【特集2】全国で導入広がるCNLPガス 特約店と連携図りニーズ満たす

2023年7月3日

アストモスエネルギー

ユーザーニーズや社会的責任を果たそうと、カーボンニュートラル(CN)LPガスの導入に向けて本格的に取り組むのがアストモスエネルギーだ。「石油メジャーのシェルから2021年に世界で初めて大型タンカーでCNLPガスを輸入した。CO2をクレジットで相殺したCNLPガスは、CN時代に向けた取り組みとして特約店からは好意的に受け止めてもらっている。最近では、地球温暖化対策推進法に対応したJクレジットの活用も開始した」と栗原好宏国内事業本部長は話す。

同社の350近くある特約店のうち、CNLPガスを導入しているのは50店以上。年々、取扱店舗数は増えているという。その一つに、瀬戸内海にある山口県周防大島の特約店がある。

自治体向け初のCNLPガス 工事不要で容易に導入

周防大島は瀬戸内海の島では淡路島、小豆島に次いで3番目の大きさで、人口は1万5000人ほどだ。島内には都市ガスインフラが整備されておらず、電気とLPガスがエネルギーの主体だ。地元自治体の周防大島町では、今、CNを目指す独自の取り組みが進んでいる。

24年度の地球温暖化対策実行計画では、14年度比で4%のCO2を削減する目標を掲げる中、庁舎や町営施設での節電活動はもちろん、太陽光発電設備やLED照明の導入を進めている。その一環として、島内で利用するLPガスについても対策が行われている。具体的にはCNLPガスの導入だ。きっかけは、アストモスエネルギーの特約店である、地元の小松物産からの提案だった。藤本浄孝町長は、当時の様子を振り返る。

「従来の取り組みだけではCO2削減には限界があると感じていた頃に小松物産から提案を受けた。同社の社長は大手石油元売り出身で世界のエネルギー事情に詳しく、大きな工事が不要なCNの仕組みを教えてもらった。願ってもないエネルギーだと思い、各部署に働きかけて年度途中からの導入を決断した」。22年9月に庁舎をはじめ給食センターなど島内7カ所の公共施設で導入し、年間で約20tのCO2削減効果を見込む。これはアストモスが取り扱うCNLPガスが、自治体に導入する初めてのケースとなった。

もともとLPガスは重油比でCO2排出量が少なくすすが出ないなど、環境性能に優れているが、認知度が必ずしも高くない。そこでアストモスでは自治体向けのウェビナーやウェブサイトの開設などで積極的に広報している。同町への導入も、こうしたこともきっかけの一つとなったという。

LPガス業界全体ではCNに向けてグリーンLPガスや合成LPガスの開発を進めているが、商用化には時間がかかる。移行期(トランジション)として、CNLPガスやJクレジットを活用したLPガスへの取り組みは意義があるとアストモスは考えている。

「CNの達成は業界全体で積極的に取り組む必要があり、各地域で事業を継続してきた特約店や各自治体との連携が欠かせません。しっかりとコミュニケーションを図り地域のニーズをくみ取ってCNへ対応したい」(栗原本部長)

周防大島町役場の外観