【大阪ガス 藤原社長】LNGの安定調達とe―メタンの社会実装へ 両利きの経営に挑戦する

2024年2月1日

LNG調達の地政学リスクが高まる一方、脱炭素化という長期的な課題に直面する。

エネルギー安定供給の使命を果たしつつ、e―メタンの早期社会実装を目指し、脱炭素社会構築に貢献していく。

【インタビュー:藤原 正隆/大阪ガス社長】

ふじわら・まさたか 1982年京都大学工学部卒、大阪ガス入社。大阪ガスケミカル社長、常務執行役員、副社長執行役員などを経て2021年1月から現職。

志賀 2023年度上半期決算は、経常利益が1238億円と前期の378億円の赤字から黒字転換しました。その要因をどのように分析していますか。

藤原 前期は、22年6月8日に米テキサス州のフリーポートLNG基地がトラブルで出荷を停止して以降、当社の供給力の4分の1が停止した状態が8カ月間続きました。ロシアによるウクライナ侵攻に伴い世界の天然ガス需要がひっ迫する中、安定供給確保のために高騰していたスポット市場から調達せざるを得ず、また、当社はフリーポートLNG基地のオーナーでもありますので、その収入が入ってこないことも収益に影響を及ぼし、合計で1477億円の損失を余儀なくされました。23年2月にバース2基のうち1基が稼働を再開し、11月には2基目も復帰したことで、今期は安定的にLNGが供給されています。そこに原料費調整の期ずれ差益が重なり、黒字化を果たすことができました。

志賀 パナマ運河の渇水で船舶の滞留も発生しています。改めてLNG調達の多様化の重要性が認識されたのではないでしょうか。

藤原 都市ガス業界は1970年代から調達先の多様化に取り組み、ブルネイ、豪州、マレーシア、オマーンに加え、2000年代後半のシェール革命で北米からの調達も可能になりました。このように、産ガス国が分散しセキュリティ性に優れていることは天然ガスの大きな利点だと言えます。考え方が大きく変わったといえば、22年までは余剰をあまり持たずに不足すればスポットで補う方針を取っていましたが、現在は少し余裕を持つようになったことです。

パナマ運河のみならず、ウクライナ戦争、中東情勢の悪化、そして現在はしっかりと稼働しているサハリンも、経験豊かな欧米のオペレーターが引き上げている中で今後の供給継続に不安があることは間違いなく、調達の多様化とともに余裕を持った調達を行うことで引き続き安定供給を確保する必要があります。

志賀 新規に長期契約するような検討はされていますか。

藤原 当社は現在、年間約1000万tのLNGを調達しそのうち600万tを国内の都市ガス事業で供給、残りで需給の最適化を目指したトレーディングなどを行っています。この1000万tについては、他の電力会社やガス会社とコンソーシアムを組み長期でしっかりと確保できていますので、新たな大型契約を結ぶような環境にはありません。

東洋紡岩国事業所の天然ガス転換で新設された自家火力発電所

ただ30年代半ばには多くの契約が満期を迎えますので、その際に将来の需要を見極めた上でどう判断するかが焦点になります。石炭焚きボイラーを利用している化学業界などに天然ガス転換を展開していくことで、相当大きな新規需要が創出される可能性がありますが、今、そうした企業もGX(グリーントランスフォーメーション)に向けどう対応していくべきか非常に頭を悩ませているのが実情です。産ガス国がどういった条件を提示してくるのか、国内でLNGの位置付けがどうなっているのか不透明であり、現時点では方針を決める段階にありません。

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