【特集2】「移行期」の取り組みを促進 経済振興踏まえて支援検討

2024年11月3日

エネ基の議論が進む中、天然ガスへの燃料転換が焦点となる。ガスの脱炭素化を促す施策をエネ庁ガス市場整備室長に聞いた。

【インタビュー】福田光紀/資源エネルギー庁ガス市場整備室長

――2050年カーボンニュートラル(CN)への移行期にLNGは重要視されています。

福田 現実的なトランジションの手段として、CO2排出量の少ないLNGは重要です。石炭や重油を利用する需要家が一定数存在しているため、天然ガスへの燃料転換を後押しする予算事業を今年度開始しました。燃料転換を推進することで、既存インフラをそのまま利用できるe―メタン(合成メタン)も将来的に導入可能となります。こうした視点も含め、次期エネルギー基本計画の策定に向けた検討を行っているところです。

―ガス業界では30年時点で既存インフラへのe―メタン1%注入を目標としています。政策面でどう後押ししていきますか。

福田 目標達成に向けては、①e―メタンの生産コスト高、②CO2カウントルールの整備、③事業者の持続的な投資―が大きな論点となります。まず、コスト低減については、グリーンイノベーション(GI)基金を活用して革新的なメタネーション技術の開発を支援しており、30年までに基盤技術を確立することを目指しています。

 CO2カウントルールに関しては今年度、「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」における算定方法検討会で、e―メタンを含むカーボンリサイクル燃料の利用時における排出量の算定方法が整理されました。e―メタン供給時のガス事業者別排出係数を用いて、来年度から排出実績の報告に適用できるよう準備を進めています。持続的な投資の促進については、今年5月に成立した水素社会推進法で、e―メタンも既存燃料との価格差に着目した支援の対象としています。さらに、今年7月に開催したガス事業制度検討ワーキンググループでもe―メタン供給事業者の予見可能性を高める観点から、30年の供給目標設定と、導入に必要な費用を託送料金原価に算入できる仕組みの方針を打ち出しました。

―都市ガスインフラの新規敷設に対する支援の必要性について、どうお考えですか。

福田 広域的な供給インフラの整備は、燃料転換の推進やe―メタン供給のための環境整備につながると認識しています。ただし、新規インフラの敷設に際しては、地域のエネルギー需要や建設コストといった経済的側面を十分に考慮する必要があります。ガス供給インフラの整備が経済的に成り立つかどうかが重要です。現在、政府ではガスパイプラインやLNG基地への設備投資に対し、利子補給の支援を行っています。今後も地域の実情を踏まえ、適切な支援策を検討していきます。

ふくだ・みつのり 2002年経済産業省入省。資源エネルギー庁原子力発電所事故収束対応室長などを経て23年7月から現職。