【四国電力 宮本社長】電気事業の安定運営と成長事業の拡大により地域の発展に貢献

2024年10月1日

本丸の電気事業は安定供給で地域の発展に貢献するという基本的使命を携えつつ、多面的にカーボンニュートラル対応を前進させている。

また、社長就任前、自ら携わった中期経営計画の達成に向け、経営の両輪として電気以外の事業にも磨きをかけていく。

【インタビュー:宮本喜弘/四国電力社長】

みやもと・よしひろ 1985年京都大学工学部卒後、同年四国電力入社。常務執行役員総合企画室経営企画部長、取締役常務執行役員総合企画室長(再生可能エネルギー部・広報部担当)などを経て、24年6月から現職。

志賀 6月に社長に就任して4カ月ほど経ちます。改めて抱負からお聞かせください。

宮本 会社を代表する立場の重責を日々感じています。電力の安定供給を通じて地域の発展に貢献すべく、伊方発電所をはじめ設備の安全確保を最優先に、お客さまに喜ばれるサービスの提供に全力を尽くします。また社員が誇りを持てるよう、挑戦し続ける企業集団でありたいと考えており、そのような私の思いを伝えるために事業所訪問を始めたところです。役員・従業員の一体感を高めながら、私が先頭に立ち経営課題に全力で取り組みたいと考えています。

志賀 京都大学工学部を卒業後、四国電力に入社しました。

宮本 元来、論理的に考えれば答えが一意に定まる理系分野が自分には合っており、モノづくりなどへの興味から工学部に進みました。4年生で研究室に配属されるまでは、テニスばかりやっていましたね。

重電系の研究室で、発電機の研究をしていました。同じ研究室からは関西の企業に行く人が多かったのですが、私は地元に帰り電力の仕事をしたいと思っていました。当時、当社に電気工学科の先輩がいたので、訪ねて話を聞いたところ、良い印象を抱き入社に至りました。

志賀 印象に残っている仕事を教えてください。

宮本 会社人生の前半は専ら技術系の部門で働き、後半は企画系の仕事が中心でした。最初の勤務地は徳島県の池田電力所で、以降は水力や変電、系統運用の現場で経験を積みました。企画では最初に地球温暖化問題に取り組み、その後、他社との電力融通や、共同での電源開発なども担当しました。

技術者としての仕事の思い出は、徳島での変圧器の増設工事が印象深いですね。変圧器の負荷試験で変電所に泊まり込み、新しい設備を徹夜でチェックしました。国の検査に合格し、自分がつくった設備が性能通り動いた時、電力事業の一端を担っていると実感できました。

また、変電所を新設する際の用地交渉も印象に残っています。当時、私は計画部門の課長で、立地部門の課長と一緒に、地域の皆さまが具体的に何をご心配されているのか話を伺って回りました。地道な努力を積み重ねて成し遂げる仕事の重要性が身に染みました。


電力以外で着実に利益 DCや不動産にも意欲

志賀 2021年3月に公表された「よんでんグループ中期経営計画2025」は自ら中心となって作られたとのことですが、どのような思いを込めたのでしょうか。

宮本 企画部長として策定に関わりました。ここで打ち出した一番のポイントは、電気事業と電気事業以外を車の両輪として取り組むという方針です。

背景には東日本大震災と、電力自由化の進展で経営環境の厳しさが増したことがあります。震災後の13年に料金改定を行った際、グループ会社への発注も効率性が厳しく問われるようになりました。そこでグループ会社には、電気事業関連の仕事で培ったさまざまな技術力を生かし、今後は一般向け事業での売り上げを増やしてほしいと伝えました。結果、現在ではグループ全体で電気事業以外の利益が順調に増えています。

志賀 STNetのサーバーサービスなどは時代を先き取りした成功例の一つでは?

宮本 今まさに世の中のニーズが高まっているデータセンター(DC)事業が軌道に乗っています。本事業には13年から先行的に取り組んでおり、運営のノウハウも着実に蓄積してきているので、この好機を逃さぬよう事業拡大に取り組んでいきたいと思います。また、同社が取り組むご家庭向けの光インターネットサービスも、四国内で高いシェアを獲得しています。

志賀 不動産事業はどうでしょうか。インバウンド需要を見込み、高松へ外資系高級ホテルを誘致したとも聞いています。

宮本 新規事業の一環で、グループ会社の四電ビジネスも含めて不動産事業を展開しており、首都圏のマンションや、四国ではサ高住(サービス付き高齢者住宅)の運営などに取り組んでいます。また、観光事業の面からも四国の活性化に貢献したいとの思いから、ホテル事業に進出しました。四国の地方銀行をはじめとする共同出資者の皆さまと共に、このホテル運営を軌道に乗せ、インバウンド観光客が高松だけでなく四国を周遊することで、その効果を四国全体に広げていきたいですね。地域の皆さまからの期待をひしひしと感じています。

志賀 電力自由化の時代になっても、電力会社が地元から地域活性化を牽引する役割を期待される姿は変わらないようですね。

1 2 3