【特集2】HPとガスの強み生かす ハイブリッド給湯設備を開発
ガス設備・機器メーカーからも注目されているヒートポンプ。燃焼式との組み合わせで新たな価値を生み出す。
【ノーリツ/三浦工業】
近年、ガス機器を扱いながら、ヒートポンプ(HP)にも注目する企業が増えている。中でも、HPと組み合わせてガスやボイラーを使うことで、新たにハイブリッド給湯システムを生み出した企業がある。ノーリツと三浦工業だ。
HP技術によって空気の熱を利用し、お湯を沸かす電気式給湯機のエコキュート。ガス給湯器メーカーのノーリツは、同社初の小型業務用エコキュートをラインアップし、今年10月に発売する。同時発売の制御ボックスと併用すると、ハイブリッド給湯システムとしても活用できる。

給湯器の業務用途では、使用湯量が曜日や季節によって大きく変動しやすい。しかし、エコキュートの貯湯ユニットにためたお湯が切れても、ガス給湯器がバックアップ熱源として作動することで、湯切れがなくなるのだ。
エコキュートは、CO2排出量を従来型給湯器と比べて約52%削減する。湯切れのリスクを回避しながら、高効率のHPによってランニングコストを抑える業務用給湯器として、脱炭素の推進を目指す。
三浦工業は、工場内で今まで使われていなかった低温廃水や循環冷却水に着目。これらの熱エネルギーを有効活用するため、熱交換器とHPの技術を利用した独自の省エネ機器を開発した。「未利用熱活用ヒートポンプVH」だ。

この機器の特長は、殺菌工程の廃温水を熱源にすることで、効率よく温水を加温してボイラーなどの加熱源の燃料使用量を削減すること。また、クーリングタワー循環水からも熱回収するので、周辺環境に排水する際に使っていた冷却水も減らせる。
同社はさらに、独自の熱回収システムで通常のHPよりも2倍以上の超効率稼働も実現。「過冷却器」と「水/水熱交換器」という、二つの熱交換器を搭載しているため、低温廃水の熱を極限まで活用するだけでなく、HPの特長を巧みに利用して、消費電力を増加させることなく、熱出力を倍増させることに成功した。
もちろん、排水処理やボイラー燃料などのランニングコスト低減に加えて、CO2の削減にも貢献している。
ノーリツも三浦工業も、給湯器やボイラーといった自社の強みを生かしつつ、HPの長所を最大限に活用したハイブリッドシステムを開発している。新しい取り組みを続ける両社から、今後も目が離せない。