【四国電力 宮本社長】電気事業の安定運営と成長事業の拡大により地域の発展に貢献

2024年10月1日

夏に伊方が初の定検 広域で十分な予備力確保

志賀 話題を電気事業に戻しますと、伊方3号機は今夏に定期検査を実施しました。

宮本 当社では原子力の夏場の定期検査は初となります。当社には原子力が伊方3号機の1基しかないこともあり、法定の期間で最大限利用率を高める前提で点検を実施しています。かつては夏にかからないよう調整しましたが、今回そうしなかった背景の一つには、太陽光の導入量が相当の高水準となっていることも影響しています。日射量が多く、日照時間の長い夏場は、冬に比べて太陽光による発電量が多いため、最近では、夏よりも冬の需給が厳しい傾向にあります。

伊方発電所は夏場に初めて定期点検を実施した

もう一つは、広域的に需給を考えるようになったこと。今夏は西日本全体で十分な予備力があり、定検に入っても問題ないと判断しました。もちろん、そうした中でも、電力需給の運用に万全を期すため、夏場の火力電源などの定検作業を可能な限り回避して供給力を確保するとともに、設備の運用保守、火力燃料の安定調達・在庫管理にもしっかりと取り組みました。

志賀 今夏は全国的にも連日の猛暑の割に需給は安定し、市場価格もさほど上がっていません。

宮本 この暑さで需要は伸びていると思います。原子力が稼働していない東日本は需給がやや厳しいとは思いますが、それでも先ほど述べたように、やはり太陽光のインパクトが大きい。 また、ここ2~3年の燃料価格高騰や需給ひっ迫を受け、国が予備電源制度などを整えており、事業者側も燃料の安定調達の努力を続けています。


再エネ目標に手ごたえ EV関連やDR拡大へ

志賀 四国エリアの太陽光導入量はどの程度になりますか。飛行機から見降ろすと、ため池上のパネルが目立っていました。

宮本 四国電力送配電によると、系統に接続済みの容量は340万kW程度となっています。上空からご覧いただいた通り香川はため池が多く、当社も水上ソーラー事業を行っています。本事業では、当社がため池に設置する場合の安全性の確認や定期的な水質検査を行い、また水面使用料をお支払いすることから、ため池の管理者さまにもメリットがありますし、近隣住民の皆さまの安心にもつながればよいと考えています。

羽間太陽光発電所。香川では水上ソーラー事業も盛んだ

志賀 再エネ目標は30年度までに50万kW、50年度までに200万kWとしていますが、達成度はいかがでしょうか。

宮本 現時点の再エネ導入量は、海外分も含めて、約36万kWとなっており、30年までの目標達成は十分可能と見ています。

志賀 洋上風力についてはどうでしょう。大型化が進み、他地域では東京タワーほどの高さの風車が100台規模の計画もあるようです。

宮本 瀬戸内海側はあまり風が吹かない上、船も多い。従って、選択肢としては太平洋側になりますが、水深が深いので、四国で洋上風力をやるなら、着床式ではなく浮体式になるでしょう。浮体式の設置にも課題はありますが、導入に向けて他企業とも連携しながら研究に乗り出しています。既に東北地方で政府が公募した促進地域での事業が始まっていますが、落札後に資機材価格などさまざまなコストが高騰しています。そうした実情を考えれば、今後、国の目標を達成するには相当の頑張りが求められると考えています。

志賀 EVの普及拡大や、再エネ出力制御の増加を踏まえたDR(デマンドレスポンス)にも積極的に取り組んでいますね。

宮本 現在、EVの充電や制御などのエネルギーマネジメント関連に力を入れています。最近では、愛媛県において、伊予鉄バスなどと共に、路線EVバスの急速充電や運行計画の最適化につながるシステムの開発に向けて、実証事業を開始しました。このほか家庭用の充電サービスや企業向け充電器リース事業、四電ビジネスが手掛けるEVリースなどもしっかり広げていきたいと思います。四国は公共交通機関が一部でしか発達しておらず、マイカー需要が非常に大きい。車を複数台持つ家庭が多く、セカンドカー需要にEVはフィットすると考えています。

電力需給上の重要性が高まっているDRについては、家庭向けに「よんでんコンシェルジュ」(電気料金や使用量をウェブで確認できるサービス)を通じたDRサービスを提供しています。また10月からは、軽負荷期の昼間需要拡大に資する新たな料金プランを導入しました。法人向けには、昨年度から「報酬型DR契約」を設定し、実効性の高い調整力を確保しています。

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