【特集1】プロセスの公正性について検討を 寿都・神恵内で見えた課題
寿都町、神恵内村での文献調査では、調査のプロセスでの公正さの点で課題が明らかになっている。必要な手当てを行い正当性が認められれば、ステークホルダーの共考・協働を得て対処することができるだろう。
2023年は日本の高レベル放射性廃棄物(HLW)政策・事業にとって節目の年となるであろう。まず、北海道寿都町ならびに神恵内村での文献調査の結果が示されることが見込まれる。地域の判断もなされていくことになるだろう。
22年夏以降、政府の原子力政策見直しの中で、HLW処分についても取り組みの強化がうたわれてきた。23年1月には岸田文雄首相自ら、政府からの申し入れをより積極的に行って、ほかの地域での調査受け入れを目指す旨の国会答弁を行っている。
3・11複合災害後の一連の政策見直しの動きを経た「基本方針」の改定(15年5月)からまもなく8年となる。この間には前述の通り、北海道の二つの自治体での文献調査入りという大きな政策・事業上の動きがあった。
他方で総合資源エネルギー調査会の放射性廃棄物ワーキンググループ(WG)は19年11月から22年4月までの2年半、開催されなかった。独立の立場から政策・事業をチェックするべく現行の基本方針に基づいて設けられた、原子力委員会の放射性廃棄物専門部会も16年9月以来、開かれていない。
コロナ禍という特別な事情はあったにせよ、こうした会議体も活用して、継続的に政策・事業の見直しを行うべきではなかったか。
筆者としては、寿都、神恵内両自治体でのこれまでの経過からしても、候補地選定プロセスの公正さに関わる課題を洗い出し、必要な手当てをすることが必須だと考えていた。HLW処分政策・事業の正当性は、今後、さらに複数地域での話し合いを進めるにはなお不十分だからだ。
事業の正当性は十分か課題を洗い出し手当を
調査受け入れの際の手続き、「対話の場」の在り方や進め方、交付金に関わる仕組みなどが真っ先に検討対象として挙げられる。いずれも公正さを欠くと見なされれば、たちまち政策・事業の遂行を困難にするし、逆に信頼を得て政策や事業の正当性が高まれば、ステークホルダーの共考・協働による対処を促進する事柄である。
そうした中、本稿執筆中(2月3日)に政府が基本方針の改定を決めたとの報道に接した。前回の改定では放射性廃棄物WGでの約2年に及ぶ議論を経たが、政府は今春にも閣議決定するという。
広く関係者や有識者、何より当事者となった両自治体の方々からのフィードバックを丁寧に反映するプロセスを欠いたまま基本方針が改定されるなら非常に残念だ。
後世において23年の動きがどのような節目として評価されるか。肯定的な歴史として記憶されることを願いたいものである。
じゅうらく・こうた 2003年東京大学文学部行動文化学科社会学専修課程修了。08年東京大学学際情報学府博士単位取得満期退学(博士)。東京大学大学院工学系研究科特任助教などを経て、18年から東京電機大学大学院工学研究科教授。