【東北電力 樋󠄀口社長】電力の安定供給維持へ 自己資本を積み増し財務基盤を回復する
志賀 24年4月に策定した今後の経営展開「よりそうnext+PLUS」で掲げた財務目標に対する進捗はいかがですか。
樋口 21、22年と大幅な赤字を計上することになり、22年度末の連結自己資本比率が10・5%まで低下するなど財務基盤が大きく毀損しました。こうした状況変化を踏まえ、24年4月に今後の経営展開を示す中で、「連結自己資本比率」「連結経常利益」「連結ROIC」を新たな財務目標として設定しました。26年度においては、自然災害などの事業リスクに対応するため財務基盤の早期回復に注力し、「連結自己資本比率20%程度」を実現することが最重要課題と考えており、そのために必要な利益水準として「連結経常利益1900億円」を設定しています。さらに、当社の資産が増加する中においても、設備の効率的な活用や投資案件の精査などにより、収益性の維持・向上を図るため「連結ROIC3・5%程度」の目標を設定しています。一方、30年度においては、さらなる財務基盤の充実化を図り安定的な事業運営を行いながら、当社の企業価値向上に向けて「利益・投資・成長の好循環」を実現していくために、「連結経常利益2000億円以上」「連結自己資本比率25%以上」「連結ROIC3・5%以上」を目指すこととしています。
24年度の業績は、女川2号機の再稼働による火力燃料費の抑制効果などにより、24年4月に公表した業績予想の連結経常利益は1900億円を確保できる見通しです。一方で、今年度中間期末においても連結自己資本比率は17・4%と依然として低い水準にあります。このため、「よりそうnext+PLUS」の下、電気・エネルギーを中心に据え、各々の事業領域の展開を通じて利益を継続的に確保し、着実に自己資本を積み上げていきたいと考えています。
DXとCNを機会に 利益の創出を図る
志賀 今後の経営展開のポイントは。
樋口 25年も引き続き、デジタル化の進展やCNの潮流加速が想定されます。26年度の財務目標の達成に向け、25年は女川2号機の安定稼働に努めるとともに、積極的にDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進して業務の効率化・高度化を実現します。同時に、お客さまの環境意識の高まりなどによるニーズの多様化を踏まえ、お客さまのCO2削減に貢献するコーポレートPPAをはじめとしたサービスのご提案や新たなサービスの開発などを進め、利益の創出を図っていきます。
今後も、当社の経営理念である「地域社会との共栄」とグループスローガン「より、そう、ちから」の下、地域の皆さまが快適・安全・安心なくらしを実感できる「スマート社会」の実現に貢献し、社会の持続的発展とともに成長する企業グループを目指していきます。
志賀 女川2号機の再稼働を契機とした攻めの経営に期待しています。本日はありがとうございました。
対談を終えて
BWR炉のトップバッターとして14年ぶりの女川2号機再稼働を果たし、「非常に感慨深いものがある」と目頭を熱くした。発電再開は単なる「再稼働」ではなく、新たに生まれ変わる「再出発」であるとの言葉に思いを込める。自身、現場に頻繁に足を運び、作業に携わる関係者を鼓舞してきた。これを機に、棄損した財務基盤の早期回復を目指す。そのための継続的な利益の確保に、強い意欲を見せた。
(聞き手・志賀正利)