【特集2】アンモニア燃料船の安全を評価 日本主導の国際ルール策定に貢献

2024年9月3日

【日本海事協会】

2026年11月、国産エンジンを搭載し、アンモニアを燃料とする「アンモニア燃料アンモニア輸送船」が完成する。この世界初の取り組みは、海洋分野における脱炭素化実現に向けた大きな一歩になると期待されている。「日本の技術で海と未来を変える」を合言葉にこのプロジェクトに参画しているのは、日本郵船、ジャパンエンジンコーポレーション、IHI原動機、日本シップヤード、日本海事協会の5社のコンソーシアムだ。日本の船級協会として一世紀以上にわたり船舶の安全性を第三者として証明してきた日本海事協会は、このアンモニア燃料アンモニア輸送船の安全性評価を担当している。

プロジェクトが担う役割は四つある。

第一が、国際海運のネットゼロ・エミッション達成に向けた取り組みをリードすること。燃焼してもCO2を排出しないアンモニアを使用したアンモニア輸送船の開発・建造を通じ、アンモニアを燃料とする船舶の実用化を推進していく。

第二がアンモニアバリューチェーン(価値連鎖)の構築だ。アンモニアの用途は、従来の化石燃料から火力発電所の混焼などへと移行し、需要が急増すると想定。アンモニアを効率的に幅広く供給できるバリューチェーン構築を促していく。

第三に、日本海事産業の強化だ。海洋国の日本にとって海事産業の繁栄は、経済安全保障上重要だ。ネットゼロ・エミッション実現に向けた燃料転換を好機とし、日本を代表する海事産業企業の技術力を集結し、高い環境性能と安全性を備えた船舶を他国に先駆けて供給することを目指している。

安全の定義作りに尽力 日本の海事産業を後押し

第四に、船舶燃料としてのアンモニアに関する国際ルール化だ。現状、IMO(国際海事機関)は、アンモニアを船の燃料としては認めていない。国際ガイドラインも未整備だ。日本海事協会が国土交通省と連携し、コンソーシアムを通じてアンモニア燃料船舶の開発に関与することで得られた知見をIMOに提供することで、アンモニア燃料船の議論をけん引する構えだ。

技術部の酒井竜平氏は「何を基準に安全であるとするのか、『安全のコンセプト』を定めていくことが非常に難しい作業だった」と語る。例えば、アンモニアを通す導管は漏洩防止のために何重に覆うのが適切なのかという課題一つを取ってみても、考慮すべきことは多くあった。

日本海事協会は、プロジェクトを通じて得られた専門的知識を国交省海事局に提供してきた。その貢献が実を結び、今年12月、アンモニア燃料船に関する初めての国際ガイドラインが発表される予定だ。四方を海で囲まれ、資源や食糧のほとんどを輸入に頼る日本にとって、日本が策定までリードしてきたガイドラインは、海事産業がさらなる発展を目指す際に大きなアドバンテージとなるだろう。

アンモニア燃料によるアンモニア輸送船