるベクトルのエネルギー政策を展開してきた。そう考えれば、現状は当然の帰結と言っていい。その状況を改善するために、一時的ならまだしも、国民の血税を投入し続けるのは、どう考えても無理がある。

と、思っていたら、お笑いタレントの山里亮太さんが27日、自らがMCをつとめる日テレの番組で、電気料金問題について「みんないろいろ節約することを考えている。補助金をお願いしますって言っても、その補助金はどこかから無限に出てくるものでもない。その補助金がなくなる理由もちゃんと分かりながらだけど」と指摘していた。一部メディアの記者よりも、はるかにまっとうなコメントだ。

電気料金上昇対策として何より求められているのは、省エネを誘導する政策である。かつてあったようなエコポイント方式による省エネ家電への買い換え促進策などは、改めて検討してみる価値があろう。省エネ支援こそ、地球温暖化対策にも資する「王道の政策」ではないかと思うが、どうか。補助金の復活ではなく、省エネ政策の必要性を訴える論調が、メディアの間で盛り上がることが期待される。

【目安箱/5月28日】原子力の進まぬ現状をどう乗り越えるか


「なかなか進みませんね」。日本原子力産業協会の「第57回原産年次大会」が4月9日、10日に東京で開かれた。そこで一年ぶりに会った研究者が原子力の現状について語った言葉だ。原子力について追い風が吹いているように見えるが、具体的動きがない。この現実への嘆きだ。この大会を振り返りながら原子力関係者の今の考えを推察してみたい。

講演する三村明夫原産協会会長

◆1年前の期待がしぼむ

2022年末に岸田文雄首相が、政権の重要課題として「GX政策」(GX:グリーントランスフォーメーション、環境経済への転換)を示し、そこでGXを進めるために原子力の活用を打ち出した。23年2月に「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定された。続いて同年4月に「今後の原子力政策の方向性と行動指針」が決まった。

東京電力の福島第一原発事故の後で、安倍、菅政権では「脱原発」を唱えなかったものの、原子力にあいまいな態度を取り続けていた。そのために岸田政権が「活用」を打ち出したことに原子力関係者は喜んだ。「久々のうれしいニュース」と23年のこの大会の会場で会った、前述の研究者と私は共に喜んだ。

昨年23年の大会のテーマは「エネルギー・セキュリティの確保と原子力の最大限活用-原子力利用の深化にむけて」だった。国際的な安全保障情勢の変化を受けたものだ。1年前の会議では、話す人、会う人、そろって原子力に追い風が吹いていることを歓迎していた。私もその期待を、エネルギーフォーラムのサイトでコラムにした。(23年4月26日「原産年次大会で実感 前向きの変化と期待」)

◆進まない現実にいらだち

しかし岸田政権にありがちだが、目標を示しても口先だけでなかなか形にならない。日本企業による原子炉の新設や受注、原子力規制の改善による停止原発の再稼働の加速など、前向きの変化は生まれていない。私の期待は甘かったようだ。

一方で、日本の原子力産業のライバルである韓国企業の海外での建設のニュースは届く。中国とロシアの原子力企業は、対立の中で自由主義陣営に原発を売り込むことは難しくなったものの、彼らの友好国である第三世界では受注、建設が続く。私は具体的動きの乏しさに、ややイライラしている。

この研究者は私の感想に共感するとしながら、「進まない現実にいらだっても、心の健康に悪いだけ。私たちは民間の立場でできることをやるしかない」と話していた。

こうした原子力関係者の意向を反映したのか、原産大会の今回のテーマは「今何をすべきか 国内外の新たな潮流の中で原子力への期待に応える」だった。参加者からは1年前の「うれしさ」は消えていたように思う。

この大会は毎春行われ、今回の参加者は、オンラインを含むと約700人だったという。私は時間が許せば、この大会を毎年、会場に行って聞いている。海外の原子力関係者がシンポジウムに出てさまざまな情報を提供する。そして日本の顔見知りの原子力関係者にも会え、彼らの意見を聞ける。原子力問題に関心を持つ人は、参加する価値が十分にあるイベントに思う。

◆課題は、人材育成、バックエンド、事業環境整備

大会の開会の挨拶で、日本原子力産業協会の三村明夫会長(元新日鉄(現日本製鉄)会長、元日本商工会議所会頭)はまず、「原子力発電の積極的な活用の機運が国内外において極めて高まっている」と強調。その上で「国内外の強い原子力推進モメンタムの中で、われわれ原子力産業界は今何をすべきなのかを考えることが必要」と、大会テーマを語った。

セッション1では「カーボンニュートラルに向けた原子力事業環境整備」、同2では「バックエンドの課題:使用済み燃料管理・高レベル放射性廃棄物最終処分をめぐって」、3では「福島第一廃炉進捗と復興状況」、同セッション4では「原子力業界の人材基盤強化に向けて」がテーマ。いずれも、今の原子力産業が対応しなければならない問題だ。

来賓挨拶をした岩田和親・経済産業副大臣は、「サプライチェーン・人材を含めた原子力産業を支える事業環境は年々危機的な状況になりつつある」と懸念を述べ、政府がサポートをすると述べた。原発再稼働で儲かる状況を作れば大きく改善するが、経産省は積極的に動かない。それに私は不満があるものの、危機感と問題意識は共有している。

◆脱炭素、電力需要の増加という世界潮流に応える

そして世界原子力発電事業者協会(WANO)の千種直樹CEO、元米国エネルギー省(DOE)副長官のダニエル・ポネマン氏(ビデオメッセージ)が講演。WANOのメンバーとなる発電所は現在、世界で運転中460基、建設中60基に上るという。「技術革新で安全性は高まっている」と強調した。

ポネマン氏は、「世界のエネルギー業界ではますます原子力の拡大が必要」と予想した。電気自動車の普及、運輸部門の脱炭素化、データセンターやAIの普及で、全世界でエネルギー需要が増えている。「原子力発電所の新設でも賄いきれない、遥かに速いスピードで進む爆発的勢いだ」と懸念さえ述べた。「すべての人の意見が一致することはできないが、こうした深刻な懸念にも立ち向かわねばならない。そのために原子力産業は今後、大きく成長できる」と述べた。

日本の原子力産業の再生、そしてさらなる発展という原子力関係者のそろって願う希望は、なかなか形にならない。しかしそれが動き出すには、そして動き出した後で更なる発展を遂げるには、現時点で原子力産業の方でそれに応える準備が必要だ。安く安定的なエネルギーの供給は、全世界で求められており、日本の原子力産業は世界から期待されている。

進まない現実にいらだつ前に、「今できる」準備をすれば、いつか大きな成果が戻ってくると信じたい。

【メディア論評/5月28日】今国会提出の環境関連法案に関する報道を読む


ネットゼロ、サーキュラーエコノミー(循環経済)、ネイチャーポジティブの統合的な実現

1月から始まった通常国会は6月23日に会期末を迎える予定だ。エネルギー・環境関係では、水素社会推進法、CCS事業法、再生可能エネルギー海域利用法改正、地球温暖化対策推進法改正、生物多様性増進活動促進法、再資源化事業高度化法(いずれも略称)など、各分野での課題対応を図った法案が提出された。ここでは、水素、CCS、洋上風力関連の法案に比べて、メディアで取り上げられるボリュームがやや少ないように思われる、地球温暖化対策推進法改正、生物多様性増進活動促進法、再資源化事業高度化法の意義などについて、メディアの取り上げ状況も含めて触れておきたい。昨年のG7広島サミット、G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合では、ネットゼロ、サーキュラーエコノミー(循環経済)、ネイチャーポジティブ(←生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せること)の統合的な実現の重要性が再認識された。政府においても、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2023」や「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」などでこの3つの課題に向けた取組みが取り上げられた。

参考=23年6月16日 経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)(抜粋)

◆新しい資本主義の加速~投資の拡大と経済社会改革の実行~

・グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)などの加速

30年度の温室効果ガス46%削減(13年度比)、50年カーボンニュートラルの実現に向け、わが国が持つ技術的な強みを最大限活用しながらGX投資を大胆に加速させ、エネルギー安定供給と脱炭素分野で新たな需要・市場を創出し、日本経済の産業競争力強化・経済成長につなげる。……(省エネルギー推進、再生可能エネルギー拡大、原子力活用、水素戦略、自動車・輸送分野での対応などに触れたのち)……地域・くらしの脱炭素化に向けて、中小企業などの脱炭素経営や人材育成への支援を図りつつ、25年度までに少なくとも100カ所の脱炭素先行地域を選定するなどGXの社会実装を後押しする。また、……国民・消費者の行動変容・ライフスタイル変革を促し、脱炭素製品などの需要を喚起する。環境制約・資源制約の克服や経済安全保障の強化、経済成長、産業競争力の強化に向け、産官学連携のパートナーシップを活用しつつ、サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現に取り組む。また、動静脈連携による資源循環を加速し、中長期的にレジリエントな資源循環市場の創出を支援する制度を導入する。……

◆わが国を取り巻く環境変化への対応

1.国際環境変化への対応

・対外経済連携の促進、企業の海外ビジネス投資促進

……アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想などの実現に向け、標準作りなどに加え、日本の技術や制度を活用し、世界の脱炭素化に貢献する。日本の技術を活用し、40年までの追加的プラスチック汚染ゼロとの野心の達成に向けて多数国による条約の策定交渉などを主導する。また、30年までに生物多様性の損失を止めて反転させる目標に向け、本年度中の国会提出を視野に入れた自主的取組を認定する法制度の検討や、グリーンインフラ、G7ネイチャーポジティブ経済アライアンスなどの取組を推進する。…… ←「ネイチャーポジティブ経済」については、後述「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」の項参照 

4月19日の経済財政諮問会議においても、伊藤信太郎環境相が「環境を軸としたグローバル対応と地域活力の創生」と題して、ネットゼロ、サーキュラーエコノミー(循環経済)、ネイチャーポジティブの統合的な実現について語っている。

◎4月19日の経済財政諮問会議における伊藤信太郎環境相の説明〈環境を軸としたグローバル対応と地域活力の創生〉(内閣府議事要旨より)〈GXの推進に当たっては、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブを含め一体的に進めることが重要。現在検討中の第6次環境基本計画案においては、自然資本の基盤の上に経済社会活動が成立しているという認識に立ち、自然資本の維持・回復・充実を図り、複数課題の同時解決を目指す「統合的アプローチ」を環境政策のグランドデザインとして位置づける方針である。これに基づき、地域共生型の再エネ導入による地域の脱炭素化と経済活性化の同時実現や、GXに資するサーキュラーエコノミーの取組を進めていく。グローバル対応に関しては、先行する気候変動対策に加え、資源循環やネイチャーポジティブへの対応が重要になっている。資源循環分野においては、事業者間連携などによる資源循環の促進と国内外の資源循環体制の強化を通じ、わが国企業の産業競争力強化、経済安全保障に貢献する。ネイチャーポジティブ分野では、自然資本に立脚した豊かな経済社会の礎とすべく、ネイチャーポジティブ経済への移行による新たな企業価値の創造などを推進する。その際、日本の自然資本の状況を適切に表せる評価ツールの開発と、それを世界の標準としていくための産官学連携拠点の形成、国際標準化活動を通じ、サステナブルファイナンスの呼び込みを目指す。〉

環境・公害関係の専門紙・環境新聞は、上記会議での伊藤環境相の説明について報道するとともに、今国会の提出法案について関連付けて説明している。

◎環境新聞4月24日付〈4月19日の経済財政諮問会議に関する報道の中で〉〈……伊藤環境相は臨時議員として「環境を軸としたグローバル対応と地域活力の創生」を説明した。伊藤氏は「わが国が主導したG7コミュニケにもある通り、気候変動、生物多様性の損失及び汚染といった3つの世界的危機に対し、シナジーを活用し一体的に対応する『統合的アプローチ』が重要」と指摘。その上で「SDGSのウェディングケーキの図に示される通り、環境は経済・社会の基盤。ネットゼロ、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブを統合的に実現し、経済・社会の課題解決、新たな成長につなげていく」と強調した。環境省は統合的アプローチの一環として、今国会に再資源化事業等高度化法案、生物多様性増進活動促進法案、温暖化対策法改正案の3法案を提出している。〉

なお、環境新聞は閣議決定、衆議院可決といった節目ふしめでその動きを、付帯決議の内容まで含めて紹介している。

【記者通信/5月24日】権力に忖度しない議論を! いま注目のYouTube番組


「体を張って国民の知る権利や言論の自由を守りたい」――。そんな使命感に燃えるYouTubeチャンネル「国民の声を聞いてくれん会」(毎週木曜日午後8時から生配信)が、エネルギー政策などを巡って熱い議論を巻き起こしている。「日本を守る有志の会」の主催、「全国再エネ問題連絡会」の協賛で運営する同チャンネル。国土破壊をいとわない再生可能エネルギー開発政策やワクチンリスクをおざなりにした新型コロナ感染防止対策など、不都合な真実を覆い隠すような政治が行われ、さらには国益をないがしろにする左派勢力が台頭する中、日本を守る有志の会と全国再エネ問題連絡会の共同代表を務める山口雅之氏(元大阪府警警視)や清水浩氏(土木設計エンジニア)らが「日本のあるべき姿」を追求する議論を喚起すべく、番組を立ち上げた。

山口氏は「国民に成り代って真実を追求すべきテレビや新聞は権力に忖度している」と、既存メディアの報道姿勢を問題視する。「このままでは国民の知る権利が知らないうちに奪われ、さらには言論の自由さえも奪われてしまうのではないか」という危機意識を仲間と共有。「自分たちで知り得た真実をありのままに世の中に伝えて、体を張って国民の知る権利や言論の自由を守ろうじゃないか」という思いを強め、このチャンネルを作ることにしたという。

ここで取り上げるテーマは、「原発再稼働 日本復活」「日本の電力事情と未来を考える」「再エネ利権で国民の命や暮らしは危機に」「熱海土石流 真相暴露」「聞け!上海電力」などとバラエティーに富んでいる。顔ぶれも多彩で、これまでに産業遺産国民会議の加藤康子専務理事、社会保障経済研究所の石川和男代表、キヤノングローバル戦略研究所の杉山大志研究主幹、国際環境経済研究所の山本隆三所長ら有識者や、長尾敬・元自民党衆院議員、上田令子・都議会議員ら政治家のほか、東京電力パワーグリッドの岡本浩副社長が出演。エネルギーフォーラムの井関晶副社長も、コメンテーターとして参加した。番組の司会を務める公認会計士の並木良樹氏が番組スタッフに支えられながら、示唆に富む発言を巧みに引き出して議論を盛り上げていく。

「今後は再エネ問題を含め、経済や安全保障問題などさまざまな分野の有識者らの協力を得ながら、幅広く世の中の人々に真実を伝えていきたい」と意欲を示す山口氏。国民の暮らしや安全・安心に直結する政策課題が山積みしているだけに、本質的なテーマにズバリと切り込む同番組の存在感は一段と高まりそうだ。

【記者通信/5月24日】「適材適所」で電力不足回避 三菱総研が生成AIでシナリオ


膨大なデータ処理で電力を大量消費する生成AIの普及に伴う「電力需給のひっ迫」が指摘される中、三菱総合研究所は生成AIを持続的に活用し続けるためのシナリオを打ち出した。深刻な電力不足を回避できるよう生成AIを適材適所で使うなど、エネルギーと技術の両面を考慮した三つの道筋を提示したもの。消費電力を抑える半導体技術の開発に加え、電力の供給体制を増強するという課題も投げかけた。

生成ĄĪの利活用シナリオについて説明する三菱総合研究所の西角直樹主席研究員

「40年発電電力量は22年実績の1.5倍」目安にシナリオ作成

三菱総研は「生成AI普及による電力需要爆発を見据えた将来シナリオ」と題する報道関係者向けセミナーを東京都内で開催。「火力発電所の稼働率向上や原発の追加稼働を見込んで2040年の発電電力量を22年実績の約1.5倍に相当する1466TWhに引き上げる」という電力供給の上限を「一つの目安」とした上で、そうした電力制約の下で生成AIを利活用する方策を示すシナリオをまとめた。

電力供給の制約問題を踏まえて導き出されたシナリオの一つが、生成AIに必要な大規模な基盤モデルを惜しみなく生かす「計算量爆発シナリオ」だ。計算量が数万倍に達する性能優先のシナリオに進むと、巨大なデータセンター(DC)で大規模モデルを開発する資金力を持つ「ビッグテック」の市場支配力が拡大。生成AI処理の一部を海外のDCで行うようになる。技術開発の行方次第で電力需給のひっ迫も招き、化石燃料を輸入して電力供給を増やす必要性が生じる可能性が高まるという。

想定される生成AIの利活用シナリオ(三菱総研作成)

二つ目が用途に応じてさまざまな規模の生成AIを使い分ける「適材適所シナリオ」だ。計算量の増加は数千倍以内に収まるため、深刻な電力不足は回避できる。経済や企業が補完し合うエコシステム(生態系)への影響をみると、汎用性が高いが燃費が悪い大規模モデルと目的に特化した低燃費の小規模モデルが併存するため、生成AIを巡るプレーヤーや関連サービスが多様化。これを支えるDCの選択肢も広がり、各地でデータと再生可能エネルギーの「地産地消」も進むという。三つ目が、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量を実質ゼロ)の実現に向けて小規模モデルを役立てる「省電力優先シナリオ」だ。このケースの場合、モデルの性能を左右する質の高いデータの確保がカギを握る。

生成AIの利用拡大でDCの消費電力量が急増する問題の解決策として注目を集めるのが、電気信号を扱う回路に光信号の回路を融合させる「光電融合技術」だ。登壇した政策・経済センターの西角直樹主席研究員(研究提言チーフ)は、光電融合やAI特化チップといった半導体技術が進展する動きに注目した上で、「国内で持続可能な生成AIを進めるためには、電力制約のためにAI利活用が阻害されるという事態は避けるべき。まずはĪCT(情報通信技術)による対策を講じることが重要だ」と指摘した。

日本の競争力強化とデジタル赤字解消を

西角氏はĪCTと電力供給の両面から対策を打つことで、「電力が足りないというピンチを逆にチャンスに変えて日本の国際競争力強化やデジタル赤字の解消に寄与することが可能ではないかと考えている」と強調。それでも電力の需要増を吸収しきれない場合は、「電力供給の増強を含めて備える必要がある」との認識も示した。

具体的には、省電力技術の開発という観点から半導体の電力効率を高めるとともに、計算量の削減に向けて中小規模の用途特化型モデルを有効活用するなどの対策を推進。加えて、火力電源の焚き増しや脱炭素電源の追加といった電力供給面の対策も講じることで、持続可能な生成AIを実現するという展開が考えられるという。

情報量は、社会のデジタル化の進展に伴って爆発的に増加する方向にある。こうした動きを踏まえて西角氏は、日本が海外のデジタル関連サービスに支払った額が受け取る額を上回る「デジタル赤字」もさらに拡大するリスクを問題視。40年を視野にĪCTインフラに必要な「周波数」「エネルギー」「投資」が大幅に不足する三重苦に陥る可能性があると警鐘を鳴らした

国のエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」の見直しに向けた議論が本格化する中で今後、電力供給の視点を考慮しながら日本経済の成長力に直結する生成AIの持続的な利活用策を探るという機運も高まりそうだ。

【メディア論評/5月8日】今国会に提出されたエネルギー・環境関連法案の意義


◆提出法案

1月から始まった通常国会は6月23日に会期末を迎える予定だ。裏金問題に時間を費やす中、子育て、経済安保におけるセキュリティ・クリアランスなどの法案が審議された。エネルギー・環境関係では、水素社会推進法、CCS事業法、再生可能エネルギー海域利用法改正、地球温暖化対策推進法改正、生物多様性増進活動促進法、再資源化事業等高度化法(いずれも略称)など、各分野での課題対応を図った法案が提出された。

<法案名称>

・水素社会推進法(4月9日衆議院可決、5月5日現在参議院審議中)

……脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案

・CCS事業法(4月9日衆議院可決、5月5日現在参議院審議中)

……二酸化炭素(CO2)の貯留事業に関する法律案

・再生可能エネルギー海域利用法改正(5月5日現在衆議院審議中)

……海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案

・地球温暖化対策推進法改正(5月5日現在衆議院審議中)

……地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案

・生物多様性増進活動促進法(4月12日成立、4月19日公布)

……地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律案

・再資源化事業等高度化法(4月16日衆議院可決、5月5日現在参議院審議中)

……資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案

<水素社会推進法>

脱炭素化が難しい分野におけるGXを進めるためのエネルギー・原材料として、国が前面に立って低炭素水素などの供給・利用を早期に促進する。

参考=低炭素水素:水素など(水素およびその化合物←アンモニア、合成メタン、合成燃料を想定)で、その製造に伴って排出されるCO2の量が一定の値以下で、その利用がわが国のCO2排出量削減に寄与するもの。

このため、①主務大臣による基本方針の策定、②低炭素水素などを国内で製造・輸入して供給する事業者やエネルギー・原材料として利用する事業者の計画認定制度の創設、③認定を受けた事業者に対する支援措置(価格差支援・拠点整備支援)や規制の特例措置――などを講じる。

<CCS事業法>

CO2を回収して地下に貯留するCCS(二酸化炭素回収・貯留)事業を進めるため、①試掘・貯留事業の許可制度の創設、②貯留事業に係る事業規制・保安規制の整備、③CO2の導管輸送事業に係る事業規制・保安規制の整備――を行う。

再生可能エネルギー海域利用法改正>

現行法が洋上風力発電に係る法適用対象を領海および内水としており、排他的経済水域(EEZ)についての定めがないため、EEZにおいて自然的条件などが適当である区域について「募集区域」として指定し、発電設備の設置を許可する制度を創設する。

また、促進区域(領海および内水)、募集区域(EEZ)の指定などの際に、海洋環境などの保全の観点から、環境大臣が調査を行うこととし、これに伴い、環境影響評価法の相当する手続きを適用しないこととする。 

地球温暖化対策推進法改正>

優れた脱炭素技術によるパートナー国での排出削減に加え、脱炭素市場の創出を通じたわが国企業の海外展開やNDC達成にも貢献する二国間クレジット制度(JCM)の実施体制を強化する。

また、地域共生型再エネの導入促進のため、再エネ促進区域などについて都道府県・市町村が共同して定めることができるなど、地域脱炭素化促進事業制度を拡充する。

<生物多様性増進活動促進法

2030年までのネイチャーポジティブ(生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せること)の実現に向け、里地里山の保全や外来生物防除、希少種保護など、地域における生物多様性を維持・回復・創出する企業等の活動を促進する。

主務大臣が活動の実施計画を認定する制度を創設し、活動に必要な手続きのワンストップ化、簡素化を図る。

<再資源化事業等高度化法>

脱炭素化、再生資源の質と量の確保などの資源循環の取組みを一体的に促進するため、①主務大臣による基本方針の策定、②再資源化事業等の高度化促進に関する判断基準の策定・公表や、特に処分量の多い産業廃棄物処分業者の再資源化の実施状況の報告・公表、③再資源化事業等の高度化に資する先進的な取組みについて認定制度を創設し、廃棄物処理法上の各種許可手続の特例を設ける――などの措置を講じる。

◆提出法案から見た脱炭素化対応の流れ

昨年の通常国会では、脱炭素成長型経済構造、GX(グリーントランスフォーメーション)実現のためのGX経済移行債発行、成長志向型カーボンプライシング導入を掲げるGX推進法、原発の停止期間を考慮した運転期間の制度化などを定めたGX脱炭素電源法など、GXの根幹をなす事項が法制化された。

・GX推進法

……脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律

・GX脱炭素電源法

……脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律

この法律案提出以降に、昨年は、わが国が議長国となった5月のG7広島サミット、年末にはCOP28(国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議)が開かれ、エネルギー・環境政策の議論も進んだ。こうした議論の進展も受けて、今年提出のエネルギー・環境関連法案は各分野でのソリューションに向けた法改正を図ったものといえる。

~G7広島サミット、COP28

(1)G7広島サミット

わが国が議長国となった昨年5月のG7広島サミット首脳コミュニケでは、〈我々の地球は、気候変動、生物多様性の損失及び汚染という3つの世界的危機並びに 進行中の世界的なエネルギー危機からの未曽有の課題に直面している〉としたうえで、〈経済及び社会システムをネットゼロで、循環型で、気候変動に強靭で、汚染のない、ネイチャーポジティブ(生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せること)な経済へ転換することにコミットする〉とした。

参考=日経新聞寄稿23年8月15日付〈和田篤也・環境省事務次官〉〈今年、G7広島サミット、G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合が開催されました。そこでは、ネットゼロ、サーキュラーエコノミー(循環型経済)、ネイチャーポジティブの統合的な実現の重要性が再認識されたところです。政府においても、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」や「新しい資本主義実行計画」に、この3つの課題に向けた取組みが位置づけられました。……特にネイチャーポジティブは生物多様性をネットゼロと一体的に取り組むべきビジネス課題と位置付けて事業活動に組み込んでいく動きが加速する中、国際的にも注目されています。生物多様性の損失や自然資本の劣化が事業継続性を損なうリスク、あるいは新たなビジネスを生み出す機会として認識されつつあるのです。〉

(2)COP28

また、昨年末のCOP28(国連気候変動枠組み条約第に28回締約国会議)では、パリ協定の目的達成に向けた世界全体の進捗を評価するグローバル・ストックテイク(GSTが議論された。そこでは、野心的な排出削減とそのための世界的な努力への貢献に向け、いくつか決定事項があった。日本のメディアがよく報道した「化石燃料からの転換への移行」以外に、世界全体の再エネ発電容量3倍・省エネ改善率2倍、再エネ・原子力・CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)などの排出削減・炭素除去技術・低炭素水素等の加速なども掲げられた。

参考=第1回グローバル・ストックテイク 

23年に第1回を開催。その後は5年に1度、世界全体のパリ協定の実施状況を評価。(パリ協定第14条)

グローバル・ストックテイク(GST)に関する決定

・1.5度目標の達成に向けて25年までの排出量のピークアウト

・全ガス・全セクターを対象とした野心的な排出削減

・各国の判断、事情等を考慮して行われる世界的努力への貢献

・世界全体で再エネ発電容量3倍・省エネ改善率2倍

・排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の逓減加速

・エネルギー部門の脱・低炭素燃料の使用加速

・化石燃料からの移行

・再エネ・原子力・CCUSなどの排出削減・炭素除去技術・低炭素水素等の加速

・メタンを含む非CO2ガスについて30年までの大幅な削減の加速

・交通分野のZEV・低排出車両の普及を含む多様な道筋を通じた排出削減

・非効率な化石燃料への補助のフェーズアウト など

環境省幹部は、この合意内容について次のように語る。23年12月)〈GSTは地球全体で考えなければならない話であり、そうであれば自ずと、ソリューションにハイライトがあたる。そうすると、まずは再エネをみんなでしましょう、その次は省エネをしましょう、となる。「エネルギー効率」という言葉も今回初めてでてきた。e-fuelや原子力、CCUSまで書いてある。日本が入れ込んだというよりも、結局はソリューションを示す国が日本しかなく、日本の取組み以外にネタがないから、日本の主張するソリューションが評価されて、全て書かれることになったというのが正しい理解だ。〉

参考=別の環境省幹部は、〈今回のCOPが日本にとって成功だったのは、日本が一枚岩だったからだと思っている〉と述べている。その上で同幹部は、メディアの取材姿勢についても、〈メディアも最近では技術を勉強して、ソリューションについて書き始めている。今はペロブスカイト発電や洋上風力、蓄電池がハイライトされており、今後もっと多くの記事が出てくると思っている〉と述べている。

ガスエネルギー新聞の新年インタビュー(1月1日号)では、環境省事務次官が現政権での環境政策について次のように語っている。

◎ガスエネルギー新聞1月1日付〈和田事務次官インタビュー〉(抜粋)

Q:岸田政権の環境政策について

A:大きく3つの柱がある。

1つ目は「経済のGX(グリーントランスフォーメーション)」だ。従来、環境と経済は対立概念とされてきたが、ここ10年程度で「好循環」を起こせると認識が変わった。GXはこれを具体化したもので、岸田政権の特徴だ。昨年、GX推進法が成立し、「GX推進戦略」「分野別投資戦略」を策定、今年は実行の年だ。2つ目の柱日本が持つさまざまなカーボンニュートラルに向けたソリューションを広く普及させる。世界の成長センターであり、温室効果ガス排出量も伸びているアジアで普及させるため、岸田首相が提唱した「アジア・ゼロミッション共同体(AZEC)」が鍵になる。……アジアでは国によって成長の仕方や産業の仕組み、内容、成長速度が違う。日本には、それに対応するソリューションがある。3つ目は、環境対策をいかに地方創生に役立てるかだ。「サーキュラーエコノミー(循環経済)」がその一つで、リサイクルをはじめとする資源循環が、地域のビジネスとなり、地方創生になる。……さらに生物多様性の損失を止め、反転させて自然を回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」への産業界の関心が広がっている。これら 経済のGX、日本が持つソリューションのアジアへの展開、地方創生と環境政策の3つがトレンドだ

東洋経済オンラインは、こうした情勢の進展を受けて、経産省提出の法案についてであるが、昨年から今年への流れに触れている。

・東洋経済オンライン4月9日号

〈「GX(グリーントランスフォーメーション)」と呼ばれる脱炭素化政策に関連した法律が一通り出そろった。排出量取引の導入などを定めた「GX推進法」や原子力発電推進を盛り込んだ「GX脱炭素電源法」が昨年成立したのに続き、政府は2月13日、「水素社会推進法」および「CCS(二酸化炭素『CO2』の分離回収・貯留)事業法案」を閣議決定した。両法案は今国会での成立を目指している。…… (その上で、「成否未知数のGX戦略、政府は柔軟に軌道修正を」「原発回帰が再エネ拡大抑制、水素はコスト難題」としている。)〉

環境省提出のものも含めて、今回提出のエネルギー・環境関連法案は、エネルギー・環境政策の議論の進展も伴い、各分野でのソリューション強化を目指したものといえよう。次号では、水素、CCS、洋上風力関連の法案に比べて、メディアで取り上げられるボリュームがやや少ないように思われる、地球温暖化対策推進法改正、地域生物多様性増進活動促進法、再資源化事業等高度化法の意義などについて触れたい。

ジャーナリスト 阿々渡細門

【目安箱/5月7日】「もしトラ」で日本のエネルギー産業はどうなるか


「もしトラ」という言葉がネットで生まれている。「もしもトランプ前米大統領が、今年11月の大統領選挙で当選したら?」の意味だ。トランプ氏は、共和党の候補になることは確実だが大統領選挙で勝つかどうかはわからない。しかし仮に選ばれたとしたら、今のバイデン政権が進めてきた米国のエネルギー・温暖化政策の方向性は大きく変わることは確実だ。今年5月時点の情報で、頭の体操をしてみよう。

◆「アメリカ・ファースト」のエネルギー政策

トランプ大統領は第一次政権(2017年1月〜2021年1月)までの4年間で、以下のエネルギー・温暖化政策を進めた。当時は過激と評された。しかし私には意外感はなかった。2016年の大統領選挙の前に、同時に行われる米連邦議会選挙での共和党のマニフェストを読んでいた。すると、エネルギー分野でトランプ政権の行ったことは、ほぼ全て、そこに書かれていたことだった。つまり、これはトランプ氏の独走ではなく、共和党支持者の総意なのだ。

トランプ氏は「アメリカ・ファースト」「アメリカを再び偉大に」という基本方針を前回掲げた。今回の選挙でもそれを掲げている。第一次政権のエネルギー政策でもそれは現れた。

・パリ協定からの離脱。
・連邦国有地での環境規制の撤廃。
・米国を横断するガスパイプラインの建設促進。
・国産エネルギーの増産支援。オバマ政権が環境配慮の規制で抑制しがちだった、石炭産業、シェールガス支援。
・原子力は推進。ただしオバマ政権の「核兵器なき世界」という政策を批判。
・原子力発電の増加は支援。これは民主党も同じ。民主党が掲げる核不拡散と、それに伴う核燃料サイクルを日本以外に認めない政策を、それほど強調せず。
・オバマ政権が初期に唱えた「グリーンニューディール」政策は徹底批判。
・中東政策はイスラエル寄りだが、サウジ、バーレーン、UAEなど、穏健なイスラム諸国との関係を深めた。

エネルギーと気候変動問題は共和党、民主党間で党派対立が激しい分野だ。トランプ政権時代にはエネルギー温暖化政策の否定が目立った。その反動でバイデン政権はトランプ政権のエネルギー温暖化政策の否定からスタートした。バイデン大統領は、政権発足の第一日目にパリ協定へ復帰し、パイプラインの環境調査など、オバマ政権の時の環境保護政策を復活させた。行政命令でできることを全てやった。

◆「第二次?」トランプ政権のエネルギー政策

では、仮に第二次トランプ政権が発足した場合に、どのようなことが行われるのか。

バイデン政権の政策を強く否定するだろう。テッド・クルーズ、マルコ・ルビオ上院議員など共和党保守派は、エネルギーに絡めて、バイデン政権を批判。またバイデン政権のグリーンニューディール政策が補助金を垂れ流し、アメリカの化石燃料産業を衰退させプーチンを儲けさせたと批判している。共和党側の主張に疑問点もあるが、同党の支持者はその現政権の否定を強く賛成するだろう。

まだ共和党の大統領選挙や今年秋の連邦議会議員選挙のマニフェストは作られていない。トランプ陣営への政策インプットを行っている共和党系の米国第一政策研究所(America First Policy Institute)の掲げる政策提言をみてみよう。エネルギーでは以下の取り組みを提言している。

1.エネルギー自給を実現=海上、国立公園などでの採掘を拡大。原子力を拡大。レアアース、重要鉱物、化石燃料、ウランの自給を試みる。原子力教育、人材育成も行う。

2.エネルギー生産の増大による価格引き下げ=非効率な補助金、規制の廃止、発電所の延命など。

3.予測可能、透明、効率的な許可プロセスと規制環境の構築=補助金を評価し、規制・許認可改革による合理的な制度を作る。

4.すべてのアメリカ人にきれいな空気、きれいな水、きれいな環境を=環境改善と経済成長の成果を促進するために、大気浄化法(CAA)水質浄化法(CWA)などを見直す。そして中国をはじめとする敵対国の膨大な環境破壊を監視する。パリ協定ではなく、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)のような意味のある強制力のある環境協定づくりを目指す。

5.「エネルギードミナンス」というコンセプト。産業競争力をつける=国際パイプライン、ガス輸出を促進。米国のエネルギーが、価格、安定供給など、他国から優れた状況になる「エネルギードミナンス」という状況を作る。

◆政治の波に左右されず、力を蓄える行動を

トランプ第二次政権が誕生すれば、これらが実行されることになる可能性が高い。特に日本に影響を与えそうな問題は、パリ協定からの離脱、天然ガス輸出の積極化だろう。

パリ協定は緩やかな規制だが、それでもトランプ氏と共和党は米国の産業に規制をかけると敵視している。米国の脱退によって、全世界を覆う協定は、当面の間できなくなる。これはさまざまな影響を与えるだろう。ただし、脱炭素の目標が消えることはない。そして日本の省エネ技術、原子力技術が、自由主義陣営で期待される状況は変わらない。

米国のエネルギー輸出積極化は、日本にとってはエネルギー供給源の多様化という形で歓迎すべき話だ。天然ガス、シェールガスをLNGで日本が輸入する形となるだろう。これまで日本はG7でバイデン政権の米国と欧州から脱化石燃料を求められてきた。日本の貿易の柱は対中国、対アジア、対米だ。欧州に気候変動問題で引っ張られる可能性はあるが、米国からの要求が緩まれば、日本の民間企業も政府も自由に動きやすくなるだろう。

ただし米国企業が気候変動のコストを負わず、米国のエネルギー価格の低下を享受すれば、日本の産業界はその競争に苦しむ可能性がある。

エネルギーは長期的な取り組みが必要だ。日本は自由化、原発の長期停止など、政策の失敗で、エネルギー産業は苦しんできた。そうした政治の波にエネルギー産業は翻弄されてしまった。それに加えて米国が、政権交代のたびに左右に大きく振れるのは困ったことだ。

しかし、嘆いても仕方がない。脱炭素の潮流は変わらない。「もしトラ」を頭の片隅に入れながら本業を磨くことしか、日本のエネルギー産業の進むべき道はないだろう。安く、良質の商品やサービスは、政治がどうであろうと、消費者に選ばれて永続する。

【記者通信/5月2日】レジルが新規上場 分散型プラットフォーム構築へ


「日本全体の電力需給の安定化と脱炭素に貢献していきたい」。4月24日に東証グロースに上場を果たしたレジルの丹治保積社長は、こう意気込みを語る。上場を足がかりに、再生可能エネルギーの調達・供給と、高圧一括受電事業を展開するマンション、オフィス・工場などへの蓄電池の導入に加えAI制御を組み合わせた分散型エネルギー事業を強化。社会からの信頼性向上とデジタル人材の確保につなげたい考えだ。

記者会見をするレジルの丹治保積社長

「脱炭素を難問にしない」をミッションとするレジルが目指すのは、「分散型エネルギープラットフォーム」の構築。まずは、既存事業のアセットを活用したVPP(仮想発電所)を実現し、そこで得たシステムやオペレーションのノウハウを新電力会社や自治体に提供することで、巨大なエネルギーネットワークの形成を目指す。

プラットフォームを構築する上で必要な技術については、実績のあるベンチャー企業などと積極的に連携していく方針で、「エネルギー業界のハブ(中心)」としての立ち位置を確立させていく。

「第二の創業。会社を作り直す」を経営目標として掲げた丹治社長は、今回の新規上場について、「ようやくスタート地点に立てた」と強い意欲を見せる。

【記者通信/5月1日】国益重視の議論主導へ 再エネ議連の三宅事務局長が意欲


洋上風力発電事業を巡る汚職事件で起訴された秋本真利衆院議員が運営を仕切っていた自民党の「再生可能エネルギー普及拡大議員連盟」が再始動し、後任の事務局長として三宅伸吾参院議が就任した。三宅氏は、自民党随一の脱原発再エネ推進派として知られる前任とは対照的に「原発推進派」で、国益を守る防衛政務官でもある。経済安全保障や産業競争力を強化する観点から再エネを進める必要性を説く三宅氏に、再エネ議連の役割や当面の活動について聞いた。

インタビューに応じる再エネ議連の三宅伸吾事務局長

――再エネ議連は3月の総会で新たな事務局長を承認し、約8カ月ぶりに動き出した。議連が果たす役割は?

三宅氏 世界的にカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量を実質ゼロ)へ対応する機運が高まる中、再エネを導入する動きが拡大している。日本もあらゆる政策を総動員し、再エネを加速させていくことが極めて重要だ。これまでも議連は、再エネ導入のけん引役としての役割を担ってきたが、それはこれからも変わらない。今年は「第6次エネルギー基本計画」の見直しの議論が進むことになる。議連としても精力的に議論を展開し、次の基本計画に向けて大きな役割を果たしていきたい。今後は、それを期待する柴山昌彦会長の思いを具現化するための現場の作業を進めていくことになる。

――三宅氏の立場は原発推進派と聞いている。エネルギー政策にどう向き合う考えか。

三宅氏 原発を速やかに廃止の方向に持っていくことには賛成していない。「安全性を確保しながら速やかに再稼働できる原発は動かせ」という意味で、原発推進派だ。ただし、100%原発で日本のエネルギー源を賄うという主張ではなく、エネルギーコストや脱炭素などの観点から日本が置かれた状況を見極め、ベストミックス(望ましい電源構成)を追求するという立場だ。

政府は、安全性を大前提にエネルギーの安定供給、環境適合性、経済効率性をバランスさせる「S+3E」を一貫して重視してきたが、その大原則に揺るぎはない。

――ベストミックスの中での再エネの位置づけは?

三宅氏 再エネをどう位置づけるかの具体的な議論はこれからだ。脱炭素に加えてエネルギー安全保障の観点からも再エネを拡大するという視点が重要だ。議連としては、さまざまな再エネに関する政策の検証を進め、課題を洗い出したい。検証結果は、政府が夏に閣議決定する「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」を視野にまとめる提言に反映したい。

日本発の技術で新たな市場創出を

――中でも次世代電池「ペロブスカイト太陽電池」に注目している。

三宅氏 柴山会長から事務局長をやってくれと言われたのは昨年末。やる以上はリスタートにふさわしいテーマを選びたいと考え、自分なりの勉強を経て、ペロブスカイト太陽電池を取り上げることにした。ペロブスカイトは軽量で柔軟性があるため、建物の壁面や耐荷重の低い屋根など、これまでの太陽電池とは異なる場所にも設置できる。世界をリードする日本発の技術で国産化できる可能性は、政治家の心に刺さる魅力だ。国内に豊富に埋蔵するとされている主原料「ヨウ素」は他国に依存しなくて済み、経済安全保障上の懸念がない。それ以外にも産業競争力の強化や環境技術で日本の存在感を高める環境外交の推進など、(国益につながる)旗を多く立てることができる。

――防衛省は、自衛隊施設へのペロブスカイト太陽電池導入に意欲的だ。

三宅氏 政府は、公共施設もしっかり再エネ対応しようという方針を決めている。防衛省としては、自衛隊庁舎や隊舎など約2万3000棟を全国に保有しており、既存施設の更新とペロブスカイトの市場化のタイミングが合致すれば、積極的に自衛隊施設へ導入するための検討を進めたいとしている。ペロブスカイトの市場が一挙に立ち上がり、大きな需要が生まれて大量生産ができるようになれば、コストはどんどん下がっていくだろう。

【目安箱/4月30日】中国企業ロゴ問題を巡るメディアの追及はなぜ鈍い?


内閣府「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」(再エネTF)構成員の大林ミカ氏が政府に提出した資料の一部に、中国の国営送配電会社「国家電網公司」の社章の透かしが入っていたことが3月に発覚した問題。大林氏は「ミス」と釈明し構成員を辞任したが、大林氏が政府や国際機関に提出した資料でも透かしは見つかった。中国企業の資料を大林氏が頻繁に利用していたことがうかがえる。中国企業が同財団を通じ日本の政策に影響を与えようとしたという疑惑は消えない。日本維新の会や国民民主党が国会で追及しているが、他の野党やメディアの大半が静かなのは、なぜだろうか。

経産省のヒアリングで提出された自然エネルギー財団の資料。右上にロゴの透かしがある。

◆メディアに支援される反原発活動家

理由は想像できる。大林氏は、孫正義氏が作った再エネの過剰重視と反原発を主張する自然エネルギー財団の事業局長だ。そして日本の反原発運動の中心の原子力資料情報室出身で、研究実績のない政治活動家だ。それなのにメディアに異様な量の登場をしていた。彼女は多くのメディアにとって、反原発、再エネの過剰な振興策、政府批判を唱える仲間だった。そのために批判もできないのだろう。

私は以前から何度かシンポジウムで、彼女と顔を合わせていた。その過剰な再エネ賛美をおかしいと思い、間違った点を指摘すると怒鳴り返されたことがある。冷静に議論のできない人だと思った。彼女は「高木仁三郎の弟子」とさまざまな場で繰り返していた。高木氏は反原発活動家で、主張は問題点も多かったが、人の話を聞き、人格的には高潔で、冷静な人だった。高木氏の長所を受け継いでいない。本当に弟子なのか疑いたくなる。

試しに朝日新聞の記事データサービスで「大林ミカ」と検索すると2024年4月まで、大林氏は本紙で28件、アエラなど同社グループメディアも含めると38件も登場した。個人では異例の数だ。ところが問題発覚後は1件だ。ここまで頻繁に、研究者でもない一活動家が朝日新聞に登場するのは異様だ。

同紙は「(ひと)大林ミカさん 国際太陽エネルギー学会の賞を受けた」(2017年11月27日記事)と彼女を紹介。「原発ゼロをたどって:6 仲間はもう増えないのか」(2018年7月31日記事)で、立憲民主党議員らと共に原発ゼロ基本法案作成に動く彼女を「「自然エネルギーのジャンヌ・ダルク」と呼ばれている」などと称えた。

東京新聞は事件について「これって再エネヘイトでは?」(今年4月20日)と、この問題をめぐる記事を掲載。「原子力ムラの巻き返し」などの識者コメントを載せ、再エネ叩きが騒動の理由との奇妙な記事を書いた。

既存メディアによう大林氏の異常な支援は、偏向と言っていいだろう。

◆中国企業が日本に政治工作を仕掛けた?

しかし、これでいいのだろうか。岸田文雄首相は、この問題を巡り3月25日の参議院予算委員会で「外国が日本のエネルギーシステムに関わることはあってはならない」と、質問に答弁した。事の本質は、そこにある。外国企業が、日本の活動家を通じて、日本の政策に影響を与えたかどうかが、問題解明の焦点であるべきだ。

この再エネTFは河野太郎氏が内閣府特命担当大臣(行財政改革、規制改革、国家公務員制度担当大臣)になった2020年に作られた。彼は一度離任した後22年に内閣府特命担当大臣(デジタル政策、規制)に再任され、再びこの委員会を動かした。河野氏主導で動いているため、通称「河野委員会」と呼ばれる。経産省と大手電力会社に対する批判に熱心なのが特徴だ。

それにしても、奇妙な組織だ。委員会という呼称を正式には使わない。また委員も構成員という名前だ。政府の特別委員会は、利害関係者を委員にしてはならない。大林氏は、再エネ事業も行う孫正義氏の作った自然エネルギー財団に籍がある。彼女たちを活用するために、このような曖昧な位置付けにしているのかもしれない。河野氏は反原発派で、中国の政府、企業と親しい。そうした中で、このようなTFを活用し、持論の実現に使うことに問題はないのか。「大林氏のミスと聞いている」と河野氏は繰り返すが、本当か。第三者による検証が必要だろう。

個人が再エネ振興、反原発の主張をすることは自由だ。しかし、そうしたきれいごとを表に出しながら、裏では中国政府が日本にエネルギー分野で政治工作を仕掛けているかもしれない。新聞・メディアには、この問題の真相を究明する報道を期待したい。原子力を巡る不祥事であれば、連日のように批判報道を展開する一部の大手メディアも、こと再エネ関係となると途端にペンの力が鈍る傾向にある。鹿児島県伊佐市や宮城県仙台市で発生したメガソーラー火災が深刻な問題を内包しているにもかかわらず、大きく報道されないのは、その典型といえよう。それこそメディアの偏向と言えるのではないか。

【記者通信/4月26日】宮古島でブラックアウト 「母線」の故障が原因


4月25日午前3時ごろ、沖縄県宮古島市でブラックアウト(全域停電)が発生し、周辺の離島を含む市ほぼ全域の約2万5500戸が停電した。沖縄電力によると、宮古第二発電所内にある発電機と送電線をつなぐ「母線」が故障。事故原因となった装置を切り離し、停電発生から約8時間半後の同日11時42分に全戸復旧させた。横田哲副社長は浦添市にある沖電本店で会見を開き、「宮古島の地域の皆様にご不便をかけたことを深くお詫び申し上げる」と謝罪した。なお、装置が故障した原因は分かっておらず、同社は今後、事故対策委員会を設置し、原因の究明を進める方針だ。

最大で約2万5500戸が停電した宮古島

【記者通信/4月25日】岩谷・コスモが水素拠点開設 資本提携を機に整備拡大へ


燃料電池(FC)搭載トラックなどに燃料の水素を大量に充填できるステーションが4月上旬、国内最大の貨物取扱量を誇る東京都大田区平和島の物流拠点「京浜トラックターミナル」に誕生した。岩谷産業とコスモエネルギーホールディングス(HD)グループの共同出資会社が運営するFC商用車向け水素ステーションだ。23日には、岩谷とコスモHDが資本業務提携を結んだと発表しており、これを機に両社は水素インフラの整備などで攻勢をかけたい考えだ。

水素ステーションの開所式に臨んだ(左から)コスモHDの山田社長、岩谷産業の間島社長、資源エネルギー庁の村瀬長官

4月8日に開所したのは「岩谷コスモ水素ステーション平和島」。岩谷とコスモHD傘下のコスモ石油マーケティングが2023年2月に共同設立した「岩谷コスモ水素ステーション合同会社」が建設した。トラックターミナル内への水素ステーション設置は国内初で、コスモHDグループ系列のSS(サービスステーション)に併設した。水素ステーションは、大型のFCトラックに短時間で大量の水素を充填できることが特徴だ。水素の貯蔵能力は3000kg。トラック1台当たり30kgの水素を入れる場合、100台分を充塡できる。同様のケースで、1台の充塡にかかる時間は10分程度になるという。

岩谷の間島寬社長は、同日の開所式で「コスモのSSに当社水素事業のノウハウを融合し、より効率的に水素ステーションを建設し運営したい」と強調。さらに地球上に無尽蔵に存在し利用時にCO2を排出しない水素の特性に触れ、「水素エネルギー社会の早期実現に向けてさまざまな取り組みを行いたい」と意欲を示した。

◆都有地2カ所にも拠点づくり                                     

岩谷コスモ水素ステーションは平和島での取り組み以外にも、東京都有地2カ所に25年以降に開所する水素ステーションの整備・運営事業者として選定されている。具体的には、江東区の有明自動車営業所内にFCバス向け水素ステーションを設けるほか、同区内にFCバス・FCトラック向けステーションの整備も計画しているという。

岩谷とコスモHD は、22年に水素分野の協業検討で基本合意して以来、関係を強化してきた経緯がある。23年12月には「物言う株主」関与の投資会社などが保有する2割弱のコスモ株式を岩谷が買い取り、筆頭株主となった。今回の資本業務提携に先立つ今年3月には、岩谷がコスモ株式を追加取得し、議決権ベースの出資比率を20.07%に引き上げた。

両社は提携を機に双方のノウハウや経営資源を持ち寄り、協業の領域を拡大。コスモHDグループ保有のSS網を活用した水素ステーションの整備拡大に取り組むほか、脱炭素関連事業の拡充なども狙う。コスモHDの山田茂社長は「(水素ステーションを整備する)歩みを加速するくらいの勢いで積み重ねたい」としており、そうした展開に提携で弾みをつけたい構えだ。 

政府がインフラ整備支援も課題

水素社会の実現に向けては、政府が23年6月に「水素基本戦略」を改定し、官民合わせて15年間で15兆円を投じる計画を打ち出した。その中に、多様な水素利用ニーズに応えられるよう水素ステーションの整備を促す方針も明示した。

政府が水素の有効な活用先として重視するのが、FCトラックだ。中でも移動距離が長い大型トラックには、十分な航続距離と短い充填時間が求められるため、電気自動車よりもFC車両が有望視されている。

すでにモビリティー分野の水素普及に向けては、経済産業省の主導で官民が議論を重ね、23年7月に中間的な取りまとめを公表。この中で、温室効果ガス排出ゼロに向けた国の実行計画「グリーン成長戦略」の達成に必要な車両の供給量を予測し、30年までに少なくとも1万7000台のFCトラックが必要と試算した。

資源エネルギー庁の村瀬佳史長官は、開所式で「意欲のある事業者や自治体に対して政策資源を重点的に振り向け、モビリティーにおける水素の利活用を先導したい」と強調。脱炭素社会の実現に向けて低炭素水素などの供給や利用を促す「水素社会推進法案」が閣議決定した動きにも触れ、「クリーンで大規模かつ強靭な水素サプライチェーン(供給網)が立ち上がり始め、水素の普及拡大の強力な後押しになる」とも述べた。

ただ、FC商用車を増やす取り組みは道半ば。自動車メーカーと物流・荷主企業、水素供給企業ともにFC車両と水素ステーションの先行きに不透明感を感じて投資計画を立てられない「三すくみの状態」となっているのが現状だ。物理・荷主企業にとっては、車両や水素燃料の価格が高いことも投資に踏み込みづらい要因となっている。経産省はこうした状態を打破する取り組みの一環で、「トラック向け水素ステーションを重点的に設置する地域を指定したい」考えだ。

岩谷とコスモHDは政府からの追い風を背に、水素普及への道筋をつけることができるか。両社が注力するFC商用車向け水素インフラ事業は、日本に水素社会が根付くかどうかの試金石の一つとなりそうだ。               

【記者通信/4月24日】自民党にe-メタン議連が発足 梶山・元経産相が会長就任


自民党の有志議員は4月18日、天然ガスの高度利用や脱炭素につながるe-メタン(合成メタン)の社会実装を促す議員連盟を立ち上げ、同日に初会合を開いた。会長には梶山弘志幹事長代行(元経済産業相)が就任。梶山会長は、e-メタンの社会実装に向け、技術開発やルール整備などが課題であることを指摘した上で、「カーボンニュートラル実現に向けて国の政策を進めていかなければならない」との決意を示した。

議連の初会合であいさつする梶山会長

議連の名称は「GXにおける天然ガスの高度利用とe-メタン促進に関する議員連盟」。初会合には、代理人を含む自民党議員が34人のほか、関係省庁、日本ガス協会の内田高史会長をはじめとする業界関係者らが顔をそろえた。

都市ガス産業では熱利用分野のカーボンニュートラルへの円滑な移行を目指し、将来的には天然ガスから既存のインフラ設備や消費機器をそのまま利用できるe-メタンに代替していく構えだ。

議連は5月までに3回会合を開き、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)への提言をまとめる。今回の会合では上流分野におけるLNG権益取得の確保などに焦点を当てたが、今後は中下流分野に着目した議論を進めるという。

会合後、記者の囲み取材に応じた事務局次長の山口晋衆院議員(元内閣官房長官秘書)は、「CO2カウントルール(の整備)が一番の課題」と指摘し、「日本の産業競争力が損なわれないような仕組みを作っていきたい」と述べた。