静かでゆったり過ごすキャンプ場 地域活性化の施策として開設

2024年12月6日

【東海ガス】

東海ガスは今年3月、静岡県藤枝市に「びく石山静かな夜のキャンプ場」を開設した。

キャンプ場を通して、過疎化が進む中山間地域の活性化にも取り組んでいる。

藤枝駅から中山間地域に向けて車を走らせること30分。市街地から離れ、整備された山道を進んだ先に「びく石山静かな夜のキャンプ場」はある。深緑に包まれて耳を澄ますと、木々の揺れる音や風の音が聞こえる。街中の喧騒を忘れさせてくれるようなロケーションだ。同キャンプ場を手掛けるのは地元・藤枝市で都市ガス事業を展開する東海ガスだ。公益性の高いエネルギー事業者には、自治体から地元を活性化する施策を先導してほしいと期待が高まっている。東海ガスでは、地域貢献になるさまざまなアイデアを社内で募集をかけた。この中から、キャンプ場という案が浮上。藤枝市とも中山間地域の活性化に寄与すると意見が一致し今回の開設に至ったという。

「キャンプ場で地元貢献したい」と丸山社長
木を基調としたコテージ


安心・安全、マナーを訴求 他と一線を画すコンセプト

一口にキャンプ場と言ってもさまざまな形態の施設がある。ファミリー・若者向け、学校や団体向け、グランピングなど、アウトドアブームも相まって種類は多彩だ。そうした中で、同キャンプ場が打ち出しているのが名称にもある通り「静かなキャンプ場」だ。

丸山一洋社長は「キャンプ場を宴会場のように利用する人もいるが、ここは『静か』で、プライベートな空間があって、ゆったりとした時間が過ごせることを訴求ポイントにしている。安全・安心で、マナーの良いキャンパーが集まるキャンプ場がコンセプト」と語る。

これに合わせて、設備の建設や運営・管理も徹底している。テントを張る区画サイトでは、全て隣接するサイトの間に2m幅の通路を設けた。隣人の視線を感じたり、話し声が聞こえたりしないように配慮したという。少しでも他人の物音が聞こえると、「静かな自然を楽しむ非日常ではない」からだ。

キャンプ場にはコテージもある。全室エアコン、トイレ、シャワールーム付きで、ビジネスホテルと比較しても遜色がない設備が用意されている。全室ウッドデッキがあり、陶器製の湯舟で、星を眺めながら入浴できる露天風呂付きコテージもある。これらもプライベートな空間がきっちり確保されている。

キャンプサイトには直火を楽しめる区画もある

キャンプ場のクリンネスへの意識も高い。トイレは1日数回点検する。共用の炊事場などの汚れがちな場所もとてもきれいだ。「こうした面に少しでも落ち度があると、女性客はリピートで来場してくれない。SNSの口コミでの評判にもつながっていく」とのことだ。

キャンプ場がオープンして半年以上が経過した。利用状況について聞くと、「週末はほぼ満室で出足は好調。県内はもとより、東京や名古屋からの来場者もたくさんいる。SNSによるプロモーションも奏功している」と話す。

広々した区画のキャンプサイト
静かに星空を眺める空間も好評


地元名物の陶芸で活性化 キャンプ場も応援

キャンプ場のある藤枝市瀬戸ノ谷地区は古くから陶芸が盛んで、同地域の活性化に生かしていきたいと考えている。同市が掲げている「ふじえだ陶芸村構想」では、陶芸を軸にさまざまな事業展開を行い、地域活性化、交流、定住者増加、地域課題の解決や地域ブランドの強化を図ることを目指している。

設備面でも、既存の市営温泉施設「瀬戸谷温泉ゆらく」の隣接地を拡張し、新陶芸センターと道の駅を新設する計画があるなど、強化の様子がうかがえる。東海ガスも、同構想に寄与するように、キャンプ場から宿泊者を複合施設への誘導などを考えている。「キャンプ場は元々市営の牧場があった土地。これを有効活用してキャンプ場を建設した。今後の運営を含めて、地元の皆さんと対話を続けている。同地域の発展に貢献していきたい」と丸山社長は意気込む。

東海ガスでは、キャンプ場に続く、新たな事業も計画中。藤枝市をはじめとする同社エリアの地域貢献に今後も積極的に取り組んでいく構えだ。