国産SAFの製造設備が完成目前 25年度に航空会社への供給見込む
【コスモ石油】
コスモ石油の堺製油所(堺市)内で建設中の国産SAF(持続可能な航空燃料)の製造プラントが、完成を目前に控えている。同社は2024年11月22日、設備を報道陣に公開し、計画の進ちょくを説明。25年度初頭にも本格生産に乗り出す方針を明らかにした。実現すれば、国内初のプロジェクトとなり、国産SAF事業の行方を占う試金石として注目されている。
SAF製造を担うのは、コスモ石油のほか、日揮ホールディングス(HD)、廃食用油回収を手掛けるレボインターナショナルの3社が共同出資して設立した「サファイア・スカイ・エナジー」だ。コスモ石油が航空会社への販売を担当し、レボ社が一般家庭から出る「家庭系」と飲食店などからの「事業系」の2ルートで廃食用油の調達を担当。日揮HDはその原料調達を支援し、3社が連携して国内サプライチェーンを構築する。コスモ石油の髙田岳志次世代プロジェクト推進部長は「販売先は鋭意開拓できている」と、本格生産に向けた確かな手応えを語った。
プラントの製造能力は年間約3万㎘を見込み、製造過程ではバイオプラスチックの原料となるバイオナフサも副生される。回収した廃食用油を高温・高圧下で水素化処理する「HEFAプロセス」を採用しており、水素は同製油所内の既存設備からの供給で賄う。
廃食用油の受け入れ設備はタンク3基で計2000㎘の貯蔵が可能。既に完成し、試運転に向け国内各地から事業系廃食用油の搬入が始まっている。24年度内の試運転を経て、25年度初頭には各航空会社への国産SAFの供給を開始する予定だ。
府内に回収ボックス設置 空の脱炭素化に市民も協力
また同日には、コスモ石油、日揮HD、レボ社の3社と堺市が、家庭系廃食用油の資源化を促進するため、連携協定を締結した。市の協力の下、大阪府内のイオンモール5施設に常設の廃食用油回収ボックスを順次設置する。その第一弾としてこの日、イオンモール堺鉄砲町(堺市)に回収ボックスが設置され、早くも買い物客が油を持ち寄る姿が見られた。
国内では、家庭から年間約10万tもの廃食用油が排出されているが、そのうち約9割が廃棄している現状がある。これらを有効活用し、原料のサプライチェーンを強化する狙いだ。国産SAFプラントの稼働を機に、多くの生活者を巻き込んだ空の脱炭素化プロジェクトに期待がかかる。