コロナ禍の影響が日本の太陽光発電業界にも及び、短期的な収益悪化に加え、将来を危惧する声も聞こえてくる。そんな状況下、少し明るいニュースがあった。
太陽光発電協会(JPEA)が新しい業界ビジョンを公開した。2050年の太陽光発電(PV)の導入量を、従来の2億kWでは不十分であり3億kWを目指すべきとする。簡単に言うが、設備容量としては日本の最大電力需要の2倍近い数字だ。将来の話とはいえ大胆過ぎはしないだろうか。JPEAの主張は、国の目標である「50年までに温室効果ガス80%削減」を実現するには、PVの導入量は少なくとも3億kW(電源構成の31%)は必要とのこと。それだけの大量導入になると、調整力は足りるのかとか、国民負担は大丈夫かなどの疑問が湧いてくる。その疑問に対し、JPEAは出力抑制を10%以下に抑えるための蓄電池の必要量や、便益が費用負担を上回ることなどを定量的に評価し、3億kWは技術的、経済的にも不可能ではないことの根拠を示している。この点では、従来のお手盛り業界ビジョンから一歩進み、率直に評価できる。
ただ、現実にはFIT価格の低下や系統制約、度重なる制度変更などの影響で、PVの導入量は減少傾向にあり、このままでは3億kWの実現は極めて困難だ。コロナ禍の影響を克服して、どうやって縮小傾向の市場を拡大傾向に反転させるのか。このことについてもJPEAビジョンにヒントを見出すことができる。
例えば、コスト競争力をつけるために燃料費がかからないPVの稼働期間を延ばす工夫や、小売り電気料金との比較で競争力に勝る自家消費モデルへの転換など、今までのモデルから脱却することで可能性が見えてくる。ただ、これら民間の努力だけでは現状の打開は難しい。やはり、FITからの自立と主力電源化に向けた国の本気でぶれない施策が何よりも重要である。そのためにも50年より先を見据えて、国の脱炭素化を本気で目指し、デジタル化や分散化、全体最適化が遅れている20世紀型の電力システム、官僚機構からの脱却を切に望む。(T)