【コラム/1月7日】2025年経済を考える~ミレニアム四半世紀を振り返り、知力、気力、体力、原子力で経済健全化元年に
6、迎合主義的な政策で、財政・社会不安に
どの時代の政権も、日本経済の発展を願い独自の考えで似たり寄ったりの政策を訴えてきた。目指す姿は、期待経済成長率(2~3%)を実現し、需給、企業収益、雇用、財政の視点で安定的な経済(経済均衡)に至る予定だった。その実現はなかった。この間3回のショック(リーマン・東日本地震・コロナ感染)があった。経済は自動的に回復可能か不明で、財政金融政策を駆使し経済維持を図った。適切な対策だったか評価は分かれるが、一応水準維持に役立ったとの触書である。
この間、年平均成長率(2000―2023年)は、名目0.6%、実質0.7%だった。今年も実質1%程度であろう。需給は、ほぼ均衡、企業収益率(法人企業統計経常利益率)は、時に増減あるも数年5%を超える。雇用は、一応失業率2.5%前後である。今日非正規雇用増と社会問題が絡み政治となる。そして財政は、2024年度当初予算を見れば、公債発行35兆円(公債金依存度31%)で、国債残高GDP比180%となった。財政不均衡が顕著である。財政健全化の道筋はどうか。耳に届くのは「経済あっての財政」の言葉である。日銀の国債買い頼りが続く。
過去の構造改革は、平常時もショック時も役立たずだった。またショック時と違い平常時の財政出動(補正予算)は人気取りだけで不要感を強くした。
7、多様なリスクあるも
2025年経済は、不確定要因が多いと指摘されている。国際情勢で、ウクライナ・ロシア戦争、シリア崩壊中東情勢、中国・北朝鮮・ロシアの東アジア動向等地政学リスク、異常気象等自然災害リスク、不透明な脱炭素政策、エネ事情、金融政策、資産価格、特定財貿易制限、サプライチェーン、コストプッシュ物価上昇、そして米国トランプ政権等がもたらす経済的リスクがある。
国内は、少数与党、自然災害、為替、関税・貿易、財政、金融、エネルギー、電力供給の不安定、賃上げ・コストプッシュインフレ、資産価格、サイバー、国際競争力等で懸念がある。ある程度対応可能ということで、日本経済は、ショックがなければ、成長率0~1%程度だろう。ショックとは、財政崩壊、国際経済激変による輸出激減、エネルギー資源輸入激変、コストプッシュインフレ政策の誤謬等である。
8、金融跋扈
このようなリスク環境で日本経済活性化を取り戻すためどうすべきか。何から手を付けていいのか。現状ほとんど知恵が沸いてこない。実物経済では、四半世紀、技術革新・ベンチャー期待である。ITからDX、GX、 AIの流れがあるも、何故か新・伸長産業希薄である。エネルギーは、電力自由化で不安定供給に加え原子力再開遅延・再エネ補助・化石頼りで料金不安定が続く。在来型産業は、脱炭素化に危惧もある。そして低生産性のサービス産業が、未熟練の人を吸収する。
実物経済を支えた金融は、大きく姿を変えた。貯蓄から投資、資産運用立国、投資金融礼賛が政策概念となった。企業価値を高めると称するPEファンドが暗躍している。昔あったはずなのに、現在求められている企業経営の長期的視点や雇用重視とは乖離している。
9、科学的精神なくば、温故知新で
日本経済の課題とその処方箋は、ある意味で明確である。例えば財政均衡を目指す財政健全化(適正な負担:増税・歳出削減)、成長の基本である技術革新を生み出す環境整備(研究体制充実で大学・研究所における研究者の安定雇用と士気向上)、雇用を重視し企業の自立自営を基本とする法・制度・慣行の尊重(株主代表訴訟見直し、コーポレートガバナンス法制廃止、株式保有政策の自主性尊重等)、投資金融の調達・運用情報公開と権利濫用防止等である。カネでカネを儲けることの理不尽を回避したい。エネルギー面でも電力の規制緩和の失敗がある。電気を準公共財とみれば、需給と価格面で公益事業体制が優れていた。原子力の復活・開発が重要である。此れ等の変更は、よく見れば構造改革の前に戻すような事項である。勿論時代に合った工夫は必要である。この見方を、古いと考えるか自然と考えるか。人様々であろうが。
四半世紀以前に、下村治博士は、米国要求且つ追従の構造改革案を行えば、日本経済の良きパフォーマンスを喪失し、その先どうなるか心配であると述べていた。変更が変更を招来し、ますます不安定になるということである。合成の誤謬に近い。過去の橋本、小泉、民主党、安倍、岸田政権の改変が今日の姿であることを見れば頷ける。故に2025年は、次の四半世紀の経済運営・経済政策・経済の姿を産官学等で夫々考えるプロジェクトから始めるべきであろう。その際下村の忠告を念頭に置くことが大切である。それを政府が提唱し主導することができれば光明となる。
【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。
1 2