[社告]購読料・会費改定と誌面刷新・月刊誌購読者特典のお知らせ


エネルギーフォーラムが4月から変わりました!

「エネルギーフォーラム」は2024年4月1日から月刊誌の購読料、およびオンラインサービスの会費を改定するとともに、誌面を刷新し、サービス内容を拡充いたしました。
海外情勢による資源・素材価格の高騰や円安の進展などを背景にした物価上昇の波を受け、弊誌も運営コスト全般の上昇という深刻な問題に直面しています。これまで購読者皆さまのご事情に寄り添い、あらゆるコストの削減に努めることで、弊誌の購読料維持のための努力を続けてまいりましたが、現状においてコスト上昇は常態化、従来の価格を維持することが困難となりました。
こうした事情から、月刊誌の購読料につきまして、現行の年間17,688円(本体定価1,474円、税込み・送料別)を、24年4月号(3月31日発売予定)から年間22,560円(本体定価1,880円、税込み・送料無料)に改定させていただきました。併せて、「エネルギーフォーラム・オンライン」の年会費(税込み)につきまして、現行の個人17,688円、法人80,000円を、4月1日から個人19,440円、法人87,000円に改定させていただきました。
月刊誌の誌面につきましては、読みやすさの追求や記事の質向上を柱に、字体・デザインの変更、新コーナーの創設など、内容を刷新いたしました。またサービス面では、月刊誌の購読者を対象とする新サービスを導入。月刊誌の巻末に掲載しているパスワードを使い「月刊誌購読者特典 登録&ログイン」のページで利用登録をすれば、期間限定でオンライン会員向けの記事や「石川和男の白熱エネルギートーク」といった配信番組が無料で閲覧できるようになりました。
今後も、国内随一のエネルギーオピニオン誌として、国民経済的見地からエネルギー政策・ビジネス・技術開発等の動向を掘り下げるとともに、課題や問題点を追及してまいります。引き続き、「エネルギーフォーラム」をご愛顧いただきますよう、お願い申し上げます。

【特集2】創業来のエンジニアリング力発揮 太陽光発電事業でフル活用


【テス・エンジニアリング】

テス・エンジニアリングは、コージェネレーションや石油燃料から都市ガスへの燃料転換、ユーティリティーの更新など、省エネや環境、コスト削減などトータルにサポートするエンジニアリング会社だ。エネルギー管理指定工場に該当する大規模工場の顧客を中心に手掛けてきた。こうした顧客に対し、近年は太陽光発電の導入を提案しており好調だ。
日本国内の電力事情、世界的な情勢不安、円安などが重なり、エネルギー価格のボラティリティーは激しさを増し、この先も続くと見られている。髙崎敏宏社長は「太陽光はコスト面から見て、自家消費であれば採算が合う。環境価値も付与されるため時流に乗っている」と現状を説明する。

太陽光と蓄電池を併設した井村屋の工場


同社が扱う太陽光発電はEPC(設計・調達・建設)とPPA(電力購入契約)と二つの販売スキームを用意している。EPCは買い取りやリース契約、PPAは顧客の敷地内に無償で太陽光設備を設置する。ただし設備所有者はテス・エンジニアリングになる。どちらを選択するかは、企業の考えによってさまざま。23年6月期に同社が完成させた太陽光設備のうち、EPCは2万6800kW、PPAは1万1100kWだった。「PPAは契約が20年と長期にわたる。近年は太陽光設備の信頼性が証明されつつあり、企業のリスク要因が減っている」(髙崎社長)とのことだ。


小売電気事業者の知見 需給管理機能など利用


太陽光発電において、同社の強みは創業以来培った設備や工場構内工事に関する設備知見と累計100万kW超の施工実績、そして小売電気事業者としての需給管理機能などを太陽光発電事業にも展開している点だ。
23年11月には、三菱地所とバーチャルPPA契約を締結した。同社が三菱地所の関連施設の屋根上に太陽光発電システム(1400kW)を設置し、発電した電気を、同社グループの需給管理機能を活用しながら市場価格連動買い取り制度(FIP) を用いて卸電力市場などに売電し、売電した電気に紐づく環境価値を「非固定価格買い取り(非FIT) 非化石証書」として三菱地所に提供する。
23年10月発表の湖池屋九州阿蘇工場の案件では工場棟の屋根に?家消費型システムを設置したオンサイトPPAモデルだが、余剰電力が発生する場合は同需給管理機能を活?しながらFIP制度を?いて売電し、売電した電気に紐づく非化石証書を需要家に提供する計画だ。
髙崎社長は「企業の脱炭素化に貢献する取り組みを推し進めるため、さらに太陽光事業を拡大していきたい。再エネにとどまらす、コージェネ導入や燃料転換など、当社の中核となる事業も引き続き拡大していく構えだ」と話す。同社のエンジニアリング力を基礎にした太陽光事業は今後も多くの企業から注目されそうだ。

太陽光事業について語る髙崎社長

【特集2】豪雪地帯でも再エネを拡大へ 垂直・傾斜設置の太陽光設備が登場


【雪国太陽光】

 日本の国土面積のうち51%が豪雪地帯で、同地域に居住する人口は全体の15%と少なくない。2050年カーボンニュートラルを目指す上で、このような地域にどのように再生可能エネルギーを設置・導入していくかは今後、課題になっていくだろう。
 固定価格買い取り(FIT)制度が開始した直後には、4m近い積雪がある地域に設置対策なしにメガソーラーを建設し、春を待たずして全壊した事例もある。
 現在、雪国で太陽光を導入する際に、採用されるのがパネルを垂直に近い角度で設置する方式だ。こうすることで、雪が積もらず滑り落ちる。パネルにへばりついた雪も発電時の熱で溶けていく。
 雪国ならではのメリットもある。積雪があって晴天という条件が重なると発電出力が上がるのだ。家庭向けに雪国太陽光を手掛ける太陽光生活研究所では、顧客宅の発電量データを定量的に取得したところ、定格出力が3.4kWの設備で1.6倍の5.4kWに達したとのことだ。

エア・ウォーターの垂直型太陽光発電システム「VERPA」


 エア・ウォーターが手掛ける垂直型太陽光発電システム「VER
PA(ヴァルパ)」は豪雪地帯でも設置可能。パネル両面で受光発電できるため、平置き型・傾斜型と比較しても年間発電量に大きな差がない。こちらも地面からの反射光によって、優れた発電量を期待できるという。
 こうした再エネ未開の地に向けた商品開発がこれから盛り上がっていきそうだ。

【特集2】30年目標に向けて再エネを導入 国内外で500万kW構築目指す


【大阪ガス】

大阪ガスはDaigasグループ全体における2030年度の再生可能エネルギーの普及貢献目標を国内外累計で500万kWと掲げている。23年11月には、その中間目標の250万kWを達成した。
同社グループでは、04年に国内の風力発電事業を皮切りに、再エネ事業を開始。国内では太陽光、陸上風力、洋上風力、バイオマスなど多様な電源開発を進めている。太陽光はメガソーラーなど大規模な開発用地が減少していることから、固定価格買い取り(FIT)制度を利用した電源の買収と新規開発の2方向から進めている。
新規開発では、デベロッパーと協業し、全国各地で中小型太陽光発電の建設を行い、コーポレートPPA(電力購入契約)により大阪ガスが電力を買い取って需要家に販売するスキームを展開中だ。
「ターゲットとなる需要家は通常の電気代に再エネのプレミアム分を許容できる企業・団体。大手を中心に対外的にPR効果を重視する企業が先行して購入していった」。再生可能エネルギー開発部開発第2チームの上地尚徳マネジャーはこう説明する。
中小型は造成工事が必要ない用地を確保して建設するため、大規模案件と比べると比較的容易に開発できる。しかし近年、系統容量が確保しにくくなり、系統接続工事にも時間を要するようになった。加えて、一般送配電事業者から接続要件の回答を受け取っても、発電事業者である大阪ガスと需要家が意思決定した後に要件変更が出る場合があるなど、開発事業環境は困難さが増しているという。

PPAで活況の中小型太陽光発電所


そうした中にあって、同社が手掛けたコーポレートPPAによる新規開発規模は今年度中に累計10万kW超に達する見通し。国内で手掛けている案件数や規模はトップクラスであり、今後も開発案件を増やしていく方針だ。


国内10カ所で風力発電 事業環境の変化に注意

風力発電は国内10カ所で陸上風力が稼働中。陸上風力は風況が良い地点が限られてきている中、開発案件に注力する。風力開発を難しくするのがリードタイムの長さだ。環境アセスに3?4年、建設を含めると7?8年かかる。これだけの時間を要すると世の中の情勢が変化してしまい、当初の計画通りに進まなくなる可能性がある。国でも開発期間を短縮できるよう議論を進めている。再生可能エネルギー開発部開発第1チームの水本桂輔マネジャーは「物価高など、開発案件の置かれている環境が変化し開発が進められないことも今後懸念される」と話す。実際、海外の洋上風力では落札したものの、建設コスト上昇に耐えきれず、開発を断念した事例もある。
洋上風力では23年12月、三井物産、RWEオフショア・ウィンド・ジャパン村上胎内とともに、経済産業省と国土交通省により海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律に基づく「新潟県村上市及び胎内市沖海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域」における選定事業者に選ばれた。着床式洋上風力で出力は64・8万kW(38基)。「カーボンニュートラル実現に向けて、欠かせない電源」(藤原正隆社長)として、29年6月の運転開始を目指す。

印南風力発電所(和歌山県)


バイオマスは意思決定済みの案件が大型7件、中小型1件あり、建設と稼働を進めている。23年12月には、レノバと共同出資する「徳島津田バイオマス発電所(徳島県徳島市、7万4800kW)」、と同社100%子会社であるDaigasガスアンドパワーソリューションと九電みらいエナジーが共同で出資する「広畑バイオマス発電所(兵庫県姫路市、7万kW)」が運開した。広畑バイオマス発電所は輸入木質チップとパーム椰子殻(PKS)のほか、同社子会社のグリーンパワーフュエル(GPF)から調達する国産木質チップを使用。GPFが調達する国産木質チップは、林地残材・未利用間伐材などを活用する。GPFは、日本製紙の子会社の日本製紙木材、西信森林資源と国内の林地未利用木材などを発電用燃料として国産木質バイオマスの調達・販売を行うために設立された。上地氏は「20年という長期間にわたり発電所を運営していく。長期視点で安定供給と調達量の拡大を図るため設立した」と背景を語る。


海外のプロジェクトに出資 米国・豪州市場に期待

海外では、6カ所の太陽光発電所と1カ所の風力発電所のプロジェクトに出資する。このうち大半を占めるのが米国の太陽光発電所だ。米国はニューヨークに同社の現地法人があり、ガス火力への出資参画に注力してきた。このリソースを太陽光開発にも振り向けている。豪州においても、ゴーゴンLNGプロジェクトなどがあり事業拠点がある。これを足がかりに再エネ分野に進出している。
23年10月には、ACE Power Development Pty Ltdと、豪州東部で合計30万kW超の大規模集中型太陽光発電事業と合計50万kW超の蓄電池事業を共同開発すると発表した。豪州は日本と同様、50年目標で温室効果ガス排出量ゼロを掲げており、再エネ導入が進んでいる。家庭部門でも、屋根置き太陽光が普及し、昼間の電気料金が下がっている。太陽光で発電した電気の価値を上げるには、夕方以降の発電しない時間帯にピークシフトするしかない。蓄電池を導入し、電力系統の安定化に寄与する調整力として期待している。
資源・海外事業部再生可能エネルギーチームの田所克章ゼネラルマネジャーは「米国と豪州それぞれのマーケットに期待している。今後もこの2カ国を中心に開発を進めていくことになる」と話す。
グループ全体の30年500万kWという目標に向けて、大阪ガスは既存のリソースをフル活用するとともに即戦力採用なども行い、再エネ事業を推進していく方針だ。

【TOKAIHD 小栗社長】持ち前の営業力を基盤に 過去最高の売上高達成 次世代人財の育成に注力


社長就任して以来、さらなる営業力強化のために従業員の職場環境の充実を図ることに注力する。次世代に向けてはカーボンニュートラルへの対応、既存の枠にとらわれない積極投資を図っていく。将来の経営基盤として次世代人財の育成に取り組む。

【インタビュー:小栗勝男/TOKAIホールディングス社長】

おぐり・かつお 1982年3月日本大学経済学部卒、TOKAI入社。2007年アクア事業部長、11年ライフソリューション本部長、16年TOKAI社長をなど経て、22年9月から現職。

志賀 2022年9月に社長に就任しました。足元の業績を見ると、3期連続の増収と非常に好調です。要因について聞かせてください。

小栗 23年度上期(23年4~9月)は売上高が前年比1・1%増の1052億円で過去最高を更新しました。当社はリテールの会社であり、支えているのは営業力です。社員の頑張りがこの結果を生んでいると思います。

志賀 23年5月には就任後、初となる中期経営計画を発表しました。内容に小栗社長の独自色が出ていると思います。特に強調したい点はありますか。

小栗 30年に売上高4000億円、営業利益300億円、顧客件数500万件を目標に掲げています。この目標を実現するには、人財により気を配らなければなりません。そこで中期経営計画の一つに「ウェルビーイングの充実」を掲げました。人財への投資はコストではなく企業価値向上のため必要なものと位置付けました。人財育成と職場環境づくりなど人財・組織の活力最大化に取り組みます。

志賀 具体的にどのような施策を行いますか。

小栗 以前から、人事制度や福利厚生、給与面など、より働きやすい環境を整備して、「この会社に入ってよかった」と社員だけでなく、家族にも喜んでもらえる会社にしたいと考えていました。まず、社員の昇給を行いました。さらに子育て支援として、出産祝い金を子どもの出生に際して給付します。このほか、0~12歳の子どもを持つ従業員を対象にグループ会社が運営する託児所に会社負担で利用できるようにしました。

現在、全国に各事業でエリア拡大を進めています。新規エリアに派遣する責任者は課長クラスと決まっていますが、当社の人事制度では課長以上は試験を通らないと昇進できません。そうした中にあっても、優秀な人財を抜擢するため推薦制度を新たに創設し、昨年は17人を選抜しました。

また、中には地元での勤務を希望する従業員もいますが、余儀なく転勤を促す際には、喜んで転勤先に行ってもらうため、今後手当てを厚くしていく方針です。

通信やアクアなど 立ち上げに携わる

志賀 経歴を拝見すると、LPガスや都市ガスだけでなく、モバイルや宅配水などの新規事業立ち上げに携わっています。しかも新領域開拓の役割が多いと感じます。

小栗 入社以来、営業に携わり、中遠支店長、浜松支店長、栃木営業部長などを歴任しました。その後、新規事業を任されるようになりました。最初に任されたのはホームセキュリティーです。トーカイ・セキュリティ・ネットの社長に着任し、3万件だった契約数を当時の藤原明社長に「30万件まで増やすように」と言われて、手掛け始めました。その後、モバイル推進本部の営業推進担当となりソフトバンクの携帯電話の販売代理を手掛けました。半年で3万件の契約を獲得し、静岡県内でソフトバンクが携帯電話キャリアのシェアトップに躍進するのに貢献しました。

 アクア事業の立ち上げは、まったく一から始めたため、まず水源探しから開始しました。当時はバナジウムを含む水が体に良いと言われていたため、水源を求めて富士山の麓にペットボトルを携え20カ所近く回りました。さらに、協力会社の確保や工場の新規立ち上げなど、サプライチェーンの構築も担当しました。

【特集2】最新鋭火力発電をDXで運用 次世代ロールモデル構築へ


【JERA】

JERAは姉崎発電所の新1~3号機にデジタルパワープラントパッケージを導入した。これにより、発電所運用に関わるデータをクラウドに集積し業務の効率化・高度化を図る。

JERAは今年4?8月にかけて、姉崎火力発電所(千葉県)新1?3号機(各65万kW)
を運開した。同発電設備にはガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)発電設備を採用、燃焼温度の1650℃で高温度化したことにより、発電効率は世界最高水準の約63%(低位発熱量基準)を実現。更新前の設備と比較して1基当たりの年間発電量は約1割増加、CO2排出量は約3割削減した。姉崎発電所の佐賀賢太郎所長は「当社が保有する技術力と改善力の全てを注ぎ込んだ」と強調する。

今年運開した姉崎発電所新1~3号機


DPPでO&Mを効率化 事業環境変化にDXで対応

新1~3号機の運開で、同社がアピールするのが「デジタルパワープラント(DPP)」パッケージの導入だ。DPPは発電所のO&M(運転・保守)におけるリアルタイムデータや、これまで発電所員が保有していた知識や経験・ノウハウなどの情報をクラウド上に集積して共有化し、業務の効率化や高度化に役立てるものだ。
具体的には、三つのテーマで開発を進めている。一つ目は「時を超えてつながる」で、発電所運用に関する過去の膨大なデータを収集して予測に役立てる。二つ目は「空間を超えてつながる」で、発電所にいなくても遠隔地でデータを共有し、課題解決を図る。三つ目は「あいまいさを形にする」で、発電所の運用で熟練作業員の経験を頼りに運用していた技術をしっかり共有できる形にする―。これらに取り組むことによって、新しい価値を生み出していく。
渡部哲也副社長は「当社を取り巻く環境は大きく変化している。ウクライナやイスラエルなどに代表される世界の情勢、国内に目を向ければ少子高齢化、電力全面自由化など市場環境も大きく変わっている。この変化に対応するために、働き方を変えなくてはならない。これがDXに取り組む意義だ。最新鋭の発電所にDPPを導入することで、次世代を担う変革モデルを確立していく」と説明する。
新1?3号機の運転室を見るとDPP導入を推し進める様子が一目で分かる。写真のように、従来の運転室ではたくさん並んだスイッチや計器類が一切ない。運転員はパソコンを操作し、大きな共用モニターに運転状況やさまざまな情報が表示される。

姉崎発電所の運転室。スイッチや計器類は一切ない


DDPの中核を担うのは、同社東日本支社に設置したG―DAC
(Global-Data Analyzing Center)だ。同センターは国内外の発電所をIoTでデータ連携し、24時間遠隔サポートを行う部門で、現在はJERAの国内外発電所64ユニットを遠隔監視している。自社開発のアプリケーションを通して、設備の予兆管理によるトラブル回避、リアルタイムな情報とデータ分析による予知保全のサポートを行い、発電所の稼働率や熱効率の改善につなげている。発電所ではG―DACからデータ分析に基づく技術支援を得ながら、O&M業務を行う。


マイクロソフトと提携 グローバルにビジネス展開

9月にはマイクロソフトと発電所の運用効率向上、環境負荷低減を図るクラウドソリューションの共同開発を行うと発表した。具体的には、マイクロソフトの生成AI
や「Azure Digital Twins」技術、JERAが有する発電所データや知見、発電所の運用ノウハウを活用したO&Mソリューションを共同開発していく。
この一つとして、G―
DACと現場をつなぎ仮想空間(メタバース)を利用してO&M業務のやり取りを行う。G―DACのアナリストと発電所の作業員はアバターを通じて電話やチャットでコミュニケーションを図りながら、課題の解決を図る。海外の発電所の作業員との会話は同時に翻訳される仕組みになっている。
メタバース上では、JERAが長年蓄積してきたデータやノウハウを学習させた生成AI「エンタープライズナレッジアドバイザー(EKA)」が常時使用でき、「ChatGPT」のように自然言語で質問すると、膨大な資料に基づいた回答を得ることができる。これにより、発電所のノウハウを共有していく。

メタバース上のG-DACアナリストと発電所員
VRヘッドセットを装着してメタバースにアクセスする


JERAとマイクロソフトは、発電所運営の高度化、新たなイノベーションとビジネス機会を創出するための共同運営体制「Digital Acceleration Office」を構築する。
さらに、グローバルな顧客基盤を活用し、アジアを中心とした共同セールス・マーケティング活動も展開する予定だ。
DPPに関しては、今後も随時更新を行い、さらに性能を高めていく構えだ。

【特集2】供給体制から手掛けた燃料転換 点在する工場の低炭素化に貢献


【旭化成延岡地区】

旭化成延岡地区は複数点在する工場を自営線ネットワークで結び電力を供給している。電力の約90%は自家発電から賄われており、昨年3月にその電源の一部をコージェネに更新した。

旭化成延岡地区はグループ最大の生産拠点だ。1923年に合成アンモニアの製造を開始した同社発祥の地であり、現在も繊維、基礎化学品、樹脂・医薬品原料、メディカル製品、エレクトロニクス製品などを製造している。
工場は宮崎県延岡市内に複数点在しており、使用する電気の約90%を五ヶ瀬川水系にある水力発電所9基と、火力発電所4基でつくり、自営線で送って自給している。
このうち、火力発電所では昨年3月、CO2削減と、水力発電の利用拡大を目的とした需給調整力確保のため、第3火力発電所を石炭火力からガスタービンコージェネ(3万7000kW)にリプレースし運用を開始した。
コージェネ導入に当たっては、「燃料転換によるコスト増に耐えられるのかといった議論もあった。しかし、低炭素化、その先の脱炭素化に向けて天然ガスでいこうとの結論に至った」。延岡動力部動力課の弓削輝泰課長は、経緯をこう振り返る。

導入したガスタービンコージェネ


年間CO2排出量を削減 運用面でも改善効果大

従来の石炭火力では、石炭焚き水管ボイラーと抽気復水式蒸気タービンを組み合わせたボイラータービンジェネレーターを使用していた。蒸気需要に合わせて抽気蒸気量を、電力需要に合わせて復水蒸気量を制御するものだったが、蒸気タービンの運用制約上、復水蒸気量をゼロにすることができず、復水器で常時放熱ロスが発生していた。
これに対し、導入したコージェネは蒸気・電力需要の変化に対し柔軟な制御が可能であり、80?90%と高い総合運転効率を実現。経済的な価格差を縮小するとともに、年間CO2排出量を約16万t削減することに成功した。
運用面での改善効果も大きい。石炭火力ではミルで燃料を擦り潰してボイラーに投入する。この過程で石などの異物が混入するといったトラブルが多かった。着火するまでの時間もかかる。天然ガスは燃えやすく、需要への追従性が高い。負荷調整において1分で1000kWは楽にこなすとのことだ。コージェネでつくった蒸気と電力は、延岡地区の複数工場間で融通している。夏は空調など電力需要、冬は熱需要が高まる。これに合わせて、コージェネは出力を1万2000kWまで低減して運転できる仕様になっている。
コージェネ導入においては、燃料供給体制の構築も課題となった。同プロジェクト以前は、宮崎県内に大型内航船の受入基地がなく、新たな基地を建設する必要があったからだ。そこで旭化成、地元の都市ガス事業者である宮崎ガス、基地建設や設備に強い大阪ガスが中心となり、どのような規模と設備で、基地を建設すべきか検討を進めてきた。
その後、18年12月に同工場への天然ガスの安定供給と普及拡大を目的に「ひむかエルエヌジー」を設立。宮崎ガス、大阪ガス、九州電力、日本ガス、旭化成が出資する合弁会社で、宮崎県内最大規模のLNG基地と約6㎞のガス導管を建設した。同社によって、内航船で調達したLNGをタンクに受け入れ、気化したガスを導管に送出し、コージェネまでガスを送り届けている。基地とコージェネ間は通信回線で結ばれており、緊急時はガス製造を制御するなど、保安面での連携も行っている。

新設した「ひむかエルエヌジー」の基地


延岡地区の電力設備は50 Hz マイクログリッド運用に対応


旭化成延岡地区には、ほかにもユニークなエネルギー事情がある。創業期にドイツから50 Hzの発電設備を調達し、電源・送電網を自社で整備したため、西日本エリアでありながら、各工場では50 Hz対応の製造設備を運用しているのだ。自社で有する50 Hzの発電所や自営線、九州電力送配電からの60 Hzの系統電力が混在する。系統電力は周波数変換装置で50 Hzに変えて供給。導入したコージェネは社内環境に合わせた50 Hz仕様となっている。
エネルギーマネジメントにおいては、各工場のエネルギー情報を集約し、電力需要と各水力発電所の電力供給を精度良く予測し、60 Hz系統電力とコージェネを含めた自家発電設備の運用計画へ反映させている。
9基ある水力発電所は流れ込み式で、川の水をそのまま発電所に引き込み発電する。貯水槽を持たないため、夏の豊水期や冬の渇水期などは水量変化に伴い発電量が変化してしまう。これには、過去30年間に及ぶ発電実績データを基に水力発電の発電量を予測し、60 Hz系統受電と自家発電設備の運転を効率的に組み合わせて運用する。「台風シーズンは水量が増えて、土砂や流木が流れて取水できないこともある。水力を最大限活用していくが、できないときのバックアップとして、コージェネは一役買っている」(弓削氏)
また落雷の発生など、非常時にはその影響を回避するため、一般送配電線網から独立した運転を行う場合がある。こうした非常時には、延岡地区に分散する自家発電設備と各工場間を結ぶ自営線ネットワークで地域マイクログリッドを形成し電力供給を継続する。導入したコージェネは、こうした運用にも対応できるように機種を選定し、他の自家発電設備との負荷分担も考慮した制御を行っている。
同社では、今後も低・脱炭素化に向けた取り組みを継続していく方針だ。「稼働中の石炭火力発電がまだある。使用率の低減を図りながら、コージェネへのリプレースを含め検討中だ。バイオマス発電の拡大、水素やアンモニアなどの次世代燃料、CO2クレジットによる相殺などあらゆる選択肢を模索している」と弓削氏は話す。
製造業において、新たな設備やエネルギーを導入する際、コストは重要なファクターとなる。これをクリアできる低・脱炭素化技術の登場が従来にも増して望まれている。

【特集2】強みが生きるCCS・CCUS 脱炭素の切り札に技術開発進める


【石油資源開発(JAPEX)】

2050年カーボンニュートラル実現に向けて、石油資源開発(JAPEX)は「JAPEX2050」を策定し50年までに温室効果ガスネット排出量ゼロを目指す。 具体的には、同社のE&P(探査・生産)事業の知見が生きるCCS(CO2回収・貯留)/CCUS(CO2回収・利用・貯蔵)による実質排出量の削減を主軸にすすめていき、同分野のトップランナーとして早期実現に向けて注力していく方針だ。


苫小牧と東新潟で調査を受託 生産した油ガス田を活用へ


その代表的な取り組みが、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の23年度「先進的CCS事業の実施に係る調査」の受託だ。JAPEXは苫小牧と東新潟エリアを請け負う。北海道・苫小牧エリアは出光興産と北海道電力、東新潟エリアは三菱ガス化学と東北電力、北越コーポレーション、野村総合研究所をパートナーとしてCCSの実現性調査を実施する。野村総合研究所を除くいずれの企業もCO2を排出源となる発電所や製油所、プラントや工場を持つ企業。しかも、貯留地として有望視されるJAPEXの油ガス田周辺に製造拠点があるため、CO2輸送にコストが掛からないのが大きな特長だ。

貯留地として有望視される東新潟ガス田


「油ガス田は生産した原油や天然ガスの貯留実績がある。CO2を圧入後も長期にわたって変化しない安心感がある。ただ、目標とする30年時点で貯留量年間約150万tに対し、規模が適しているかどうかは調査で見極めていきたい」。環境事業推進部・新規事業推進部担当の池野友徳常務執行役員はこう話す。
なお、苫小牧エリアは勇払油ガス田と、海域の新規貯留地の二つ候補地があり、年度内に決定する方針だ。
国のロードマップを見ても、水素やアンモニアなどの次世代燃料が台頭していく一方で、熱源として天然ガスの利用は続くとみている。その中でCO2の処分方法としてCCS・CCUSは必要であると示している。池野常務は「当社のスタンスも同様だ。長期にわたってこの取り組みを続けていく」と強調する。脱炭素の切り札にするべくCCS・CCUSの技術開発に注力していく構えだ。

【特集2】CO検知で火災通報をより早く 安全向上に警報器買い替えを促進


【新コスモス電機】

新コスモス電機の一酸化炭素検知機能付き火災警報器「PLUSCO(プラシオ)」が発売から半年で2万台を突破するなど好調だ。同製品は100ppmの一酸化炭素(CO)を検知すると、音声で注意報を発するとともに、自動的にセンサー感度を通常の約2倍に引き上げ、煙センサーのみの火災警報器より早く発報するなどの特長を持つ。

一酸化炭素検知機能付き火災警報器「PLUSCO」


火災実験ラボ開設 多くの来場者で好評

2011年に全ての住宅に火災警報器の設置が義務化され、今年6月時点での設置率は84・3%に達する。設置の普及により、住宅火災による年間死者数は900人と減少したが近年は横ばい状態だ。令和4年版の消防白書によると、建物火災による死因のうち、CO中毒・窒息が4割を占めている。COは血液中のヘモグロビンと結び付きやすく、ごくわずかな量でも吸引し続けると中毒を引き起こすなど非常に毒性が強い。しかも無色・無臭。1分1秒でも早くCOの存在に気付くことが生死を分けることになる。「火災原因のトップはタバコの火の不始末による寝具への着火。布団は不完全燃焼を起こしやすく、炎はほとんど出ない。CO検知での注意喚起が有効」とリビング営業本部開発営業部の大和功部長は説明する。
新コスモス電機は5月に火災実験室「PLUSCO Lab.(プラシオラボ)」を兵庫県三木市に開設した。COの危険性と合わせて、プラシオの有効性を伝えるための施設となっている。ラボ内では、寝室と台所を想定した実験スペースで、布団くん焼火災実験、天ぷら火災実験などを実施する。実際に布団に火をつけ、煙式のみの火災警報器よりCOを検知するプラシオの方が早く警報する様子や、天ぷら油を熱して熱感知式より煙感知式の警報機の方が早く発報する様子など、火災と警報器の様子などが体験できる。

連日盛況のプラシオラボ


「開設して数カ月経つ。ガス業界や消防関係などを中心に多くの方に来場していただいている。10月までほぼ毎日予約で埋まっている」(大和部長)と盛況だ。
同社では小中学生を対象に「COとはどのようなガスなのか」といった内容を分かりやすく説明する教育プログラムも実施する予定。さらに、アミューズメント感覚で消費者が火災や警報器について理解できる内容なども目指す方針だ。
警報器は電池駆動で、寿命は約10年程度。前述の火災警報器の義務化の時期に設置した製品がちょうどリプレース時期に当たる。警報器が作動しないと、火災が増える可能性がある。同社では、販売チャンネルをガス事業者経由の販売に加え、電子商取引(EC)サイトや全国の家電量販店、ホームセンターに拡大するなど、販売活動に力を入れ、リプレースを促していく構えだ。

【特集2】大地震からのガス復旧に貢献 重要施設向け製品が好調


【I・T・O】

ガス供給機器メーカーのI・T・Oが35年にわたり注力するのが移動式ガス発生装置だ。1995年の阪神・淡路大震災、2004年、07年の新潟中越地震と中越沖地震、甚大な被害をもたらした東日本大震災、記憶に新しい16年の熊本地震や18年の大阪北部地震―。いずれの地震においても都市ガス事業者は同装置を携えて被災地で復旧作業を行った。
移動式ガス発生装置の誕生は、90年までさかのぼる。当時、旧通産省では都市ガスを高カロリーガスに統一する「IGF21」計画を進めており、日本ガス協会のワーキンググループで13Aに統一するための熱量変換工事用設備として移動式ガス発生装置を取り上げた。しかし︑当時のガス事業法では使用が認められておらず、阪神・淡路大震災の際︑避難所で都市ガスが使えず各方面から指摘された︒﹁移動式を活用できないか﹂との要望で急きょ制度が見直され、同年中に製品化にこぎ着けた。


簡単に操作できる装置 病院など重要施設向けに販売

被災現場では一刻も早い復旧が求められている。特に避難所となる学校や、病院や福祉施設などはエネルギーが不可欠だ。そこで、同社はだれでも簡単にタッチパネルで操作して供給できる液化石油ガスエアー(プロパンエアー)発生装置「New PA」を開発した。現在は、同装置を組み込んだ都市ガスと電気を製造する防災減災システム「BOGETS」として販売している。これはNew PAと、都市ガスとプロパンエアーを切り替えるワンウェイロックバルブ、耐震LPガス容器スタンド、ガス成分とガス臭を吸着するパージユニットなどで構成される。
「医療機関は既設の発電機が医療設備の稼働に利用できると思っているが、実際はスプリンクラーなど消火設備向けなので利用できない。小中学校では体育館の空調設置がこれから進む。そうした施設に向けてガス発電機と合わせてさらに拡販していきたい」と営業本部長の高野克己氏は話す。

防災減災システムの核となる「New PA」


今年も台風が甚大な被害をもたらしている。全国各地の自治体がBOGETSに関心を寄せているという。災害に欠かせない存在として、さらに普及していきそうだ。

【特集2】合成燃料用試作プラントを建設 サプライチェーンの構築を急ぐ


【ENEOS】

カーボンニュートラル(CN)社会の実現に向けて、ENEOSは次世代エネルギー事業に多角的に参入し、合成燃料の開発において、合成燃料やSAF(再生航空燃料)などにも取り組む。2040年までに、合成燃料はプラント規模として日産1万バレル程度、SAFは国内最大の供給体制を確立しシェア50%獲得を目指している。

5月にトヨタと合成燃料の走行試験を実施した

合成燃料の開発は22年にグリーンイノベーション基金(GI基金)事業として採択されたことを契機に研究を本格化した。GTL(ガス液化油)技術で培ったFT(触媒反応)合成技術やアップグレーディング技術などを活用し、合成粗油を製造、精製することで目的の液体燃料をつくり分けることができる。

合成燃料は石油由来の製品と同等の性状でありながら、水素とCO2を原料とするため、製品ライフサイクル全体においてCO2排出量を抑えることのできるCN燃料である。

合成燃料の実用化に向けた課題はコストだ。大量の再エネ水素と高濃度のCO2を調達し安価な製造が必須と言われている。経済産業省の試算によると現状の製造コストは1ℓ当たり700円程度で、内訳は水素が634円、CO2が同32円、製造コストが同33円。水素が合成燃料コストの大半を占める。将来、海外の水素価格が政府目標の127円まで下がれば、そのコストは200円程度に下がると予測されている。

早坂和章サステナブル技術研究所長は「製造コストの大半を占める再エネ水素を安価に調達しなければならない。まずは国内でサプライチェーン構築に向けた開発を行う。商用化の製造拠点は決まっていないが、海外での製造も想定している」と説明する。

この目標に向けて、同社では日産1バレルのベンチプラントを24年度上期から運転を開始し、検証を行う。その後、同300バレルのパイロットプラントの運転を通じ、その後できるだけ早い段階での社会実装を目指す。

航空燃料の10%をSAFに 和歌山製油所を製造拠点

SAFでは、政府が国内航空会社や石油元売りに対し、30年までに航空燃料使用量のうち、10%をSAFに置き換えるよう促している。これに対応するため、ENEOSでは、和歌山製油所を活用し製造体制確立に取り組んでいるほか、国内生産開始前の対応として、輸入体制構築を進めている。

SAFの原料調達・製造技術においては、ノウハウと実績を持つ仏エネルギー大手のトタルと協業。将来的に両社は年間30万t(40万㎘)のSAF製造を想定し、製造事業を行う合弁会社を設立予定だ。海外でも、日本への輸出を視野に入れ、豪州Ampol社と製造設備投資に関する初期検討を開始した。

開発や事業化の取り組みが急速に進む合成燃料とSAF。石油元売最大手の取り組みが今後の動向の大きな鍵を握っている。

【特集2】脱炭素化を加速する最先端実証 CCS要素技術の気になる中身


【関西電力舞鶴発電所】

火力発電の脱炭素化に向けた有力技術の一つとして注目されるのがCCSだ。サプライチェーン構築に向けて、関西電力の舞鶴発電所で二つの実証が始まっている。

ベースロードとして、重要な役割を果たす石炭火力。この安定供給維持に欠かせない電源においても、2050年のカーボンニュートラル(CN)達成に向けては、CO2排出量削減を図る取り組みを進めていかなければならない。その有力候補の一つがCCS(CO2の分離・回収)だ。CCSはこの数年でCN達成に必要不可欠な技術であるとの認識が世界的に急速に広がりつつあり、日本においてもさまざまな実証が立ち上がっている。

二つのCCS実証が開始 コスト削減を進める

石炭火力におけるCCSの取り組みは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実証事業「CO2固体吸収材の石炭燃焼排ガス適用性研究」と「CO2船舶輸送に関する技術開発および実証試験」がある。現在、二つの実証は関西電力の舞鶴発電所(出力180万kW)を舞台に展開中だ。

舞鶴発電所の固体吸収材実証プラント建設イメージ


固体吸収材を用いた実証は、川崎重工業と地球環境産業技術研究機構(RITE)が実施する。舞鶴発電所の敷地内に省エネルギー型CO2分離・回収システムのパイロット設備を建設。発電所の燃焼排ガスの一部を利用し、川崎重工の「KCC移動層システム」とRITEのCO2用固体吸収材を用いてCO2を分離・回収する。
分離・回収には、これまでアミン水溶液を用いた吸収法が採用されてきた。ただ、CO2を吸収したアミン水溶液からCO2を分離するには、110℃程度の処理熱が必要になる。これに対し、実証するRITEの固体吸収材では同60℃程度まで低減できる見込みだ。NEDO環境部次世代火力・CCUSグループの布川信主任研究員は「CCSの課題の一つにコスト低減がある。固体吸収材によって熱処理温度を大幅に下げることができればコスト削減につながる」と期待する。
固体吸収材はCO2を吸着する性質を持つアミンを含有した球型多孔質セラミック材料で、これをKCC移動層システムに入れ込む。同システムには三つの工程があり、吸収塔で固体吸収材を用いて排煙からCO2を回収し、再生塔で吸収材に蒸気を流してCO2を分離。乾燥塔で吸収材を乾かした後に吸収塔に戻して再利用する。これを循環させて行う。
今回、舞鶴発電所に建設する実証設備の処理能力は日量40t規模。実証ではシステムの運用性や信頼性の評価、さらに固体吸収材の製造やプロセスシミュレーションなど基盤技術を開発し、固体吸収材の適用性拡大を図る。
CO2船舶輸送実証は、日本CCS調査、エンジニアリング協会、伊藤忠商事、日本製鉄の4者が実施する。舞鶴発電所から排出されたCO2を液化して北海道苫小牧市まで専用船を使って、出荷・輸送から受け入れまで行い、一貫輸送システムの確立、船舶輸送の事業化調査を実施する。年間1万t規模の輸送を行う計画だ。
CO2船舶輸送においても低コスト技術の開発が鍵となる。「液化CO2を低温にすれば、輸送タンクへの圧力を低下でき、タンクの肉厚を薄くしコスト削減を図ることができる。最適な温度・圧力条件を探していく」(布川主任研究員)
輸送船は三菱造船が建造した。エンジニアリング協会が、船主である山友汽船から傭船、研究開発設備である液化CO2の舶用タンクシステムを搭載し運用する。
固体吸収材と輸送船の実証は連携しており、固体吸収材を使って回収したCO2を液化して、ローディングアームで輸送船に搭載して苫小牧市まで運んでいき、降ろして貯蔵タンクに入れる工程までを実証する。

液化CO2輸送試験船のイメージ図

90年代から取り組む関電 CCS実用化に期待

実証の場を提供する関西電力もCCS実用化に向けて取り組みを1990年代から進めてきた。CO2回収装置の研究を三菱重工エンジニアリングと共同で実施。南港発電所(大阪市)にパイロット設備を建設して、吸収液「KS1」を開発した。現在までに「KS21」まで更新され、回収設備は商用化されている。
昨年3月には、国の50年CN宣言を受けて「ゼロカーボンロードマップ」を発表。火力発電の脱炭素化に向けた手段として水素・アンモニア発電、CCSを挙げた。CCSは分離・回収、輸送、貯蔵のバリューチェーン全体に関わっていくことも含め検討を進めている。今年1月には、三井物産と貯留に関する事業性調査の覚書を締結。関西電力が運営する火力発電所から排出されるCO2を対象として、関西電力が回収、三井物産が輸送・貯留を主に担当し、バリューチェーンを一気通貫した事業性などを調査・検討する。
加えて、川崎汽船と液化CO2の船舶輸送に関する共同検討について覚書を締結しているほか、CCSバリューチェーンの事業性調査をエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)から受託している。
「50年CN達成からバックキャストして検討を行う中で、あらゆる技術の進歩に期待している。CCSは実用化するにはコスト低減など課題はたくさんある。一つひとつ解消して実用化にこぎ着けたい。NEDOの実証では、バックアップする役割を担い、良い成果を上げることを願っている」。関西電力火力開発部門脱炭素技術グループの山本哲生チーフマネジャーはこう話す。
電力事業者から見れば、CCSをはじめとしたCN達成に向けたコストは追加でかかるものであり、前述のように可能な限り低減していく必要がある。元来、発電コストが安い石炭火力で、CCSを実現することへの期待は大きい。

(舞鶴発電所は3月14日に火災事故が発生したが、運用を再開。同社への取材は3月6日に行った)

【特集2】大型車両への大流量充填 技術センター新設で開発加速


【トキコシステムソリューションズ】

国内での水素利用は、トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)「MIRAI」をはじめとした乗用車がけん引役となって始まり、水素ステーションなど関連施設の整備も進められた。現在、そうした動きに加え、トラックやトレーラーなど大型車両分野の開発・普及に向けた目標が設定されつつある。水素ディスペンサーにおいても、大型車両に合わせた高圧・大流量品の開発が始まっている。


こうした次世代品の開発を加速させるため、トキコシステムソリューションズは昨年9月、水素先端技術センターを開設した。設備には従来比5・5倍の吐出能力を有する圧縮機、同2・4倍の蓄圧器、同5・5倍の模擬充填タンクなどを導入。これにより、従来比3倍以上の大流量充填が実現し、乗用車など小型FCVでは3分程度、大型トラックでは10分程度で済ませる時間短縮技術や、1台のディスペンサーで乗用車とトラックなど異なるサイズの2台の車両に同時に水素を供給する充填技術、圧縮機や蓄圧器などのステーション機器の効率的な運転制御技術などの開発を手掛けている。さらに、出荷前試験の能力も従来の1カ月当たり最大6台から同20台へ引き上げた。
開発テーマのうち、FCVへの2台同時充填は、蓄圧器にためた水素をFCVタンクとの差圧を利用する。従来設備のまま2台同時に充填すると、タンクの圧力が低いFCVの方に水素が流れていき、先に充填しているFCVは待たされてしまう。設計開発本部の榧根尚之担当本部長は「圧縮機、蓄圧器の台数を増やせば解決するが、コスト増を最小限に抑えることが求められる。その解を見つけていく」と話す。


福島県で実施のNEDO事業 大流量ディスペンサー開発

このほか、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「超高圧水素インフラ本格普及技術研究開発事業」にも参画する。昨年度、整備された「福島水素充填技術研究センター」(福島県浪江町)で、大型車両への大流量水素充填技術や計量技術の開発・実証を行っている。ここでも、大型車両への充填時間を短縮することを目指している。
「従来のトラックなどが軽油を給油するのにかかる時間と同等の所要時間がターゲットだ。大型車両向けでは、1台のディスペンサーから2本のノズルで同時充填する開発を進めている。これは従来のトラックが軽油を2本のノズルで給油しているのと同様の考えだ」(榧根氏)
大流量に向けては配管など周辺技術の開発も進める。エンジニアリングも手掛けるトキコならではの取り組みだ。FCVの普及には水素供給を支える設備側の取り組みも不可欠であり、同社から目が離せない。