トップ交代で難局打開なるか 新社長が語るエネ先物市場の行方

2020年8月7日

多方面から環境整備を支援 公設市場として役割果たす

JEPXは、電力制度改革の後押しによって電力総需要の3割まで取引量を増やしたわけだが、電力先物については、取引所が中心となって取引拡大を実現していかなければならない。今後、リスクヘッジ策としての有効性を積極的にPRしていくとともに、「公設市場」として、ヘッジ会計をはじめとする事業環境整備や、「電力先物スクール」を通じた人材育成など、多方面からの支援を強化していく構えだ。

「日本は世界最大規模の自由化市場であり、海外の電力トレーダーの関心も高い。欧米のように、卸電力取引の2~3倍まで拡大するポテンシャルは十分にある」

一方、5月には欧州エネルギー取引所(EEX)が日本市場に参入。早くもライバルが登場したことについては、「すみ分けるほど市場が育っている状況ではない」と、今のところ競合しているとの認識はない。「EEXとの違いは、取引や清算を円建てで完結できること。売買が伸びている原油先物を含め、ユーザー目線でメリットを出せるようにしていきたい」と、まずは国内の公設市場という強みを最大限に生かし、サービス拡充に注力していく。

もう一つ、新社長として早急に取り組まなければならないのが、LNG先物の上場だ。東京電力福島第一原子力発電所事故後、原発が全基停止した際は、LNGのスポット調達量の増大などで価格が高止まり。「3兆円もの国富流出」と騒がれた。需要国で先物市場を作ることの重要性を痛感し、自らエネルギー関連企業、商品取引所、研究機関などで構成する「LNG先物市場協議会」を立ち上げた経緯がある。


LNG先物の上場も取り組むべき課題だ

今は、その当時とは状況が逆転。供給量はだぶつきスポット市場での安値が続いている。それでも、「喉元過ぎて熱さを忘れてはならない。世界経済が再び成長に転じれば燃料は不足するし、需要国でLNGマーケットを作ることの重要性は変わらない」と言い切る。

LNG先物の上場時期について問うと、「理想は、電力先物の本格上場に合わせてLNG先物の取引が可能になっていること」という。発電燃料と電力小売りの双方で利益を確定できる仕組みがあってこそ、市場活用のメリットにつながるとの考えからだ。

残された時間はあまりない。事業者にとって、メリットのある市場を育てられるか。TOCOMの存在意義をかけた挑戦は始まっている。

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