【特集2】次代を見据えた燃料転換へ船出 大手電力が供給網づくりに注力
火力発電大手JERAがアンモニア燃料利用の有効性を実証した。企業の枠を越えて地域で連携する取り組みも熱を帯び始めた。
脱炭素化につながる水素やアンモニアといった次世代燃料を発電や産業用途で生かす―。大手電力各社がそんな近未来を視野に入れた取り組みで存在感を発揮している。その一社が、東京電力ホールディングスと中部電力が折半出資するJERAだ。同社は火力発電で使う燃料の一部を、石炭から燃やしてもCO2を出さないアンモニアに置き換えて発電する大規模な実証試験で有効性を確かめた。多様な業種を巻き込んだ脱炭素燃料のサプライチェーン(供給網)づくりも全国各地で活発化する中、最新動向に迫った。
ゼロエミ火力視野に前進 重工メーカーと強力タッグ
発電時にCO2を排出しない「ゼロエミッション火力発電」の実現に向けた大きな一歩を踏み出したのがJERAだ。同社はIHIと連携し、碧南火力発電所(愛知県碧南市)4号機で発電燃料の20%(熱量比)をアンモニアに転換する試験を、4月から6月にかけて実施。定格出力100万kWで運転を行った結果、転換前との比較で窒素酸化物(NOX)は同等以下、硫黄酸化物(SOX)が約2割減少したことを確認した。
試験で良好な結果が得られたことを受けて今後は、ボイラーや周辺機器への影響などを詳細に調べる活動を進め、2025年3月までにアンモニア転換技術を確立することを目指す。
船から荷揚げした液体のアンモニアは、発電所内のパイプラインを経由して専用のタンクに貯蔵。そのアンモニアを気化し、石炭を燃やすボイラーに差し込まれたバーナー(燃焼装置)に送る。そこで生まれた熱で水を沸かして蒸気に変え、タービン発電機を高速で回して電気をつくるという仕組みだ。
早ければ27年度に4号機で商用運転を実施。将来的には国内の石炭火力発電で、アンモニアへの転換率を30年代前半に50%以上、40年代までに100%へと段階的に引き上げていくことを視野に入れている。
火力発電の燃料を石炭から燃焼時のCO2排出量がより少ない液化天然ガス(LNG)へシフトし、さらに石炭やLNGを徐々にアンモニアや水素に転換することで、エネルギーの安定供給を果たしながら脱炭素化を実現していく―。そんなシナリオを描くJERAは、国内で培った技術や経験を海外に展開することも目指す。
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