【特集2】三島食品の工場燃料をクリーン化 業務の省力化も強力にサポート
【広島ガス】
赤しそを使ったふりかけ「ゆかり」で全国的に知られる三島食品(広島市中区)の観音工場で、ボイラー燃料の灯油を都市ガスに転換する取り組みが行われた。支援したのは、広島ガスだ。脱炭素対策を強化する機運が高まる中で同社は、広島県内に立地する幅広い業種の企業に密着して燃料転換を促し、脱炭素社会づくりの一翼を担いたい考えだ。
今回の燃転の舞台となったのは、同市西区に立地する敷地面積2138㎡の観音工場。三島食品が展開する国内3工場の一つで、約30品目を生産している。手掛ける商品は調味みそなどのペースト商品や赤しその色と香りを生かした希釈タイプの清涼飲料水「赤しそドリンク ゆかり」などと多彩。年間生産量は、約18万ケースだ。
同工場では、生産量の増加やボイラーの老朽化と能力の不足といった問題を抱えていた。そうした中で同社は、「広島市省エネ機器導入支援事業補助金」を活用。広島ガスやボイラーメーカーと連携しながら、脱炭素化につながる燃料転換に踏み切った。すでに都市ガスは、本社敷地内にある広島工場と関東工場(埼玉県坂戸市)で使用しており、灯油を使用する生産拠点は観音工場のみだった。
灯油の場合、防火に配慮しながらタンクに保管する必要があったほか、ローリー車で週2回受け入れる手間もかかっており、運用しやすい都市ガスへの切り替えが望まれていた。
成長余地が大きいガス市場 中長期の視野で拡販に力
三島食品が注目した燃転のメリットの一つが、環境負荷の低減効果。転換前にボイラーから排出していたCO2の約2割を削減できることに加えて、排出ガスをクリーンにできる利点も得られるようになった。さらに省力化する効果も得られ、灯油量の管理と受け入れ時の立ち合いが不要になったという。
同社は、全ての事業活動で環境変化に対応した活動を展開し環境保護に貢献すると宣言している。川中有弘・観音工場工場長兼広島工場副工場長はこうした方針に沿って、「ボイラーと加熱設備から排熱を回収することで燃料消費量を低減し、さらなるCO2低減に挑みたい」と強調。将来的には、空調設備などボイラー以外で都市ガスを活用する方策も探りたい構えだ。
広島ガスグループは4月、取り巻く事業環境の変化を踏まえ、24年度から3カ年の中期経営計画を策定。「都市ガス・LPG事業の深化」を柱の一つと位置付け、石油や石炭などからの燃転を中心にガスの拡販に取り組む方針を明示した。さらに同社と顧客にもたらす30年時点のCO2排出削減効果について、年間30万tとすることも目指している。
広島ガスエネルギー事業部産業用エネルギー営業部技術グループの服部大資係長は、「燃料を脱炭素化したい地場企業が多く潜在している。そうした企業がメリットを実感できる燃料転換を提案し、その事例を広げたい」と、市場開拓に意欲を示している。