政府は8月24日に開いた「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、原子力発電所の再稼働済み10基の稼働確保に加え、来年の夏以降、設置変更許可済みの原発7基(東京電力柏崎刈羽原発6、7号機、日本原子力発電東海第二原発、東北電力女川原発2号機、関西電力高浜原発1、2号機、中国電力島根原発2号機)の再稼働を追加で目指す方針を確認した。第六次エネルギー基本計画に示された原子力発電比率を2030年20~22%とする目標の達成を目指し、これまでの政府方針を転換する。

また、50年カーボンニュートラル(CN)実現に向けて、小型モジュール炉(SMR)や高速炉、高温ガス炉など次世代革新炉の開発や建設、既存原発の運転期間の延長の在り方についても議論を重ね、今年末までに具体論を取りまとめるとしている。岸田文雄首相はオンラインで参加し「設置変更許可済みの原発再稼働に向け、国が前面に立ってあらゆる対応を取っていく」と明言した。
原発17基体制で「約1.6兆円の国富流出を防ぐ」
これまで政府は原発の新増設、リプレースに関しては「現時点で想定していない」との国会答弁を繰り返していた。しかしロシアによるウクライナ侵攻に伴い、エネルギー安全保障が揺らぐ中、この日のGX実行会議でも、参加した委員からは「足元の需給ひっ迫に対応するためには、原子力再稼働の意思決定はマスト」といった意見が挙がっていた。
GX実行推進担当相名で提出された資料によると、原子力分野では①再稼働への関係者の総力の結集、②安全確保を大前提とした運転期間の延長など既設原発の最大限活用、③新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設、④再処理・廃炉・最終処分のプロセス加速化――に政治決断が必要だとした。
今後の原子力政策については、西日本ですでに再稼働済みの原発10基のうち、最大9基の稼働確保を今冬までに進め、来夏、来冬には設置変更許可済み7基で安全工事の円滑な実施と着実な再稼働(高浜1、2号機、女川2号機、島根2号機)と、地元理解の取り組み(柏崎刈羽6、7号機、東海第二)を国が矢面に立って進めるとしている。計17基が再稼働すれば「約1.6兆円の国富流出を防ぐことができる」(GX実行推進室担当者)という。
20年代半ばには、残る設置変更許可申請中・未申請の原発19基に対し、的確な審査対応や理解確保への取り組み、事業環境整備を行う方針。政府は原発再稼働が加速するよう、今秋までに官民それぞれの対応を取りまとめるとしている。
「今冬の電力ひっ迫は解決せず」と悲観の声も
一方で、足元の課題は山積する。再稼働を目指す設置変更許可済み7基の原発のうち、現状で来夏、来冬の供給力として見込めるのは関西電力の高浜1、2号機だ。50Hz地域の電力ひっ迫解決に寄与する原発では、柏崎刈羽6,7号機、女川2号機、東海第二の3基があるが、「今冬に予想される電力ひっ迫の解消には間に合わない」(電力関係者)と悲観する声が上がる。地元自治体や住民との同意形成も課題で、国から地元同意のための行動を求める関係者は多い。「東電の柏崎刈羽(発電所)だけでも動かせるようになれば話は変わる」(電力関係者)という声も上がるが、IDカードの不正利用や侵入検知器の不具合放置などで、規制委が命じた核燃料移動制限の解除のめどは立っていない。
GX実行会議に参加したある委員は「東日本における原発の早期再稼働と、国が前面に立った原子力政策を行っていただきたい。今日の会議でやっと国と産業界が合ってきた感じがする。官民合わせて、電力危機を乗り越えてGXにつなげていきたい」と話す。今年までに再稼働を加速させる具体的な指針を取りまとめられるかが課題だ。













