「止まる」「冷やす」「閉じ込める」 対策工事終えた7号機の最新事情
【東京電力 柏崎刈羽原子力発電所】
2011年3月の東日本大震災以降、長期稼働停止が続く東京電力柏崎刈羽原子力発電所。
このうち7号機について安全対策工事が一通り完了。再稼働へ大きく前進する最新事情を取材した。
柏崎刈羽は七つの原子炉を備え総出力約821万kWを誇る、世界最大級の原子力発電所だ。うち、ABWR(改良型沸騰水型原子炉)を採用する6号機(約135万kW)と7号機(同)が2017年12月に、原子力規制委員会による新規制基準の安全審査に合格。これに基づき、最新の技術・知見を投入した安全対策工事が行われてきた。今回の取材では、立ち入り制限区域、周辺防護区域、防護区域という三重の厳しいセキュリティチェックを経て、7号機の原子炉建屋の内部を取材することができた。
詳細に触れる前に、11年3月の福島第一原発事故で何が起きたかを簡単に振り返ってみたい。東日本大震災では地震直後に稼働中の1号機、2号機、3号機の三つの炉が緊急停止した。しかし、その直後の巨大津波で予備の発電機が壊れ、電源が完全に喪失。結果、冷却できなくなった核燃料が過熱、溶融した。1~3号機では原子炉が破損し、放射性物質が漏えい。その過程で水素が発生し、1号機と3号機、また停止中だった4号機でも水素が充満し爆発を引き起こした。これにより建屋が破損。大気中に放射性物質が拡散する事態となったのだ。
随所に福島の教訓 電源喪失でも遠隔手動
この事故の反省を踏まえ、柏崎刈羽7号機の安全対策工事では、さまざまな技術・知見が投入されている。地震・津波などの災害に備えて原子炉を「止める」、次に「冷やす」、そして放射性物質を「閉じ込める」という三つの機能について、その方法の多重化に加え、多様化と位置分散を図っている。さらに国の新規制基準で定められた以上の取り組みも随所に見られる。
まずは「機器の浸水を防止する」対策を見てみよう。施設の水密性を大きく向上させ、津波に襲われても、内部が水没する可能性はほぼなくなった。津波対策については、想定される津波の高さ7~8mを上回る海抜15mの高さの防潮堤を設置することで安全性を高めた。敷地内へ海水が入ってきた場合でも原子炉建屋の中に海水が入らないように、建屋の給気口の前にも防潮壁を設置しているほか、万が一建屋の中に浸水しても、重要エリアへの水密扉設置、配管貫通部の止水工事などの対策を講じている。
「止める」機能で鍵を握るのは、原子炉建屋にある制御棒駆動用の水圧制御ユニット。原子炉が稼働中でも緊急時には数秒で制御棒が燃料の間に差し込まれ原子炉の核分裂反応を止める。07年7月の新潟県中越沖地震や11年3月の東日本大震災では地震の揺れを検知し、柏崎刈羽や福島第一で稼働中だった号機は確実に制御棒が差し込まれ、核分裂反応は止まったのだ。
次は「冷やす」ための仕組みだ。冷却が全くできなければ、停止した原子炉は核燃料の過熱によって溶融し、さらに原子炉格納容器の圧力が高まり危険な状態になる。しかしさまざまな手段で、停止直後から冷却が開始できるようになっている。①原子炉圧力容器内の圧力を上回る高圧ポンプで注水する、②次に安全弁を開き、原子炉圧力容器内の水蒸気を原子炉格納容器下部の圧力制御プールに逃がし減圧する、③次に低圧ポンプで注水し、最終的には熱交換器を介して熱を海に逃がす循環冷却運転を行う―。
電源確保・冷却継続のための対策にもぬかりはない。津波の影響を受けない高台に複数分散して、特殊車両を集めた場所がある。取材班が車両置き場に行くと、何台もの特殊車両が分散し並んでいた。
大容量の送水車。電力を供給できる発電設備を備えた空冷式のガスタービン車。格納容器などを冷却する水を、海水を冷やして送り出す装置を備えた代替熱交換器車などだ。熱交換器車などは点検時対応なども踏まえ5台用意し、常に待機状態にしてある。電源車、多数の消防車も控える。万が一、全電源が停止した事態に備え、原子炉建屋の中には電源を必要としない高圧ポンプも設置されていた。
その他にも福島を教訓にした対策がある。その一つが遠隔手動操作だ。万が一に全電源喪失状態に陥ったとしても、現場で手動操作する必要があるバルブについては、事故によって高線量のためバルブに近づくことができない場合を想定し、安全な場所から手動遠隔操作が行えるよう改造を施した。
1 2