敦賀2号機「不許可」は非科学的 規制委は専門家の意見反映を
規制のしゃくし定規な適用 審査結果の検証機関を
石井 原電の経営は電力会社から受け取る基本料金に支えられていて、ほかの旧一般電気事業者とは性質が異なります。規制委が不許可という「実績」を残すために狙われたのではないか、と邪推する人は多い。
石川 規制委は政治性を排除し、科学的に安全性を判断するとして設立されました。ただ今回の判断には、強い政治性を感じざるを得ません。
石井 規制委は石渡氏のように、一つの分野を1人の委員が担当しています。アメリカのように複数の専門家による議論で結論を導けばいいのですが、日本の規制委はそうした建付けになっていません。
石川 第一次トランプ政権が誕生した17年ごろ、アメリカの原子力規制委員会(NRC)に行ったことがあります。局長クラスの人に「規制委員の選び方はどういう基準なのか」と聞いたら、「民主党系2人、共和党系2人、真ん中1人」だとはっきり言っていました。シンプルかつ公平でいいじゃないですか。
奥村 日本で行われているのは「行政官による規制のしゃくし定規な適用」にほかなりません。アメリカでは施設の安全性を確認するシャック(SSHAC)という専門家会議があります。日本でも四国電力が導入していますが、専門家が集まり、不確かな事項についてどうすれば妥当な結論を得られるかを徹底的に議論する。日本も結論を出すのは規制委の権限で良いですが、それまでに複数の専門家による議論を経なければなりません。
審査結果が妥当かどうかを検証し、自己批判できる組織も必要です。志賀2号機や東通1号機で有識者会議の結論を覆されたのに、何のおとがめもありません。これではいけない。
石井 奥村先生のお話で、いかに今回の規制が不毛なのか、専門性と遊離しているのか、改めて分かりました。
おくむら・こうじ 東大文学部卒、同大学院理学系研究科博士課程修了。通商産業省工業技術院地質調査所研究員、広島大学文学部教授を歴任。24年から現職。
いしかわ・かずお 東大工学部卒、通商産業省(当時)入省。内閣官房企画官、政策研究大学院大学客員教授などを歴任し、社会保障経済研究所代表。
いしい・たかあき 慶大経済学部卒。時事通信社記者などを経てフリージャーナリストに。ウェブサイト「with ENERGY」(ウィズエネ)を運営。
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