【関西電力 森社長】最新知見を取り込み安全・信頼性を高め 原子力を活用していく

2024年9月1日

次期エネ基策定へ 現実的な需要想定を

志賀 次期エネ基策定に向けての期待や要望はありますか。

 次期エネ基の策定については、5月15日から議論が開始され、同月13日から議論が開始された「GX2040ビジョン」と連動しながら、25年3月までに閣議決定されるものと承知しています。長期的な安定供給とエネルギー安全保障の確保、GX(グリーントランスフォーメーション)実現の同時達成に向けて、現実的な需要想定を前提とした必要な供給力と電源構成を明確に示していただくことを期待しています。「GX実現に向けた基本方針」においては、安定供給とカーボンニュートラルの両立に向けて、「原子力発電の最大限の活用を図る」方針が示されています。一方で、現行のエネルギー基本計画においては「依存度を可能な限り低減する」とされています。安全最優先を大前提とした上で、この表現を見直し、新増設やリプレースの必要性と規模感も明記するなど、位置付けをより明確化していただきたい。

メーカー、工事事業者も含め、原子力のサプライチェーン全体を維持していくためには、PWR(加圧水型軽水炉)、BWR(沸騰水型炉)ともに一定の規模を継続して運転していく必要があります。業界全体の見通しを立てることができ、それに見合った人的リソースや技術を維持し続けることが国家戦略として求められています。

火力についても、再エネの大量導入に必要な調整力、慣性力および同期化力として、今後も一定の役割を果たしていくものと考えています。既設火力の位置付けも含め、一定程度の規模で維持していく方針を明確にする必要があります。また、水素・アンモニアなど、脱炭素燃料を混焼する火力発電をトランジション電源として位置付け、CNの実現に向けた役割を明確化することが重要だと考えています。事業者の費用回収予見性の向上の観点からも、CCUSや水素・アンモニアの混焼などの革新的技術の開発・導入に向けた支援の必要性について、合わせて明記していただくことを期待しています。

志賀 電力需要は大きく伸びるとの想定もありますが、実際のところどうなると見ていますか。

 人口減少や省エネといったマイナスの影響もあれば、産業用、家庭用含めて電化が進んでいくこと、データセンターや半導体といった電力多消費産業が成長していくことによるプラスの影響もあります。いつからと明確に言えるわけではありませんが、ゼロカーボン化していくための電化は避けられませんから、50年までのいずれかの時点で拡大傾向に転じることになるだろうと見ています。

志賀 日本の脱炭素戦略で電気事業が担う役割はますます高まりそうです。原子力をしっかりと運用し、地域振興と一体となったゼロカーボン化の推進に期待しています。本日はありがとうございました。


対談を終えて

原発7基体制を築き内部統制強化と組織風土改革を両輪で推進しつつ、EX、VX、BXの3本柱による企業価値創出の方針を掲げた。原子力を軸としたゼロカーボン戦略は地域振興と一体となったもので、関電の強み。在任3年目で中期経営計画のアップデートを行い意欲的に目標を改めた。社内の雰囲気はカジュアルで明るく、それは森社長の表情からも伺える。(本誌・志賀正利)

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