【電源開発 菅野社長】事業者間で競争し合いトップランナーとして脱炭素の実装に貢献へ
ベンチャーとの協業加速 バランス取れたエネ基を
志賀 今春新たに設置された「イノベーション推進部」についても注目しています。改めて新組織を設けた狙いは?
菅野 どこの企業でもCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)という形で、自らの企業グループ内からだけでは出てこないアイデアを発掘しようと模索しています。当社も、社会でさまざまなチャレンジを行い、われわれとシナジーがあり得ると思った企業との協業・連携を過去数年間進めてきました。その事業化が、イノベーション推進部をつくった動機です。
既にさまざまな投資を行っています。例えば、核融合の京都フュージョニアリング、災害現場などに浄化した水を届けるWOTAなど。他にも多数あります。当社だけではできない事業創出に向け、われわれの資金や既存フィールドも活用しつつ、外部のスタートアップと一緒にアイデア・チャレンジを育てていく。それが次の事業創出につながると考えています。
志賀 第7次エネルギー基本計画の議論が佳境に入ります。大手エネルギー企業のトップとして、考えをお聞かせください。
菅野 一番のポイントは、日本の産業競争力を取り戻すプロセスの中で、AIの実装に代表されるDXが進み、電力需要が伸びる点。その中で安定供給とCNを満たすという新たな局面を迎え、一段と厳しい道に入ります。全体のバランスが取れたエネ基とすることは至難の技ですが、大変重要な視点です。特に前述の通り、CN実現にはコストの課題があります。コストの相場感を、国際競争にさらされる企業とわれわれが折衝し、形成していく。それがエネ基にも反映され、日本の産業全体で一定水準のコストは負担する、という流れにすべきだと思います。当社は再エネの拡大に積極的に取り組むとともに、IGCC+CCSでゼロカーボンを目指す分野においてはトップランナーだと自負しています。そのスピードとコストを意識した競争に全力で取り組む所存です。
志賀 産業の空洞化が進んだドイツの轍を日本が踏まないためにも、貴社のこれからのチャレンジが重要な役割を果たすものと期待しています。
対談を終えて
中計を改定し、国内石炭火力発電所のトランジションの方向性を示した。スピード感がある。内容はアンモニア、水素、IGCC、CCSと多様。各サイトの状況やサプライチェーンの展望など、複雑な多次元方程式を解いた。さらに洋上風力も、長年蓄積された陸上風力の経験を元に着実に歩を進める。社長就任1年で会社の針路を明確にしたことで、社内外の評価は高い。(本誌・志賀正利)