【コラム/11月7日】BRICS首脳会議を開催 脱炭素至上主義より現実的政策を宣言

2024年11月7日

杉山大志/キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 

BRICS会合が開催された。
日本貿易振興機構(JETRO)のHPhttps://www.jetro.go.jp/biznews/2024/10/cfad94d12688624c.htmlで以下のように紹介している。

“BRICSは10月22~24日、ロシア西部のカザンで第16回首脳会議を開催し、36カ国が参加した。原加盟国の5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)に加え、2024年1月から枠組みに加わった4カ国〔アラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エチオピア、エジプト〕を含む拡大体制となったBRICSとして、初めての首脳会談開催となった。

首脳会議は「公正な世界の発展と安全保障のための多国間主義の強化」をテーマとした。全体会合で採択された共同宣言では、ドルに依存しない自国通貨での新たな決済システムの必要性を確認し、その導入の検討を継続することや、新たに「パートナー国」の制度を創設することが盛り込まれた。パートナー国は加盟国に次ぐ立場にあたる準加盟国に相当し、加盟国との経済協力や会議への参加に対する権利を持つ。パートナー国の創設は、グローバルサウスの結束力を高める狙いがあるとみられる。パートナー国には13カ国(インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシア、ウズベキスタン、カザフスタン、ベラルーシ、トルコ、アルジェリア、ナイジェリア、ウガンダ、ボリビア、キューバ)が候補と複数のメディアで報じられた。„(以上、JETROのHPから引用)

あまり大きく報じられていないようだが、インド、中国をはじめ、これだけのグローバルサウスの国々がロシアを訪問し、共同で宣言をまとめたことは、今の世界情勢を認識する上で極めて重要なことである。西側諸国の意図に反して、ロシアは孤立などしておらず、多くの仲間がいる。むしろ、いま孤立気味なのは、欧米の西側先進国、特に米国なのかもしれない。

今回まとめられた共同宣言である「カザン宣言」は一読の価値がある(原文機械翻訳)。

一貫して主張されていることは、「いかなる国であっても、一方的に善悪を決めつけ、多国間主義に反する行動を取ってはならない」、という非難だ。

念頭にあるのは、明らかに、西側の近年の行動である。特に、イスラエルの軍事行動を支持し、支援している結果、周辺諸国において多くの犠牲者が出ていることを強く非難している。
また、これは名指しでは書いていないが、西側によるロシアに対する経済制裁と、それにまつわる二次制裁は、ロシアと貿易をしている多くの国にとって不評を買っている。ロシアはエネルギー、穀物などの物資を輸出してきた。今でもその輸入を継続する国々は多くある。

どの国も、大なり小なり、ジェンダーやマイノリティの人権問題などの火種を抱えている。それが西側によって、ロシアのように制裁対象にされて、西側の金融機関に預けていたドルやユーロ資産を没収されたのではたまらない。それで、西側に依存しないBRICSの決済システムを構築していこう、ということが今回の宣言でも大きなテーマとなった。

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