【記者通信/6月12日】小泉環境相が強調した「再エネ立地交付金」 その光と影


電源立地交付金ならぬ、再エネ立地交付金を創設へ――。政府の国・地方脱炭素実現会議(議長・加藤勝信官房長官)は6月9日に決定した「地域脱炭素ロードマップ」の中で、脱炭素化事業に意欲的に取り組む自治体を支援するため新たな資金スキームを創設する方向を打ち出した。〈地域脱炭素への移行・実現に向けた取組の加速化の観点から、脱炭素事業に意欲的に取り組む地方自治体や事業者等を集中的、重点的に支援するため、資金支援の仕組みを抜本的に見直し、複数年度にわたり継続的かつ包括的に支援するスキームを構築〉。脱炭素ロードマップの資料にはこう記されている。

国策民営で昭和は原発、令和は再エネ

小泉進次郎環境相は11日の閣議後会見で次のように言及した。

「(ロードマップの)最大のポイントの1つが、複数年度にわたる自治体に対する資金支援を抜本的に見直し、新たなスキームをつくることだ。私のイメージは、『再エネ立地交付金』のようなもの。昭和の時代は、国策民営で原発を推進した。そして令和の時代、エネルギーの国策は何かといえば、再エネだ。(現状を見ると)主力電源化なのに、財政基盤が脆弱な事業者が多い。それだけ、日本は再エネ業界を支援してこなかった。これからは、再エネ最優先の原則で最大限の導入に向けて支援をしっかりとやっていく。再エネ立地交付金をどのような制度設計にするか、各電源に対してどれだけお金をつぎ込むか、議論を通じて明らかにしていく。国・地方脱炭素ロードマップの大きな成果だと思う」

原子力発電を中心とした戦後の大型電源開発を巡って、わが国政府は1974年に「電源開発促進税法」「電源開発促進対策特別会計法」「発電用施設周辺地域整備法」の電源三法を制度化。立地地域に対し、発電所の利益還元を図ることで、原子力開発を推進してきた。その仕組みの中核をなしているのが、「電源立地地域対策交付金」制度である。

小泉環境相の言葉を借りれば、今回の脱炭素ロードマップでは、その再エネ版の創設を提起したわけだ。「今までだったら電源立地交付金、これからは再エネ立地交付金だと。そういった議論を、私としては正面からやっていきたい」。この日の会見では、再エネ立地交付金なる言葉を繰り返し強調した。エネルギー業界の関係者が言う。

「電気事業連合会のウェブサイトを見ると、電源三法交付金制度の説明の中に『原子力施設と地域社会が共存共栄することを目指し、立地地域の発展のために、国、地方自治体、電気事業者の三者が一体となって、相互に連携・協力して取り組む必要があります』と書いてある。この原子力の三文字を、そっくりそのまま再エネに置き換えれば、小泉大臣が言わんとする狙いが見えてくるだろう。しかし、これは諸刃の剣でもあることに、われわれは十分注意しなくてはならない」

原発はダメでも再エネなら許される?

電源三法交付金を巡っては、原発と地域の共生に多大な貢献を果たす一方、かねて反原発派などから「政治家、立地地域、大手電力会社にずぶずぶの関係をもたらした元凶」「巨額の原発マネーが原子力利権、原子力ムラを生み出した」などと批判されていることも事実だ。それはすなわち、見方を変えれば、再エネが同じ轍を踏まないとも限らないわけである。実際、小泉環境相は会見でこうも話している。

「電源立地交付金の使い道については、一部からは批判もある。本当にそれ、電力と関係あるんですかという。再エネ立地交付金は、よりよいものにしたい。そして、国が全面的に資金支援するという形で(国策民営の下で)日本から再生可能エネルギーメジャーを生み出していく。こういったことにしなければ、再エネ主力電源化はできないだろう」

この発言を見る限り、再エネ立地交付金構想からは何やら危険な匂いが漂ってくる気がしてならない。言うまでもなく、地域共生に基づく再エネ推進政策は、脱炭素社会の実現に向けて不可欠な取り組みだ。が、それが巨額の再エネマネーの下で利権化してしまうと、国民全体の利益からはどんどん遠ざかっていくことになる。ある意味では、再エネ固定価格買い取り制度(FIT)がそうともいえよう。原発利権はダメでも再エネ利権なら許されるという理屈は、もちろん通るはずもない。今後、交付金制度の影の部分にもしっかりと目を向け、〝脱炭素祭り〟に踊らされない、冷静な議論を行っていくことが求められる。

【目安箱/6月8日】インフラ企業の「お客さま」は「神様」ではない⁉


◆「全ての顧客に真剣に」対応する代償

エネルギー産業の顧客対応の姿勢を紹介したい。ある会社で、広報部門を15年ほど前に見せてもらったことがある。その会社では顧客の対応で、複雑な問題があると広報部に回る仕組みだった。いわゆる政治活動家やクレーマーへの応対まで社員が一生懸命対応していた。

ていねいに顧客に向き合う姿に感銘を受けるとともに、「やりすぎではないでしょうか。『お客さまは神様』では、ありません」と質問した。すると案内した幹部は、「神様とは思っていませんが、インフラ企業にとっては、全ての方がお客さまです。どの問い合わせにも真面目に、真剣に対応します」と返事をした。その返事をする態度に、「自分の言っていることに間違いがあるかもしれない」という戸惑いの色が見えたように思えた。

同社の若手広報部員とたまたま知り合いだった私は実情を聞いていた。彼は有名大学卒業生のエリート。顧客対応の仕事では、15分に1回、電話がかかった。そのうち5分の1は、何を言っているか、わけのわからない内容の電話だったという。電話口で突如、怒鳴られることもたびたびあった。次第に、帰宅後も電話が頭の中で鳴り続けている精神状態に。上層部も現状を分かっているようで、激務のため短期間で電話対応の社員は変わったという。「会社がお客さまにどのように思われているか、この仕事から知ることができたため、きつい経験は後になって、ためになりました。しかしやっているその時は、苦しく、限界になりました」と、その社員は語っていた。

電力会社の社員らによると、2011年の東日本大震災と東京電力の福島第一原発事故の後数年間は、こうした状況がさらに悪化した。事故直後に、原発絡みで電話での問い合わせや抗議が、全国の電力会社に殺到した。同じ人が何度もかける例もあったという。インターネットの時代でも、電話だとすぐに不安を訴えたり、直接不満を爆発させたりできるとして、電力会社のコールセンターが利用されたのかもしれない。

特に、東京電力の社員の話を聞くと、気の毒に思う。原発事故を同社は起こした。その問題で、被災者を初め、一般消費者からも、何年も激しい批判を浴びせられ続けたという。もちろん原発事故の責任を、東電の会社そのものは負うべきだが、個々の社員にその責任を問うのは酷だ。

エネルギーの自由化が進んだ今、人は減っていても、エネルギーインフラ企業の顧客対応を真面目にする文化は、大きく変わったようには見えない。それどころか、サービスの向上は求められ、各社が対応する。社員の疲弊は蓄積する一方だ。

◆「クレーマー」の威張れない時代

はたして、これでいいのだろうか。日本のインフラ産業、エネルギー産業は、「全ての人がお客さま」という意識にとらわれすぎているように思う。

ほとんど報道されていないが、ネット上では騒ぎになり、時代の変化を示す事件があった。今年4月1日、車椅子に乗る女性が、JR東日本の来宮(きのみや)駅での乗降を巡る同社の対応を「障害者の乗車拒否だ」などと批判し、新聞社に通報、自らさまざまな方面に情報を発信した。女性は手前の小田原駅で来宮駅までの案内を申し出た際、来宮は無人駅でエレベーターもなく車椅子が使えなかったため、駅員から「来宮駅は階段しかないのでご案内ができません。熱海まででいいですか?」と最初に言われたことに腹を立て、「乗車拒否」と訴えたようだ。

静岡県熱海市にあるJR伊東線の来宮駅

しかし、乗車拒否の事実はなかった。実際のところ、JR東は社員4人を熱海駅から派遣し、女性の行動に合わせて、100㎏超と推定される電動車椅子を運んで駅の階段を上下していたのだ。ほどなくして、この女性が社民党の常任幹事という政治活動家で、政治活動のためにこのようなことをしたのではないかという疑惑が浮上した。

この事件が興味深いのは、これまでの同種の騒動と全く違う展開を見せたことだ。この女性はマスコミなどに対し「バリアフリーを進めたい」「移動の自由だ」と主張した。ネットのない時代だったら、批判はJ R東日本に向いただろう。

しかしネット上では、この女性が政治活動家であるという事実や過去の言動が暴かれ、本人や擁護する人が情報を発信するたびに批判が広がった。「モンスタークレーマー」と言う批判もあった。そうしたネットの一般人の批判を観察すると、日本の民度がとても高いことが分かる。この女性の障害への中傷はほとんどなく、そのおかしさを冷静に指摘するものが大半だった。そしてインフラ企業であるJR東日本の対応を評価していた。

いわゆる顧客サービスを巡る問題は千差万別で、この事件だけでサービス対応の普遍的な答えは導けない。しかし、①ネットを活用する、②賢明な利用者の多い日本では常識が通る、③適切に顧客の声を聞く――というとるべき3点の対応が改めて分かる。

◆「お客さまは神様です」の真意

もちろん、顧客サービスへの要求は「モンスタークレーマー」によるものとは限らない。相手の主張を聞き、改善すべきサービスにつなげることは必要だ。しかし、明らかに要求が、おかしな「一線」を超えている場合に、それに付き合わず、毅然と拒否することが求められる。上記のJR東の例を見て分かるように、おかしな顧客の行動は、その顧客に批判が向く時代だ。正しい対応をしていれば、多くの人は理解してくれるし、社会の姿勢も「モンスタークレーマー批判」が当たり前になっている。新聞などのオールドメディアの影響力も低下し、報道も事実に基づかなければ逆にネットを活用する一般人から批判されるようになった。悪評と同時に、好評価もネットで広がる。正しいことをすれば、ネットの草の根の発言を通じて普通の人は必ず評価をしてくれる。

もちろん、エネルギーインフラの各企業も、ここで指摘する程度のことは、当然考えているだろう。しかし冒頭の例に述べたように、「お客さまを大切にする」という建前に、各社、そして全体がひきずられている印象を受ける。「お客さまは神様ではない」のだ。

ちなみに私の使った「お客さまは神様です」は歌手の故・三波春夫さんの有名な言葉だ。ただし、これはお客のことを絶対視するという意味ではない。三波氏は真意を、次のような、美しい、意義深い言葉で説明している。

「歌う時に私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな、澄み切った心にならなければ完璧な藝をお見せすることはできないと思っております。ですから、お客さまを神様とみて、歌を唄うのです。また、演者にとってお客さまを歓ばせるということは絶対条件です。ですからお客さまは絶対者、神様なのです」 顧客の言うことを聞き続け、働く社員に負担を与えることが、エネルギー産業が顧客対応で進むべき道ではない。三波さんの「お客さまは神様です」

発言の真意のように、質の高いサービスによってお客を喜ばせ、それぞれの人の生活の質を上げ幸せにすることに、エネルギー産業の人たちは邁進してほしい。クレーマーなど、恐れる必要はない。エネルギーの各企業は、生活に密接に関わるからこそ、人々の幸せを、仕事を通じて実現できる素晴らしい立ち位置にいるのだから。

【イニシャルニュース】エネ庁幹部交代説が浮上 原因は再エネTF騒動か


エネ庁幹部交代説が浮上 原因は再エネTF騒動か

資源エネルギー庁の幹部を巡って今夏の交代説が浮上している。内閣府の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(再エネTF)」の関係者の間で、幹部M氏らへの批判が高まっていることが背景にある。

5月号の本欄で既報の通り、再エネTF関係者とエネ庁幹部が3月下旬、電力ガス基本政策小委員会や再エネTF会合の場で、容量市場の問題を巡り舌戦を繰り広げた。「容量市場が電力自由化と引き換えに経産省が電力に切った手形だとすれば、国民に対する重大な背信行為」(Y氏)、「大変失礼で不適切な発言だ」(M氏)、「内閣府はあまりに勉強不足」(O氏)、「むしろ皆さんの方が理解されていないのでは」(H氏)―。

背信行為呼ばわりされたエネ庁側が怒り心頭なのは当然のこととして、一方の再エネTF側も、電力業界と緊密にやり取りするエネ庁の姿勢には反発を強めている。「同じ経産省でも、本省サイドとはそれなりに話ができている。電力業界と近いエネ庁、とりわけ電力ガス事業部が全然聞く耳を持ってくれないのは、実に困ったものだ」(内閣府関係者)。再エネTF構成員のH氏も、「エネ庁での容量市場の検討は、結論ありきで行われているようにしか見えない」と批判する。

そんな中で取り沙汰されるエネ庁幹部の交代。「M氏は就任1年で異動。その後任として、K氏の名前が聞こえている」(事情通)という。ただ、もしM氏の異動となると、騒動を知っている周辺からは「経産省が再エネTF側の圧力に負けた」とみられかねない。「さすがの経産省も、省内の士気に影響を与えるような、露骨な人事はやらないだろう」(エネルギー業界関係者)。果たして、再エネTFとエネ庁の確執は今後どんな展開を見せるのか。

「環境未来都市」形骸化 地産地消はあやふやに

地方のSDGs(持続可能な開発目標)のモデル事業とすべく政府が取り組む「環境未来都市」構想。東日本のとある自治体では近隣地域と連携したさまざまな取り組みを進め、その中核の一つにメガソーラー事業がある。

一連の取り組みを自治体に持ち掛けたのは東京が拠点のコンサル。自治体とコンソーシアムをつくり、メガソーラーについて当初計画では「世界初の地域分散型蓄電システム付メガソーラー発電所」として建設し、「地産地消」をうたう内容だった。

風力発電などと異なり、メガソーラーは新たな雇用の受け皿になりにくい。その点、例えば自治体自身が事業に絡みFITの売電収益を確保すれば、地域経済への還元が期待できる。しかも、この事業はkW時当たり42円という売電価格が高額な時期に認定された案件だ。

しかし指名競争入札により、東京が本社のM社が事業主体に決まった。実はM社、別の地域で陸上風力を計画したが、地域住民からの猛反対に遭い、短期間に撤回に追い込まれたこともある。

運開から約6年たつが、発電所への蓄電池設置はいまだ実施されず。計画を主導したコンサルもいつの間にか解散していたそうだ。環境未来都市の事業でありながら、地産地消のコンセプトはあやふやになってしまった。

地産地消のコンセプトはどこに

コロナ禍のT電力会見 ちぐはぐさの違和感

新型コロナウイルス禍の感染予防策として、記者会見を開く際の企業の対応が多様化している。

あくまでも会見者と記者が直接対面することにこだわる企業がある。その場合は、参加する記者の人数を制限しつつ、会見者と記者との間にアクリル板を設置したり、記者同士も間隔を空けて着席したりするなどして、「密閉」「密集」「密接」のいわゆる「三密」を避ける工夫をしている。

一方で、コロナ禍が始まってからは社会の感染状況に関係なく、記者会見はオンラインによるリモート開催のみという企業も一定数ある。リモート会議システムのチャット機能を活用することで、質疑応答も意外とスムーズにやり取りができる。

こうした中で、会見によって対応が違い過ぎではないかと記者から違和感を覚えられているのがT電力ホールディングスのK社長だ。ある媒体のX記者が言う。

「4月、N社のカーボンニュートラル化推進に向けた戦略的提携の締結に伴う会見には、N社のM社長とK社長がそろって登壇した。ところが、その数日後に開かれた人事・決算会見では、記者を一つの会場に集めておきながら、会見者は画面の向こう側というスタイル。さすがにそういう対応はどうかと思ったよ」

二つの記者会見の間で何が変わったかといえば、東京都に緊急事態宣言が発出されたことか。当初は通常の会見を予定していたが、宣言が出てこうした対応を取らざるを得なかったのかもしれない。

しかし別の媒体のY記者は、「会見者が必ずしも東京にいるわけではなく、会見側の都合で記者を一会場に集めてリモート開催することに問題があるわけではない。ただK社長の場合、どうも不祥事の頭を下げなければならない会見はリモート、営業系の前向きな会見はリアルで実施しているようだ」と明かす。

かつての会見の風景はもう見られない

ゼロカーボン都市の現実 高炉停止に自治体反発

2050年CO2排出実質ゼロを表明する自治体がここ1~2年で急増している。環境省のホームページによると、この「ゼロカーボンシティ」は5月18日時点で387自治体に到達。表明自治体の総人口は約1億1000万人強に上り、自治体のトレンドとなっている。

小泉進次郎環境相のトップセールスが奏功した結果といえる。だが、どう実質ゼロに近づけるのか、現実的な手段に落とし込むことについては、これから検討するケースが多いようだ。

例えばゼロカーボンシティを表明したK市内には製鉄会社の高炉が稼働しており、長年雇用を支える重要な受け皿となってきた。しかし、国内の鉄鋼需要の減少や中国との競争激化といった背景から、製鉄会社が全国各地の高炉休止に踏み切る動きが続いている。K市内でも1基の休止が発表された。

温暖化ガス排出量削減の観点だけでみれば、これはむしろ実質ゼロに一歩近づく喜ばしい動きであるはず。ところがK市は、雇用損失の影響が大きすぎるとして、経済産業省に「高炉を止められては困る」と直談判したそうだ。

言うは易く行うは難し。経済への悪影響を押さえつつ脱炭素化にどう移行していくかは、産業界だけでなく自治体にとっても重い宿題となる。

「木村王国」が復活!? 青森政界の行方混沌

原子力関連施設が集中立地し、電力業界にとって最重要地である青森県。来年行われる参議院選挙を前に、保守政界が混沌としてきた。

自民党は、出馬が予想される現職の田名部匡代議員(立憲民主党)を落選させ、参院の青森選挙区で議席独占を狙う。県政界関係者によるとO衆議院議員、T参院議員が中心になり、候補者を絞り込んでいる。

候補に挙がっているのは、まず現在5選の三村申吾知事。次期知事選への出馬は多選批判が想定されるため、国政へ転じるとみられている。

三村知事が辞職した場合、後継は誰か。有力視されてきたのが木村次郎衆院議員だ。兄・太郎氏の急逝で県庁職員から転身。17年に初当選したばかりだが、地盤は太郎氏の長女・桜氏(18年弘前城ミス桜グランプリ)が引き継ぐという。次郎氏の父は衆院議員4期・知事3期を務めた守男氏で、「『木村王国』の復活を目指している」(県政界関係者)とうわさされている。

また、外ヶ浜町の山崎結子町長の名前も浮上している。曾祖父は元知事、祖父、父ともに元参院議員という血筋を持ち、元県連幹部の有力者が支援していることも強みだ。山崎氏は参院選出馬との見方もある。

一方、出馬が取り沙汰される、ともに元中央省庁キャリア官僚のO市長とM市長。両氏とも「三村知事との関係がよくない」(同)ことで立候補は微妙になっている。

名前が挙がった各氏、それぞれ原子力に対する考えは異なる。電力業界は静観を決め込むが、動向に目を凝らしているはずだ。

【目安箱/6月2日】技術流失、エネルギー産業でも 防衛策を考える


「ひどい数字だ」。数年ほど前の話だ。韓国で、あるエネルギー製造施設の設計をした日本のプラント会社の技術者らが、工場の稼働データを見て頭を抱えた。日本製の機器が使われているのに、予定通りの生産ができないのだ。韓国側のクレームは激しく、訴訟になるかもしれないと日本企業側は覚悟した。

◆まだ優れる、エネルギー産業の技術力

ところが理由を調べると、配管などの建設工事がいい加減で製造に必要なガスが漏れ、故障が頻発するなど運用も乱暴だったという。客観的な数字と原因を出したところ、韓国企業側も黙った。

「日本のエネルギー企業なら『カイゼン』で、建設後に予定以上の成果を出す工場が大半だ。細かい技術力が劣ると実感した」と担当した技術者は印象を述べた。

日本の経済力、産業の衰退が叫ばれて久しい。ところが、今でもインフラ産業、特にエネルギーの領域で、日本の企業は、世界最高水準の技術を持っている。どの指標でも、効率性、事故率は低い。原子力産業でも、東電の福島事故までは、製造でも安全性でも、世界のトップにあった。

しかし、心配することがある。その技術の流失だ。

◆「ブーメラン効果」を早めるな

筆者は2015年に、台湾での電力独占事業者である台湾電力のプラントを見た経験がある。プラントの構造、運営、そして広報の仕組み、研究所の様子が、日本の原発事故前の東京電力によく似ていた。

1970~80年代に台湾は世界の主要国が本土を支配する中華人民共和国と国交を樹立したために、外交的に孤立した。そのために民間の技術導入も手間が掛かるようになった。同社社員によると、その苦境を見た東京電力の平岩外四氏(1914~2007、東電社長1976~1984)ら経営陣が、台湾電力の社員を受け入れて東電の技術を教え、その人らがその後の同社の発展を支えたという。それが会社の雰囲気の類似につながったらしい。台湾電力の社員は東電に感謝を述べていた。

日本に帰って東電OBに聞いた。平岩氏は経団連会長を務めるなどの財界の大物で、中共の政権との関係も良好だった。また当時は日中友好ムードがあった。東電は中共の電力事業にも協力していたので、台湾電力を支援しても特に問題にはならなかったという。東電は韓国電力にも技術提供をしていたが、70年代から韓国は国内化を進め、台湾より関係が少なくなった。東電は外交も民間の立場から担っており、同社の存在感の大きさを改めて認識した。

平岩氏の世代の日本人は太平洋戦争という不幸な歴史を経験し、アジア諸国への贖罪の意識があったのかもしれない。台湾電力の人も「美談」として感謝を表明した。しかし、筆者は今を生きる世代として、「技術が日本から流失したのではないか」と、心配になった。台湾電力と東電の契約内容の詳細は不明だが、金銭にしてどれくらいの価値の技術が、台湾に流れてしまったのだろうか。

1980年代に日本の製造業は世界を席巻した。当時、各企業は、社会貢献活動の一環で、各国企業との協力や技術の提供を誇らしげに語っていた。ところが今、そうした産業が次々に、技術、生産性の産業力で逆転されている。今では造船、家電、携帯、半導体で、中国、韓国製品が、日本勢を駆逐してしまった。

後発国の産業が先発国の同種の産業の技術を吸収、改良し、その先発国の産業を技術面でも、シェアでも凌駕することは、「ブーメラン効果」と経済学・経営学で言われて頻繁に起こることだ。日本もキャッチアップの過程で欧米のメーカーの技術を学んで追い越した。ところが、日本企業は追い越される時に、「教える」というお人好しの行為や、技術流失の配慮をせず、その逆転のスピードを早めてしまったように思える。

エネルギー産業は、国内市場向け。重電・エネルギープラントは、消費者からは見えづらいインフラだ。その悪影響が目立たなかっただけなのだろう。

◆エネルギー産業の構造変化による危険

もちろんエネルギー産業も「お人好し」の行為ばかりではない。最近の気候変動対策を訴える世界潮流の中で、日本のプラントメーカーに、韓国企業から視察や共同事業の要請が増えているという。文在寅政権の脱原発政策で再エネシフトが加速して同国では補助金がかなり出るのだが、その技術が民間にないそうだ。ところが日本の重電、インフラのプラントメーカーは、戦前に源流がある会社が多く、「いわゆる徴用工」を強制連行したと韓国で政治的に糾弾されているところもある。「喧嘩を売られているのに手伝う必要はない。韓国企業からの要求を門前払いしている」と、前述の技術者は語った。緊張する日韓関係が影響している。

また途上国では、中国・韓国企業とプラント入札で競争する事案が年々増えている。「中国勢、韓国勢は、年々技術力を上げている。そしてどうも、日本企業から流失した技術も使っている」とその技術者は、技術の流失に神経を尖らせていた。こうした動きは当然とも言えよう。

しかしエネルギー産業は技術流失をしやすい、危うい経営環境に陥りつつある。特に電力会社だ。経営が地方の電力会社を中心に、慢性的に厳しい状況になりつつある。地方経済の不振、少子高齢化による需要減、そして電力自由化という複合のためだ。

日本の電気メーカーが2000年前後に業績不振からリストラをしたときに、海外メーカーに技術者が流れ、技術が流失したことがある。同じことがエネルギー産業でも起きかねないだろう。退職した技術者が海外企業に行き、苦境に直面した企業が技術をライバルに売っても、合法であるならば誰も非難できない。

◆対応策は産業そのものを元気にすることだが…

そして電力の中でも、原子力技術の流失が懸念される。原子力の技術者個人や企業を中心に今、いくつかのアプローチが外国の新興原子力企業からあるそうだ。

原子力では、炉そのものの核心部分は、各国の各社が自前技術を使う。しかし、その周辺の建設材料、工法、燃料の配置や運用などでは、1990年代まで原子炉を作り続けた日本の東芝、日立、三菱重工の三大メーカー、その関連会社が多くの知見を持っている。まだ大規模な人や技術の海外流失の話は筆者の耳には聞こえてこない。しかし原子力産業が国内でここまで停滞し、中国を中心に世界各地で原発の建設需要がある以上、自分の力を売りたいという人や企業は当然出てくるだろう。

今後の日本のエネルギー産業・関連産業、原子力産業は、海外事業に力を入れなければならない。国内では、エネルギーのどの分野も大幅な需要増は見込めない。ところが、海外で日本企業は、流失した日本の技術を持つ外国勢と戦う事になるかもしれない。

エネルギー産業の各社は、技術流失の可能性を警戒するべきだろう。特許や管理の厳格化は当然行なっているはずだろうが、それをもう一度見直してほしい。

そして、技術流失を防ぐ最良の方法は、産業そのものを発展させることだ。その技術を自分たちで使い、利益を得て技術をさらに発展させ、技術者が喜び、技術を外に持ち出したり、会社が技術を売ったりする必要のない状況を作り出すことだ。エネルギー産業の将来について国内だけを考えると先行きは厳しいが、技術を守る対応をしないと海外事業でも苦境はさらに厳しくなる。

【記者通信/5月31日】原発政策で自公の温度差鮮明に エネ基見直しに影響か


2030年までに国内の温暖化ガス排出量を13年比46%削減することを打ち出した菅政権。その目標達成の鍵を握る原子力発電の位置づけを巡り、政府・与党内の方針の食い違いが鮮明化している。原発推進に舵を切る自民党に対し、公明党は原発ゼロ社会の実現を堅持。果たして、国のエネルギー基本計画の見直しの中で、両党は妥協点を見いだすことができるのか。

自民「リプレース・新増設を可能に」

自民党の総合エネルギー戦略調査会(額賀福四郎会長)は5月25日にまとめた「第6次エネルギー基本計画策定に向けた提言(案)」の中で、「再生可能エネルギー・原子力など、技術的に確立した脱炭素エネルギーを最大限活用する方向で議論を重ねてきた」とした上で、原子力政策について次のような方向性を提示している。

〈原子力は重要な技術的に確立した脱炭素電源として、2030年における原発比率を維持・強化するとともに、サイクル政策を堅持し、国が前面に立って最終処分場確保に向けた取組を進める等バックエンドを含めた持続的な利用システムの構築に全力で取り組む。安全性が確保された原子力発電所について、防災体制の構築・拡充を図るとともに、立地地域の理解を得ながら最大限活用していく。震災後、原子力発電所の停止期間が長期化している中で、長期停止期間の在り方を含めた長期運転の方策について検討する。また、リプレース・新増設を可能とするために必要な対策を講じることを示す〉

ところが、自民党と連立する公明党はこのほど、原発に依存しない社会の実現を改めて強調する提言をまとめた。具体的には、30年の温暖化ガス46%削減を目指すに当たって、再エネを主力電源に位置づけて技術開発や普及を推進する必要性を打ち出す一方、原発については「依存度を着実に低減しつつ、将来的に原発に依存しない社会・原発ゼロ社会を目指すべきだ」と提起したのだ。

公明「原発の新規着工は認めない」

公明党はかねて、①原発の新規着工は認めない、②建設後40年を経た原発の運転を制限する制度を厳格に適用する、③省エネ・再エネ・高効率火力で原発ゼロの日本をつくる、④原発再稼働は国民が納得・信頼できる確かな安全基準ができるまで許さない――ことをエネルギー政策の方針に掲げている。うち、①と②については、自民党が志向する方向性とベクトルが真逆だ。④については、「原子力規制委員会が策定した新しい規制基準を満たすことを前提に、国民の理解と原発立地地域の住民の理解を得て再稼働するか否かを判断」するとしているものの、「最大限活用」をうたう自民党との温度差は否定できない。

残る9年間で原発25基程度の稼働が実現できるとは思えない

温暖化ガス46%削減のためには、2030年時点のエネルギーミックスにおいて原子力比率20~22%、原発25基程度の再稼働が大前提になる。これが達成できたとしても、再エネ比率を30%台後半まで引き上げなければならないのだ。エネルギー分野の有力学識者は「現実的な原発再稼働は15基程度」と見ているが、その場合は再エネ比率のさらなる向上が必要となり、電力の供給安定性や料金低廉化の要請との両立は不可能に近づく。そもそも46%目標自体に無理があるわけだが、それでも次期エネルギー基本計画では国家としての道筋・戦略を示すことが求められる。

第6次エネ基案を審議する総合資源エネルギー調査会(経産省の諮問機関)基本政策分科会の開催が当初の予定から大幅に遅れている。与党内の調整の難航が影響している可能性は否定できない。

【記者通信/5月28日】CO2係数巡る『神学論争』 省エネ法議論で再燃の兆し


「もはや省エネルギー法ではなく、電化推進法とでも呼ぶべきではないか」

ガス業界関係者がため息交じりでこう語るのは、資源エネルギー庁が進める省エネ法における合理化対象の見直し議論についてだ。既に5月21日の総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問会議)省エネルギー小委員会で、化石エネルギーのみならず太陽光や風力由来の非化石エネルギーを含む全エネルギーを対象とする事務局案が示され、委員らの了承を得ている。基本政策分科会における次期エネルギー基本計画の策定にも反映される見通しだ。

エネ庁側には、2030年の温暖化ガス46%削減、50年のカーボンニュートラルの実現に向け、省エネ法の努力義務達成に非化石エネルギーを活用できるようにし、需要側設備の電化や水素化、購入エネルギーの非化石化などを政策的に促すことで再エネ拡大につなげる狙いがある。供給側の脱炭素化を前提に需要側の最大限の電化を進めるべきとする電力業界はこれを歓迎するが、ガス業界は「非化石エネルギーの合理化と導入促進を一つの法律で進めることに違和感がある」「供給側の非化石化が十分に進まないまま需要側の電化を促進すれば、需要増分を火力で賄うことになりかえってCO2を増大させる」などと懸念を強める。

さらにこれを機に再燃しているのが、省エネ時のCO2排出係数の算定方法を巡る問題だ。新たな枠組みでは再エネ・原子力も合理化対象となるため、エネ庁としてはこれを機に現行の火力電源平均係数から全電源平均係数に変更したい考え。ただこれについては、ガス業界のみならず審議会委員や産業界からも、「足元の省エネと将来の非化石拡大とは時間軸が異なり、評価指標が実態と乖離すれば現場の混乱を招く。慎重かつ十分な議論を望む」(佐々木信也・東京理科大学教授)、「購入電力の再エネ比を高めれば省エネ評価が高くなる仕組みとなれば、高コストの電気を買えない事業者が省エネ低評価を受けることになる」(手塚宏之・日本鉄鋼連盟エネルギー技術委員長)などと慎重論が大勢を占める。「かつての「神学論争」が形を変えて復活してきた」(ガス業界関係者)様相だが、議論の行方は果たして。

【記者通信/5月27日】いまだ相次ぐ再エネ乱開発の実態 大船渡・北杜両市の現地ルポから


2050年カーボンニュートラル宣言、さらに30年温暖化ガス削減目標(NDC)の13年比46%減への大幅引き上げを決めた菅政権は、その実現のため再生可能エネルギー主力化のスピードアップを一丁目一番地に掲げる。しかしFIT(固定価格買い取り制度)により太陽光を中心に急拡大した不適切な発電事業の是正は進んでいるとは言い難い。本誌6月号特集1では再エネトラブルを取り巻く現状や背景にある課題を取り上げたが、そこでは書ききれなかった地域の実情を紹介する。

北杜市民の切実な訴え 悪質事業放置の現実

日照時間日本一を誇る山梨県北杜市小淵沢町では、FIT導入直後、規制が緩かった50kW未満の太陽光導入が一挙に進んだ。市内を車で巡ると、太陽光設備がそこかしこに点在し、導入量の多さがよく分かる。しかしFITでまずは量を追求し、事業の質のチェックは後回しにしてきた結果、電気事業法やFIT法違反の設備が数多く存在する。手口もさまざまで、まるで不適切案件の見本市のような印象。山梨は県土の8割が山林で、木を伐採してパネルを設置するケースが多く、北杜市も同様だ。森林だけでなく、災害危険区域や住宅地など場所を選ばずパネルを設置しており、住民とのトラブルは絶えない。

まず案内してもらったのは、市内に散見される分割案件の一つ。規制逃れのために意図的に50kW未満でFITの認定を受けており、フェンスには多数の標識が掲げられている。パネルの支柱は細い上に高さがあり、強度に不安を覚える。

この太陽光設備は、別荘地のすぐ隣の土地に設置された。別荘地側から見ると、敷地の境界に設けた柵にパネルが触れそうなほど目いっぱい設置されている。「事業者は当初、境界から7m離して設置すると言っていたが、約束は守られなかった」(別荘地の管理者)。本来は南アルプスなど小淵沢ならではの自然の美しさが魅力の別荘地だったはずが、今は真っ先にパネルの背面が目に入るようになってしまった。

分割案件を示す複数の標識が掲げられる。並ぶパネルを支える足の高さが気になる
別荘地の庭の境界間際までパネルが迫る

住宅地のすぐ横に太陽光が設置されると、景観をはじめ、生活を妨害するさまざまな悪影響が発生することがある。斜面の上に立つ家の周りにパネルがぐるりと設置されたケースでは、通風阻害、反射光、パネル下から吹き上げる熱風による室内の気温上昇、ずさんな地盤工事、低・高周波音などに住民が苦しんでいた。さらにこれらの状況から、不動産価値の低下も見込まれるとして、住民は事業者や市に問題を訴えてきたが、改善されないまま放置されてきた。住民らは事業者を相手取り、設備の撤去と損害賠償を求め提訴したものの、第一審となる甲府地裁では原告の請求がいずれも棄却された。例えば、架台の基礎について「電技解釈の求める強度を有するとは認められない」としながらも「強度不足によって一定期間内に破損又は倒壊する可能性が高いとまで直ちにいうことはできず」といった具体だ。原発訴訟では確率が低くともリスクがあるという観点で運転差し止めが多く出されていることに比べ、太陽光では住民が実害を訴えてもそれがすべて退けられてしまうことに驚かされる。今後東京高裁での第二審が始まるが、その行方が注目される。

単管パイプを刺しただけの不適切な施工で、裁判中もパネルは増え続けたそう

市内では分割案件に加え、パワーコンディショナーの定格容量を超えるようにパネルを設置した過積載の事例も多い。とある一画のメガソーラーでは、崖から張り出して金属製の足場が設置されている。よく見るとその上にはパネルが。太陽光設備で初めて見る光景だ。さらに同じ敷地内では法面にまでパネルを敷いていた。事業者名は東京の出版社となっており、パネルが置けるところにどんどん置いていった結果、現在の奇妙な姿になったという。

㊤㊦ 崖から張り出した頑丈な足場の上や、法面までパネルが・・・

さらにほかの場所では、パネルが平らに隙間なくみっちり並んでいる光景に遭遇した。これも常識とはかけ離れた施工例だ。これで内側のパネルのメンテナンスはどうするつもりなのだろうか。

パネルが隙間なく並ぶ異様な光景

こうじた状況を受け、ようやく県が10kW以上の太陽光を対象とした規制条例を来年1月から施行する予定だ。しかしそれまでに未稼働案件の駆け込み工事が続くのではないかと、住民は不安を募らせている。

とある太陽光設備のすぐ近くに木を伐採したエリアが。ここにもパネルが敷かれるのか……

大船渡市で賛否両論のメガソーラー計画 懸念される土砂災害リスク

岩手県大船渡市三陸町・吉浜では、二転三転したメガソーラー計画を巡り、地域住民の間では賛否両論が渦巻いていた。現在の計画地は、市が所有し現在利用されていない牧野で、市も事業のメリットが大きいとして実現に前向きだ。ただ、事業者との契約に関して、市が年度をまたいで日付を遡る不適切な事務処理をしたとして、反対派住民が市長らを刑事告発する異例の事態に発展している。

住民がこの計画に反対する理由は、今の計画地である大窪山が、地域にとって重要な水源であること。養殖や農業が基幹産業の吉浜にとって、水源への影響は看過できない問題だ。そして計画地が真砂土という崩れやすい土質のため、土砂災害リスクが高まるのではないか、といった懸念もある。

現場は牧野らしく一面草原が広がる。事業者は平らなまとまった場所にパネルを設置し、土地の造成をできる限り行わない方針だ。さらに計画地に生存する希少な動植物にとって重要な湿地や沢を保全するという。

ただ、その土質を象徴するように、ところどころ草地が崩れた場所がある。花崗岩が風化した真砂土が、風に削られた結果だ。反対派はこうした土地にパネルを敷くことは環境への影響が大きいのではないか、との疑念を持つ。この計画はメガソーラーが国の環境アセスメントの対象となる前の14年にFITの認定を受けている。事業者は自主的なアセスを実施しているものの、国のアセスとはその範囲も中身も異なる。やはり国の制度の下での評価がないと、反対派の懸念はなかなかぬぐえない。

風で浸食された場所。中の土がむき出しになっている
㊤㊦ かつて放牧時に使われていた水飲み場や柵の跡。柵の根本も崩れている
事業者はこうした沢などの保全を約束している

【お詫びと訂正】エネルギーフォーラム5月号特集2 山中悠輝氏インタビュー記事


エネルギーフォーラム5月号特集2『デジタルデータ革命~ソリューションビジネスの最前線』において、山中悠揮・資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課電力産業・市場室室長補佐のインタビュー記事(54頁掲載)の内容に誤りがありました。正しくはこちらの記事になります。関係者にご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫びし、記事を訂正いたします。

【目安箱/5月6日】気候変動対策を巡る危険と期待


新型コロナウイルス感染症の感染拡大の報道にかき消されているが、米国の主催で気候変動サミットが4月23日までの2日間、ウェブ上で各国首脳を集めて開催された。ここで各国の温室効果ガスの削減目標の公表が行われた。パリ協定に復帰する米国が、温室効果ガス削減目標を2005年比で温室効果ガスの排出量を50-52%削減すると表明。日本も、菅義偉首相が自ら30年度の温室効果ガス削減目標を「13年度から46%削減しさらに50%の高みに向け挑戦を続ける」と宣言した。日本の削減目標は、15年にパリ協定に基づく目標である「30年度に温室効果ガスを13年度比で26%削減する」から大幅に引き上げられた。温室効果ガスの削減は、その対策で経済に負担をもたらす。気候変動が国際政治の場で、欧米発で盛り上がっているが、本当に意味があるのか。そして日本は、損をしないのだろうか。

首相官邸で開かれた第2回気候変動対策推進のための有識者会議の模様(4月19日)

◆数字目標を競い合う主要国

46%減という数字の決定について、小泉進次郎環境相が報道番組で、「(数字が)目の前に浮かんできた」と説明した。小泉氏は奇妙な発言で注目を頻繁に集めるが、今回も「神がかりか」と、多くの人に笑われてしまった。実際には、米国の同調の要請がある中で、菅義偉首相が自らの政治決断で、数値目標を引き上げたようだ。

小泉氏の行動に対する笑い声のうるささによって、深刻な問題が隠れかねない。政治家が気候変動問題での数値目標を、深く考えずに、大きな数字を決めてしまうという問題だ。そしてこの光景は、問題を観察する全てに人に既視感を起こさせる。気候変動問題では、欧米主導で数値目標が国際的な騒動になる。しかし、その騒ぎはいつの間にか沈静化する。日本は1997年の京都議定書の時に、90年比で、2008年から12年に温室効果ガスを6%削減するという実現不可能な大きな数字を決めてしまい、一国だけが律儀に国際的な約束を履行し、負担に苦しむ状態に追い込まれてしまった。今回の気候変動サミットの数値目標でも、同じことが繰り返されかねない懸念がある。

そもそも温室効果ガスを、大量削減することは、日本も他国も不可能だ。日本は13年の最大排出量14.1億tから19年までの6年間で14%減った。13年時点で全停止していた原発が一部稼働した上で、国内経済成長の横ばいなどが影響した。17年決定の「第5次エネルギー基本計画」では、国内の使える原発を全て動かし、稼働停止の目安とされる40年間から原発の稼働が延命されることで「30年26%減」目標はようやく達成可能が可能かもしれないとされた。ところがその後、次々と古い原発の廃炉が決まり、原発再稼働も遅れているため、この達成はほぼ不可能と思われる。

(図)温室効果ガスの削減 (政府資料)

一方で「46%削減」には積算根拠がない。現在は第6次エネルギー基本計画が政府審議会で検討されており、年内の発表を目指している。その前に気候変動サミットが行われるために、精緻な数字の検証もなく、米国に追随せざるを得なかったのだろう。

◆米国に2度「梯子を外された」経験

ところが米国は過去に2度、気候変動を巡る国際協定を突如出ていった経緯がある。日本は「梯子を外された」のだ。1度目は、クリントン政権が決めた97年の京都議定書を、01年に米ブッシュ政権は脱退した。そして、15年にオバマ政権が決めたパリ協定を、17年にトランプ政権は離脱した。いずれも民主党政権の決めた気候変動の協定を、共和党政権が潰した。今回も米国の共和党は気候変動問題で民主党と対立しており、議会の同意が見送られる可能性や、政権交代で米国が約束をなくしてしまう可能性がある。

日本は京都議定書の約束達成のために、海外で温室効果ガスを削減し、排出権を購入して、その削減分を計上した。06年度から12年度まで1660億円の政府支出を行なった。京都議定書体制が崩壊したために、購入量は限られたが、同じような大量の排出権調達で、巨額の政府支出が行われてしまうかもしれない。

米国の行動が典型的だが、気候変動問題は地球環境を守るというきれい事の意味だけではない。各国は自国の利益に固執するし、技術規格や環境外交の分野での国家の主導権争いの面がある。

日本のライバルである中国は、そのことを十分わかっている。米中の対立が続いているが、この気候変動サミットに、習近平国家主席は参加した。そして技術面での共同研究などを訴えながら、温室効果ガスの削減目標は「30年までにピークを迎え、60年までに実質ゼロを実現できるよう努力する」という曖昧なものにしている。このしたたかさは、日本にとっても参考となるだろう。

◆したたかに、バブルを利用せよ

それでは、こうした気候変動を巡る新しい流れに、どのようにビジネスパーソンは対応するのがいいだろうか。

ヒントになる言葉がある。ある金融マンに、日本であまり紹介されていないアメリカの金融市場の相場格言を聞いた。相場が熱狂状態にあるときに言われるものという。彼はその姿勢で、今回の「気候変動バブル」に向き合うそうだ。

「パーティを楽しんでね。しかし、パンチボールと出口の位置は忘れずに」

パンチボールとは酒の容器。「パーティーを楽しまないのは愚かだが、飲み過ぎに注意し、すぐに逃げ出せる準備をするということだ」とこの投資家は言う。

気候変動を巡る政治主導の「バブル」は繰り返されてきた。それに参加せずに孤立し、儲けの機会を見逃すのは愚かしい。しかし酔いすぎたり、逃げ遅れたりするのは危険だ。騒動に参加しながら、自分を見失わず、いつでも逃げ出せる準備をする。したたかな態度を持ちながら、動く必要があるだろう。日本の企業人なら、米国や日本の政府に、「梯子を外される」経験を、再びしたくないはずだ。

この気候変動を巡るバブルは、良い方向に転がり、日本の産業界、特にエネルギー関連産業に利益をもたらす可能性がある。効率的なエネルギー利用を巡るさまざまな技術の発達、製品の販売拡大、国際ルール作りの日本勢の関与につながるかもしれない。こうした動きは温室効果ガスを減らし、世界と人類の役に立つ。EV、発電技術、省エネ、プラント製造など、宝と言える多くの技術や企業を日本の産業界は持ち、国際的に今もリードしている。ビジネスの利益をしっかり確保しながら、地球環境の改善に貢献できたら、企業人としてこんなに喜ばしいことはないだろう。そして最近、元気のない日本経済、エネルギー産業の復活にも役立つはずだ。

問題は、政治と行政だ。パーティへの参加を、一般国民に強要してしまう。小泉進次郎環境相のように、民意におもねる政治家が、問題をおかしな方向に動かしかねない。慎重とされる菅義偉首相でさえ、数値目標を大きくしてしまう誘惑に駆られてしまった。言論界や市民運動など内外の環境派の応援もポピュリズムに流れがちな政治家を支えてしまう。物やサービスの提供という産業界の持つ力を通じ、こうした夢想家を現実に引き戻し、おかしな暴走をさせないようにすることも必要だ。

【特集1/座談会】このまま朽ち果ててしまうのか! 原子力政策の再構築巡り激論


日本の原子力発電の再稼働はなぜ進まないのか。根本的な問題はどこにあるのか。エネルギー政策の現状を憂う有力者3人が、原子力政策の再構築を巡り激論を交わした。

【出席者】品田宏夫/刈羽村村長福島伸享/元衆院議員奈良林 直/東京工業大学特任教授

左から、品田氏、福島氏、奈良林氏

―原子力発電の再稼働を巡る相次ぐ不祥事、出来事の深層をどう見ていますか。3月18日、水戸地方裁判所が防災体制、避難計画の不備を理由に、日本原子力発電東海第二発電所の運転を差し止める判決を出しました。その評価からお聞きしたい。

福島 これに関しては、さまざまな報道がされましたし、原告団の中には、画期的な判決だという評価がありました。しかし判決の要旨をよく読んでみると、安全審査については合理的だと評価しています。問題は東海第二の立地地域の30㎞以内に94万人の人口を抱えていて、それに関する避難計画に不備があることです。

 安全性から言えば、これまで政府が行ってきた規制の不備を突いたものではありません。一方、避難計画は日本原電にはどうすることもできない分野です。自治体が作成するべきところですが、私の地元の水戸市もこれを作るのに苦悶しています。ちょうど30㎞の範囲に入りますが、27万人を避難させる計画を作るのは極めて困難な状況です。これに対し、どの程度の十分な避難計画を作ればいいかという明確な基準を、国は示していない。現行法制度の穴を突いた判決だと考えています。

奈良林 その通りで、今回の判決は、今までの審査に関する部分は原子力規制委員会がしっかりと実施しているとの評価です。深層防護は1層から5層まであり、今回は第5層の原子力防災に関する部分を突かれた。ここは日本原電だけではどうにもなりません。本来は自治体に向けての判決のはずなのです。

 国が策定しているのは災害対策基本法です。もう一つは原子力災害対策特別措置法です。これに対し、茨城県が原子力災害に備えた広域避難計画を策定しています。ただ、水戸市を含め自治体の避難計画はまだ策定されていない。実際の避難訓練については、地元の東海村を除き、ほとんど実施されていません。これは法体系で定められていることを実施していないという意味で、控訴して高等裁判所に進んでも、また否定されるでしょう。もし最高裁判所で否定されたら廃炉です。これは非常に大きな問題です。

【特集1】国家戦略なき原子力の漂流 問われる政権の信念と覚悟


今年に入り、原子力発電の再稼働に待ったを掛ける出来事や不祥事が相次いだ。司法、地域、危機管理、バックエンド……。国家戦略なき原子力に数々の壁が立ちはだかる。

「2050年カーボンニュートラル(CN)を高らかに掲げている国として、国力を維持しながら、低廉で安定的な電力を供給していく。これからのエネルギー政策を考える上で、原子力にしっかりと向き合わなければならないのは厳然たる事実だ」

4月12日に参院議員会館で開かれた「脱炭素社会実現と国力維持・向上のための最新型原子力リプレース推進議員連盟(リプレース議連)」の初会合。顧問に就任した安倍晋三前首相は、約30人の出席者を前に、こうあいさつした。党の実力者である額賀福志郎、甘利明、細田博之の3氏も顧問に名を連ね、会長は稲田朋美氏、幹事長には鈴木淳司氏が就く。そうそうたる顔ぶれだ。

日本の原子力政策の瓦解を引き起こした、東京電力福島第一原発事故から10年。旧民主党政権時代から続く原発依存度の低減政策に別れを告げ、いよいよ脱炭素化を目指して政治主導で原発本格推進に転換か。と思いきや、どうも会合の内容を見てみると、威勢の良いのは掛け声ばかり。リプレース推進のために、直面する数々の難題をどう克服していくかといった具体的な戦略に関する意見や問題提起は、全くと言っていいほどなかったのだ。

「エネルギー基本計画の中に、リプレースの推進を明記することが議連の目的。その機運を議連で盛り上げたい」。会合での稲田会長の発言を聞くにつけ、政府・与党が本来取り組むべき職務との乖離を感じざるを得ない。

「そもそも安倍さん自身、首相時代に原子力政策の正常化を放置してきた張本人。それが今さら何だという気もするが、本気でリプレース推進に取り組むのであれば、大前提となる脱原発政策からの抜本的転換を、国民がきちんと理解できるような形で政治の意思として打ち出す必要がある。事と次第によっては支持率に影響するかもしれない。その覚悟もないまま、基本計画にリプレースを明記するためだけに議連を立ち上げたのであれば何の意味もない。しいて言えば電力業界と行政へのアピールぐらいだろう」(元国会議員)

原発長期停止の異常事態 一歩進んで二歩下がる

原発依存度を可能な限り低減することを盛り込んだ現行エネルギー基本計画を背景に、わが国の原発再稼働はいまだに立ち往生を続けている。3・11来の長い歳月を経て、稼働にこぎつけたのはPWR(加圧水型軽水炉)陣営のわずか9基のみ。現時点で運用可能な原発のうち、残る18基(建設中2基を含む)は全て止まったままだ。

この間、大手電力会社などの原子力事業者は、原発再稼働を実現するための安全強化対策に、人・物・金の経営資源をどれほど注ぎ込んできたことか。原子力規制委員会による新規制基準の適合性審査をクリアするため、膨大な数の調査・対策工事を現在も総力戦で推進中だ。が、あろうことか、規制委側の対応はマンパワーの問題などからいまだ道半ば。一方では司法当局や地元自治体の壁が立ちはだかり、「一歩進んでは二歩下がる」(電力関係者)といった異常な状況が繰り返されている。

原子力の「失われた10年」をよそに、電力業界を取り巻く環境は劇的な変化を遂げてきた。電力広域的運営推進機関の設立、小売り事業の全面自由化、送配電事業の分離、一般電気事業者の廃止、再生可能エネルギーの大量導入、VPP(仮想発電所)などエネルギーデジタル技術の進展、配電ライセンス・アグリゲーターライセンス制の導入、非化石価値取引市場・ベースロード市場・先物市場・容量市場・需給調整市場の創設、石炭火力のフェードアウト――。

決め打ちは、菅政権が昨秋に打ち出した「50年CN」宣言だ。脱炭素化の流れが加速する中、30年の国別の温暖化ガス削減目標(NDC)を巡る議論では、現行の「13年比26%削減」から「同46%削減」へと大幅拡大する方針が決まった。関係者によれば、30年のエネルギーミックス(電源構成)は原子力2割、再エネ4割弱が軸に。つまり目標達成のためには今後9年間で運用可能な原発27基の再稼働が不可欠であり、原発低減などと言ってはいられない情勢が到来したのだ。

政策体系の再構築が不可欠 30年目標は画餅に帰すか

しかし国民目線に立てば、どうか。政官民はこぞって再エネの大量導入を推進しており、そのために再エネ賦課金の形で電気料金が年々上昇を続けている。長期停止している原発に関しては、「国も本気で動かす気はないのだろう」と思っていたところで何ら不思議ではない。いわば、現状は「なし崩し的脱原発」である。

こうした世間の空気を覆し、脱炭素化のため原発本格活用に180度方向転換するのであれば、時代環境の変化に即した政策体系の再構築が求められるのは自明の理だ。単なる掛け声の範疇で済まされるような話ではない。

少なくとも、①水戸地裁判決で提起された日本原子力発電東海第二を巡る広域避難計画の不備、②東京電力柏崎刈羽で発生した核物質防護施設の機能喪失問題、③福井県内3原発の40年延長運転を阻んでいる青森県むつ市での中間貯蔵施設共用化問題―について、国は原発防災・危機管理対策、核燃料サイクル政策などの観点から、責任を持って解決のための政策的道筋を示す必要がある。でないと、原発再稼働に対する司法当局や地元自治体の理解促進は遅々として進まず、30年目標など完全に画餅に帰すことになろう。

原発稼働が正常化される日は来るのか

「次のエネルギー基本計画の改定に向け、政府は将来のエネルギーに原子力をどう位置付け、現段階から政策をどう組み替えていくのかを明示すべきだ。しかし相変わらず数字合わせの状況が続いており、原子力政策に対する不作為もなくならない。その一番の欠陥を突いたのが今回の水戸地裁の判決だ。国は従来の政策体系に穴があることを認め、抜本的な見直しを図ることが求められる。業界の意を受けた政治家がいくらお題目だけ唱えたところで、国民は付いてこないし、何も実現できないだろう」(前出の元国会議員)

脱炭素化が世界的課題に浮上している今こそ、わが国は過去の失策を真摯に反省し、真の原子力立国を目指すことができるのか。政権の信念と覚悟が問われている。

【記者通信/4月23日】政治決断のNDC「13年比46%減」 直前に1%積み増しのドタバタ劇


日本政府は2030年の温暖化ガス削減目標(NDC)を、これまでの13年度比26%減から、46%減へと大幅に引き上げた。目標達成年まで残り9年というタイミングで、約7割増という水準にゴールポストを大きく動かしたのだ。今回の大幅引き上げの内幕は、政治決断の一言に尽きる。

4月22~23日の米国主催の気候サミットに合わせて、経済産業省や環境省などの間では、40%~45%減の間のどこに着地させるかで、調整を重ねてきた。

米国はサミット直前、30年までに05年比50~52%減との新目標を発表。英国も35年に1990年比78%減との目標を発表したばかりだ。一方、EUは既に昨年末に90年比55%減との目標を国連に提出している。気候サミットは、こうした各国目標の「野心」引き上げをアピールする大会だ。日本は昨年10月、50年カーボンニュートラルを宣言したばかりだが、この大会に菅義偉首相が参加する以上、欧米とそん色のない新NDCについても打ち出す必要性に迫られた。

EUの目標は、日本の基準年の13年比で見ると44%減という水準になる。また米国についても、05年比50%減として13年比で換算すると、45%減になる。こうした計算をもとに、日本の新NDCは終盤まで「45%減」で発表される予定だった。

ところが、16日の日米首脳会談が近づくにつれ、各紙面に「40%」、「45%」といった数字が踊るように。官邸はこうした状況を見て、数字がぎりぎりまで伏せられるよう、当初20日に予定されていた政府の地球温暖化対策推進本部を、気候サミット当日の22日に変更した。さらに、対外的に少しでも意欲的な目標と受け止められたいと考えたのか、「菅首相が直前になって1%上乗せを指示したようだ」(エネルギー関係者)。その結果として発表されたのが46%減という数字だ。さらに菅首相は50%減へのチャレンジも視野に入れると、22日の温暖化対策推進本部で高らかに宣言した。

問われる「46%」の実効性 京都議定書の失敗を想起

ただ、前回のNDC策定のアプローチと異なり、対外的に高い目標の発表を優先させた今回のやり方を巡っては、有識者から「エネルギーミックスを議論してからNDCを決めるのが筋なのに、順番が逆」などと疑問の声が噴出している。

この点について、梶山弘志経産相は23日の閣議後会見で、「前回決めたときと今回とは国際情勢も変わってきている」「そうした中で総理の決断で発表されたもの」などと説明。その水準についても、これまでの政策アプローチでは下限から上限(今回は40%~45%)の間の中央値をとるところ、できるだけ上限に近い数値をとり、欧米とそん色のない野心的な目標に設定したと強調した。そしてこれから急ピッチで最終調整に入る新たなエネルギーミックスの非化石電源比率は「当然5割を超える」との認識を示した。

だが、実効性は二の次の高い目標を掲げるだけで意味がない。むしろ、トップダウンで先進国に目標を割り振った挙句に瓦解した京都議定書の失敗が思い起こされる。

今回の気候サミットで、中国は「30年までに排出量をピークアウトし、60年までに実質ゼロ」という従来の目標を繰り返すにとどめた。先進国の行く先を冷静に見極めようという中国の姿勢はしたたかだ。温暖化ガス大幅削減は重要だし、日本のエネルギー企業や多消費産業はカーボンニュートラルにチャレンジする意向を示しているが、鍵を握る再生可能エネルギーの大量導入や石炭火力のフェードアウトなどを巡っては、電力需給安定化や電力コストの面で課題が山積み。今回の政治決断が日本の国力を削ぐことにつながるのではないかと懸念してやまない。

【記者通信/4月22日】処理水海洋放出で質問状攻勢 孤軍奮闘の自民党議員


福島第一原発から発生する処理水の海洋放出問題を巡り、自民党内でかねて放出反対の立場を取ってきた山本拓衆院議員(党政務調査会・総合エネルギー戦略調査会会長代理)が孤軍奮闘の状態だ。政府が処理水の海洋放出を決定したことを受け、山本議員は菅義偉首相に対し国民への説明責任を果たすよう求めるお願い文を公表するとともに、原子力規制委員会・原子力規制庁や政府審議会の責任者にも相次いで公開質問状を提出していたことが分かった。

山本議員の見解によると、東京電力ではALPS処理水タンク内の水を試験的に二次処理したところ、トリチウム以外にもヨウ素129、セシウム135、セシウム137など12核種が完全に除去できていなかったとのデータを公表している。うち11核種は通常の原発排水には含まれないため、「ALPS処理水は通常の原発排水とは全く異なる」というわけだ。

これを踏まえ、まず菅首相に対しては、①なぜ、国民生活リスク拡大中の2021年4月13日に、福島第一原発の事故処理水の海洋放出を政治判断したのか、②この政治判断は、東電の小早川智明社長が「デブリ(溶解ウラン)に雨水等が接触することを止めるのは、東電では無理」と報告を受けたためとされている。小早川社長に騙されているのではないか、③菅首相は騙されていると全国の専門家からの指摘がある中、(海洋放出が)正しいと判断したことについて、正直かつ丁寧かつ分かりやすく、自ら国民に対し説明責任を果たしてほしい――との要望を行っている。

山本議員から説明責任を果たすよう求められた菅首相

一方、原子力規制員会・原子力規制庁に対する質問状では、①福島第一原発敷地内にある内容不明コンテナ約4000基について、経産省の担当者は、その一部で高線量が検出され、雨水等によって高濃度の汚染水となって漏れ出しているとしている。周辺のモニタリングの把握状況などを説明してほしい、②セシウム吸着装置で除去した高濃度の放射性廃棄物について、把握しているか。その場合、どの程度の濃度・量が保管されているか、周辺モニタリングの監視体制を示してほしい、③ALPSの除去対象を62核種としている根拠は何か、④ALPS除去対象核種は62種であり、汚染水にはそれ以外にトリチウムと炭素14が含まれているが、燃料デブリ(溶解ウラン)に水が触れることで発生する汚染水に含まれる放射性物質はそれら64核種以外にないと国民に対し断言できるか――など計7項目を盛り込んだ。

また21日には、政府の「多核種除去設備等取扱いに関する小委員会(ALPS小委)」の委員長を務める山本一良・名古屋学芸大学副学長に対しても公開質問状を提示。「IAEA(国際原子力機関)に提出した日本の報告書は、山本一良委員長に一任され、取りまとめられたもの」だとした上で、次のような説明を求めている。「山本委員会(ALPS小委)でも漁業関係者などに配慮して、複数の委員から『半減期を待つとかほかの方法、もう一個別の方法はないのか』などの発言があったが、なぜステークホルダーが大反対する海洋放出に向けた最終報告書を取りまとめたのか。菅総理は海洋放出の決定にあたって山本委員長の報告書を理由に挙げているので、直接、国民の疑問に答えていただけるようお願いしたい」

原発推進派でありながら、処理水問題に対する山本議員の追及ぶりは、「はたから見ていて異常なほど」(大手電力関係者)。さかのぼること昨年9月から、東電公表データをもとに処理水海洋放出の問題点を繰り返し指摘し、小早川社長ら関係先にも再三にわたって公開質問状を送っている。しかし、マスコミが大きく取り上げることはなく、党内でも表向きスルーされているのが現状だ。二次処理水が通常の原発排水とは異なるという指摘は、海洋放出決定に影響を与えるほど大きな問題なのか否か。

山本議員の主張に対しては、国会議員の一部から反論の声も上がっている。例えば、日本維新の会の音喜多駿・参院議員は自身のウェブサイトで、①福島原発の処理水においてトリチウム以外の核種は基準値以下まで十分に除去されている、②世界の「再処理施設」からは福島処理水と同様のものがすでに海洋放出されている――として、山本論の不正確な点と福島処理水の安全性を強調している。

事実関係の追求はもちろん重要だが、漁業関係者が最も懸念する風評被害を増長させるような事態だけは絶対に避けなければならない。東電が対外的に説明している、海洋モニタリングの強化や正確な情報発信の徹底が求められる。

【目安箱/4月19日】処理水問題で見えた原子力世論の変化 正体は「枯れ尾花」か


ようやく東京電力の福島第1原発の処理水の問題が、解決に向かう。政府は、4月13日に処理水について2年後をめどに、薄めて海洋に放出する方針を表明した。(菅義偉首相記者会見)

◆問題先送りの原因は、安倍前首相か?

福島原発を視察した人は、敷地内の処理水の保管タンクの多さに呆れるだろう。一基数億円(東電は公表していないが)とされる巨大タンクが数百も乱立し、敷地を埋め尽くしている。二次処理まで行った水からは放射性物質が概ね取り除かれ、人体に有害性はないとされるトリチウムが主に残るのみだ。

この処理水を海に流すことが合理的な解決策である。どの国の原子力発電所でも、トリチウムを含んだ水を海洋放出している。トリチウムは水と分離できない。ところが福島第一ではトリチウムへの懸念や、風評被害を理由に問題の解決が先送りされてきた。

民主党の衆議院議員で、首相補佐官や環境大臣として福島復興や事故対策に関わった細野豪志衆議院議員が「東電福島原発事故 自己調査報告」(徳間書店)という政策提言をまとめている。その本で田中俊一前原子力規制委員会委員長との対談がある。ここで処理水の問題をめぐる重要な情報がある。

田中氏によると、原子力規制委員会は2014年ごろに経済産業省に、処理水の処分方法は海洋放出しかないと申し入れた。そして当時の経産大臣は田中氏に「私がやる」と約束、明言し、関係者の説得も進んでいると説明したという。13年から15年まで、経産大臣は5人いるが、それが誰かを田中氏は記していない。

経産大臣の上に指示命令のできる人は安倍晋三前首相しかいない。経産省が海洋放出を進める方針だったのにできなかったのは、安倍首相の意向が強く働き政策を止めたということになる。当時から、安倍首相は原子力をめぐる諸問題を先送りしていると批判されてきた。解決の機会があったのに、先送りをもたらしたなら、安倍氏の責任は大きい。このことについて安倍氏は説明すべきであろう。

◆政治家は問題を先送りした

安倍氏だけではない。研究者出身の田中氏は、この対談で、旧民主党、自民党の政治家・行政官の無責任体質や逃亡を批判し、「犯罪的」という強い言葉さえ使っている。福島事故の後に、食品衛生基準の放射線の過重な規制、福島の除染目標を1ミリシーベルトと低い数値にしたこと、福島原発の事故対策、原子力規制などで、田中氏は問題の見直しを政治家に訴えた。ところが政治家は解決のための決断を避け、先送りを繰り返した。それに福島の復興の遅れ、風評被害のまん延、対策費用の増加が起きたと、田中氏は主張する。

田中俊一氏と原子力規制委員会は、過重な規制を原子力事業者に与え混乱を引き起こしており、同氏の主張はおかしい点もある。しかし妥当なところもある。政治の不作為が問題を悪化させたという点だ。細野議員も、その批判を「難しかった」と、重く受け止めていた。

民主主義国家において、政治家だけで物事は決められない。政治家の行動は有権者の意思に左右される。政治家・行政の不作為も、民意が反映していた。14年時点では、確かに原子力に対する批判は大きかったように見えた。安倍氏が仮に問題の解決を先送りしたのならば、その批判を乗り越えられないと思ったためだろう。

【イニシャルニュース】再エネ団体Sに試練 体制を大幅縮小か ほか


1.地域新電力設立を妨害か 延岡市長が九電に抗議

地域新電力の設立を計画する宮崎県延岡市が、業界関係者の間で注目を集めている。九州電力が延岡市の取り組みを妨害するなどしたとして、読谷山洋司市長が九電に抗議を行うとともに、経産省などに対し九電の行為に関する調査を求めているためだ。

市長名の文書によると、九電は地元経済団体などに対し、「(新電力の)容量拠出金の負担が多額になるので赤字になる」と説明して回っていると指摘。新電力設立を阻止する意図だと推測しながら、「電力システム改革の大きな柱である小売り全面自由化を妨害する行為であり、かつ地方自治を侵害する行為」と痛烈に批判している。

事実とすれば、確かに問題になりそうだが、九電側は団体などから問い合わせがあり説明したこと自体は認めながらも、妨害の意図については真っ向から否定。また延岡市議のK氏(自民党)は、公約に掲げた新電力設立に前のめりな読谷山市長の姿勢に、「懸念があるのに、あいまいにしている」「疑心暗鬼」などと疑問を投げている。

延岡市では数年前から、九電が大阪ガスなど複数の都市ガス会社と共同で、旭化成が保有する石炭火力(3万4千kW)をLNG火力に設備更新する計画を推進。近隣にはLNG内航船の受け入れ基地も建設中だ。

「地域密着を標ぼうする大手電力会社にとっては、地域の自治体とは極力もめ事を起こさない方がいい。『金持ちけんかせず』で、地域新電力を応援するぐらいの気構えが必要だ。それは九電も十分理解しているはず」。大手エネルギー会社の幹部からは、こんな声も。経産省がこの件の調査に乗り出しているが、真相は果たして。

2.相次ぐ事実誤認報道 問われるS誌のモラル

全国的な需給ひっ迫による大停電をどうにか回避した1月の電力危機。電力会社のみならず、日ごろは熾烈な顧客争奪戦を繰り広げる都市ガス会社も、発電燃料のLNGを融通するなど一丸となってこの難局を乗り切った。

ところが、それに水を差すような記事が雑誌「S」の3月号に掲載され、エネルギー業界関係者の批判を招いている。問題となったのは、東京ガスを批判するミニニュースだ。電力不足の緊迫した最中に東ガスが電力販売のキャンペーンを展開していたことをやり玉に挙げるとともに、同社が東京電力よりも関西電力へのLNG融通を優先したことを報じている。

S紙の記事に関係者は怒り心頭

前者はともかく、後者に関しては「LNG融通で東ガスが東電より関電を優先した事実はない。ガセネタだろう」(大手エネルギー会社関係者)。発電燃料をかき集めていた当時の関電は、タンカーに残存するLNGも買い取っていたのだが、たまたまそれが東ガスの基地に荷揚げした後のトレーダーの船だったことがあった。S誌はそれを東ガスからの融通だと誤認し記事にしたとみられる。

かねて東ガスに批判的なS誌だが、同号に怒り心頭なのは東ガス関係者だけではない。これとは別の「卸電力取引所狂乱相場の全内幕」と題した記事の中で「停電危機でぼろもうけした輩たち」と名指しされた新電力の関係者だ。

記事によると、イーレックスなど新電力3社が、東電から卸供給を受けた電気を日本卸電力取引所に転売して大儲けしていたという。だが、取り沙汰された新電力関係者の一人は「そもそも今回の市場高騰では大儲けどころか赤字。明らかに事実誤認だ。迷惑極まりない」と憤る。

事実関係の裏取りをしないまま記事にしてしまう、S誌のモラルこそ問われている。

3.三村知事が国政進出? 共同利用案に影響も

核燃料サイクル施設が集中立地することから、電力業界にとって最重要地である青森県。業界が頭を抱える使用済み燃料中間貯蔵問題も絡んで、その青森県の政界動向を関係者が注目している。

三村申吾知事は2019年の知事選で5選を果たしたが、「さすがに6選には出ず、国政への復帰を目指すはずだ」(業界関係者)とみられる。県政に詳しい関係者が有力と考えているのが、来年知事を辞職し、夏の参議院選に出馬することだ。

「青森選挙区で改選するのは一人。来年改選するのは立憲民主党議員だが、その次になると自民党議員になる。知事選で自民・公明党の推薦を受けている三村知事が出るのなら、対抗馬が立民党になる来年だろう」(業界関係者)

中間貯蔵施設の共同利用案に影響も

関係者の関心は、誰が三村氏の後継知事になるかに向けられている。下馬評に上がっているのは、A市のO市長とM市のM市長。どちらも中央省庁の元キャリア官僚だが、「今のところO市長が有力視されている」(同)。

中間貯蔵施設の共同利用案に反発するM市長には、「とりあえず市長の職から離れてほしい」と考える関係者がいる。だが知事就任は難しく、衆院の3選挙区は自民党現職が占め、国政に送り出したくても「空席」なし。当分、業界はМ市長に向き合わざるを得ないもようだ。

4.再エネ団体Sに試練 体制を大幅縮小か

再エネ導入拡大をけん引してきた団体Sが、規模縮小の危機にさらされているといううわさが浮上している。

Sは東日本大震災を契機に、再エネ拡大と脱原発を目指して活発なロビー活動を展開。役員には設立者の実業家S氏を筆頭に、国内外の著名人が名を連ねる。団体は収益の大部分を寄付金に依存し、S氏も多額を寄付していると言われている。が、関係筋によれば、ここにきてS氏が団体とは一線を画す動きを見せているというのだ。

団体幹部に次年度以降のS氏の動向について問うと、「会長を辞めるような話は聞いていない。来年度以降も変わらず会長職を務める」と断言する。だが、ある再エネ業界関係者は「S氏は会長はやめないものの、いわゆる手切れ金の額まで提示したそうで団体関係者は大慌て。オフィスの移転を検討し始めたと聞いている」と打ち明ける。

最近のS氏は、自社グループの再エネ事業に対しても関心を失いつつあるとの話もある。震災から10年という節目で、いろいろ思うところがあったのだろうか。

5.安売り回避で協調? SS業者のメールリスト

新型コロナウイルスのまん延による価格下落から1年近くが経過し、原油先物市場の価格はコロナ禍以前の水準に戻りつつある。それに比例してガソリンスタンド(SS)の販売価格も3月8日の全国平均価格が146・1円となるなど上昇を続けている。

そもそも、WTI原油先物市場価格は昨年の夏から冬に掛けて40ドル台という低価格で推移していた。にもかかわらず、過去の原油安の時期と比べて割安感に乏しかったことから、「元売り再編で価格競争がひと段落し、安値攻勢を仕掛けていた業転問題もほぼ解消された。むしろ業界内ではここぞとばかりに、安売り回避で協調する動きが起きているのでは」と、談合疑惑の声が上がっている。

WTIが40~50ドル台で推移した16~17年当時、国内のガソリン価格は110円台という安値が続いた。対して昨年は5月から12月のWTIが30~50ドル台を付けていたものの、同時期のガソリン価格は最も安い時でも124・8円(5月11日集計分)にとどまっている。元売り2+1強体制の効果が表れているのは、明らかだ。

さらに、SS事情に詳しい関係者X氏はこんな内情を打ち明ける。「業界には『この地域のレギュラーガソリンは〇円』という情報を共有するメールリストがある。事業者はその情報を基に、阿吽の呼吸で価格を決めている」

実際、長距離ドライブの経験があるドライバーなら、地域ごとにSSの掲げる価格水準が異なることに気付いた人もいるだろう。「S県K市では軽油1ℓ116円だったのが、T県M市に移動すると同120円に相場が上がった。メールの話を聞いたら納得」(運送関係者)

全国的にSS数は激減していることから、「業者にしても、消耗戦は避けたいという事情がある」(X氏)。だが利用者にとっては、果たしてどうか。某離島では、地元住民と観光客で価格差を付けていたことを考えると、まだましかもしれないが。