【東北電力 樋󠄀口社長】電力の安定供給維持へ 自己資本を積み増し財務基盤を回復する
CN達成に向けて 脱炭素化へ着実に前進
志賀 「東北電力グループ カーボンニュートラルチャレンジ2050」に関する取り組みの進捗状況はいかがですか。
樋口 CN達成に向け「再エネと原子力の最大限活用」「火力の脱炭素化」「電化の推進とエネルギー利用の最適化」の三つを柱として取り組んでいます。
再エネについては、CNに向けた重要な電源と位置付け、30年以降早期に風力発電を主軸として新たに200万kWの開発を目指しています。24年は、3月に「秋田県八峰町及び能代市沖における洋上風力発電事業」の選定事業者に選定されました。さらに、11月には専焼バイオマス発電事業として初めて参画した「鳥海南バイオマス発電所」が、12月には「新潟東港バイオマス発電所」が運転を開始したほか、単独開発する陸上風力発電事業なども順次着工しました。現時点で、風力をはじめ太陽光・水力・地熱・バイオマスなど34件の開発を進めています。当社グループが出資参画しているこれらの開発案件が事業化された場合の持分出力は、12月末時点で約80万kWに達しています。
火力の脱炭素化に向けては、石炭火力発電所におけるバイオマスやアンモニアの活用、LNG火力発電所における水素などの活用を見据えた検討を進めています。さらに、CCS(CO2の回収・貯留)の実用化を目指した検討・調査に取り組んでいるところです。
バイオマスについては、能代火力においてブラックペレットを混焼する試験を進めています。24年5月に、微粉炭機(ミル)1台を対象に重量比で最大4%程度、11月には、ボイラー全体で最大20%の混焼試験を実施し、ミルの粉砕性やボイラーでの燃焼性に問題がないことを確認しました。本試験結果を詳細に分析した上で、引き続きブラックペレットの本格運用を見据えた検討を進めていきます。
アンモニアについては22、23年度と、JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)などとの共同研究を通じ、当社石炭火力での混焼も想定し受入・貯蔵などに係る課題抽出や、コスト低減のあり方などについて検討してきました。引き続き、石炭火力での活用に
向けた検討を深めていきます。水素については、新潟火力5号系列で混焼実証を進めており、23年10月に、国内初となる事業用コンバインドサイクル発電設備での体積比1%程度の混焼試験に成功しました。また、24年10月には同じ設備で前年より混焼率を上げ、体積比8%程度の混焼試験を実施し、問題なく混焼できることを確認できました。これらの試験で得られた知見を踏まえ、将来的には大型ガスコンバインドサイクル設備への展開に活用するなど、LNG火力の脱炭素化に向けた検討を進めていきます。
CCSについては、24年9月に当社を含む4社(JAPEX、三菱ガス化学、北越コーポレーション)がJOGMECから「東新潟地域における先進的CCS事業に係る設計作業等」を受託しました。その中で当社は、CO2分離回収設備を火力発電所に設置する場合の技術的な検討や設備設計、コストの調査を行うこととしています。