【時流潮流】コーンベルトの激震 なぜ中東・ロシアの戦争が「米中間選挙」を揺るがすのか

米中間選挙の投票日まであと1カ月。その中で、ガソリンやディーゼル油などの燃料価格の高騰が大きな争点に浮上している。農家からは、米国産ディーゼル油(軽油)の輸出を止め、国内に回すべきとの声が高まる一方、石油業界の反対の声も強まっており、トランプ政権は対応に追われている。

米ワシントンの連邦議会。中間選挙まであと1カ月あまりだ=筆者撮影

「高い燃料価格が農家の収入を破壊している」。米国屈指の農業州である中西部アイオワ州選出のグラスリー上院議員(共和)は、米議会の演説で軽油価格の高騰問題を取り上げ、米国産軽油の禁輸措置をとるよう政府に強く求めた。

中部ミシガン州の共和党上院議員候補のロジャース氏も、「米国のエネルギーは、まずは米国人の救済に使うべきだ」と訴える。

とうもろこしや大豆が収穫期を迎える中、米国の軽油価格は9月22日には史上最高値となる1ガロン(約3.8ℓ)=6.5ドル台をつけた。イラン戦争開戦前と比べれば7割近い値上がりとなる。収穫に使うコンバインは、毎日ドラム缶5本以上に相当する300ガロンもの軽油をがぶ飲みする。燃料費の高騰は、農家の収益を激しく圧迫している。

とうもろこしの生産が盛んな「コーンベルト」と呼ばれる中西部や中部の諸州や、南部は伝統的に共和党が強い「レッドステート(赤い州)」と呼ばれる地域だ。アイオワ州は18年間も連続で共和党が上院の議席を独占し、今回も「無風」選挙のはずだった。だが、軽油価格の高騰を機に、選挙戦は予想外の「接戦」に転じつつある。

軽油価格の高騰は、イラン戦争とウクライナでの戦争に原因がある。ホルムズ海峡などの通航量が限られている上、中東各国の製油所も被災したことで、世界市場でシェア15%を占めていた中東産軽油の供給量が大幅減となっている。

さらに、ウクライナが今春以降に始めた長距離ドローンによるロシアの製油所攻撃も影を落とす。ロシアの精製能力は3割以上低下し、ロシア政府は国内需要の手当てに追われた。7月からは軽油の禁輸措置を続けている。ロシアは米国に次ぐ世界2位の軽油輸出国だ。そのロシアと、3位の中東諸国産の軽油が輸出市場から消えたことで一気に品薄となり、価格高騰を招いた。

トランプ大統領は対応に追われた。一般的に大統領選で勝利した政党は、2年後の中間選挙で敗北する傾向にある。切り札として浮上しつつあるのが米国産軽油の禁輸措置で、トランプ氏は27日に「非常に真剣に」検討していると発言するなど、前のめりの姿勢を示す。

だが、トランプ政権内にも「禁輸は逆効果だ」との主張が根強くある。エネルギー省のライト長官や、内務省のバーガム長官らがその代表格だ。当然、石油業界も反対の声を上げている。

世界の輸出市場の約2割を占める米国産軽油が国内にとどまれば、供給が増え価格が下がると予想される。だが、ライト長官らは「全面的な禁輸は考えてない」と強調する。

理由はこうだ。禁輸措置を取れば一時的に国内価格は下がるかもしれない。だが、数週間もすれば貯蔵タンクは行き場を失った軽油で満杯になる。そうなれば、製油所は原油の処理量を減らさざるを得なくなる。軽油だけでなくガソリンやジェット燃料の価格も一斉に暴騰する最悪の事態を招く。

政権としては有権者の不満解消に努めなければならないが、米国産の軽油に頼るフランスのマクロン大統領からは「世界経済と米国経済の双方に壊滅的な打撃を与える」との反発する声も出ている。妥協策として、全面的な禁輸ではなく、欧州向け輸出などを除外した部分的な禁輸や、農家向けに低価格の軽油を割り当てる手法など、現実的な代替案の検討が水面化で続いている。

【書評】福島事故後の原子力規制見直しに携わった官僚が描いた、事実に基づく私小説

『小説 原子力規制の舞台裏』(東方義博・著)エネルギーフォーラム刊 2750円(本体
+税)

規制当局の動きの内幕がわかる

原子力規制に関わった経済産業省出身の工学博士とされる匿名作家が書いた本だ。東京電力の福島第一事故の後で、現在の原子力規制制度をめぐる法案作りにも政府の外から参加したという。

小説の形式で登場人物と会社・組織名は隠して記述しているが、現実の出来事と重なる。原子力・エネルギー政策を見てきた人は「あの時、経産省や原子力規制当局の内部の人々はこんな考えを持ち、こんな動きをしていたのか」という新しい発見があるだろう。

現在の日本の原子力規制制度は、福島事故の後で、米国のNRC(原子力規制委員会)の制度を形の上では模倣している。しかしNRCの規制の長所である、事業者との対話、合理性と経済性の追及を取り入れているようには思えない。対話不足、独善、審査の遅れが批判されている。

日本政府はこの事故直後に新規制制度を拙速に作った。当時の民主党政権と政府は継続性の強い案を作ったが、NRCの仕組みを取り入れようと提案する当時の野党の自民党案をある程度飲み、中途半端な形になった。今に続く原子力規制の混乱は、それが影響していると思える。このことは、著者も残念がっている。

2011年当時、規制制度づくりの当時の国会審議を聞いて、筆者は自民党側が異様にNRCに詳しかったことを驚いた。誰がアドバイスをしているのか不思議に思い調べたが、表向きは高村正彦氏、塩崎恭久氏の2人の衆議院議員(現在は引退)が東大の学者チームの協力で作ったとされていた。その協力者の中に、NRCに勤務経験のあるこの本の作者も深く関わっていたようだ。

無責任、楽観視、企業や官僚機構の本音

この小説には、組織外から見えない原子力関係者の本音が見える場面がある。主人公は福島事故の一報を受けて事故処理に協力するために、出向していた大学から役所に戻ろうとする。すると、一緒に出向していた官僚が言う。「役所なんかにいたら責任を取らされるぞ。賢い役人はそんなことはしない。事が起こった時は、通り過ぎるまでじっと潜んでいるのが身のためだ」。

チェルノブイリ事故を研究した主人公がベント設備の充実を業界に提案しようとする。これは事故が起きた時に、原子炉が制御できず格納容器に過度な圧力が加わった時に、その容器破損を避けるため部分的に炉を開けて圧力を開放する装置だ。福島事故ではその装置があったものの適切に動かず、2号機の格納容器と炉の破損が起き、放射能が漏れた。すると当時、電力会社の担当者は「我が国では、チェルノブイリのような過酷事故が起きるとは考えられませんから、ベント系整備の必要はありません」と返事をした。

福島で起きたような原子力発電所での全電源の喪失、津波による旧型炉での重要機器の破損の危険性も事前に規制当局内で警告され、シビアアクシデント対策の法制化は検討されていた。しかし、責任逃れ、そして楽観的見通しという、官僚機構のいつも現れる弊害に阻まれたようだ。

危険は認識されていたのに、なぜ事故を止められなかったのか。本当に残念だ。この本でも深掘りが欲しいが、作者は「無念」と繰り返している。

適切な規制、原子力政策に何が必要か

日本の原子力規制は、福島事故を起こす形で失敗した。そして、その後に立ち上がった原子力規制委員会・規制庁の体制も問題を抱える。審査の遅れ、国民や事業者との対話のなさ、説明不足、規制の合理性を検証しないなどだ。

規制を適切に機能させるための解決法として、主人公つまりこの作者は、米国式の原子力規制の手法と思想の導入を官僚時代から試みたという。確率論を取り入れ危険な部分を重点的に対応する規制、対話を通じて「規制者と被規制者が、相互に信頼しあった上で、規制者は被規制者を信頼するが確認する」(本書より)という姿勢だ。

しかし政策転換を主張したことで、規制当局の中でメインストリームから外れていったようだ。なぜ、それが形にならなかったのか。作者の反省に物足りなさも抱くが、組織の中での戦いは大変であっただろうと推察する。

できれば小説という形ではなく、しっかりした論考を残して欲しいが、それができない事情と判断があったのだろう。

この本を読むには原子力問題や過去の経緯にについて、ある程度の知識が必要だ。しかし、その知識を持つ人には、読めば、原子力政策のこれまで、そしてこれからの問題点が見えてくる。関係者にはぜひ一読を勧めたい。原子力規制の実態を知り、そこからの問題点を直視した自由な議論が、原子力規制、その先にある国民のエネルギー利用の姿を、より良いものにしていく。

【ニュースの周辺】イオンモール熊本爆発事故に見る企業の広報対応 

7月28日夕方、熊本地震発生後にイオンモール熊本(熊本県嘉島町)で爆発事故が起きた。

産経新聞8月27日は、「被災施設の安全確認のあり方に課題を突き付けた」として、事故に至る経緯をイオンのマニュアルの存在と適用という観点から整理する。

地震発生直後、従業員が店外への避難誘導を開始し、約30分後には来店客、従業員計約4500人の避難が完了した。産経新聞は、この「マニュアルに沿った」速やかな避難完了を防災専門家が高く評価することを紹介する。

しかし、一部の専門店従業員が貴重品回収などのため再入館を要望する「マニュアルでは想定しない動き」が出てきた。

そして、「マニュアルに反して」イオン側が現場サイドの判断で施設の安全確認前に再入館を認めたことが死亡事故につながった。

本稿は、この事案を企業の広報対応という視点で見ていきたい。

Ⅰ.爆発事故翌日のイオン社長記者会見

事故の翌日(7月29日)夕方、イオンとイオンモールの社長が熊本で記者会見した。

大きな事故・災害の場合、当初の混乱する状況から一日経ってのトップによる会見は遅いわけではなく、また筆者が見たところでは、約一時間半、記者からの多くの重なる質問にも我慢強く対応していたといえる。

会見のポイントは専門店従業員からの再入館要望に対するイオン側の対応であった。 

「なぜ従業員が入ってしまったのか。誰かが許可したとかはあるのか?」との質問にイオン社長は、「避難誘導したマネジャーと現地で話をした。(誰かが)館内に戻ったとの認識は当時なく、手分けして戻らないよう叫んで回ったが、と涙ながらに言っていた」と説明した。

「確認です。「中に入ってよい」などの許可やアナウンスはなかった?」との再びの問いには「そういったことは一切ない。明確に否定しておく」と断言した。

≪参考≫2026年7月29日(爆発事故の翌日) イオン 吉田昭夫社長 記者会見(抜粋)

Q:こうした大きな地震があった時など、災害時のLPガス関連設備のリスクについては、どの程度想定があったのか。

A:基本的にショッピングセンターはすべてガスを使います。都市ガスが使えるところは都市ガスを供給いたします。飲食店、もしくは館内空調も含めてガス設備を使っており、熊本はLPGを使っていたということです。

専門業者の方で施工して、基準をきちっとクリアした状態で設置されているもの、と我々は認識して使用してきております。

熊本については、2005年に開店をしておりますので、その時から使っております。

Q:災害の時に外に出た方は中に入らないルールだった一方、説明では鍵とか荷物を取りに行った可能性もあるとのことだった。誰かが許可したとかはあるのか。

A:今日、私現地に入りまして、避難誘導をしていたマネジャーと直接話をしてまいりました。

(当時)現地はかなりパニックになっていて、その中で(再入館を)止めたりといった行動ができるかはなかなか難しかったと言っていました。中に人が戻ったとの認識はその時点ではできなかった、とのことでした。

<別の質疑の中で>

(従業員で)手分けして戻らないよう叫びながら回ったが、とマネジャーは涙ながらに言っておりました。

Q:確認です。「中に入ってよい」など許可やアナウンスはなかった?

A:そういったことは一切ございません。明確に否定しておきます。

Q:(この時点で死亡・安否不明の)7名以外に(避難後に施設に)戻って、(再び)出てきたという人はいないのか。

A:そこまでの情報は取れていない。基本的には避難したら戻らないということ。(ただ、)入り口が多くあるので、すべての入り口でブロックできていたかと言えば、言い切れない。(引用終わり)

再度の整理になるが、イオン社長は、現場の避難誘導のマネジャーに会って話を聞いたとしたうえで、許可やアナウンスは「一切ない。明確に否定しておく」とはっきりした口調で答えたことになる。

上記の記者会見でのイオン社長の発言に対して、メディアは専門店に取材し、

Ⅱ.イオン側の再入館許可があったとの専門店の証言を取るメディア

「イオン側から再入館の許可を得た」とする証言を取っていった。

◎毎日新聞 2026年8月8日(抜粋)

「イオン側 避難内規抵触か」「安全確認前「入館可」証言」

―――イオンの災害マニュアルに規定された「警察や消防などによる安全確認」が完了する前に、テナント従業員が施設内に戻っていたことが関係者への取材で判明した。

毎日新聞の取材では、再入館する際にイオン関係者らに許可を得たとする証言が複数あり、イオン側が社内規定に違反していた疑いがある。

―――イオン側は、災害マニュアルに基づき、警察に地震発生約13分後に通報した上で、その約20分後までに利用客と従業員の避難を完了。施設の安全確認を終えていなかったため、責任者が施設への立ち入りを認める正式なアナウンスは出していなかった。

ところが、衣料品店の店舗責任者は「顔なじみのイオン関係者2人から「貴重品や車の鍵などを持っている方は店舗に取りに帰ってすぐに避難してください」と言われ、店長らが店内に戻った」と証言した。

2階テナントの男性従業員も「一緒に数十人くらい中に入った。再び外に出た後に爆発した」と説明した。

―――イオンの広報担当者は「戻ってもよいという指示も含めて現時点で断定できない。安全確認の詳細については答えられない」とした。

【時流潮流】グーグルがいま大金を出して「地熱」を爆買いする理由

「忘れられたエネルギー」とも呼ばれる地熱発電が、最近、俄かに注目を浴び始めている。人工知能(AI)のデータセンター向けの電力需要に加え、新技術の導入で開発リスクや費用が大幅に削減できそうな情勢が普及を後押ししている。

ファーボエナジーが取り組む次世代型地熱発電所=同社のウェブサイトから

メガテック企業の一角を占めるグーグルは9月1日、米国の地熱発電会社「ファーボエナジー」から396MWの電力を購入する大型契約を結んだ。米国の地熱発電ブームを牽引する出来事となりそうだ。

ファーボ社は17年に米南部テキサス州で設立されたスタートアップ企業。米西部ユタ州で世界最大級の「ケープステーション」地熱発電所を建設中で、28年からグーグルのAI用のデータセンター向けに電力を供給する。グーグルはさらに600MWを買い増すオプション契約も結ぶ。日本の三菱重工も同社に出資、タービンを供給する。

ファーボ社が手がける地熱発電所は、次世代型のEGSと呼ばれる。従来の地熱発電所は、地下数百メートルにある熱水貯留層から蒸気を汲み出し発電する。ただ、投資額に見合う熱水貯留層があるかどうかは「掘ってみないとわからない」ため、リスクが高いビジネスであると敬遠されてきた。

EGSは、米国で盛んなシェールオイルやガスなどが使う水圧破砕法(フラッキング)や水平掘削技術、分散型光ファイバーセンシングを使う。高温の岩盤はあるが「水分(熱水貯留層)がない場所」でも、地上から高圧水を送り込み岩盤を破砕し、人工的に熱水貯留層を創り出す魔法の技術と言える。火山地帯限定だった地熱発電の「適地」は、この技術により全世界に広がる。「シェール革命」と同様に画期的な技術革新と言える。

EGSの登場で、世界は地熱ブームに沸き始めた。国際エネルギー機関(IEA)によると、地熱発電への投資額は25年には前年比8割増の22億㌦を記録した。18年の投資額(2200万㌦)に比べると100倍となる。

IEAは、現時点では世界のエネルギー供給の1%未満にすぎない地熱発電が2050年には15%にまで達すると予想をたてている。米国のエネルギー情報局(EIA)も、現在は2.7GWにすぎない米国の地熱発電容量が50年には最大150GWへと爆発的に増えると予想している。

日本でも地熱発電ブーム到来か

世界的な火山国である日本は、米国、インドネシアに次ぐ世界第3位の地熱資源大国だ。だが実態は、大分県、秋田県、岩手県を中心とする東北地方で稼働を続けるものの、発電容量の0.3%にとどまっており、資源を活用できていない。熱水貯留層は温泉地帯にあり、温泉業を営む人たちとの権利調整や、国立公園内にあるため許認可に時間がかかることがネックになってきた。

だが、EGSという新技術が確立されれば、環境が劇的に変わる可能性もある。政府は25年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画では、40年度までに発電容量を現在の4〜8倍に拡大させる案を示すなど、後押しする構えを示す。

地熱発電は地球温暖化ガスを発電時には一切排出しない再生可能エネルギー。さらに、昼夜を問わず1日24時間、季節と関係なく年365日稼働する。日中しか使えない太陽光、風が吹かなければ発電できない風力にはない特性があり、ベースロード電源になりうるとの期待が高まっている。

【記者通信】環境相に笹川博義氏 環境行政に精通するその手腕に注目

9月17日に第2次高市改造内閣が発足し、環境相には初入閣となる笹川博義氏が就いた。これまでに農林水産副大臣や環境副大臣などを歴任。地球温暖化対策や鳥獣害対策など環境行政に精通しているとの評判だ。また、原子力防災担当相に加え、新設されたクマ被害対策担当相も務める。18日の就任会見では、GX政策や地球温暖化対策、福島県内の除去土壌の県外最終処分に向けた再生利用の取り組みなど、環境行政への意気込みを語った。

就任会見に臨む笹川環境相

エネルギー・GX関連では、高市早苗首相指示の下、政府が8月末にエネルギー需給強靭化の政策パッケージ「パワーGX」を策定。年末に向け具体化戦略をまとめる予定だ。

パワーGXに関して笹川環境相は、「新しいインフラ整備につながる技術を進めていくことはGXに資する」と強調し、ペロブスカイト太陽電池など再生可能エネルギー関連技術の実装に意欲を見せた。また、それを進めていく上では国民の理解が欠かせないと指摘。「広報や啓蒙活動は地味なようだが、大きな政策につながっていく。環境省としてやらなければならない政策」だと語った。環境省は脱炭素に関する国民運動・デコ活などを進めている。

また、11月9日からトルコで開催される国連気候変動枠組み条約第31回締約国会議(COP31)には可能な限り出席したいとの意向を示した。米国が1月にパリ協定を離脱し、気候変動枠組み条約自体からの脱退も通告するなど、世界的に脱炭素のモメンタムは停滞気味だ。ただ、笹川氏は「温暖化の厳しい数値目標があるからこそ技術革新にもつながるし、その技術革新が日本経済の成長に資することにもつながる。同時に国民の生活にも好影響を与えると示していくことも日本の役割だ」と述べた。

【記者通信】第2次高市改造内閣が発足 「サナエ色」封印に燻る火種

高市早苗首相は9月17日午後、内閣改造を行い、第2次高市改造内閣を発足させた。全閣僚中8人が留任し、新閣僚も経験豊富な議員を登用するなど手堅い布陣になった。来月にも召集される臨時国会で、消費税減税法案や議員定数削減法案という対立の火種を抱える高市首相にとって、政権の安定を重視した人事といえる。16日に行われた党役員人事でも刷新を図らなかったことから、永田町関係者からは「支持率が停滞する中、サナエカラーを封印し、人事に慎重になった結果ではないか」との声が漏れる。

「選挙に強く…」実力重視の布陣に

「選挙に強く、毎週のように選挙区に戻るのではなく、腰を据えて着実に政策を検討・実行してもらえる方を閣僚に選んだ」。17日夕方記者会見した高市首相は改造内閣について、実力重視の布陣にしたと評した。初の内閣改造にのぞんだ高市首相は、これまでの独善的なやり方を見せず、事前に最大の支援者である麻生太郎副総裁らと協議を重ねた。これまで高市首相はほぼ全てで自らの考えを貫き通し、党内からは「中国やロシアのような独裁的な色彩を帯びる」と揶揄される向きもあった。

今回はこの後に控える消費税減税法案や、野党の反発が激しい議員定数削減法案の成立を最優先させるため、「スキャンダルや不祥事などで、審議が停滞することへの懸念が人事に表れている」(自民党関係者)と分析する。

一方で永田町関係者の中には、支持率の回復が手堅い人事に傾いたとする見方もある。

発足当時はご祝儀相場とはいえ、70%台の支持率を獲得していた。だが、徐々に下落傾向で今年に入ってからは媒体の調査によっては40%台まで下落していた。各社の平均でも約50%台で停滞していた。

ところが、災害が相次いだ8月以降は支持率に回復傾向が見られ、媒体によっては60%台後半まで回復した。前出の永田町関係者は「支持率の回復傾向がギャンブル的なサプライズを抑制させた可能性がある」と語る。驚きや人気取りより安定感を重視したという見方だ。

ただこういう話もある。改造に際し党所属議員に希望アンケートを蒔いたが、全員からの回答が得られなかったというのだ。「聞いているだけでも十数人は返答しなかった。高市首相への反発分子が少なくないということだろう」(前出の永田町関係者)。高市首相は党内に「お友達」がいないとされる。バランスや今後の国会運営の懸念による人事というよりも、実は「単に頼める人がいなかっただけではないか」(霞が関筋)という声もある。

【記者通信】エネ庁が27年度概算要求でCEV補助増額せず 求められる予算の抜本改革

経済産業省は2027年度予算の資源エネルギー・グリーントランスフォーメーション(GX)部門の概算要求で、新たに「原油供給源多角化支援事業」に150億円、「大規模系統整備等事業」に368億円の予算を付けた一方、クリーンエネルギー自動車(CEV=EV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車)関連の購入補助金の予算枠を据え置き、充電設備の設置補助金を減額した。ホルムズ海峡封鎖による石油価格高騰対策として、ガソリン車に対しては兆円単位の巨額の補助金を準備している一方、脱ガソリンに貢献するCEVの普及促進に対する補助金はわずか1500億円程度。その消極姿勢はさまざまな意味で波紋を広げそうだ。

27年度予算の概算要求では「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」を前年度の補正予算と同額の1100億円に据え置くとともに、「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てん設備等導入促進事業」の予算については426億円へと前年度補正の500億円から14.8%減額した。

これについて、資源エネルギー庁総務課はエネルギーフォーラムの取材に対し、「市場の成熟とともに補助金額を削減していくのが基本設計だ。購入補助金は前年度と同額を保っていれば十分と考える」と回答した。また、充電・充てん設備等導入促進事業は前年度の予算執行率が低かったことも指摘した。経産省自動車課によると、前年度の執行率は8割前後。今年の概算要求水準は前年実績を約8%上回っていることになる。

例えば、ガソリン補助でなくCEV購入者に半額補助

率直に言って、経産省の回答は残念だった。現在の政府に求められているのは、イラン情勢やウクライナ情勢によるエネルギー危機の長期化に対応した政策の大転換、いわば需給構造の改革だ。この点は、複数の自民党有力議員や元経産省幹部が指摘している。つまり、今回の概算要求についても「従来の延長線上ではなく、世界的な石油危機やこれからのエネルギーDX・GX時代に対応した抜本的な予算配分の見直しが必要」(元衆議院議員)なのだ。

例えば、政府は9月1日、26年度補正予算で確保した予備費から6160億円を「燃料油激変緩和対策基金」へ投入することを閣議決定したが、この予算をCEV購入のための補助金に充当していたら、どうなるか。現在、普通車EVで最大130万円、軽EVで58万円、プラグインハイブリッド車で最大85万円、燃料電池車で最大150万円の補助金が支給されている。これを思い切って3倍に増額する、もしくは購入費の半額を補助するとすれば、購入者にとっては相当大きなメリットになろう。買い替えの動機付けにもなる。6000億円もの財源があれば、それが可能だ。場合によっては、さらに予算を増額し、一定の燃費基準をクリアしたストロング・ハイブリッド車を補助対象に加えることもできるかもしれない。さらに、国内自動車産業の活性化も狙うのであれば、レベル2.5水準の自動運転を備えた国産CEVに補助金を重点配分するという方法もある。海外からは批判されるだろうが、そこは高市早苗首相が先頭に立ち「ジャパン・ファースト」で押し切っていく。

産業政策などと一体化したエネ政策展開を

いずれにしても、国内産業政策やGX政策と一体化した国のエネルギー政策展開が、今こそ求められているといえよう。何しろ、「中東情勢等対応予備費」で2兆5000億円もの補正予算を確保しているのだ。国益を踏まえたしっかりとした政策理念があれば、溶けてなくなってしまうようなガソリン補助金ではなく、もっと有効な国費の使い道が考えられるはずだ。これも一つの案だが、CEVは大都市部よりも、戸建て住宅の多い地方ほど潜在ニーズが大きい。自動運転を搭載したCEVが充電インフラ整備とともに地方を中心に普及するような施策を講じていけば、ガソリン価格問題はもとより、ガソリンスタンドの過疎化問題や、高齢者の運転ミスによる交通事故問題にも寄与する可能性がある。

本稿ではCEV問題をテーマにしたが、エネルギー政策全体では何と言っても原子力の「最大限の活用」に向けて、予算と規制当局の大改革が不可欠だ。残念ながら今回の概算要求では、その姿が全く見えてこない。

言うまでもないことが、官邸・中央省庁には頭脳明晰で優秀な官僚が集積している。高市首相は自ら公邸にこもって勉強することもさることながら、国の司令塔として官僚をうまく使いこなすことにもっと注力してはどうか。来年度のエネルギー予算に向けては、激動する現在の情勢を踏まえた政策転換の議論が、国会や省庁の審議会レベルで活発化することが望まれる。

【コラム】文献調査受け入れ表明の常陸大宮市 鈴木市長の英断に敬意

かつて一部地域が私の選挙区だった常陸大宮市の鈴木定幸市長が、経済産業省による高レベル放射性廃棄物の最終処分場候補地選定のための文献調査の申し入れを受け入れることを表明した。まずは政治家として勇気ある決断をした鈴木市長に心から敬意を表したい。

自然豊かな常陸大宮市の風景

各メディアは一斉に「核ごみ」などと大見出しを打って、明日にでも最終処分場がやってくるようにセンセーショナルに報道し、気の早い反原発団体が市役所前で抗議活動を行うなど地元でも賛否両論のさまざまな反応が起きているが、まずは冷静に事実を確認しなければならない。今回、常陸大宮市が経済産業省から申し入れを受けたのは、高レベル放射性廃棄物の最終処分場を選定する前段階としての文献調査であり、これを受けたからといって常陸大宮市が最終処分場になると決まったわけではない。文献調査のあと実際に深部までボーリングをして地質などを調べる概要調査を行い、さらに施設を建設するための精密調査を行った上で、処分場は決定される。当然、それぞれの段階で地元の意向を確認した上で進められるので、立ち止まったり、引き返すことは可能だ。

現に使用済み燃料が大量に存在する以上、近いうちに必ず日本国内に最終処分場を作らなければならないことは、原子力に対してどのような立場に立とうが、受け入れなければならない事実である。超長期間保管しなければならないものであることから、可能な限り多くのさまざまな地点を調査して、リスクを詳細に分析し、地元や国民の理解を得ながら最適な地点を選定しなければならない。反原発派は「トイレなきマンション」と言って批判するが、その「トイレ」を作ることには妨害こそすれ協力しようとはしない。

大局に立ち政治的リスクを自ら取った鈴木市長

鈴木市長は、「お金の問題がある」と取材する報道陣に本音を吐露したという。文献調査を受け入れるだけでその自治体には20億円が交付される。私はこのような札束で頬を叩くようなやり方は、本来好きではない。かつて私が若い頃、電源開発特別会計立地勘定という原発などの立地促進のために交付金を交付する会計のとりまとめ役をやっていた時、北海道幌延町と岐阜県瑞浪市にある科学技術庁所管の施設の設置に出されていた地元への交付金をカットして、大騒ぎになったことがあった。この施設は深地層を研究するための施設で、地元との約束で放射性物質を搬入しないことになっていたから、「迷惑施設ではない」と主張したのだ。(くだらないことだが、私のこの仕事は通産省内で高く評価された。)

今回の文献調査も、文献で調査するだけだから何ら地元合意の必要性などの法的制限はないし、地元に知らせなくてもやり得るものであるから、本来は交付金を出すようなものではないと考える。昨今の社会情勢を考えれば、選挙を控えた自治体の首長が文献で調査することすら受け入れることは困難であるのであろうから、やむを得ないものなのだろう。むしろ経産省は、文献調査の段階から多くの自治体を巻き込んで、データや事実を示しながら対話を積み重ねて合意を取る方法を選んだのだろう。それでも、受け入れる自治体はほとんどない。記者会見の場で鈴木市長は、「国策に貢献できるなら、手を挙げる価値がある。約50年にわたり安価なエネルギーを享受してきた一方、副産物を知らんぷりするのは日本人としていかがかと」とおっしゃっている。大局に立った立派な認識だ。日本のエネルギー政策の核心を真正面から受け止めて、政治的リスクを自ら取った鈴木市長には、改めて心から敬意を表したい。ちなみに、鈴木市長は私の高校の先輩。校訓は「至誠一貫」「堅忍力行」である。

私がこれからやれることは、自分なりの言葉で正確な情報を発信し、地元住民や国民の皆さんの冷静な判断に資する材料を提供することくらいだ。原子力や核と言ったとたんに、幟を掲げてパブロフの犬のように反応する特定イデオロギーの反対運動とは違う、地道な市民運動に役立ちたい。

【SNS世論】原子力好き?のイーロン・マスクに学ぶ広報術

筆者はエネルギー業界に関係しつつ、適切な原子力・エネルギー広報のあり方を考える仕事をしている。そこでSNSを活用し、自分のビジネスや社会的な存在感を広げる米国の事業家イーロン・マスク氏の動きを観察し、勝手に学んでいる。その手法を、日本での原子力・エネルギー広報に取り入れられないかと思うためだ。

イーロン・マスク氏(Wikipediaより)

私の観察によるマスク氏の広報・SNS活用術は次のようなものだ。彼は「面白い、便利な未来づくり」という大きな目標、物語を掲げる。そして、日常のSNSの発信で、以下の特徴がある。

①彼は科学、社会の基本原則を発信の中に織り込み、それと自分の語る「大きな物語」を結びつける。おかしなことは言わない。発信が理想・空想にも金儲けにも傾きすぎない。そして彼は大義を語るために、堂々と誇りを持っているように見える。

②彼の行うビジネスと日常の発信を、露骨ではないがしっかりつなげる。語りかける対象を「テスラ(彼の創業したEVメーカー)のユーザー」「政策の被害者」から、「人類の未来」まで、その場によって変える。

③彼の発信する話題は多様だ。時にはミーム(ネタ画像)を使ってカジュアルに本質を突く。堅苦しくない。

「大きな物語」に発信をつなげる

マスク氏はSNSで、過激ではあるものの、科学や社会の基本原則からはずれたことは言わない。彼は名門のペンシルバニア大学で物理学、経済学の学士号をとり、スタンフォード大学の経営大学院は起業のために中退しているインテリだ。

原子力問題では、原子力の活用を主張し、2011年7月には福島を訪問し、25万ドルの寄付をして、メディアの前で福島産の農産物を食べた。自分の財団による、福島での太陽光ビジネスの開始も、しっかりPRしていた。その際に、放射能のリスクは過大評価されているとの考えを述べていた。

また彼は社会に向けた2023年の自分の経営するEV企業テスラの投資家説明会のイベントで、「自然を破壊する必要はないし、質素になって電気を使うのをやめて寒さに耐える必要もない」「完全に持続可能で、豊かさのある地球への明確な道がある」と述べた。電気自動車や蓄電池の投資の意義を呼びかけている。それらはテスラの主要製品だが、「買ってくれ」「投資してくれ」とは露骨に言わない。

つまり、マスク氏は社会変革の「大きな物語」を語り、その参加を誘導する。しかし、その動きを支援する人は自然と彼の事業に協力する形になる。

またマスクはSNSのXを買収し、オーナーになった。リベラル色が強く、発言を規制していた同社の書き込みを自由にした。その結果、このサービスはかなり活性化をした。同時にこのSNSを自らの広報の拠点にしている。ただし、自分のビジネスについては、SNSをそれほど頻繁に使わない。しっかりした発言をビデオ、そして会見を行って伝えている。場所によって発信方法、そして語りかける対象を使い分けている。

マスク氏の発信は、失言も多いし、反発も大きい。しかし彼は謝らず、萎縮せず、前向きの情報を上書きしている。そして堂々と開き直っている。

【記者通信】エネルギー価格が軒並み上昇 冬場の料金高騰対策で補助金継続か

米国とイランの対立激化などを受けて、原油やLNG、石炭といったエネルギー資源の価格が軒並み上昇している。

原油は国際指標のWTI先物が1バレル90ドルを突破し、一時92.28ドルまで上昇した。2日午後4時半時点では90.16ドルまで戻している。90ドル台への上昇は7月下旬以来約1カ月ぶり。北海ブレント原油先物も2日午後4時半時点で94.77ドルに上昇した。

欧州LNG価格は、指標のオランダTTFの先物価格(期近物)が2日、1MWh当たり72.175ユーロと前日から3.9%上昇。2023年1月以来、3年8カ月ぶりの高値水準となった。アジア向けのスポットLNG価格を示す国際指標、プラッツJKMは2日、前日比4%上昇し23.615ドルとなった。

豪州炭先物価格は9月初旬に1t当たり約145ドルに急騰。世界的におう盛なエネルギー需要と持続的な供給リスクを受け、11週間ぶりの最高水準に達した形だ。

米中央軍は1日、イランの革命防衛隊の拠点への空爆を始めたと発表。革命防衛隊がホルムズ海峡で商船を攻撃したことへの反撃措置と説明した。これに対しイラン革命防衛隊は2日、ヨルダン、バーレーン、イラク、クウェートの4カ国にある米軍関連施設に報復攻撃を行ったと発表した。トランプ米大統領はこれに先立ちSNSで、イランが報復した場合にはさらに激しい攻撃を加えると警告しており、双方による応酬が激化する可能性がある。

電気・ガス代対策は「補助金」ではなく「省エネ」支援で

エネルギー価格の上昇は、日本の市民生活を直撃しそうだ。電気・ガス料金は、7月から酷暑乗り切り緊急支援策として支給されていた補助金が9月末で終了する予定。このため10月以降は国の補助がなくなることに加え、燃料・原料費調整制度によって料金が値上がりする見通しとなっている。現在のエネルギー先物価格の上昇は、約3カ月から半年のタイムラグを経て電気・ガス料金に反映されるため、冬場の料金が一段と上昇するのは必至。

高市早苗政権は、物価高騰対策としてガソリン補助金の「170円」継続を表明している。電気・ガス料金についても、補助金の延長が打ち出される可能性もある。しかし、1世帯当たり1カ月で1000~2000円程度の支援を続けたところで、家計面での効果は限定的だ。それよりも、エアコンや冷蔵庫、照明、給湯器などで省エネ機器への買い替え支援を拡充した方が、料金削減だけでなく、温暖化対策の面でも持続可能性のある政策になる。政府にはエネルギー高騰対策として補助金依存から脱却した抜本的な政策転換が求められる。

【時流潮流】米陸軍がマイクロ原子炉建設で5社選定 2年後の稼働目指す計画

米陸軍は8月下旬、各地の軍事基地に設置するマイクロ炉開発企業5社を選んだ。開発支援のため総額22億ドル(約3500億円)を交付する。2年後の28年10月までに少なくとも1基の原発を稼働させる計画だ。

米軍の輸送機に積み込まれるマイクロ炉。米陸軍は2028年10月を目標に導入を目指している=米国防総省提供

原子炉選定では三つの点を重視した。一つは、基地での建設ではなく、工場で大量生産できること。据えつけ期間を短縮するためだ。二つ目は、トラックや軍用輸送機で遠隔地までの輸送が可能なこと。三つ目は、頻繁な燃料補充(交換)が不要なタイプの炉。5年から8年は燃料交換をせずに稼働するタイプの炉を求めた。

自然災害やサイバー攻撃を受け、基地外からの送電網が途絶えた場合でも、基地内に設置した原子炉でエネルギー自給を実現することを目標に据える。

マイクロ炉の開発を巡っては、ウエスチングハウス社などの老舗原発企業に加え、スタートアップ企業が続々と市場に参入、12社が先陣争いを続ける。陸軍は、その中から5社を選んだ。

選ばれたのは、スペースX出身のエンジニアが設立した新興企業ラディアント・テクノロジーズ。同じく新興企業のアンタレス・ニュークリア。米海軍の原子力潜水艦や空母用の原子炉を独占的に供給してきたBWXT。ドローン開発でも知られるゼネラル・アトミックス。そして、ウエスチングハウスの5社だ。

各社には、マイクロ炉を建設する基地も割り当てられた。例えば、選定された5社の中で最高額の約7億ドルの支援枠を獲得したラディアントは南部ジョージア州の基地に「カレイドス」炉(出力1MW)を3基建設する。アンタレス社は南部ノースカロライナ州の基地に「RI」(同200~300kw)炉を3基配備する。複数の原発を設置するのは、攻撃などを受けて1基が動かなくなった場合でも、残りの炉が電力供給を続けられるかどうかを実証するためだ。危機的状況に陥っても、司令部機能やレーダーサイトを維持する狙いがある。

一方、ウエスチングハウスは東部ニューヨーク州の基地に「eVinch」炉(同5MW)を1基、BWXTなど出力が比較的大型の炉を開発する企業は1基を据えつける計画だ。

ただ、いずれのマイクロ炉もまだ開発途上で、まだ完成品はない。わずか2年間という短い時間で実現できるかは、現時点では見通せない。原発計画には遅延がつきものだ。

「非常に困難な道のりになる」

陸軍の計画責任者であるワックスマン次官補代理は、そうした事情を踏まえた上で「非常に困難な道のりになる」との認識を示す。開発資金の負担増に耐え切れず、参加企業のうち1社以上が「倒産する可能性があると認識している」とも述べている。期待通りの成果を上げられない企業は、容赦なく契約を打ち切り、途中退場させる考えすら示す。過酷な生き残り競争となりそうだ。

厳しい条件を科せられた形の開発企業だが、メリットもある。軍用の原子炉は、時間がかかる原子力規制委員会の安全審査が不要。開発期間の大幅短縮が可能となる。このプロジェクトを利用して技術を実証し、商用化にはずみをつけたいところだ。

アンタレス社は地球上にとどまらず、月や火星などへの原発を設置したいという野望がある。プロジェクト参加をきっかけに、夢の実現に向けて一歩でも近づきたいとの思いが強い。

米軍は、米国初の商業用原子炉を設置するなど、米国の原子炉開発を先導してきた歴史がある。現在、陸軍だけでなく空軍も次世代型炉の開発支援を進めている。開発競争がますます過熱しそうだ。

【記者通信】高市首相がガソリン補助金継続を表明 出口戦略や検証なきまま

問題だらけのガソリン補助金の支給が、高市早苗首相の政治的判断で今後も続くことになった。高市首相は8月25日、中東情勢の緊迫化を背景とした原油価格高騰への対応として、レギュラーガソリンの全国平均小売価格を1ℓ当たり170円程度に抑制する現在の補助金・支援策を、9月以降も継続する方針を示した。財源には、2026年度補正予算に計上された「中東情勢等対応予備費」を活用し、必要な費用を基金に充てる考えだ。

記者会見する資源エネルギー庁の吉川信彦・燃料流通政策室長(左)

補助金支給をいつまで続けるかについて高市首相は、中東情勢が物価や経済に与える影響を注視しながら、支援単価や措置の出口を含めて柔軟に検討していくと説明した。ガソリン補助金は昨年末の暫定税率廃止を受けていったん終了していたが、イラン情勢の緊迫化とホルムズ海峡封鎖による原油価格の急騰を受けて、今年3月19日に激変緩和措置として急きょ復活。ただ政府はその間、これまでの補助金政策を検証する時間があったにもかかわらず、何も行わなかった。 

累計9兆円以上を投入

ガソリン補助金は当初、コロナ禍や円安を背景とした燃料価格急騰への対応策として、岸田文雄政権時代の22年1月に導入された。少額の予算で始まったものの、その後の原油高騰や度重なる延長により規模が拡大し、25年末までに累計で8兆1719億円が投入された。さらに26年3月には予備費から8000億円を基金に投入。また26年度補正予算では、ガソリン補助金の継続を想定し、中東問題に特化した「中東情勢等対応予備費」の創設を目的に2兆5000億円を計上した。本来一時的な措置として始まった制度だが、数年にわたる長期化に伴い、国家財政に巨額の負担を強いる構造が続いている。

こうした中、自民党幹部からも、補助金への見直し論が相次いでいる。萩生田光一幹事長代行は5月18日、「全く見直しをせずに延々と続けるのはかなり無理がある」と発言。小林鷹之政調会長も5月21日、「あくまで激変緩和策であり、現在の支援水準を続けていくのは持続不可能で、見直しや縮小が必要だ」との認識を示した。

政府は、170円水準を国内の物流、企業収益、家計が耐え切れなくなる手前の、当面の「経済防衛線」として位置付けているとされるが、データなどに基づく明確な根拠はない。資源エネルギー庁の吉川信彦・燃料流通政策室長は26日、同水準の継続について「物価の安定に貢献しているため」と説明した。しかし、また、第三者機関による効果の検証作業が行われていないことや、支給の出口戦略を示さないことについては、「中東情勢の緊張が続く中、措置は継続中であり、まだ検証する段階ではない。出口戦略についても同様だ」と語った。

「市場メカニズムを機能不全に」 

補助金継続に対して、有識者からは批判が相次いでいる。桃山学院大学経営学部教授の小嶌正稔氏は「目的が当初の燃料油価格の激変防止から、物価の安定に置き換わってしまった。ガソリン価格を長期にわたって固定し、市場のメカニズムを機能不全にしている」と指摘。「補助金政策は財政の悪化を招き、結果的に円安につながることで、原油価格の低下の恩恵を受けられない状況をつくっている。出口戦略を持たずに始めたことも問題だ」と批判した。ガソリン価格の変動を報じるメディアに対しても「『今週は1ℓ何円』だけではなく、『今週の補助金は1ℓ当たり何円で、総額何億円支出』にしないと実態が伝わらない」と注文を付けた。

成城大学経済学部教授の平野創氏は「長期化し、投入した国費も膨れ上がった以上、政策効果と費用対効果を措置の終了を待たずに検証すべきだ」と政府に注文を付けた。出口戦略についても、補助を段階的に縮小する条件や目安、基本方針を示しておくことが重要と指摘する。補助金の今後の在り方については、ガソリン車を利用しない人に対する公平性の議論もあることから、一律の価格補助を徐々に縮小しつつ、農業や物流など燃料価格上昇の影響を強く受ける分野や、公共交通機関がぜい弱で自動車への依存度が高い地域などに対してより重点的に支援することを検討すべきと主張した。

米ボストン在住で国際石油アナリスト小山正篤氏はかねて、補助金政策を「財政ポピュリズム」と指弾している。「巨額の国費による石油価格の人為的抑制は、価格変動を共通の拠り所とする日本経済・社会の自律的・主体的な省エネルギー・脱石油の努力を鈍らせ、かえって石油消費を奨励し、財政を一層硬直化させて円安を誘う」と指摘した上で、補助金政策の実態は「原油高」促進策であり、日本自身による日本弱体化政策だと批判。「目先の集票を統治に優先した政治の責任放棄であり、民主政治が劣化・自滅へと向かう一つの兆候だ」と高市政権の姿勢に憂慮を示した。

求められる速やかな政策検証・出口戦略

既に暫定税率が廃止され、元々の税負担が軽減されている上、足元では原油価格は80ドル代半ば、為替相場も度重なる介入によって1ドル160円手前で落ち着きを取り戻しつつある。この状況を、激変状態が続いているといえるのか。「ホルムズ海峡の封鎖継続」のみを理由として、巨額の国費を投じて補助金を支給し続ける必要性がどこにあるのか。

政府の説明は「情勢が続く限り、検証に取り組まず出口戦略も示さない」というものだが、国費の投入に対する説明責任を果たさない不誠実な姿勢と言わざるを得ない。有識者が指摘する通り、出口戦略を欠いたまま補助を先延ばしすればするほど、国民にとっては政府が決めた公定価格が当たり前の水準となり、本来あるべき市場を通じた価格決定メカニズムが機能不全に陥ってしまう。政府には、厳格な政策検証と明確な出口戦略を速やかに提示することが求められる。

【アナリストの視点】元売り3社が大幅増益 燃料油補助金は影響しているか

石油元売り3社は2025年度に続き、26年度第1四半期(26年4月~6月)も好決算を計上した。いずれも前年同期比で大幅な増益だ。これに対し、エネルギー業界内外の関係者の一部から、ホルムズ海峡封鎖による原油価格高騰を受けて復活した、燃料油補助金の影響を指摘する声が聞こえている。実際のところは、どうなのか。エネルギーアナリストの伊藤敏憲・伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表が徹底解説する。

石油元売り3社の第1四半期決算が大幅増益の要因

ENEOSホールディングスの25年度の営業利益(連結)は前年比949億円増の4666億円、在庫影響(24年度マイナス576億円、25年度マイナス78億円)を考慮した在庫影響除き営業利益は同451億円増の4744億円、26年度第1四半期の営業利益は前年同期比4323億円増の4826億円、在庫影響(25年度第1四半期マイナス848億円、2026年度第1四半期プラス1952億円)除き営業利益は同1523億円増の2874億円だった。

出光興産の25年度の営業利益は前年比500億円増の2122億円、在庫影響(24年度マイナス299億円、25年度マイナス294億円)と持ち分法投資損益(24年度226億円、25年度25億円)を考慮したセグメント利益(在庫影響除き営業利益+持ち分法投資損益)は同294億円増の2441億円、26年度第1四半期の営業利益は前年同期比3115億円増の3075億円、在庫影響(25年度第1四半期マイナス505億円、2026年度第1四半期プラス1666億円)および金融費用(財務および法人所得税、金融収支、為替差損益)除き税引き前利益は同940億円増の1561億円だった。

コスモエネルギーホールディングスの25年度の経常利益は前年比16億円減の1492億円、在庫影響(2024年度マイナス308億円、2025年度マイナス165億円)除き経常利益は同159億円減の1657億円、26年度第1四半期の経常利益は前年同期比1288億円増の1330億円、在庫影響(25年度第1四半期マイナス169億円、26年度第1四半期プラス109億円)除き経常利益は同1010億円増の1221億円だった。

元売り各社が25年度および26年度第1四半期に好決算となった要因の一つは、2月28日の米国およびイスラエルによるイランへの空爆をきっかけにした中東情勢の悪化によって原油および石油製品の価格が高騰したからである。原油価格の上昇によって在庫評価で利益がかさ上げされた上に、石油製品の価格が国内外で原油価格と呼応して上昇し、原油価格の上昇がまだ原価には十分に反映されていないためタイムラグによって石油製品のマージンが拡大したことで、石油製品事業の利益が増加したからだ。石油元売りは、石油製品の輸出、石油化学、石油・天然ガス開発、金属などの非石油事業なども営んでいるが、原油価格の上昇は石油・天然ガス開発事業の収益拡大要因にもなっている。

【論考】世界3紛争がもたらす「複合石油危機」の進行に備えよ

米・イスラエル対イラン、サウジアラビア対フーシ派、およびロシア対ウクライナーこの3つの紛争が連動しながら増幅し、ペルシャ湾、紅海、およびロシアからの石油輸出を同時に阻害する「複合石油危機」を引き起こす。米・イラン間の調停は引き続き試みられてはいるが、情勢は依然としてこのような破局的事態に向かって展開している。

6月17日に米・イラン首脳間で合意された「イスラマバード覚書」は、その第5項でホルムズ海峡における「将来の管理および海事サービスを定義する」主体―すなわち実効的な支配者―を事実上イランと認めた。ペルシャ湾での米国の覇権喪失を確認した文書、とも言える。(【論考】米イラン「イスラマバード覚書」 ペルシャ湾は「イランの海」に!? 参照)。

6月25日以降に再開した米・イラン間の戦闘は、ホルムズ海峡・ペルシャ湾における実効支配の確立を図るイランと、これにあらためて抵抗し、2月末の開戦以前の原状回復を試みる米国・ペルシャ湾岸諸国との間の争いだ。イランは、米海軍支援の南側・オマーン沿岸航路を通る商船を攻撃し、これに対する米軍の報復攻撃と、イランによる湾岸諸国における米軍施設等への再報復攻撃の応酬が続いた(【論考】懸念される「複合石油危機」 中東情勢の現況を徹底解説 参照)。

米国は7月11日から23日まで計1000箇所以上と言われる対象を攻撃した後、対イラン攻撃を一旦中止し、仲介国・オマーンによる対イラン協議を進めさせた。しかし28日イランは、海峡の地域的管理・任意の資金拠出のなどのオマーン側提案を拒否し、かえってヨルダンの米軍基地を弾道ミサイルで攻撃。これに対し、29日に米軍は主にイラン南部沿岸の軍事施設数十ヶ所への空爆で応えた。また28日に米・サウジ軍は、前日にサウジの石油輸送の拠点・アブカイクが受けた攻撃への報復として、イラク領内の親イラン武装勢力の諸拠点を合同で空爆している。

米軍は中東海域に二つの空母打撃群と、強襲揚陸艦を中心とする水陸両用即応群一つを展開させ、7月中旬には戦闘機部隊の中東への前方展開、爆撃機部隊の高度警戒態勢への移行など、対イラン戦力増強を加速化した。7月11日以降、米軍によるイラン沿岸部から内陸部に広がる空爆は、本格攻勢に備えた「戦場形成作戦」とも言われ、再び大規模攻撃に転ずる危険が残る。

トランプ米大統領は7月31日に対イラン大規模攻撃の再開を命じたが、翌8月1日にこれを撤回。今度はカタールを仲介国とする対イラン協議への期待を高めた。しかしイランはオマーンとの2国間交渉を優先、本稿執筆時点(8月7日)で最終段階と言われながら合意には至っていない。この交渉はイラン主導のホルムズ海峡管理を事実上認めつつ、その適用に一定の制限をかける「条件闘争」の色合いが濃く、たとえ文書上で合意が成立しても、実施段階で再び対立が再燃するだろう。また「イスラマバード覚書」でうたわれていた「レバノンを含む全戦線での即時・恒久的停戦」など、米・イラン間には他の重要な対立点が多く残る。トランプ政権による戦争指導の振幅は激しく、協議不調と見れば、方針は再び対イラン軍事攻撃へと転じ得る。

いずれにせよ米軍による対イラン大規模攻撃は、ほぼ確実にイランによる湾岸諸国への報復攻撃の激化につながる。米政権内外で、迎撃ミサイルなどの兵器備蓄の枯渇も強く懸念されており、この「軍事的相互破壊」には一定の歯止めが掛からざるを得ない。そもそもホルムズ海峡の持続的制圧には、後背地の山岳地帯を含むイラン南部全域の軍事的制圧を必要とし、これは現在展開中の米軍戦力では不可能だ。したがって間歇的な軍事衝突を繰り返すとしても、基本的には「イスラマバード覚書」成立前の状況、すなわちホルムズ海峡封鎖・イラン海上封鎖が継続し、米国・イラン双方が睨み合う膠着状態に戻ると見るべきだろう。

南側・オマーン沿岸航路の通航は、6月下旬から7月上旬にかけて顕著に活発化したが、7月前半に相次いだイランによる対商船攻撃後に激減した。米国も7月14日以降、再び実質的な対イラン海上封鎖を敷いた。イランはホルムズ海峡の支配を自衛上不可欠として固守する構えであり、開戦前の原状回復は見通し得ない。おそらくこの「経済的核戦争」と称すべき事態は、イランのペルシャ湾実効支配を一定の条件下で米国が認める形での、何らかの妥協が成立するまで続くだろう。この膠着が続く間に、未曾有の世界的石油供給危機が顕在化してくる。

【目安箱】日米韓が小型原子炉で協力 警戒しながらも利益を得る構図に

日米韓の3カ国はトルコのアンカラで開催されたNATOのサミットに合わせて外相会談を行い、原子力の小型モジュール炉(SMR)の他国への導入に関する協力覚書を7月7日に結んだ。マルコ・ルビオ米国務長官、日本の茂木敏充外相、韓国の趙顕(チョ・ヒョン)外交部長官が参加した。米国の公表文によると、SMRの新規建設で、インド太平洋地域を当面の重点地域とし、その建設のための3カ国の政府および産業界の協力強化を目的としている。具体的には、SMRプロジェクトの開発リスクの低減、規模の経済の実現による建設費用の低下、民間投資の促進、許認可手続きの効率化やサプライチェーンの最適化などを目指す。

署名式において、茂木外相は、「米韓両国とは、重要鉱物のサプライチェーン強靭(きょうじん)化や北朝鮮のサイバー脅威に対する枠組みなど、これまで具体的な取り組みを進めてきた。SMRに関する協力枠組みについても歓迎する」と述べた。

◆米国主導か、日本は受け身の対応

3国政府は、日米韓3カ国は商用原子力で相互補完的な強みを有していると認識を共有し、この地域で増加する電力需要を満たすための競争力ある選択肢を提供するとしている。またこれ以外にも、原子力安全、核セキュリティーを進めるとしている。つまり売り込みに加え、核の管理も協力するという。

この3国の覚え書き締結を積極的に推進したのは米国のようだ。米国は、「SMR技術の責任ある利用のための基盤インフラ」プログラムを行っている。これはバイデン政権の時からのもので、トランプ政権でも継続されている。この協定に関係し、これを使ってSMRプロジェクトの開発支援や、原子力人材の育成を目的とした訓練を行うとも発表した。韓国のメディアも、同国政府の期待コメントを載せた記事を掲載している。

ところが日本の外務省、経産省は会見に外相が出た以外は、積極的に広報をしていない。準備がまだできていないのかもしれないが、こうした原子力の推進の国際協力については、国内の世論の批判を恐れてか、常に福島原発事故以降、日本政府は腰が引けているように思える。

◆急成長する韓国の原子力産業

もちろん、この協定は歓迎すべきことだろう。しかし、日本人の傾向として、外国との協力ではメリットだけ注目しがちだ。原子力でも、過去に大きな問題が起きている。

東芝が2017年に経営危機に追い込まれたのは、買収して子会社にした米国の原子力企業ウェスチングハウスの赤字を抱え込んだことにある。

そして米国は大国ゆえに、自国に都合よく、作った国際制度を変えてしまうことがある。原子力についてこれまで米国は兵器転用を止めるという核不拡散政策を行なってきた。しかし7月23日にトランプ大統領はサウジアラビアとの間で原子力協定を締結した。そこで核兵器の開発につながるウラン濃縮をサウジに認めた。サウジは現時点では米国の友好国とはいえ、王国でサウド家の独裁の下にある。また核保有を目指すイランと対立し、財力もある。この協定をきっかけに、核保有に進みかねないとの懸念が世界に広がっている。

また韓国の原子力産業は発展している。UAEのバラカ原子力発電所の建設を、日本勢を差し置いて、09年に当時約200億ドルで受注した。韓国の国産炉APR1400型4基を使う発電所が24年に稼働した。

韓国の企業連合はチェコで25年に2基(APR-1000型)の契約を締結(約180億ドル規模)。36~37年完成を目標にして工事が始まった。国内での原子炉建設計画もあり、既存原発の稼働率も9割近い高さだ。この協定が上り調子の韓国の原子力産業に、プラスとなるだろう。

◆外国に利用されず、したたかに

さらに韓国は原子力潜水艦の建造を目指している。この小型炉の技術が、それや同国の核武装につながる可能性がある。韓国は、核燃料サイクルを検討しているが、米国がこれまで認めてこなかった。ところがサウジに認め、そしてトランプ政権がビジネスのためなら核不拡散の原則を崩しかねない行動をしている。

韓国がいきなり核武装をすることはないだろうが、それは将来的に懸念される話だ。原子力潜水艦と核兵器が合わさると、日本の安全保障にも影響する。その始まりに、この協定がならないことを祈る。

まだ日本は原子力では、研究も運用も建設力も世界のトップクラスにある。福島原発事故の反省の下で安全性の研究、ノウハウも蓄積されている。今回の協力でマイナス面ばかりを心配するのは愚かな行為だろう。協力のメリットを伸ばし、日本の力を発揮し、利益を享受する方法を考えることが先だ。

しかし今までの経験、米韓と日本の熱の入れ方の違いを見ると、少し今から心配している。米韓両国、そしてそれぞれの産業界は原子力でもライバルであると同時に友でもある。彼らのしたたかさに気をつけながら、原子力の復活の世界的な動きに向き合いたい。