【舟山康江 国民民主党 参議院議員】農業の叡智でエネルギー創出

ふなやま・やすえ 1966年埼玉県越谷市生まれ。90年北海道大学農学部卒、農林水産省入省。経済局国際部、関東農政局勤務などを経て2000年退官。小国ガスエネルギー入社。07年参議院選で初当選。当選2回。

中央官庁の官僚として農政に携わったのち、結婚を期に地方LPガス会社の経営に参画。

国会では農業とエネルギー政策の最適解を探し、地方創生に情熱を燃やす。

生まれ育ちは埼玉県だが、母の実家が北海道で農業を営んでいたこともあって農業に興味があった。また、高校時代にはアフリカの飢餓救済に向け、世界中のミュージシャンがキャンペーンを行った「Band Aid」の活動などをきっかけに、世界の食料問題にも関心を持つようになる。

進路は、「命の源は食料、そして農業。厳しい環境下でも生育可能な農作物を作ることに貢献したい」との思いで北海道大学農学部に進学。卒業後は、農林水産省に入省し、本省で経済局国際部や大臣官房に勤務したほか、経済企画庁や関東農政局、近畿農政局などに勤務。「官庁での仕事は忙しくもやりがいがありました」と振り返るように、時には国際交渉の場に立ち会うなど農政全般に携わった。

しかし、仕事を続ける中で、「農業政策に携われるとはいえ、自分が描く理想の農業と政府が進める方向の違いに悩んだり、自分をはじめ官僚の限界を感じたこともありました」と振り返る。

農水省には10年間務めたが、結婚を機に退官。夫の地元である山形県小国町への移住を決意する。夫の家業はLP販売会社の小国ガスエネルギー。これまでのキャリアとは全く無縁のLPガス業界に足を踏み入れた。小国町では商工会の会合や地域のイベントにも多数参加し、また自身もLPガスの各種資格を取得しながら事務・接客業務にも携わった。

こうした活動を行う中、「これまで、大規模偏重型の農業政策が続いたことで、地方の社会を支える小規模農家が圧迫される現実を見た。これは経済でも同じことが言えて、中小企業は苦境に立たされている。地方を創っているのは中小企業で、地元で頑張る方々の暮らしを支えたい」との思いが芽生えた。すると、地元政界関係者から「選挙に出ないか」との誘いがあり、2004年の参院選で民主党より山形選挙区から出馬するも落選。07年に同じ選挙区で再挑戦し、初当選を飾る。

09年には農水大臣政務官を経験したほか、12年に民主党を離党して「みどりの風」の共同代表なども務めた。現在は国民民主党に所属し、党の政務調査会長および農林水産調査会長を務めている。

LPガスは地域を支える大事な資源 地方にはエネルギーが眠っている

注力する政策課題は農業政策だ。「農業は地方の経済や雇用の受け皿であるだけでなく、治水や減災にもつながる」と、一次産業の発展がほかの産業の発展にも資すると主張する。

「LPガスは地域に根差した大事なエネルギー」と強調し、「電気や都市ガスと比べても災害からの復旧が早いし、分散型のエネルギーとして活用することもできる」と、LPガスのメリットを説明する。

会社経営に携わり、深く感じ入ったのが、「LPガス会社は地域を支える大事な企業である」という点だ。「私たちの仕事は燃料を売ることだけではなく、地域を見守るという役割も持っていると思う。軒先を回り、需要家と触れ合うのは一見非効率にも見えるが、地域をつなぐ意味でも大事なこと」

過去にも夫がLPガスの配達を行っているとき、郵便受けに大量の封筒などがたまっている家があった。もしやと思い宅内に上げさせてもらうと、体調を崩した需要家がいた、という経験もあったという。

「カーボンニュートラル化」が叫ばれる中、エネルギー業界にも脱炭素化の波が押し寄せ、LPガス業界でも難題に立ち向かおうとさまざまな取り組みがなされている。「設備の高効率化でCO2排出量を抑制することはもちろん、国としても研究開発投資を積極的に行い、既存の技術に新たな革新的な技術を加え、官民挙げて課題解決を図るべきだ。古河電工が家畜のふん尿からLPガスを精製する技術を開発したことは、循環型社会の一つのモデルになり得るのではないか」と語った。

また、政府は現在、再エネの拡大に向けて、内閣府にタスクフォースを設置し、営農をしながら農地の上に太陽光パネルを設置する、いわゆる「ソーラーシェアリング」の拡大に向けた課題について議論を進めている。

こうした動きについて、「農業用水路を使った小水力や、もみ殻を使ったバイオマス燃料など、農業とエネルギーは親和性が非常に高い存在。地方にはまだまだエネルギー源が眠っている」と評価する。だが一方で「農地は生産基盤であり、その根幹を壊さないことが重要。一定の要件を設けるなど、再エネと農業生産とのバランスをしっかりと取りながら行われるべきだ」と、慎重な議論を求めた。

座右の銘は「足を知る」。「無いものねだりからあるもの探しへ。知恵を絞り、調和を求めることが持続可能性にもつながる」との発想で課題解決に臨む。魅力ある地方や、さまざまな産業が交差する農業の実現に向けて、これからも日々情熱を燃やし続ける。

菅首相が施政方針演説で言及 「炭素価格付けを検討」の波紋

昨年のカーボンニュートラル(実質ゼロ)宣言に続き、菅義偉首相がカーボンプライシング(CP)にも言及した。1月18日に衆参両院本会議で行った施政方針演説において、実質ゼロに向けた新たな方針として、2035年までに新車販売で電動車100%を目指すことなどと併せ、「成長につながるカーボンプライシングに取り組む」と述べたのだ。

施政方針演説で、菅首相が新たな方針としてCPに言及した (提供:朝日新聞社)


首相は昨年末、梶山弘志経済産業相と小泉進次郎環境相にそれぞれCPの検討を指示。その直後から、小泉氏は「来年(21年)のうちに一定の取りまとめを得ることを目指したい」と意欲を示していた。環境省は専門チームを立ち上げ、2月にCPに関する小委員会を再開させる予定だ。

同省はこれまで、CPの議論は産業界とも丁寧に話し合い、細く長く議論を続ける方針を取ってきた。だが、小泉氏が成果をアピールできる次の玉としてCPに目を付け、早期の決着を求めていることで、省内では今後の進め方について意見が割れ始めている模様だ。

一方、経団連の中西宏明会長が「拒否するという方向で出発すべきではない」と語るなど、経済界も一部では「CPには断固反対」という、かつての姿勢を軟化させるような雰囲気も漂う。だが、あるエネルギー業界関係者は「官邸は本質的な勘違いをしているのではないか。コロナ対応だけでなくこの問題でも迷走すれば、サービス業から製造業まで産業総崩れになる。こんな状況下で成長につながるCPの制度設計が本当に可能なのか」と訴える。

国民負担の増加は不可避 環境省と経産省の着地点は

一部報道では、現在の地球温暖化対策税率のCO2t当たり289円の4倍、同1000円超という水準が一つの目安になるのではないかと指摘されている。だが、電気料金だけをみても固定価格買い取り制度(FIT)の賦課金に加え、再エネ主力化に向けた送配電網の増強コストが、今後国民にのしかかってくる。

「例えば、部門ごとにトータルの電気料金はいくらまで許容できるのかをまず整理し、そこからCPの水準を導き出すアプローチでなければ、議論は平行線のままだろう」(前出の関係者)

一方の経産省は、17年にまとめた長期地球温暖化対策プラットフォーム報告書が議論の出発点となりそうだ。当時掲げていたのは実質ゼロではなく50年80%減目標だが、すでにパリ協定は発効済みの段階だ。

この報告書によると、日本はエネルギー諸税だけでもCO2t当たり約4000円と、炭素価格全体では国際的に高額な水準であり、追加的なCP導入は不要と結論付けた。また昨年の実質ゼロ宣言後も、ある経産省幹部は「CPには反対で、さらなる負担を経済界に求めるようなことはしない」と口にしている。  

日本経済の悪化に歯止めがかからない中で、増税につながりかねない政策に国民の理解が得られるとは考え難い。環境省と経産省が今後どのように落としどころを探っていくのか、注目される。

情報発信の弱点 PDF依存から脱却を

【おやおやマスコミ】井川陽次郎/工房YOKIA代表

パソコンでお馴染みの「PDFファイル」に、日本の政府や企業は依存し過ぎだと思う。

日経6月6日朝刊「IT競争力 コロナが試す」と「日本はデータ貧困国 コロナ情報収集・開示の手際悪く 迅速な対策の足かせに」が、警鐘を鳴らしている。

記事は「危機対応で各国政府のIT(情報技術)競争力が試されるなか、日本の出遅れは際立つ。接触確認アプリの開発は遅れ、給付金のネット申請では障害が頻発する」と憂える。さらに「対策に必要なデータが見劣りする。政策、経済活動、医療が場当たり的となり、民間の創意工夫も引き出せない」と手厳しい。

具体的には、「(感染者数などのデータを)コンピューターで加工しやすい形式にまとめている自治体がある一方、PDFファイルを載せるだけの自治体もある。これでは迅速な比較・分析はできない」と問題点を挙げる。

PDFは、印刷用のデータ形式だ。書籍や報告書の作成には便利だが、書かれた内容をネット経由で読み取ったり、加工・分析したりするのには向かない。

残念な例の一つは、感染最多の東京都の対応だ。感染データはPDF形式で都のサイトに公表されるため、市区町村ごとの感染者の増減などを追いにくい。

評論サイト「マスメディア報道のメソドロジー」は手動で市区町村データを分析した。その結果、感染は一貫して新宿、渋谷、港の3区に集中していたが、全域の自粛で甚大な経済損失が出た。こうした対策評価も手間がかかる。

既にPDF利用を抑制する国は多い。その理由を、例えば英国政府のサイトは「パソコン画面のサイズでは読みにくい」「どこに何が書いてあるか分からない」「データを活用しにくい」などと列挙する。日本は真逆だ。コロナ対策を含めて、PDFが政府サイトに溢れる。企業も変わらない。

PDF依存は、2011年の東日本大震災でも問題視された。例えば東京電力管内で計画停電が実施され、ネットでの情報提供が試みられたが、混乱した。記載方法がバラバラのPDFで公表されたうえ、変更が相次いだためだ。

東電の情報提供にボランティアで協力したグーグルの「クライシス・レスポンス」サイトには、「情報化というのは、紙で行っていた作業を単純にコンピュータに置き換えるだけでは不十分だ」との訴えが今も残る。以来10年近く、ほとんど進歩がない。

情報発信の弱点にはメディアもつけ込む。東京新聞18年8月20日「福島第一のトリチウム水 基準超す放射性物質検出」はその一例だ。政府がこの問題で公聴会を開く直前に出た。

トリチウム水の海洋放出は世界の原子力施設で珍しくない。東京電力福島第一原子力発電所でも有力な処分法だが、記事は「(トリチウム以外の)放射性物質が除去しきれないまま残留」と批判的に報じた。公聴会では、放出に反対する意見が相次いだ。

実は、この4年前の14年に公表済みの事実だった。原子力規制委員会が同年、被曝低減のため貯蔵タンクの水から出る放射線量を下げるよう指示し、東電は浄化装置をフル回転させた。時間をかければ排水基準まで除去できるが、スピードを優先し、残留物が少し残る「貯蔵水準」に留めた。排出時には当然、基準まで浄化する。経緯はPDF書類として、東電サイトに掲載されていた。

まずPDF依存を脱したい。

いかわ・ようじろう デジタルハリウッド大学大学院修了。元読売新聞論説委員。

【原子力】六ヶ所工場「合格」 将来に役立つ知見

【業界スクランブル/原子力】

資源小国日本は原発から出る使用済み核燃料を再処理し、再利用可能な資源を取り出して有効活用するとともに、有害なごみを高レベル廃棄物として処分する原子燃料サイクルを原子力政策の柱としている。その中核施設である六ケ所再処理工場が5月中旬に原子力規制委員会の安全審査に事実上合格した。原子燃料サイクル政策にとっては大きな一歩だ。

六ケ所工場の規制委への申請は2014年初頭だった。その規制委は地震や津波などを想定し、さまざまな角度から安全性を評価した。6年余りも費やしたのは、審査実績の多い軽水炉と違い、規制委にとって前例・経験のない、手探りの審査であった証拠ではなかろうか。そこで得た知見は将来役に立つに違いない。次のサイクル施設がわが国に必要であり、その具体化に今回の知見が必ずや役立つと考えるからだ。

例えば、六ケ所工場で取り出した有用資源を再利用することによってウラン資源は2割程度節約され、資源の有効利用・廃棄物の低減に役立つ。だが、原子燃料サイクルのエースは高速炉である。高速炉ではウラン資源の利用効率は飛躍的に高まり、核兵器の原料にもなり得るという懸念のつきまとうプルトニウムの有効利用・燃焼は思いのままであり、さらに核廃棄物の無害化もこなしてしまうという点でメリットは枚挙に暇がない。

ところが、わが国はこの高速炉について、原型炉「もんじゅ」が本質的技術の面ではなく、むしろ社会対応性の問題でつまずき、結局廃炉が決定した。政府は経済産業省を中心にフランスとの連携による高速炉開発を模索したが、結局、フランスの高速炉計画、アストリッドがついえた今、わが国は高速炉開発の駒を持っていない。ロシアがBNというタイプの高速炉開発で商業炉レベルまで達し世界のトップを走っている現在、技術立国の看板を掲げるわが国がいつまでも指をくわえていていいわけはない。いつまでも六ヶ所再処理合格に浮かれていないで、わが国は政府を中心としてさらなる高み、高速炉開発を目指すべきだ。(Q)

【住宅】自家消費の蓄電池 支援の正当性は

経産省は6月5日に公開した「エネルギー白書2020」の中で、住宅用太陽光発電の固定価格買い取り制度(FIT)の終了が、2023年に累計165万件、670万kWに達することに言及しつつ、今後は余剰売電を前提としたFITから、FIT対象外となった自立電源と蓄電池や電気自動車(EV)を組み合わせて自家消費率の向上を図っていくことが、新しいZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)のあり方として検討されるべきとしている。

増えていく卒FIT太陽光に対応し、今年は蓄電池を売りたいメーカーや事業者が群雄割拠している。しかもテスラの「Powerwall」という格安の黒船が予約販売を開始しており、激しい競争が予想されている。

一方、住宅用太陽光発電に蓄電池を追加する際の支援政策としては、「災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金」という補助制度がある。18年に発生した北海道胆振東部地震による北海道全停電を受け整備された。公募は昨年の11月末でいったん終了。現在は6月末が締め切りの追加公募を残すのみで、以降追加の予定はないという。

もともと同制度は時限的なもので、しかもその目的は災害対策であるので、必ずしもエネルギー白書に示されているような平時の自家消費を目的としたものではない。終了によって勢いづくかと思われた家庭用蓄電池市場にブレーキが掛かるかもしれない。

制度の終了に伴い、追加の支援を求める声があるが、そもそも太陽光発電の自家消費を目的とした家庭用蓄電池の価値が、その蓄電池の価格に見合うものなのか、公的な支援に値するものなのか、という疑問もある。

多くの場合、節電効果で蓄電池のコストを回収することは困難であり、さらに蓄電池がなくても電力事業者による電力の買い取りや仮想預かりのサービスがあるので、必ずしも蓄電池を購入する必要はない。万が一のための非常用電源としても、蓄電池を購入可能な個人のみを支援することは、公平性の観点からも問題がある。(T)