稼働に対するメリットが必要 地元に「非化石価値」の還元を
ポジティブなイメージを リプレースを見据えて
─非化石電源でも、原子力ではなく再エネを求める企業も存在します。どうすれば原子力発電の非化石価値を積極的に受け入れてもらえるでしょうか。
本部 政府が原子力に対するポジティブなメッセージを堂々と打ち出すことが重要です。非化石価値を持つのは再エネだけではありません。再エネの持つ「地球環境に優しい」というイメージを、原子力にも持ってもらう必要があります。そのために第7次エネルギー基本計画ではグリーントランスフォーメーション(GX)実行戦略やGX2040ビジョンと整合性をとり、原子力は脱炭素化に必要なクリーンな電力だと明記してほしい。こうして国によるエンドース(後押し)を受けて、原子力由来の非化石証書を活用する企業を評価する流れをつくらなければなりません。
原子力が生み出す電力量は過小評価されています。原子力は再エネと違い、設備稼働率が高く、最も安定して大きな非化石価値を生み出すことができる。原子力の非化石価値に注目が集まれば、需要家にも太陽光や風力と差別化する意識がなくなるでしょう。米国では先日、グーグルが原子力発電所の近くにDCを建設すると表明しました。
─KKの「特別扱い」には公平性の観点から疑問視する声もあります。
本部 これまで述べてきた施策は、再稼働している既設炉や新増設・リプレースする炉など全てを対象にすべきです。新たに原子力発電所を建てても稼働時期が大幅に遅れてしまえば、事業者は得られる予定だった収入が入らず、投資回収に悪影響を及ぼします。新増設・リプレースに向けたファイナンス面の支援について議論が行われていますが、遅滞なき運転開始のためにも、稼働に対してのインセンティブを与えるべきです。
根幹にあるのは、「地元が生み出した価値は地元に還元する」という考え方です。例えば日本がCO2回収・貯留(CCS)や再エネ投資などでアジアの第三国でGHG削減を行った場合、GHG削減量は日本と第三国のどちらにカウントされるのでしょうか。やはり一定割合は、第三国にも還元すべきでしょう。原子力発電所の稼働も同じ理屈です。
─ありがとうございました。
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