【特集2】環境配慮型の発電事業 地域連携を果たし活性化


【広島ガス】

地域に根付いた事業としてなじみ深かった都市ガス事業。いま再エネ大量導入時代に向けて新たな取り組みが始まっている。広島ガスが、中国電力と共同出資する海田バイオマスパワー(小寺洋一社長)が今春から海田発電所の運転を開始した。出力は11万2000kWで、これまで100kW単位の太陽光発電を手掛けてきた広ガスにとっては、かなり大規模な再エネ発電事業である。

発電所外観。広島ガスと中国電力が50%ずつ出資する

「エネルギー事業において、CO2を削減していくこともさることながら、地元で未利用だった木材資源を発電燃料として有効活用することで、林業活性化や循環型社会の構築に貢献していきたい」

広島ガスから出向している海田バイオマスパワーの藤井速人・総務部総務担当マネージャーは、バイオマス発電事業の意義をそう説明する。

既存設備の有効活用 内航船は環境配慮型

海田発電所は広ガスが2001年まで石炭から都市ガスを製造していた海田工場の跡地(15万6000㎡)の一角に立地する。瀬戸内海に面したエリアだ。原料だった石炭を受け入れるための港湾設備や、工業用水など主要なインフラがあらかじめ整備されていた区画で、新規に発電事業を行うにはまさに適地であった。とりわけ工業用水インフラは、プラントの冷却機能(復水工程)を果たす。海水を利用せずに復水できることから、海域環境への影響を少しでも抑える仕組みだ。

発電所で使う燃料は、木質系のバイオマスを熱量ベースで80%混焼(残りの20%は石炭との混焼)を基本に消費する計画だ。主に3種類のバイオマスを使う。北米から調達するホワイトペレット、広島県内からの木質チップ、そして、東南アジアからのパームヤシ殻燃料だ。合計40万t程度の燃料を消費する計画で、メインとなる燃料は北米からのホワイトペレットだ。そして、県内からの木質チップを5万t程度とし、残りをパームヤシ殻燃料で調整する。

海外からのホワイトペレット、パームヤシ殻は、山口県岩国市内の中継基地を経由する。発電所前の港湾の水深が浅く大型船が直接、入港できないためだ。いったん、中継基地から、新たに造船した内航船「海栄丸」へ積み替えて運び込む。この内航船はセルフアンローダー搭載の船で、密閉に近い状態で荷役することができる船だ。半密閉であることから、周囲へ燃料が飛び散ることがなく、環境に配慮した船である。加えて、中継基地には倉庫を設けて風雨や浸水を避けるなど、バイオマス燃料の品質を維持するための工夫を施している。

バイオマス燃料を運ぶ内航船の海栄丸   提供:商船三井

「県内での木質チップの調達については、地元に迷惑は掛けられません。当社の都合を優先するような調達ではなく、あくまでも地元の方々と良好な関係を築きながら無理のない範囲で、年間5万t程度調達できたらと考えています」(藤井マネージャー)。地元への配慮を踏まえたプラント運用を目指している。

また、発電所の中核を担うプラントのボイラーには、燃料仕様に制約がない循環流動層を採用している。微粉機で粉砕する必要のない5㎝以下のバイオマス燃料をボイラーで燃やしていく。炉内温度は800~900℃となっており、炉内の燃焼に起因した窒素酸化物などを抑制でき、また炉内に尿素や石灰石を直接投入することで、炉内で脱硫脱硝が完結できるような設備となっている。

「基本はベースロード運転です。半年近く試運転を行い、各種バイオマス燃料の混焼率を変えながら、炉内でどのような挙動になるのか確認してきました。広島ガスにとっては初めての大きな発電所です。プラント運用のプロである中国電力さんから出向している方々から、日々学びながら安全・安定的な運用を目指していきたい」(藤井マネージャー) 再エネ主体のベースロード運転は、国策である再エネ主力電源化への大きな一歩。その役割の一翼を海田バイオマスパワーが担う。

山口県内に立地する燃料の中継基地

【特集2】ごみ処理発電で地産地消電力 脱炭素化への貢献に全国が注目


【日鉄エンジニアリング】

昨年10月の菅義偉首相の「カーボンニュートラル宣言」以降、全国の自治体において脱炭素化に向けた検討が加速している。そうした中、ごみ処理の余熱でつくる電気に注目が集まっている。地域内の家庭や事業所から出たごみを電気に変え、地元で有効活用できる地産地消性や、太陽光や風力のように天候や時間帯に影響されず、ベースロードで発電する供給安定性が評価されているのだ。

かずさクリーンシステムの外観

今年2月、千葉県君津市でそうしたごみ処理から生じた電力を地元で有効活用する取り組みがスタート。日鉄エンジニアリングが最大出資者であるかずさクリーンシステムから廃棄物を処理する際に発生する電力を君津市の清掃事務所や小学校など、22の施設に供給するというものだ。かずさクリーンシステムは君津市、木更津市、富津市、袖ケ浦市の出資で設立。これら自治体から発生する一般廃棄物の処理事業と併せ、発電事業を手掛けてきた。

今回の供給スキーム

今回、この電力を電力小売り事業者である日鉄エンジが買い取り、君津市の公共施設に供給するスキームに転換、1995kWの地産地消電力の供給を開始した。これにより、年間600tのCO2排出量を削減する計画だ。

かずさクリーンシステムは日本製鉄の溶鉱炉技術を生かしたシャフト炉式ガス化溶融炉を採用する。多様な廃棄物を1700〜1800℃の高温溶融により安定的かつ確実に処理を行い、無害で天然砂と同等の品質を持つスラグと、メタルという二つの資源を生み出す。同炉は木材やプラスチック、金物、土や泥が混じったごみも安全かつ確実に処理が可能。近年の大災害で発生した災害廃棄物の処理でも高い能力を発揮する。

また有害ガス成分の発生抑制に優れ、ダイオキシン類についても、十分な燃焼制御に加え、触媒反応方法などにより、ダイオキシン類対策特別措置法の規制値をクリアしている。

ごみ処理工場は24時間ベースロードで稼働する。環境・エネルギーセクター企画部の小野義広部長はその運用について、「火力発電は一定の品質の燃料を用いるので、設備の傷み方などもある程度予測できるが、ごみ処理はどのようなものを処理するか事前に分かるわけではありません。しかも勝手に止めるわけにもいかない。そこでメンテナンスが非常に重要になる。全国40カ所以上で蓄積したノウハウに基づき計画的に実施しています」と説明する。

小学校教育にも寄与 ほかの自治体にも働き掛け

このほか、ごみ処理発電は小学校教育の一環としても寄与している。同セクター電力ソリューション部企画・需給管理室の土屋一子マネジャーは「市内の小学校では4年生になると、かずさクリーンシステムを見学します。ここでつくられた電気が自分たちの小学校で使われていることを知ってもらう。ゴミの分別を促すなど、環境教育の面でも高い評価をいただいています」と話す。日鉄エンジでは、君津市への供給開始を皮切りに、かずさクリーンシステムを利用するほか3市にも地産のごみ余熱電力の供給を働き掛けているという。

脱炭素、地産地消、教育面への寄与で脚光を浴びるごみ処理発電。君津市の取り組みはその先駆けとなりそうだ。

【特集2】地域課題解決へ再エネ事業に注力 プロジェクトに参画して知見を得る


インタビュー/松本尚武:静岡ガス グローバル・エネルギー本部副本部長兼電力・環境事業部長

松本尚武グローバル・エネルギー本部副本部長兼電力・環境事業部長

―今年4月以降、バイオマス発電事業への参画を2件発表するなど、取り組みが活発です。貴社の再生可能エネルギー事業の取り組み方針をお聞かせください。

松本 当社が再エネ事業に取り組む目的は二つあります。脱炭素社会の実現と、地域課題の解決です。当社は2016年から電力の小売り事業を開始し、地域資源やガスコージェネを利用した地産地消をテーマに進めてきました。

 その中で、再エネ開発を進めていく計画でした。しかし、低炭素から脱炭素にニーズがシフトしてきたことや、地域課題がより深刻さを増す中で、再エネ開発はそれらの解決ツールととらえて取り組んでいます。

―地域課題とは何ですか。

松本 県内の中山間地域では、放置林の問題があり、林業の活性化が求められています。また、静岡県はお茶の産地として有名ですが、近年は需要が停滞しています。そんな状況を打破するため、再エネを地域振興に利用できないかと検討を進めてきました。

県内事情から電源を検討 地域振興に再エネ利用

―今回のバイオマス案件は山形県と埼玉県です。いずれも貴社エリアから離れています。地域への取り組みを重要視する中、なぜ参画したのでしょうか。

松本 将来の当社の小売り事業向け再エネ電源として利用するには、系統でつながっていれば問題ないと考えました。一方、静岡県内は山が近いために平地が少ないことに加え、富士山周辺は景観を損なうため配慮が必要など、太陽光発電所の適地はそれほど多くありません。風力も東北地方の日本海側のように風況が良くありません。そうした中で、バイオマス発電は有力な電源と位置付けています。放置林などの地域課題の解決にも適しています。

 2件の案件は、いずれもマイナー出資者という立場です。事業運営に主体的に関わるのではなく、サポート役として関わっています。県内で電源を手掛けていく際には、事業主体を担っていく考えです。

―山形県の鳥海南バイオマス発電所(5万2900kW)のプロジェクトに関わったきっかけは。

松本 参画した目的の一つとして、将来の大型バイオマス電源を立ち上げるための調達や開発、運用など、ノウハウの蓄積があります。当社のお客さまには、製紙会社など自社電源に石炭火力を利用しているところが多くあります。中には、バイオマス燃料への切り替えに関心のある企業もあります。そのお手伝いができたらと考えています。また、参画に当たり重要視したのが燃料調達の確実性です。バイオマス発電において最もリスクが高い部分です。同案件は、酒田港が発電所の近隣にあるなど、立地にも恵まれており、大きな信頼を寄せています。

鳥海南バイオマス発電所の完成予想図

―埼玉県の東松山バイオガス発電所(1990kW)ではどのような取り組みを行いますか。

松本 同発電所では、街路樹や高速道路などの剪定枝を利用しますが、これを5㎝程度のチップに破砕して水分含有量を調整してボイラー燃料にします。

 当社は発電設備に関するエンジニアリング力はありますが、バイオマスの調達など、上流側のデリバリーや、木質チップの加工や成分調整を行い燃料にするところのノウハウはありません。そうしたものを積み上げたいです。

 国内材を活用したバイオマス発電は小規模にはなりますが、これまでのコージェネで培ったノウハウなどが生きるのではないかと考えています。ゆくゆくは、林業の課題解決のためにも、林地残材や製材端材の活用にも取り組んでいきたいと考えています。

―ほかの再エネで注目しているものはありますか。

松本 静岡県内では、小規模の太陽光が有望と考えています。営農併設型のソーラーシェアリングは地域課題解決に寄与するでしょう。

―政策・制度面で、注視している点はありますか。

松本 電力系統の増強・運用に関する議論に注目しています。再エネ事業を行う上で、出力抑制は長期的なリスクと考えなければなりません。事業者の立場からすると、系統にかかる費用負担の在り方も含め、増強・運用に関する議論が整理されてくると、FITのその先も見据えた上での事業の予見性が高まるものと期待しています。

―今後の展望は。 松本 当社では、再生可能エネルギーの開発を重点戦略として位置付けており、21~23年に再エネと海外事業を合わせて200億円程度を投じる計画です。脱炭素社会の実現と地域課題の解決を推進していくため、新しい取り組みに挑戦し続けたいと思います。

【コラム/6月21日】制度設計は続くよ どこまでも


前回コラムを書いてから2か月が経ち、春から初夏の雰囲気を漂わせ始めている。依然としてコロナの話題は尽きないが、電気事業制度設計も、その歩みを止めることなく、審議が続いている。

今回も前回に続き、その後の制度設計の進捗について書いてみたい。

制度設計は電力サプライチェーン上で大きく広がる

3~5月に審議会等で取り上げられた内容を筆者独自で電力サプライチェーン上にプロットしてみた。やはり再エネや環境関連が多いものの、全般的に広がりをもって取り上げられ始めている。

少し前、昨年夏から秋頃は、再エネ、送配電、環境といった分野が多く取り上げられていたが、昨年10月の菅首相のカーボンニュートラル宣言を機に、電気事業も国のエネルギー政策にあわせて裾野が広がりつつあることが感じ取れる。

 なお、3~5月にかけてエネ庁を中心に筆者がチェックした審議会等は約120本。営業日数がだいたい60日なので1日2回開催されている計算である。これほど膨大な議論、資料を取りまとめているエネ庁の皆さんには脱帽するばかりである。

徐々に取りまとめに移行

ちょうど1年前の通常国会でエネルギー供給強靭化法(以下、強靭化法)が成立し、その後、昨年7月には梶山経産大臣から非効率石炭フェードアウトや再エネ型経済社会の創造等について検討の指示があり、エネ庁各委員会、専門会合、WG等で詳細な制度設計が進んだ。

この数か月は、今冬の市場価格高騰を受けた検証を踏まえた今後の市場設計の在り方の

検討、第6次エネルギー基本計画策定における2050年、2030年の在り方の整理、経産・環境両省でのカーボンプライシングの議論、容量市場見直し、その他強靭化法の詳細設計の整理が進みつつある。

強靭化法は来年4月に施行されるため、この夏から秋にかけて取りまとめ、政省令等の改正を行わないと間に合わず、徐々に取りまとめに向けた方向に進みつつあるのが現状である。

現時点の主な制度の進捗(2021年5月末時点)

全部を書くとかなり膨大になるので、主だったものをいくつか取り上げてみる。

①エネルギー基本計画見直し

現時点を3E+Sの観点で検証し、2050年のあり方を決め、2030年の政策にバックキャストで落とし込む方法で検討中。

2030年について、再エネ導入量と省エネ目標量の試算が行われ、現行のエネルギーミックス目標からいずれも上乗せした数値が提示された。

また、2050年については、RITEにて前提を置いたうえで複数のシナリオ分析が提示された。あくまでも前提を置いたうえでの試算であり、今後定める目標に対して、具体的にどうやって実現させるかが論点となるだろう。

②カーボンプライシング

経産・環境両省で検討がされており、「成長に資する」ための目的や方向性は固まりつつある。あとは具体的にどういった設計とするか。経産省では炭素削減価値取引市場として、非化石証書、J-クレジット、JCMを中心とした方向性を描き始めている。

③容量市場

中間整理は夏までに行われ、年内には取りまとめされる予定だが、電力業界だけでなく、様々な産業に影響するものであり、今後の動向が注視される。

25年度分の取引のための21年度入札についてエネ庁で一定の方向性を取りまとめ、広域機関で具体的な検討に着手している。

前回入札との大きな違いは、オークションの2段階実施、維持管理費用に反映する費用の明確化、支配的事業者への事前確認制導入、小売電気事業者への激変緩和措置(前回あった経過措置と逆数入札は撤廃)、非効率石炭への誘導措置、情報公開。

広域機関では需要曲線の原案が出され、NetCONE(指標価格)は9,372円/kW、目標調達量は約1.77億kWと前回と大きな差異はみられない。

今後、募集要領のパブコメ等を経て、順調に進めば、6-7月に需要曲線公表、9-10月に入札実施、12月に約定結果公表の運びとなる。

④非効率石炭火力フェードアウト

こちらは昨年7月の梶山経産大臣指示をもとに検討され、整理されている。

省エネ法上での規制的措置は、石炭火力発電に絞って目標を設定(発電効率が実績で43%)され、それに向けて計画を立てて効率化を進めるもの。

効率化のためには、バイオマス混焼や水素・アンモニア燃料の混焼、タービン改造、熱利用等が挙げられているが、それでも難しい場合は、休廃止になるだろう。

一方の誘導措置は容量市場で約定価格からの減額措置(21年度入札は20%)が導入されている。

なお、これは発電専用の石炭火力だけに適用されるわけでなく、製造業における自家発自家消費もバイオマス混焼や熱利用等の計画を中長期計画で示し、定期報告で進捗報告する必要がある。

⑤発電側課金

現在、小売電気事業者が負担している託送料金の一部を系統利用者である発電事業者にも課すという制度。基幹送電線利用ルール見直しと整合させる形で、昨年12月から再度検討を開始したが、再エネ業界団体等の意見も聞きながら制度設計を進めている。

当初、基本料金(kW)のみの課金を想定していたが、将来、市場主導型の混雑処理に移行すること等を踏まえ、基本料金と従量料金を1対1の割合で課金することなった。この方向性のもと、潮流改善に資する電源への割引制度設計、請求・回収方法について検討を進めてきたが、現時点で大きな壁となっているのが小売電気事業者への転嫁。

今回、発電側に課金すると同時に需要側の託送料金が減額となる。その分を発電事業者と小売電気事業者との間で締結している相対契約内で転嫁することを想定しているが、FIT電源、特に太陽光・風力発電の取扱いが論点となっている。

どうしても小売側に転嫁しきれない部分を誰がどう負担するか。賦課金か、それとも発電事業者か、その折衷案か。いくつかのパターンが提示されたが、結論まで出ずに、継続議論となっている。

⑥非化石価値取引市場

昨年度から非FIT非化石証書の取引が始まり、この5月に20年度の第4回目の入札を行い、20年度の取引は終了した。

これと並行して、電気の利用者(需要家)の課題やニーズを踏まえ、非化石証書制度の見直しが行われている。

見直しのポイントは3つ。1つ目はFIT証書の価格大幅低減、2つ目は需要家が直接証書を購入できる市場の構築、そして3つ目はトラッキングの大幅拡充。

そこで、大きく2つの市場に分けて検討がなされている。1つはFIT証書を取扱い、小売電気事業者だけでなく需要家も取引参加できる「再エネ価値取引市場(仮称)。もう1つが、小売電気事業者が高度化法達成のために非FIT証書を購入するための「高度化法義務達成市場(仮称)」。

両市場とも検討課題は多くあり、現在はその一つひとつを議論しているところであるが、前者は今年度後半からの試行を、後者はこの8月の入札から適用させることを考えると検討の時間はあまり多くなく、丁寧かつ迅速な議論が必要になってくる。

特に高度化法の義務がある小売電気事業者、これまで非化石証書を活用した小売メニューを提供してきた事業者からは困惑の声も聞こえてきており、手戻りが多い制度設計にならないことが求められる。

⑦エネルギー小売事業者の省エネガイドライン改定

電力・ガス小売を行う事業者には、従来、30万件以上の顧客を有する場合、電気の利用者に省エネを促す情報提供していることを公表する努力義務が課せられていた。

ただし、この情報提供の公表が家庭の省エネを促す効果があったかというと、必ずしもそうでもない。

そこで、より省エネを促進するために既存ガイドラインの改定と、情報提供状況を評価する仕組み(評価スキーム)の導入が検討されている。

省エネに資するための情報提供、その方法、リアルタイムのデータ提供やDRの促進、電源構成の開示、その他事業者の創意工夫を140点満点で評価し、ランク付けされる。これが、エネ庁の登録小売電気事業者一覧や価格比較サイトの事業者名の横にロゴと評価された星印が付けられることとなる。

実際に筆者もいくつかの事業者の公知情報から得られる情報をもとに試算してみたが、事業者によりバラツキがあった(30点もあれば80点以上もあり)。

これからは単に価格だけでなく、事業者が独自に工夫したサービスや取り組みが差別化要素になるかもしれない。家庭や中小企業の省エネ改修・設備導入への補助も検討されており、小売電気事業者・ガス事業者がハウスメーカーやリフォーム業者等と連携した取り組みが出てくることも期待される。

今後数年、まだまだやることは多い

以上、まだ書き足りないところだが、このあたりで締めることとする。

今後数年の主だった制度設計の流れを纏めてみた。ここ数年もかなり新しい制度ができ、見直しされてきたが、これからの数年もまだまだやることは多い。

こうした制度一つひとつを網羅的に理解し、それを踏まえた事業リスク管理、事業機会の創出に向けた行動を起こすことが求められてくるだろう。

【特集2】ガス検知器が高性能かつ多機能へ スマート保安でニーズ有り


理研計器

理研計器はこのほど、ガスインフラ向け新製品を2製品ラインアップした。一つはLNG成分混合ガス用新方式ポータブルガスモニター「FI-8000+GX-8000」。主にタンカーからLNGを荷揚げする際に使われている製品だ。荷揚げでは、作業終了後にアンローディングアーム内部の天然ガスをN2(窒素)ガスで置換してから、切り離し作業を行う。

その際、SIGTTO(国際ガスタンカー運航者および基地操業者協会)の測定ガイドラインで、メタンガスの濃度を2vol%以下にするよう定められている。この数値確認に、事業者は非分散型赤外線式ガス検知器、もしくは熱伝導式ガス検知器を使用してきた。

二つのセンサーと独自計算法 LNG気化ガスを正確に測定


しかし、赤外線式ガス検知器でこの濃度を計測すると、実際のガス濃度が規定濃度以下にもかかわらず、原理上メタンに対して重質成分感度が高く、実際の数値以上で表示するため、時間とパージ用のN2を浪費してしまう。また熱伝導式メタン検知器で測定すると、実際のガス濃度が規定濃度以上にもかかわらず、原理上メタンに対して重質成分感度が低いため、パージが完了されているように表示して安全性を損なう問題があった。

FI-8000+GX-8000は、天然ガスが含有成分に対するセンサー感度の変化を、センサーの組み合わせと独自の計算法で補正。難しかったLNG気化ガスの正確な測定を実現した。営業技術課の杉山浩昭課長は「荷揚げ用途以外にも、ガス濃度の計測ニーズはあるはずです。パイプラインやLNGタンクなどの用途にも拡販していきたい」と話す。

新方式ポータブルガスモニター「FI-8000+GX-8000」


もう一つは、信号変換器付きガス検知部「SD-3」シリーズ。大気中の可燃性ガス、毒性ガス、酸素を連続監視するための防爆型定置式ガス検知部で、ガス漏えいを検知し、設定した濃度値以上になると警報動作を行う。そうした基本性能に加え、石油化学工場などプラント設備の大型化・高度化に伴い、ガス検知器に対する高性能・多機能化の要求が高まっている。そこで、各国防爆検定取得に加え、ENパフォーマンス、SIL2認証(申請中)など、各種国際規格に対応させた。
また検知したガス濃度値は4~20mAのアナログ信号とデジタルHART信号に変換し出力する。さらに、オプションでModbus通信(RS-485通信)への対応も可能だ。「国が進めるスマート保安への対応もあり、ガス検知器も、濃度信号以外のさまざまな機器情報を提供することによる、信頼性向上へのニーズが高まっています。そうした動きに訴求したい」(杉山課長)
同社では、ガスインフラを支える製品を今後も積極的に展開していく方針だ。

信号変換器付きガス検知部「SD-3」シリーズ

【特集2】パイプライン敷設工事を効率化 検査時間を従来から半減


日鉄パイプライン&エンジニアリング

都市ガス導管の敷設工事では、パイプラインの溶接箇所ごとに検査を行う。同検査で主流なのは、工業用フィルムを溶接部に貼り付け、専用の現像車で現像して乾燥させ、判定作業を行う方式だ。
一方で、同じ工業用フィルムを用いていた医療用レントゲンや空港の手荷物検査の分野では、既にデジタルX線検査を導入している。デジタル化は検査の効率化や、現場管理業務の省力化など、多くのメリットをもたらす。
そうした動きに対応するため、日鉄パイプライン&エンジニアリングは溶接部検査をデジタル化した円周溶接部デジタルX線検査システム「NSDART」を実用化した。同システムは、デジタルX線検査技術「DRT」を応用。従来の検査と同等以上の品質を確保しているのはもちろんのこと、デジタル化することで、現像作業が不要となり即座に画像を確認できるほか、原画像や判定情報の保存、データの共有が容易にできる。また、インターネットを介して、遠隔地からの検査も可能。作業員を分散させ、新型コロナウイルスの感染リスク低減などにも貢献する。このほか、工業用フィルムの生産量が減少していく傾向にあり、備えにもなる。

円周溶接部デジタルX線検査システム「NSDART」


同システムの検査では、X線撮影用撮像素子であるフラットパネルディテクター(FPD)を搭載した自走式撮影装置と画像処理用PCを用いてパイプラインの円周を撮影する。このデータを、画像処理用PCと接続した判定用ディスプレーに映し判定する。
導入効果としては、①従来のフィルムX線検査で使用しているX線発生器の適用が可能、②FPDによって画像取得時間を短縮できるため、判定時間を従来の半分にできる、③自走して撮影するため、走行用レールなどの余分な治具が不要であり、作業効率が向上する―などが得挙げられる。
このほか、今回の開発で得た技術的知見は、パイプライン円周溶接部の品質管理へのDRT適用に向けたJIS規格の制定や、ガス事業法の改正にも貢献している。ガス事業法の改正によって、DRTの適用が認められ、同システムも実用化できたとのことだ。


ガス協会の技術賞を受賞 現場のデジタル化を加速


そうした取り組み全体が評価され、日本ガス協会の「21年度技術賞 ガス技術部門」を受賞した。田中進・技術本部技術統括部マネジャーは「大手ガス会社に導入していただき、好評を得ています。パイプラインの建設現場は、デジタル化する余地が残されています。この受賞を励みに開発を進めていきたい」と語っている。
ガスインフラの現場でのデジタル化がさらに加速していきそうだ。

「NSDART」で撮影する様子

【特集2】データサイエンティストからの指南 CO2削減に向けた利活用


データを活用した新ビジネスの創出―。多くのエネルギー会社が課題とする部分だろう。データサイエンティストの草分け的存在、河本教授に話を聞いた。

インタビュー:河本 薫/滋賀大学データサイエンス学部教授

本誌 データサイエンティスト(DS)とはどんな職業ですか。

河本 一般的に、データからビジネスや社会的価値を創造する人を指します。私は①ビジネスDS、②AIDS、③理論DS――の三つに分類して考えています。①ビジネスDSはデータの分析力でビジネス課題を解決できる人材を指します。②AIDSはAIを使って人工知能システムを作る人、③理論DSは数学を使い何らかの証明をする人を言います。私は①ビジネスDSに当てはまります。

現場と一体となって取り組む 成功への三つのステップ

本誌 ビジネスDSに求められる仕事内容とは。

河本 一般的には数学的知識やプラログラミングを駆使するイメージを持たれますが、それだけでは解決できません。ビジネスDSの仕事には「見つける」「解く」「使わせる」の三つのステップがあると考えます。「見つける」では、社内にどのような解決すべき課題があるか探したり、分析のためデータを成形しないといけません。

 「解く」は、現場の人に「押し付けられた」という感情なく、納得感を持って受け入れてもらう。そうしたものを引き出せるような解き方が問われます。

 最後の「使わせる」は、最も難しいです。今まで勘と経験で責任感を持ってやってきた担当者を否定してデータ分析のやり方に変えるには、現場と一体となって取り組まなければなりません。

 これら三つのステップを経て課題解決にたどり着きます。現場の知識とデータ分析のキャッチボールで進んでいきます。完全に分けることはできません。

本誌 エネルギー会社がデータを活用した新ビジネスの検討する上で気をつける点はありますか。

河本 「エネルギーに関するデータはお客さまにとって大切なもの。役に立つもの」と思い込んでいる点です。大半の需要家はエネルギーデータに関心がありません。スマートメーターのデータも最初の1カ月は見ますが、その後は手間や時間を使ってまで見ないのが現実です。謙虚な姿勢を持って臨むことが必要です。

本誌 需要家が関心を示すデータとは何ですか。

河本 時間やお金に関するデータです。多くの人が頻繁に時間やスケジュールを確認します。お金もどれだけ支出したか、貯金できたか、など関心が高いです。そうしたデータと肩を並べるほど、魅力あるサービスが提示できるかが、成否を分けるでしょう。

本誌 エネルギー会社のデータビジネスの現状をどう見ますか。

河本 多くの企業があるにもかかわらず、欧米のビジネスモデルを踏襲したようなサービスしか出てこないことが気になります。

本誌 柔軟な発想を持って生み出すには何が必要ですか。

河本 優れたサービスを作り出すところまで到達できると思いますが、成功するにはそれを採用する意思決定が必要です。エネルギー会社のこれまでのビジネスモデルとは異なる意思決定が求められます。そこに課題があると思います。

本誌 エネルギー関連で今後注目するデータ活用はありますか。

河本 政府の2050年カーボンニュートラル宣言を受けて、エネルギーリソースの改善だけではなく、需要家側の制御も必要になると思います。CO2を巡る規制は今後増えるでしょう。CO2関連のコストは上昇していくため、その最適化のためにデータを活用する余地は十分あると考えています。

かわもと・かおる1991年京都大学応用システム科学専攻修了、大阪ガス入社。98年から米国ローレンスバークレー国立研究所でエネルギー消費データ分析に従事。帰社後、2011年からビジネスアナリシスセンター所長。18年4月より現職。

【特集2】スマメが切り開く新ビジネス エネデータ活用に多様な可能性


東電管内で概ね設置が終わったスマートメーター。このスマメのビッグデータを始め、エネルギー分野の、あらゆるデータ利活用の行方が注目されている。

スマートメーターから取得できる30分値の電力使用量データをはじめ、エネルギーデータを活用した新サービスが盛り上がりを見せている。

スマメは電力系統の最適制御のため、スマートグリッドを構成する要素の一つとして、2014年から設置が進んでいる。24年度末をめどに全国全ての需要家に取り付けられる計画だ。これに先駆けて、東京電力管内では今年2月末時点で、約2800万台が取り付け済みとなっている。

スマメの電力使用量を計測したデータは30分単位で内蔵する通信機能によって電力会社に送られる。データは図のようにルートによって3種類のデータに分けられる。Aルートはスマメと一般送配電事業者をつなぐもの。検針値を取得したり、接続・切断など遠隔操作のために使われる。

Bルートはスマメと宅内にある家電機器を通信規格「エコーネットライト」で連携可能だ。エネルギー管理システム(EMS)によって、電力使用量や電気料金などの「見える化」、機器の制御のために利用できる。

Cルートは一般送配電事業者がAルートで得たデータを、第三者の企業が需要家にサービスを提供するためのもの。電力小売り事業者などにデータを送信し、料金計算などに使われている。

スマートメーターは通信のやり取り先で三つのルートがある

BルートやCルートのデータは、これまで分からなかった電力使用量が可視化され、需要家に有益な情報を提供する。家電機器の利用時間から推測すれば、節電に活用できる。ただ、データサイエンティストの河本薫滋賀大学教授は「エネルギーの使用量データを単に示しただけでは、継続的に一般的な需要家から関心を得るのは困難」と指摘する。

これに対し、事業者やサービス提供者は、スマメデータのほか、独自に機器を分電盤などに取り付けてデータを取得。さらに加工、成形し直すなど再構築することで、需要家が「魅力的」「有益」と感じるサービスやデータを生み出して提供する動きが加速している。

誰でもデータが一目瞭然 使いやすさで差別化

例えば、一般の需要家にとって簡単かつ分かりやすくデータ表示するスマホのアプリやインターフェースを開発している企業がある。

エナジーゲートウェイでは、スマートホーム向けに「ienowa」を展開する。宅内の分電盤に取り付けた電力センサーを介し、電気の使用量を家電機器別に、スマホアプリ上に表示することが可能。②のように、前月と比較して今月の電気代がどの程度になるかが把握できる。

Natureが販売する「Nature Remo E」ではエコーネットライト規格対応の住宅用太陽光発電や蓄電池、スマメと連携することで、電力の使用量やPVの稼働状況、蓄電池残量がアプリ確認できる。

エナジーゲートウェイの「ienowa」と、Natureの「Nature Remo E Lite」のスマホアプリ画面

またエネルギー以外のビッグデータ、通信や決済機能などスマホの利便性を組み合わせたサービスも登場してきた。ソフトバンクの子会社SBパワーは、各一般送配電事業者から取得したスマメのCルートデータを、独自のAIによる需要予測技術を活用したデマンドレスポンスサービスのトライアルを昨年夏から実施。今年は九州電力と共に取り組む。

スマホ専用アプリを通して、需要家に節電協力を案内し、節電効果に応じてポイントを付与する。ポイントはキャッシュレス決済サービス「PayPay」のPayPayボーナスと交換できる。節電に協力してもらうことで需要家に利益を還元し、モチベーションを高め、しかも需要家が簡単に参加できる仕組みを構築したのは画期的だ。

こうしたエネルギーデータを応用した新サービのス開発・普及の取り組みが、今後も増えていくことが期待される。