脱炭素事業の先行5社が集結 新潟発の多彩なプロジェクトを紹介
新潟の強みどう生かすか CN戦略の道筋を考える
シンポジウム後半は、5人の登壇者によるパネルディスカッションを実施。野村総合研究所未来創発センター長で研究理事の神尾文彦氏の司会で、「経営目線での新潟地域への期待」をテーマに、新潟の優位性を生かしたCN戦略のあり方について活発な意見を交わした。主なやりとりは次の通り。
―新潟の強みをどう見ていますか。CN戦略で連携する意義についても教えてください。
吉良氏 新潟は国内有数の天然ガスの生産地で、国内で産出される約7割が県産です。県内には、天然ガスを利用した関連工業が歴史的に根付いており、こうした基盤が環境対応型事業を推進する際に大きなアドバンテージとなります。現在、官民一体による新しい事業の種まきに必要な拠点を立ち上げたところです。皆さんと連携しながら、それを発芽させてビジネスとして展開していきたいと考えています。
加賀野井氏 安く水素を製造しようとすると、天然ガスを原料に水素を製造することが適しています。水素の製造時に出てくる副産物のCO2を回収し貯留する計画で、そうした一連の受け皿がそろう新潟の強みを改めて実感しています。ただ、付加価値がないと水素をビジネスとして広げられません。供給側と販売側が連携してバリューチェーン(価値連鎖)を大きくすることが必要です。
橋本氏 新潟の強みの一つは、CCSの実装を進める拠点としてのポテンシャルを秘めていることです。関係者の皆さんと協力しながら、CN化に向けた技術の実装をスタートアップさせていきたいと考えています。二つ目が新潟港の存在で、水素やアンモニアなどのCN燃料を受け入れる拠点として大きな存在になると期待しています。三つ目が多様な産業が集積していることです。CN化に一社単独で取り組むことには限界があり、さまざまなセクターがお互いに補完し合い、「オール新潟」でCN化を達成していくことが非常に重要だと考えています。
―新潟がCN化で果たす役割として何を期待していますか。
池野氏 日本全体のCN化を促すためには、大口のCO2排出源だけでなく、中小排出事業者の対応も考える必要もあります。県内のCCS事業で整備したパイプライン網に、こうした排出源をつなげる可能性にも注目しています。
清野氏 日本で確実に発電用のCN燃料の社会実装を進めていくためには、燃料供給網のモデル地域をつくり全国に広げる取り組みが大事だと考えています。新潟は、モデルとなる可能性を秘めています。
―脱炭素市場は可能性を秘めています。新たな産業の創造に向けた課題についても教えてください。
加賀野井氏 水素を活用する事業をどのように発展させるかについては、燃料価格を安くするアイデアを考える必要があります。そうした取り組みを国だけでなく、自治体も後押しすることを望んでいます。究極的には50年のCN達成に向き合い、二の矢、三の矢を放つ対応が求められており、官民一体でしっかりと対応策について考える必要があるでしょう。
吉良氏 CCSでは、コストを誰が負担するのかという議論に必ずなります。全てのコストを製品に乗せて最終消費者の価格に反映することは難しく、国や自治体のサポートがないと前に進みません。海外の安いCCSを使うと、国富の流出につながります。自国産業として育て、経済的に回るようにする必要があります。
技術革新で限界の突破を スタートアップとの連携も
―どういう姿勢で事業化への道を切り開きますか。
池野氏 新しい技術を待っていたら到底間に合いませんので、現在ある技術を使って作業していくことになります。コスト面を見ると、削減の余地には限りがあります。CCSのコスト削減に向けては、CO2を圧入するボリュームを増やす方法しかありません。それだけに限界を突破する技術的な革新が必要で、リソースを振り向けない分野でスタートアップや大学などと連携することも重要です。
清野氏 これまでにないアプローチがなければ、50年のCN達成には到達できません。イノベーションの重要性を考える必要があるでしょう。世界で日本が主たる地位を築いていくことを想像しながらやっていかないと、社会に根付く本当のCNは実現できないと思います。