7月28日午後4時27分ごろに起きた熊本地震から約1時間20分後の午後5時46分ごろ、熊本県嘉島町にあるイオンモール熊本で爆発事故が発生し、死亡者7人、負傷者5人を出す大惨事となった。施設に供給されているLPガスが原因とみられており、警察、消防、関係機関などが中心となり現地調査が進められている。LPガス関係では、1983年11月22日に「ヤマハレクリエーションつま恋」(静岡県掛川市)の飲食店でコックの閉め忘れによる爆発が起き、客や従業員ら14人が死亡、27人が重軽傷を負った事故がある。今回の事故原因がLPガスとすれば、死傷者の数ではそれに次ぐ規模となる。また爆発自体の規模では過去最大級と見る向きもあり、LPガス関係者に大きな衝撃を与えている。

取材で浮上した事実関係や疑問点 「白ガス管の損傷でガス漏洩?」
エネルギーフォーラムがLPガス関係者や都市ガス関係者などを対象に独自に取材を進めたところ、現時点で次のような事実関係や疑問点が浮上している。
●イオンモール熊本のLPガス供給事業者は、福岡酸素(本社=福岡県東久留米市)。同施設には9.3t級のバルク容器が設置されており、そこからガスが供給されている。同施設の場合、法令上は原則として「液化石油ガス法」の特定供給設備(3t以上10t未満)に該当。保安責任は、ガス供給事業者側(供給設備=バルク貯槽〜メーター)と商業施設側(消費設備=メーター以降の施設内配管・厨房機器など)の双方にある。
●※福岡酸素は8月5日、経産省に次の内容を報告。〈令和8年熊本地震発生により、何らかの要因で建物内のLPガス配管が損傷しガス漏洩が起こり、滞留したLPガスに着火した可能性があるとのことだが、現時点では原因の特定には至っていない。詳細については、現在、調査中〉
●関係者によれば、イオンモール熊本にはLPガス仕様の※ガス空調設備(吸収式冷温水機か)が複数台設定されているとみられ、主に空調用に利用されている模様。ガスエンジンを併設したガスコージェネレーションシステムなのかどうかは、現時点で不明(※経産省が3日明らかにしたところによると、ガスコージェネやガス発電機は設置されていないことが確認された)。イオンモール施設から駐車場を挟んで東側には天然温泉の施設があり、そこに向けて熱供給が行われている可能性もある。
●LPガスは、バルク貯槽からまず※大口径の中圧管で供給され、その後、低圧管に減圧されているとみられる。エネルギー機器のある棟は、バルク貯槽が設置されている場所の近隣にあり、中圧で供給されている可能性がある。店舗が入っている商業施設(主に飲食店)には低圧で供給されている。
●公開されている映像を見る限り、今回の爆発は2階南側中央部付近(ガス空調設備のある棟の隣)で起きている。(※フロアの天井部に敷設されているフードコート向けの低圧管がどこかで破損し、大量のガス漏れが発生した可能性がある)
●ガス業界の関係者によれば、配管からの漏洩に関しては、耐震性に優れる中圧管の損傷は敷設場所的にも考え難い。また、低圧管にしても最近は地震に強い金属製のフレキ管が主流(※ガス業界関係者によると、イオンモール熊本の施設内の低圧管ではフレキ管ではなく、白ガス管=配管用炭素鋼鋼管が使用されていた可能性が高いという。低コストや耐食性などの面から現在でも屋内配管では白ガス管が採用されるケースがある。白ガス管の問題は地震などの大きな衝撃により、ねじ接合部からのガス漏れがフレキ管に比べ発生しやすい傾向があるとされること。また経年劣化も進みやすいという)。
●問題の一つは、地震の揺れで自動的に機能するはずのガス遮断弁がなぜ作動しなかったのかだ。遮断弁はバルク側と飲食店側にそれぞれ設置されているという。関係者によれば、バルク側の遮断弁はI・T・O製で、主に震度5強以上作動型と震度6強以上作動型の2種類がある。嘉島町の震度は6強相当とみられているが、イオンモール熊本の立地する場所は遮断機能が作動するほどの揺れではなかったのではないかとの見方も(※実際、地震直後の避難時の動画などを見ると、陳列物が飛散していない店舗が散見される)。そうなると、遮断弁は作動せず、ガス供給がそのまま続いていた可能性は否定できない。
●一方で、バルク貯槽側の遮断弁は正常に作動しており、ガス機器や配管内に残留していたガスが破損個所から漏洩したと見る向きもある。(※イオンモール熊本のガス設備事情に詳しい関係者によると、バルク側にある遮断装置自体は正常に作動し、ガスを遮断していたという。ただ、遮断装置の接合部などで問題が発生していた可能性は否定できず、現時点で調査中)
●※バルク貯槽からのガス供給が遮断されていたとしても、太い中圧管も含めれば遮断装置以降のガス設備内に残留していたガスは相当な量になるとみられる。破損したガス管からLPガスが漏れ続け、空気より重いという性質上、施設南側中央部付近にある空間にLPガスが充満(※空気中の濃度で2.1%〜9.5%)。地震発生から約1時間20分後に何らかの形で着火し、爆発した可能性がある。(※一部報道によると、一般公開されているフロアアップには載っていないが、爆発したとみられる施設南側中央部には、自動販売機のある喫煙所があり、そこにガスが溜まり、自販機の温度調整機能が着火源になった可能性があるという。また、その隣には階段を挟んで従業員の休憩所があったという)
防災拠点の商業施設 大規模リニューアルしたばかり
イオンモール熊本は05年10月10日、「ダイヤモンドシティ・クレア」としてオープンした。16年4月の熊本地震で損傷し、18年7月20日に復旧したのを機に、西側エリアを増床した「ウエストスクエア」が完成。24年10月から25年春にかけて段階的に約40店舗を刷新するリニューアルを実施。26年6月13日に直近の大規模リニューアルが完成し、新装オープンしたばかりだった。東日本大震災の教訓から経産省の推進する「大規模施設のLPガス化政策」の一環として、防災拠点に位置付けられ再整備された商業施設でもある。それが、大爆発したわけだ。
エネルギーフォーラムでは、経産省ガス安全室、イオンモールの両者に取材を依頼したが、いずれも「現在調査中のため答えられない」と回答だった。
いずれにしても、テレビやネット上で公開されている車載カメラなどの映像を見る限り、すさまじい大爆発だったことは間違いない。もし施設からの避難が遅れていた場合、さらに多くの犠牲者が出ていたことは容易に想像がつく。映像を見た多くの国民が「やはりLPガスは危険」と思っても不思議ではないだろう。実際、XなどのSNS上では、今回の事故を巡ってさまざま憶測が飛び交っている。その一方で、大地震などが起きると被災地の避難所や仮設住宅などで、LPガス供給が大きな役割を果たしているのも、歴然とした事実だ。※事故調査委員会を設置したイオンモール側や、経産省などには、同様の事故を二度と繰り返さないためにも、徹底した原因究明が求められる。
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