【北海道電力 齋藤社長】北海道をCN拠点へ 脱炭素技術を社会実装 GXビジョンを実現する

2024年12月1日

最先端の半導体工場やデータセンターの建設が相次ぎ、
今後、大幅な電力需要増が見込まれる北海道。

これまでの知見や技術を最大限活用し
企業の円滑な進出をサポートするとともに、
脱炭素技術の社会実装を着実に進める。

【インタビュー:齋藤 晋/北海道電力社長】

さいとう・すすむ 1983年北見工業大学工学部卒、北海道電力入社。2015年苫東厚真発電所長、19年常務執行役員火力部長、21年取締役常務執行役員火力部・カイゼン推進室・情報通信部担当などを経て23年6月から現職。

井関 今夏は全国的に記録的な猛暑となり、各地で電力需給がひっ迫しました。冬季に向けた供給体制は盤石ですか。

齋藤 10月29日の電力・ガス基本政策小委員会において、今年度冬季の需給に関する見通しが示されました。北海道エリアは最も厳しい1月でも、10年に1度の厳寒を想定した最大需要に対する予備率を10%以上確保できる見通しです。北海道においては暖房機器の稼働などにより、冬季が電力需要のピークとなります。引き続き、ほくでんグループ各社が緊張感を持って設備保全などに努め、安定供給を果たしていきます。

井関 昨年度の長期脱炭素電源オークションで、石狩湾新港発電所2号機の新設と苫東厚真発電所4号機の既設改修で応札し、落札されました。

齋藤 北海道エリアは電力需要の増加に加えて再生可能エネルギーの導入拡大が見込まれていますが、それぞれがいつ、どの程度の規模であるかを見通すことは難しく、予見性の観点から新規電源投資のリスクが大きい状況です。

長期脱炭素電源オークションで落札した電源は、原則20年にわたり、他市場収益(卸取引市場・需給調整市場・非化石収入など)を約90%還付する必要があるものの、建設費用や運転開始後の維持費、事業報酬を回収できる制度であるため、投資回収の予見性が確保できるものと考えています。

井関 石狩湾新港2号機の前倒し稼働を決めました。不透明な電力需要にどのように対応していくことになりますか。

苫東厚真発電所4号機ではアンモニア混焼を予定している

齋藤 石狩湾新港2号機の運転開始時期を、2034年12月から30年度まで前倒しすることにしました。電力広域的運営推進機関が公表している北海道エリアの需要想定では、経済成長やデータセンター(DC)・半導体工場の新増設が続くことによる需要増が、人口減少や節電・省エネなどの減少影響を上回ると見込まれ、当社として、将来の需要増を踏まえ前倒しが必要だと判断したものです。社長に就任した昨年6月ごろは、今後需要が縮小していく中で地域に寄り添いながらどう生き残っていくかが課題でしたが、ラピダスの千歳進出を機に半年ほどで状況は一変したと感じています。 こうした需要増に対しては、まずは既存の発電設備を活用しながら供給していく方針です。それでも、北海道の300万~400万kWという需要規模の中に100万kW規模のハイパースケールDCが立地すれば電力システムへの影響は甚大です。発電設備、ネットワーク設備の在り方を考え、効率的かつ迅速に産業を誘致する観点からプッシュ型で増強を進めていく必要があると考えています。とはいえ、それには資金調達と資金回収の面で大きな課題があります。

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