米中間選挙の投票日まであと1カ月。その中で、ガソリンやディーゼル油などの燃料価格の高騰が大きな争点に浮上している。農家からは、米国産ディーゼル油(軽油)の輸出を止め、国内に回すべきとの声が高まる一方、石油業界の反対の声も強まっており、トランプ政権は対応に追われている。

「高い燃料価格が農家の収入を破壊している」。米国屈指の農業州である中西部アイオワ州選出のグラスリー上院議員(共和)は、米議会の演説で軽油価格の高騰問題を取り上げ、米国産軽油の禁輸措置をとるよう政府に強く求めた。
中部ミシガン州の共和党上院議員候補のロジャース氏も、「米国のエネルギーは、まずは米国人の救済に使うべきだ」と訴える。
とうもろこしや大豆が収穫期を迎える中、米国の軽油価格は9月22日には史上最高値となる1ガロン(約3.8ℓ)=6.5ドル台をつけた。イラン戦争開戦前と比べれば7割近い値上がりとなる。収穫に使うコンバインは、毎日ドラム缶5本以上に相当する300ガロンもの軽油をがぶ飲みする。燃料費の高騰は、農家の収益を激しく圧迫している。
とうもろこしの生産が盛んな「コーンベルト」と呼ばれる中西部や中部の諸州や、南部は伝統的に共和党が強い「レッドステート(赤い州)」と呼ばれる地域だ。アイオワ州は18年間も連続で共和党が上院の議席を独占し、今回も「無風」選挙のはずだった。だが、軽油価格の高騰を機に、選挙戦は予想外の「接戦」に転じつつある。
軽油価格の高騰は、イラン戦争とウクライナでの戦争に原因がある。ホルムズ海峡などの通航量が限られている上、中東各国の製油所も被災したことで、世界市場でシェア15%を占めていた中東産軽油の供給量が大幅減となっている。
さらに、ウクライナが今春以降に始めた長距離ドローンによるロシアの製油所攻撃も影を落とす。ロシアの精製能力は3割以上低下し、ロシア政府は国内需要の手当てに追われた。7月からは軽油の禁輸措置を続けている。ロシアは米国に次ぐ世界2位の軽油輸出国だ。そのロシアと、3位の中東諸国産の軽油が輸出市場から消えたことで一気に品薄となり、価格高騰を招いた。
トランプ大統領は対応に追われた。一般的に大統領選で勝利した政党は、2年後の中間選挙で敗北する傾向にある。切り札として浮上しつつあるのが米国産軽油の禁輸措置で、トランプ氏は27日に「非常に真剣に」検討していると発言するなど、前のめりの姿勢を示す。
だが、トランプ政権内にも「禁輸は逆効果だ」との主張が根強くある。エネルギー省のライト長官や、内務省のバーガム長官らがその代表格だ。当然、石油業界も反対の声を上げている。
世界の輸出市場の約2割を占める米国産軽油が国内にとどまれば、供給が増え価格が下がると予想される。だが、ライト長官らは「全面的な禁輸は考えてない」と強調する。
理由はこうだ。禁輸措置を取れば一時的に国内価格は下がるかもしれない。だが、数週間もすれば貯蔵タンクは行き場を失った軽油で満杯になる。そうなれば、製油所は原油の処理量を減らさざるを得なくなる。軽油だけでなくガソリンやジェット燃料の価格も一斉に暴騰する最悪の事態を招く。
政権としては有権者の不満解消に努めなければならないが、米国産の軽油に頼るフランスのマクロン大統領からは「世界経済と米国経済の双方に壊滅的な打撃を与える」との反発する声も出ている。妥協策として、全面的な禁輸ではなく、欧州向け輸出などを除外した部分的な禁輸や、農家向けに低価格の軽油を割り当てる手法など、現実的な代替案の検討が水面化で続いている。













