政府・与党は10月28日、物価高対策などを盛り込んだ「新たな総合経済対策」を閣議決定した。2022年度第2次補正予算案の一般会計29.1兆円を財源に、地方支出や財政投融資を含めた財政支出総額は39兆円規模に達する。最大の焦点である電気・ガス料金の負担軽減策については、標準家庭で月平均3000円前後の補助を見込んでおり、早ければ来年1月から実施する。この対策に歩調を合わせるかのように、北陸電力は27日、規制部門を含めた全ての電気料金を来年4月に改定する方針を発表。翌28日には、東北電力が規制料金の値上げ申請に向けた準備を、四国電力も規制料金の値上げ検討を、それぞれ表明した。既に値上げ検討に着手している中国電力を含め、大手電力各社による規制料金の値上げが来年4月以降相次ぐ見通しだ。エネルギー関係者の間では「今回の負担軽減策が、電力本格値上げへの露払い的な役割を担うことになりそう」と見る向きも。SMBC日興証券の宮前耕也・シニアエコノミストは「来年 1 月に(物価の)伸び率が急縮小しても、4 月 に本格改定値上げで伸び率が急拡大する可能性が出てきた。消費者マインドが一旦改善した後、再び悪化する可能性がある」と指摘。来年9月以降の出口戦略をどう描くも含め、課題山積の状況だ。

総合経済対策によると、まず電気料金の負担軽減策については「来年度初頭にも想定される電気料金の上昇による平均的な料金引き上げ額を実質的に肩代わりする額を支援し、企業より手厚い支援とする」として、低圧契約の家庭用で㎾時当たり7円を補助。これは現行の電気料金の2割程度に相当するもので、標準家庭だと月平均2000円程度の負担軽減になる。高圧契約の企業などに対しては、「FIT賦課金の負担を実質的に肩代わりする金額(1kWh当たり3.5円)の支援を行う」とした。「来年春に先駆けて着手し1月以降の可及的速やかなタイミングでの開始を目指す」という。一方、都市ガスについては「電気とのバランスを勘案した適切な措置を講ずる」として、1㎥当たり30円を支援する。標準家庭で月平均1000円程度の補助だ。
「金額少なく期待外れ」「一律の給付金を」の声
この負担軽減策について、宮前氏は「今般の負担軽減策は、来年春の電力会社や都市ガス会社による本格改定値上げに備えたものであるため、見方を変えれば、本格改定値上げが実施される確度が高まったとも言える」と指摘する。現在、北陸電力が来年4月からの規制料金の値上げを発表し、中国電力、東北電力、四国電力の3社が規制料金の値上げ改定に向けた検討や準備を表明しているが、経済産業省の関係者によれば「大幅赤字が予想される他の大手電力会社も追随する可能性が高い」。そうした情勢を見越しての支援策という位置づけが総合対策に明記されたことは、電力会社にとっては朗報といえよう。
ただ、標準家庭で月平均3000円前後の支援を巡っては、需要家から「岸田首相が『前例のない思い切った対策』とぶち上げたわりには、金額が少ない。正直、期待外れ」「都市ガスではなく、LPガスを使っているので、ガス料金がバカ高いにもかかわらず、ガス代での恩恵を受けられない。各家庭一律の給付金にしてほしい」といった声が聞こえている。総合経済対策は、LPガスについて「価格上昇抑制に資する配送合理化等の措置を講じる」と記すのみで、需要家への支援を見送った格好だ。経産省は「LPガスの原料費はLNGほど上昇していないため」としているが、LPガス原料の都市ガス事業者や簡易ガス事業者の需要家支援はどうなるのか、現時点でははっきりとしていない。また電力についても、再生可能エネルギー100%電気や卸電力市場連動型の料金メニューの利用者はどうなるのかなど、課題も多い。
岸田政権が狙うは支持率の回復だが・・・
大手シンクタンクによると、電気・ガス料金対策で、今後1年間で必要となる財政支出は約4兆円に上る。ガソリンなど石油燃料の補助金と合わせれば、10兆円規模だ。しかし、これほどの政策資金を投入したところで、消費者が物価抑制効果を実感できるかは不透明。前出の宮前氏は「来年 1 月に負担軽減策で電気代・都市ガス代が大幅に引き下げられても、4 月には大幅に引き上げられ、乱高下する可能性が高そうだ。負担軽減策がない場合と比べて、家計や企業の負担は軽くなるが、 価格水準が乱高下する影響 には注意すべき」だと警鐘を鳴らす。
自民党関係者によれば、「今回の総合経済対策で政権が狙っているのは、旧統一教会問題で低迷する支持率の回復」だという。しかし需要家からは支援額の水準や対象への不満が高まっており、思惑通りになるかは極めて微妙だ。先行実施された石油燃料補助金の費用対効果が疑問視される中、一連のエネルギー高騰対策の出口戦略をどう描くかも含め、岸田政権は難しいかじ取りを迫られそうだ。





















