【特集2】都直下地震の被害者を半減へ 防災計画見直しで応急対策を強化

2023年9月3日

関東大震災から100年目を迎える中、都は地域防災計画を見直した。首都直下地震などによる人的・物的被害を2030年度までに半減する目標を掲げている。

【東京都】

関東大震災100年目を翌年に控えた2022年5月、東京都は都防災会議による新たな被害想定を公表した。マグニチュード7クラスの都心直下地震が発生し、強い揺れや火災によって最大死者数は約6100人、建築物の被害は最大約19.4万棟などと予想した。この被害想定を基に、今年5月には「地域防災計画・震災編」を見直している。

修正のポイントは3点ある。1点目は過去10年間の変化を踏まえた課題と解決に向けた基本認識の確認。2点目が減災目標の設定。3点目は目標年(30年度)に向けた取り組みだ。

少し解説しよう。まず1点目の基本認識。この10年間で町内会などの自主的な防災組織の活動数は年間0.87回から0.35回へと減ってしまった。一方、コロナ禍によってテレワーク(在宅勤務)の機会が増えたことで、家庭や地域における防災・減災対策、つまり自助・共助の備えの推進が重要となった。また、ライフラインの被害によって応急対策が遅延する恐れも増したことから、特定緊急輸送道路沿いの建築物の耐震化などによる応急体制の強化がより必要になった。

それらの基本認識を踏まえて、2点目では首都直下地震などによる人的・物的被害を30年度までにおおむね半減する目標を掲げることとした。

3点目では、30年に向けて具体的な取り組みを挙げる。「自助の備えを講じている都民の割合を100%に」「感震ブレーカーの設置(25%)」「全避難所の通信環境の確保」「都内全区市町村でのBCP策定」「緊急輸送道路沿道建築物の耐震化」「住宅の耐震化」「無電柱化の推進」「整備地域の不燃化」「マンション防災の展開」――などだ。

とりわけマンションについては、高層建築物も増えている中で、水害により非常用発電設備が水没した事例も記憶に新しい。近年の社会状況の変化を踏まえた対策を進めていく。

エネルギー業界と燃料連携 ランニングストックで確保

エネルギー業界との連携も強化する。停電情報やインフラ被災情報などを業界と都が共有することで、早期の復旧につなげる仕組みを構築する。

中でも石油業界とは「ランニングストックと呼ぶ対策を進めている」(総務局総合防災部)。都は、都内150以上のガソリンスタンドと協定を結び、平時から一定量のガソリンや軽油を確保。都側が、普段からガソリンや軽油を消費することを担保することで、有事の際の品不足を回避し、有事には緊急車両向けなどに優先的に供給する仕組みだ。

災害など有事の際の「燃料切れ」は過去に何度も発生している。ユーザー側もガソリン満タンを心がけるなど、日頃からそれほど大きなコストを掛けずにできる対応策は打っておきたいものだ。

東京都庁(中央左)と都心の街並み=7月31日、東京都内[時事通信ヘリより]