【中部電力 林社長】将来の情勢見据えた経営ビジョンを実現し 政策目標にも貢献へ

2025年1月1日


不動産など新領域拡大 人材確保の対応加速

志賀 電気事業以外では不動産や地域開発を前面に打ち出されているようですが、具体的にどんな分野に注力していますか。

 電気事業の周辺も含め、シナジーのあるサービスについては、お客さまのニーズを踏まえミライズ中心に展開しています。例えばCO2フリー電気といった切り口ですね。また、12月には、住信SBIネット銀行と一緒に「カテエネBANK」という家庭向け銀行サービスの提供を開始しています。他にもグローバル事業、資源循環事業など、さまざまな分野で取り組みを進めています。

事業として大きいのはご指摘の不動産事業で、エネルギーサービスを土台に快適性や利便性といった付加価値を組み合わせたまちづくりを意識し、着実に利益も獲得しています。25年春には不動産事業本部を設置し、日本エスコンと中電不動産とともに、グループ一体でより良い価値を提供することを目指しています。

志賀 日本エスコンは北海道日本ハムファイターズ本拠地のネーミングライツを取得しています。これは域外を含め不動産に力を入れるとの表明でしょうか。

林 域内外という意識はあまりなく、ニーズのあるところにはどこにでも出ていく考えです。日本エスコンと中電不動産がそれぞれの強みを生かしたビジネスモデルで進めています。例えば北海道でのボールパークを中心としたまちづくりは日本エスコンが担い、当社の社宅跡地を活用した「iiNE タウン瑞穂」は中電不動産が開発しています。

ちなみに北海道での事例では、ボールパークの周辺にマンションやメディカルモール、シニアレジデンスなどをつくっています。28年頃にはJRの新駅が完成することから、さらなるにぎわいをみせるエリアになるでしょう。また、ボールパーク自体、遊ぶところや食事がおいしい店がたくさん入り、野球の試合がない日でも1日楽しめます。ボールパークを中心に大きなコミュニティが出来ていく、まちづくりのモデルの一つになると期待しています。

北海道ボールパークFビレッジを中心にまちづくりが進む

志賀 幅広く事業を展開する上では人材育成が重要になります。

 電気の安定供給に加え、新たな価値の創出に挑戦するためには、人の力が必要です。従業員の働く環境の整備や多様な人財の確保を投資と捉え、取り組みを進めています。

例えば、今年度導入した実質週休3日制が好評です。社員からの提案が発端で、残業時間をまとめて1日の休みに当てられるもので、いわばコアタイムのないフレックスです。毎月200~300人が活用し、すでに900人以上が1回以上使っています。また、24年度は新卒を含めた採用計画数642人のうち、3割強に当たる215人のキャリア採用を予定しています。加えて、職務内容や成果次第では20代で年収2000万円を超えるスペシャリスト社員の採用も開始しています。

労働の流動性が高まれば他社を選ぶ人も出てきます。中部電力ならこういう自己実現ができ、働く楽しさを感じられる―。こうした価値を伝えることが大事だと思っています。これと働く環境の整備などの取り組みをセットで当社の魅力を感じてもらうべく、力を入れています。

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